試乗記
ポルシェ「マカン4エレクトリック」試乗 “コンパクトSUV界のスポーツカー”はバッテリEVになっても健在か
2026年1月26日 08:00
ポルシェのピュアEV第2弾となる「マカン」
これに試乗して筆者はまず、「マカンだけれどマカンじゃない」と思った。何その禅問答? と言いたいかもしれないけれど、とりあえず先に進もう。
試乗したのは「マカン4エレクトリック」。マカンのグレード構成の中にあって、4輪駆動モデルの標準グレードという位置づけだ。
そのアーキテクチャは100kWhのリチウムイオンバッテリを中核に、約175kW(238PS)/約300Nmのフロントモーターと、約250kW(340PS)/480Nmとなるリアモーターの組み合わせ。
前後モーターの出力を単純に足し算すれば、そのパワーは500PSの大台に乗るけれど、システム出力としてはローンチ コントロール時のオーバーブースト最高出力で300kW(約408PS)/最大トルク650Nmに調整されている。なお、通常の最高出力は285kW(387PS)だ。
加速力を示すステイタスとしては0-100km/h加速が5.2秒で、同じDセグメントであるテスラ「モデルY パフォーマンス」の3.7秒にはちょっと大きく差を付けられている。ちなみにV型6気筒2.9リッターツインターボを搭載し、380PSを発揮した先代「マカンS」の4.6秒(スポーツクロノパッケージ)と比べても、まだ少し遅い。その理由は2360kgという車重が大きく影響しているからだと思う。ついでに言うと最高速は220km/hに制御されている。
実用性としては1充電あたり約612km(WLTC値)の航続距離を実現しており、マカン4Sやマカン ターボといった4WDグレードのなかにあって、一番足が長い。システム的な要はタイカン譲りとなる800Vシステムの搭載で、これによって電流を抑えながら、最大270kWの急速充電が可能に。ヨーロッパの規格だと、条件次第では約21分で10→80%まで充電できるのだという。とはいえ日本では未だに高出力な部類の150kWだと10→80%充電時間は33分という。
乗り味はストイックながっしり系
こうして数字だけを追いかけると、ちょっと平凡なe-SUVに見えるマカン4エレクトリックだが、実際に走らせれば、“やっぱりポルシェ”だ。
その乗り味は、意外にもストイックながっしり系。同じBEVでもタイカンのようなラグジュアリーさはなく、持ち主が相当に飛ばすことをケアした足まわりになっている。
感心するのは乗り心地が非常に整っていることで、確かにサスペンションは固められているけれど、そのおかげで段差を超えても垂直Gが体にかかりにくい。
ちなみにその重心は、570kgの専用バッテリ「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」を低くマウントしたことで、先代モデルに対して大幅に低められたが、同時に前席の着座位置も先代モデル比で約28mm下げられているから、不整地でも頭が振られにくい。タイヤもバネ下できちんと抑え込まれていてばたつかない。ガッシリとしつつもスッキリとした乗り心地は、ポルシェのイメージにぴったりだ。
そしてアクセルを踏み込めば、BEVならではの出足が俊敏。速度が上がるに従い“ヒュウウウー”と盛り上がる「エレクトリック・スポーツサウンド」も、宇宙船みたいでおもしろい。
これは疑似的に作り込んだサウンドではなくて、モーターやインバーターといった、実際のコンポーネンツからノイズを省いて抽出・増幅しているようだ。
絶対的なパワー感は、数値が示す通りで派手さはない。これはドライブモードの「スポーツ」や「スポーツプラス」を選んでも同じで、サウンドこそややボリュームを上げるけれど、オーバーブーストを効かせてもその加速に圧倒されることはなかった。
だだしそれはシャシー性能が勝っているからでもある。おそらくもっとユーザーに気を遣って足まわりをソフトにセットしていたなら、不安定になる分だけ体感速度は上がっただろう。しかしポルシェはスタビリティを重視して、そこに媚びない。
ブレーキのタッチも良好で、ターンインではダイアゴナルロールがきれいに決まる。試乗車にはリアアクスルステアリングやPASMといった電子制御式シャシーパーツがオプションされていたけれど、オープンロードを走らせる限りは制御も自然だ。
回生ブレーキはオンとオフしかなく、オンの場合はモードに応じて多少の強弱があるようだが、ともかくアクセルオフで挙動をじゃましない。個人的にはいやなときは使わなければよいから、アウディのようにパドルで任意にアシスト量を選べる方がよいと思うのだが、そこはポルシェの哲学があるようだ。
総じてマカン4エレクトリックの走りは完全なるシャシーファースターで、なるほどこれこそがポルシェの伝統だと言える。そういう意味で言うと、オプションを省きに省いた素のマカン4にも乗ってみたいと感じた。
残念なのは2360kgという車重が、それでもやっぱり少し重た過ぎること。だからこそ600km越えの航続距離と、重たいボディを支えるシャシー剛性が得られているのだけれど、かつて「コンパクトSUV界のスポーツカー」と謳われた、本質的な機敏さは失われていた。
「マカンだけれどマカンじゃない」というのはまさにそこで、今の姿はBEV化をする上で正常進化だと言える。それと同時に、今後は軽さの演出も欲しいと感じた。実際に車体を軽くするのは大変だろうけれど、軽さを感じさせる制御と合わせて、マカンらしさをもっと感じさせて欲しい。
ご存じの通りポルシェは、2025年末にその戦略を大きく方向転換した。
ヨーロッパや中国市場でにおけるBEVの伸び悩みや、既存カスタマーのBEVシフト停滞。こうした理由から、「2030年までに新車販売の8割以上をBEVにする」という目標を先延ばしにしたのだ。
そんな中で新型マカンは、BEVのまま販売を継続する。ただしそこにはカラクリがあって、日本だけでなく北米でも、いまだにガソリン車が併売されている。欧州で販売が終了したのは、サイバーセキュリティへの対応ができなかったのが原因。
そして2025年の販売をグローバルで見れば、全体の売り上げは10%ほど落ちたものの、マカンはシリーズ最多の8万4328台を売り上げた。そのうちBEVは、なんと53.8%だ。
これをどう捉えるのかで話は変わってくるけれど、カイエンと並んでポルシェの稼ぎ頭であるマカンのユーザーは、ドイツ本国がガソリンモデルの販売を終了してしまった影響こそあるものの、すでに半分以上がBEVなのだ。一気に「8割以上」は無理だとしても、時代は着実に変わってきている。























