試乗記

4代目となったBMW「X3 20d xDrive M Sport」 全グレード電動化で走りはどう進化した?

BMWのSAVモデル「X3 20d xDrive M Sport」に試乗する機会を得た

 日本ではアフォーダブルな「X1」や定番の「3シリーズ」と人気を分け合っているものの、グローバルでは押しも推されぬナンバーワンプレーヤーであるBMWのミドルSAV(Sport Activity Vehicle)の「X3」シリーズ。

 4代目となるG45型では、遂に全グレードが電動化。今回試乗した「20d xDrive M Sport」も、2.0リッターの排気量を持つ直列4気筒ディーゼルターボ(最高出力197PS/最大トルク400Nm)に、48Vマイルドハイブリッドシステムの組み合わせだ。

試乗車はX3 20d xDrive。ボディカラーはフローズン・ピュア・グレー
ボディサイズは4755×1920×1660mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2865mm、車重は1930kg

 走らせてまず印象的なのは、車内がとても静かなこと。試乗時は既に暖機が済んでいたこともあるのだろうが、いわゆるディーゼルエンジン特有のガラガラ音や微振動はキャビンに入ってこない。タイヤからのロードノイズも含め、外からの音がかなり高いレベルで遮断されていて高級感がある。

 そして、とても身軽だ。ハンドルを切れば、小型車みたいにとまでは言わないけれど、とても全長が4755mmのSUVだとは思えないくらい自在に曲がる。

試乗車の装着タイヤは、ミシュランの「eプライマシー」でサイズは245/50R19

 その理由は、試乗車が「M Sport」だからということもあるだろう。

 ちなみに日本仕様の「20d」は、現在全て“Mスポ”だ。そこには標準モデルよりも引き締められた足回りと大径タイヤが装着されており、操舵に対する反応が機敏である。ちなみに後輪操舵は付いていないものの、“Mスポ”だと「バリアブル・スポーツ・ステアリング」が標準装備となるから小回りが効くようだ。

 ダンパーは減衰力固定式だが、タイヤのエアボリュームやSUVの車重が効いているのか、割と乗り心地がいい。個人的にはMスポを“推さない派”だが、これなら毎日の足にも使えそうな雰囲気だ。

 ディーゼルターボとマイルドハイブリッドの組み合わせは、極めてスムーズ。かつ、滑らかだ。

コックピットは12.3インチと14.9インチのディスプレイで構成される「BMWカーブド・ディスプレイ」を装備
アンビエント・ライトは、両側のフロント・ドア・パネルやセンター・コンソールにまで拡がっている
シフトセレクターなどセンターアームレストに操作系をすべて納めることでモダンな印象が高められた
運転席と助手席はタイトなコーナリング時にも、乗員をしっかりホールドしてくれるスポーツ・シートを採用。内装色はMアルカンタラ/ヴェガンザ・コンビネーション ブラック
ラゲッジスペースは570Lで、リアシートを前方に全て倒すと最大1700Lにまで拡大できる
室内に広々とした開放感をもたらすパノラマ・ガラス・サンルーフはオプション

 ターボチャージャーは小型の「可変ジオメトリーターボ」と大型ターボを組み合わせた豪華なシーケンシャルツインターボだ。なおかつ今回からは8kW(11PS)/25Nmのモーターアシストが加わるから、ターボの段付きなどは感じるべくもない。少ないアクセル開度でも、スイスイと進んでいく。

最高出力145kW/4000rpm、最大トルク400Nm/1500-2750rpmを発生する直列4気筒2.0リッターディーゼルターボエンジンを搭載し、パドル付き8速AT、xDrive(4輪駆動)、最高出力8kW(11PS)/3000rpm、最大トルク25Nm/500rpmの48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせることで、システムトータル最高出力は145kW(197PS)、システムトータル最大トルクは400Nmを実現。また、Mスポーツ・サスペンションの搭載によって快適性と操舵性を大幅に向上させている

 ただあまりに滑らか過ぎて、スイスイじゃなくて、グイグイ来て欲しいという気持ちにもなる。ならばとアクセルをグッと踏み込んでも、通常モードだとエンジン回転を上げる前に、クルマ側でどんどんシフトアップしてしまう。管理されているというか、すこぶる優等生なマネージメントだ。だからBMWらしい野性味を味わいたいなら、やっぱり6気筒モデルだと思う。

 こうしたシャシーとパワートレーンに対して、電動パワステの操舵フィールが軽めなのもちょっと気になる部分だ。スポーツモードに入れてもやっぱり軽く、せめてACCを効かせたときくらいは重くしてほしいと感じた。ここらへんは同じMスポーツでも、2シリーズ グランクーペの方がずっしりしていてよかった。

全長4755mmのSUVだとは思えないくらい自在に曲がる

 インテリアの仕立ては、とてもクリーンだ。すっきりしたダッシュボードには、メーターと中央モニターが1枚組となったカーブド・ディスプレイがどかんと居座るだけで、ほかにごてごてとした装飾もない。アンビエントライトさえ派手にしなければ、都内のオシャレなオフィスのような雰囲気である。

 広々とした空間と、今っぽいデジタルグラフィック。これにトーンを合わせるかのように、ボディのデザインもすっきりしていて近未来的。まだちょっと大きすぎる気もするけれど、キドニーグリルがバンパー中央で留まってくれたのも嬉しい。

 そう考えるとX3の運転感覚が、アッサリしているのにもうなずける。その都会的で肩の力が抜けたクールさこそが、新世代X3の基本テーマなのだろう。

車内がとても静かなことも印象的だった

 だから3シリーズの手前はあるけれど、もはやX3はFRベースである必要はないのではないか? と感じた。この乗り味ならFWDベースの4WDでも十分出せるし、その方がコストが抑えられるから、もっとインフォテインメントや装備を充実できる。今時の若い世代、少なくともX3の購入層は、そうしたことを求めるような気がする。

 筆者はオールドスクールだから、どうしてもBMWは後輪駆動にロマンを感じる。けれどそうしたノスタルジーや、後輪駆動ベースの走りがもたらす豊かなドライブフィールや味わいといったものは、X5以上のオーナーたちに任せておけばいい。BMWが自分たちの一番の稼ぎ頭であるX3をこういう仕立てとしてきたということは、もう時代が変わったということなのだ。自分で言ってて半信半疑だけれど、そんな気持ちにさせられた。

グローバルではもっとも売れているX3。ぜひ1度体感してみていただきたい
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:高橋 学