試乗記

BMWの新エントリーモデル「オリジナル」イッキ乗り 「1シリーズ」「X1」「X3」で真価を探る

BMWの新エントリーモデル「オリジナル」3モデルに試乗(写真はX3 20 xDrive オリジナル[M Sportパッケージ装着車])/767万円

「走りの楽しさ」はそのままにオリジナルグレードを新設

 BMWとの出会いを、もっと身近に。2026年春に新しくラインアップされたBMWのエントリーグレード、「Original(オリジナル)」シリーズの試乗会が都内で開催された。

 これは日本法人のビー・エム・ダブリューが独自に設定するグレードで、つまり限定車ではない。また単なる価格が安いエントリーモデルの新設ではなく、同社のブランド・マネジメント・ディビジョンが、改めて「BMWとは何か?」を見つめ直して形にしたモデルだという。

 こうしたBMW「オリジナル」グレード導入の背景には、現代の経済状況が色濃く反映されている。円安やインフレ、人件費や原材料の高騰。こうした要素が、昨今の新車価格を一気に跳ね上げたのは、ご存じのとおりだ。

 一方で「コンシューマーがプレミアムブランドに抱く憧れも変わっていない」というのが彼らの分析であり、むしろそこには「価値のあるものは慎重に選んで購入する」という流れがあるという。

 そこでビー・エム・ダブリューのブランドマーケティング部は、X1およびX3の購入者からその購入動機や、購入後の印象をフィードバックした。その中で一番多かった回答はまさにBMWらしさを反映したもので、「走りの楽しさ」だったという。そしてここに「快適性」や「デザイン」、「安全性」や「デジタル体験」という4つの柱を構築して、BMW「オリジナル」グレードが新設された。

 ということでここからは3台のBMWを走らせて、「オリジナル」グレードの真価を探ってみることにしよう。

X1は軽やかな身のこなしと小排気量ターボの小気味よいトルク特性がマッチング

「X1 sDrive20i オリジナル」(525万円)。ボディサイズは4500×1835×1645mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2690mm

 トップバッターは「日本で一番売れているBMW」であるX1だ。

 まず現実的な話からすれば、X1の「オリジナル」グレードは1.5リッター直列3気筒ガソリンターボの48Vマイルドハイブリッドである、「xDrive 20i」がベース。その価格設定は525万円だ。対してこれまでのベースグレードは「X1 M Sport」で、価格は567万円だった。

 42万円の差額分省かれた装備は「M Sportパッケージ」を筆頭に、タイヤ・リペアキット、ルーフレール、電動シート(フロント 運転席メモリー機能付き)、シート・ヒーティング、スライディング・リア・シートの6点。なるほどミニマルに選ぶなら、どれも必要不可欠とは言えない装備ばかりだが、タイヤ・リペアキットについては心配な読者も多いことだろう。

 これについてビー・エム・ダブリューは、海外に比べて日本の道が整備されていることや、ロードサービスへの加入率の高さ等を考えて装備を省いたとのこと。ちなみに道路交通法としてスペアタイヤやリペアキットの搭載は義務付けられていない。

 全長4500mmのコンパクトなSUVボディに、1.5リッター直列3気筒ターボ(156PS/240Nm)を搭載し、前輪を駆動するX1 オリジナル。混み合う都内を走らせた印象は、なるほどベストセラーの使い良さだった。今回試乗した3台の中でも、これがオリジンのコア・モデルだ。

「X1 sDrive20i オリジナル」のインテリアはクオーツ・シルバー・マット・トリムを採用。電動シート(フロント 運転席メモリー機能付き)、シート・ヒーティング、スライディング・リア・シートなどが省かれた主な装備
「X1 sDrive20i オリジナル」が搭載する直列3気筒DOHC 1.5リッターターボエンジンは最高出力115kW(156PS)/5000rpm、最大トルク240Nm/1500-4400rpmを発生。これに最高出力15kW(20PS)/5000rpm、最大トルク55Nm/0-2000rpmを発生する電気モーターを組み合わせる

 その印象を決定付けた要因こそが、17インチタイヤの採用だ。SUVならではの、たっぷりとしたサスペンションストローク。ここにノーマル・スプリングを組み合わせた足まわりは、予想以上のしなやかさ。そしてエアボリュームをたっぷり取った65扁平タイヤが加わって、路面からの突き上げを心地良く吸収してくれる。

 しなやかながらもシッカリ感のある乗り味は、基本的なボディ剛性の高さがあるからこそ得られる。現行Mスポーツには「アダプティブMサスペンション」(周波数対応ダンパー)も標準装備されるから、18インチタイヤを装着しても大きく乗り心地が損なわれることはないだろう。なおかつ車高も少し低くて見た目もよいだろうから(SUVなのにおかしな話だが)、これがほしくなる気持ちもよく分かる。

「X1 sDrive20i M Sport」が225/55R18サイズなのに対し、「X1 sDrive20i オリジナル」は205/65R17サイズのタイヤを採用

 しかし標準サスと17インチタイヤの組み合わせには、BMW本来の良さがある。むしろ1.5リッター直列3気筒ターボとのマッチングはオリジナルの方がよいと思う。この軽やかで素直な身のこなしと、小排気量ターボの小気味よいトルク特性がとても合っているからだ。

 7速DCTにモーター(20PS/55Nm)を組み込む「48Vインテグレイテッド・ハイブリッド」の制御も、黒子的ではあるがその出足やふとした加速に、滑らかさを与えてくれる。こうしたパワートレーンの優秀さや実直さは、“素”の足まわりの方が感じ取りやすい。どっしりとした足まわりの“Mスポ”だと、もっとパワーがほしくなってしまうのだ。

X3オリジナルはガソリンとディーゼルを用意

ディーゼル仕様の「X3 20d xDrive オリジナル」(787万円)。ボディサイズは4755×1920×1660mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2865mm

 同じX系でもX3は、ワンランク上のクオリティを現実的な価格で手に入れるために設定されたグレードだと言えるだろう。X1とは違い、ガソリン/ディーゼルの両モデルから選べるのも上位機種ならではだ。

 ちなみにその価格設定は、これまでエントリーグレードを担っていた「X3 20xDrive x Line」(818万円:5月末で販売終了)に対し、ガソリン仕様の「X3 20 xDrive オリジナル」が767万円(その差51万円)となっている。

 そしてディーゼル仕様の「X3 20d xDrive M Sport」(885万円)との差は、「X3 20d xDrive オリジナル」が787万円なので約100万円となった。ディーゼルモデルに関してさらに言うと、3シリーズの「320d xDrive」(889万円)はM Sportしか設定がないため、X3の方が安くなるという逆転現象が起きている。

 先代モデルに対して省かれた装備は19インチアロイ・ホイール、タイヤ・リペア・キット、ランバー・サポート(フロント)、アダプティブLEDヘッドライト、ハーマンカードン(750W/15スピーカー)、3ゾーンオートマチック・エアコンディショナーの6点だ。さすがにこのクラスになると、電動シートは標準装備である。

M Sportパッケージ(60万円)を装着したX3 20 xDrive オリジナルのインテリア。パッケージにはファインブラッシュ・アルミニウム・トリム、M スポーツ・ステアリング・ホイール、M アルカンタラ/ヴェガンザ・コンビネーション ブラック、M アンソラジット・ルーフ・ライニング、M スポーツ・サスペンション、サテン・アルミニウム・ライン、19インチ M ライト・アロイ・ホイール Yスポークなどが含まれる
直列4気筒DOHC 2.0リッターガソリンエンジンは最高出力140kW(190PS)/5000rpm、最大トルク310Nm/1500-4000rpmを発生。これに最高出力8kW(11PS)/3000rpm、最大トルク25Nm/500rpmを発生する電気モーターを組み合わせる
直列4気筒DOHC 2.0リッターディーゼルエンジンは最高出力145kW(197PS)/4000rpm、最大トルク400Nm/1500-2750rpmを発生。これにガソリン仕様と同じ電気モーターを組み合わせる
X3 20 xDrive オリジナルの足下。M Sportパッケージのため19インチ仕様(245/50R19)
X3 20d xDrive オリジナルは標準サイズの225/60R18タイヤをセット

 試乗したのはガソリンエンジン仕様の「X3 20 xDrive オリジナル」。エンジンは2.0リッターの直列4気筒ターボ(190PS/310Nm)で、ここにモーター(11PS/25Nm)を組み合わせた48Vマイルドハイブリッドとなる。3シリーズのアーキテクチャをベースに作られた「xDrive」は、X1とは違って後輪駆動ベースの4WDだ。また、X3から選択可能となる「M Sportパッケージ」が試乗車には装着されていた。

 その乗り味は極めて重厚で、走り出しから“700万円級の質感”を即座に感じ取ることができた。足下には225幅の18インチタイヤを装着し、スプリングもスポーティ仕立て。対してダンパーはM50のような可変タイプではなく、どうやら周波数感応型のようだが、街中の荒れた路面や高速道路のつなぎ目などで、不快な突き上げを感じることはなかった。

 こうしたシャシーに対してパワーユニットは、常用域ではジェントルに、回せば荒々しいエモさで答えてくれる。とはいえ、ここまでシャシーが良いと直列6気筒がほしくなってしまうのも事実で、であればこちらもいっそ60万円の「M Sportパッケージ」を節約して、ベーシックシャシーで2.0リッターのガソリンエンジンを味わう方がバランスが良いのではないかと思えた。

 エアコンは2ゾーン式だが、もちろん後部座席にも空調ダクトは敷かれている。ヘッドアップディスプレイや、ドライビングアシストプロフェッショナルも標準装備だ。

120オリジナルにはBMWのスピリットが宿る

「120 オリジナル」(480万円)。ボディサイズは4370×1800×1465mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm

 最後にBMWのラインアップでもっとも安く、そしてもっともマニアックな存在である「120 オリジナル」を紹介しよう。

 ちなみにこれまで120は、ガソリン仕様のマイルドハイブリッド「120」(500万円)をベースグレードに置き、そのスポーティ仕様となる「120 M Sport」(520万円)、ディーゼル仕様のマイルドハイブリッド「120d」(521万円)と同じく「120d M Sport」(541万円)、そしてもっともハイパフォーマンスなモデルである「M 135 xDrive」(729万円)という幅広い展開をしてきた。そしてこのベースグレードの下に、今回120 オリジナルが480万円の価格で設定された。

 変更された装備はパンク修理用のリペア・キット、フロントの運転席メモリー機能付き電動シートが手動、シートヒーティング(フロント)、オートマチック・テールゲート/トランクリッド(フットオープン機能付き)、スルーローディング・システム(分割加倒式リアシート)の5点だ。

120 オリジナルのインテリア。電動シートが手動になるとともに、シートヒーティング(フロント)、オートマチック・テールゲート/トランクリッド(フットオープン機能付き)、スルーローディング・システム(分割加倒式リアシート)が変更点

 そしてこの走りが、とてもいい。そのアーキテクチャは、1.5リッター直列3気筒ターボ(156PS/240Nm)を軸とする48Vマイルドハイブリッドで、7速DCTに組み込まれるモーター(20PS/55Nm)もX1と同じだ。ただしその車重は1465kgと、115kgも軽い。さらに重心も低いから、乗り心地がよい上に身のこなしやハンドリングが断然奥深いのだ。

120 オリジナルが搭載する直列3気筒DOHC 1.5リッターエンジンは最高出力115kW(156PS)/5000rpm、最大トルク240Nm/1500-4400rpmを発生。これに最高出力15kW(20PS)/5500rpm、最大トルク55Nm/0-2000rpmを発生する電気モーターを組み合わせる
120 オリジナルは17インチホイールにグッドイヤー「イーグルF1」(205/55R17)の組み合わせ

 分かりやすい例で例えると、このクラスの世界的ベンチマークであるフォルクスワーゲン「ゴルフ」よりも質感は上だ。その分価格も高いから、動的質感だけでも味わってみたいなら、この120 オリジナルというグレードは1つのきっかけとなってくれるだろう。

 流行のSUVスタイルや、高い着座位置から得られる視界の良さは確かに魅力的だ。だからそれを捨ててまで、古典的な5ドアハッチを「最良のベーシックである!」とゴリ押しする気はない。その気はまったくないのだけれど走りがすばらしいのは事実だから、“マニアックな選択”というわけである。

 値段的な側面から見ても、120 オリジナルはかなりマニアックだ。国産車なら480万円も出せば同セグメントの最上級モデルはおろか、Dセグメントの上級モデルが視野に入る。それなのに120 オリジナルには、電動シートや電動テールゲートすら付いてない。基本的な安全装備は「ドライビング・アシスト・プラス」として標準装着されているから安心だが、20万円の価格差なら、やっぱり電動テールゲートの付いたノーマルグレードがほしくなりそうだ。

 とはいえそこがこのグレードのミソで、標準グレードのようなオプション設定がまったくない。選択すらできないから、手動のシートとテールゲートでストイックに“素”を味わう覚悟ができれば、知らぬ間に盛られていくオプションの煩悩を、バッサリと断ち切ることができる。

 なんだか修行のような話になってしまったが、そうしてでも味わいたくなるマニアックさ、即ちBMWのスピリットが、この120 オリジナルにはある。

山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:安田 剛