試乗記

日産の米国製SUV「ムラーノ」試乗 可変圧縮比ターボエンジンで駆動する稀有なモデルの実力は?

米国で生産されるSUV「ムラーノ」(北米仕様)に試乗

北米で展開される「Platinum」グレードに乗る

 北米をメイン市場とする「ムラーノ」が日本でも発売されることになった。初代は日本での反響が良かったため、日本仕様も販売され人気となったが北米を主市場とすることが決まり日本では2008年に販売終了となった。その後も海外では3代を経て2025年に4代目にモデルチェンジされており、今は米国テネシー州のスマーナ工場で生産されている。

 そのムラーノが日本にやってきた。輸入される経緯は国交省の米国製乗用車の認定制度を利用することで、基本的な部分は米国仕様のまま輸入できることで米国からの輸入がしやすくなっている。

 日産デザインはどれも統一感があり、ムラーノも例外ではない。すぐに日産車だと分かるフロントマスクは、日本ではLクラスらしい大型SUVの存在感を出している。ボディサイズは4900×1980×1725mm(全長×全幅×全高)で、いかにも米国サイズ。しかもムラーノは全モデル左ハンドル。日本の狭いレーンでは、片側2車線道路でも右に寄らないように注意する。感覚的には、左の白線上に左タイヤを乗せるぐらいでちょうど良かった。

今回試乗したのは2026年6月に日本導入が発表された「ムラーノ」。ただし日本に入る「SV」グレード(796万4000円)ではなく、北米で展開される上位グレード「Platinum」になる。また、ボディカラーは「SV」グレードがモノトーンのみの展開なのに対し、試乗車は2トーン仕様(グレーパール/スーパーブラック)
ボディサイズは4900×1980×1725mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2825mm。車両重量は「SV」グレードが1945kgなのに対し、試乗車は2013kg
エクステリアでは美しさと力強さを兼ね備えたプレミアムモダンクロスオーバーとして、薄型LEDヘッドライトや左右に広がるリアコンビネーションランプを採用

 エンジンは2.0リッター4気筒の可変圧縮比ターボ(VCターボ)。出力は245PS/5600rpm、352Nm/4400rpmで、燃費と実用性の高いトルクを両立したエンジンだ。圧縮比は8.0~14.0まで変化する。使用燃料はレギュラーだ。組み合わされるトランスミッションは9速で6速以上はハイレシオになる。ハイウェイを低回転でユルユル走り、燃費を稼ぐというコンセプトにマッチする。

直列4気筒DOHC 2.0リッターの可変圧縮比ターボ「VCターボ」エンジン(KR20DDET)は、最高出力180kW(245PS)/5600rpm、最大トルク352Nm(35.9kgfm)/4400rpmを発生

 視界はそれほど広くないのでドライビングポジションはいつもより高めに調整する。また、エンジンフードに丸みが付けられており、直前視界は初乗りではつかみにくい。かなりシートを上げ、ステアリングホイールのチルト、テレスコを調整して折り合いをつける。

 助手席はダッシュボードの下端が高いためか、一見、窮屈そうに見えるが実際には足が伸びてスペースは確保されているようだ。またシートは大きくたっぷりしており、後席も分厚いシートで、LクラスSUVにふさわしい。後席のレッグスルームはそれほど大きくは感じないが、座ってみると広々としているのが分かる。特に柔らかめのクッションで寛げるのが良い。

「Platinum」グレードのインテリア。プロパイロットは「SV」グレードも標準装備
木目調フィニッシャー(ハプティクススイッチ付)を用いるほか、最新の日産車らしくボタン式シフトを採用
ディスプレイは12.3インチを2枚並べる仕様。画面は英語表記でカーナビ機能は備わらないものの、Apple CarPlay/Android Autoとの連携が可能
走行モードはスポーツ、スタンダード、エコを設定
シートは「SV」グレードが合皮なのに対してセミアニリンレザーを用いたほか、パノラミックムーンルーフ/BOSEオーディオ、コネクテッドシステムなどを搭載

 試乗車は米国仕様の「Platinum」グレード。日本に輸入されるのは20インチタイヤの「SV」グレードだが、Platinumは21インチタイヤを履き、シート素材もセミアニリンレザーを使った上級グレードになる。タイヤはブリヂストンの「ALENZA SPORT A/S」で、サイズは255/50R21。オールシーズンは北米流のM+Sではなく、多少の雪なら走れそうな本格的なパターンを持っている。サスペンションはフロント:ストラット、リア:マルチリンク。AWDなのも心強い。

駆動方式は4WDを採用し、足まわりには専用チューニングが施された周波数感応型ダンパーを搭載。タイヤはブリヂストン「ALENZA SPORT A/S」(255/50R21)をセット

2.0リッター4気筒のVCターボに興味津々

米国モデルらしく堂々とした体躯

 まず高速道路のクルージングでACC(プロパイロット)を使ったが、日産車ユーザーでなくても直観的に分かりやすい。ハンドルを握らないと15秒で警告が出るのも、レベル2の他モデルと共通だ。

 静粛性は、風切り音やロードノイズがよく抑えられている。KR20DDET型2.0リッターエンジンの回転フィールは硬質感があり、エンジンノイズもガサツな音ではないのが好ましい。タイヤのパターンノイズも入ってくるものの、21インチのA/Sとしては特にピークの音は感じなかった。

 乗り心地、荒れた路面や舗装のつなぎ目での突き上げは多少強め。特に連続した荒れた路面ではリアが少しドタバタすることがある。タイヤとしては日本導入モデルの20インチ仕様が日本の道に合っているような気がする。ハンドリングと両立させるためか路面を問わずリアの上下動が少し早いように感じた。

高速では静粛性の高さを感じた

 ハンドリングはLサイズSUVとしては軽やか。ステアリングの微小域の動きは鈍いが手応え感があり、フロントがスーッと入っていく。日常的に使う速度域+αなら気持ちよくコーナーをクリアし、グリップ感もあって安心できるもの。全高1725mmの少し低めのボディはロール速度もよくコントロールされ、安定した姿勢でコーナーをトレースすることができる。俊敏ではないがSUVらしく落ち着いた信頼感のあるライントレース性がムラーノの良さだ。

 可変圧縮比ターボ(VCターボ)は、日本では「エクストレイル」の発電用としての役割しか体験できなかったが、ムラーノは駆動力として使われる。エクストレイルが1.5リッター3気筒だったから2.0リッター4気筒のVCターボは興味津々だ。すでにエンジンの回転フィールは記したが、動力性能としては想像したものとは良い意味で違っていた。

 パンチの効いたターボというよりも、全域で大きなトルクを出し、どの速度域からも加速ができる性質を持たされている。BEV(バッテリ電気自動車)に体がなじんでいると、トルクで瞬時にクルマを加速させるのを期待するが、こちらは大排気量NAエンジンのようなジワリとした伸びやかな加速感だ。

2.0リッター4気筒のVCターボは大排気量NAエンジンのようなジワリとした伸びやかな加速感

 トランスミッションとの組み合わせは、場面によってはアクセル開度が大きい時にタイムラグがあってもどかしいが、ジワリと踏むとクロスレシオの9速ATはポンポンとシフトして、低回転を維持しながら省燃費モードで走れる。VCターボの実力を感じたのは、広いトルクバンドで低回転から中速回転にかけて力強かったことだ。期待したようなターボのパンチはないが、2tの重量を粛々と骨太に走らせることができる。

 ムラーノはパフォーマンスに派手なところはないが、ドライバーを飽きさせない。ハンドリングもパワートレーンもそれに向けて作られているように見える。アメリカ生まれのムラーノに乗ると、その地域で何が求められているのかがよく分かる。

 帰ってきたムラーノは特に北米での使い勝手の良さ、そしてカッコいいSUVだと理解できた。

唯一無二のVCターボをぜひ体感してみてほしい
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛