試乗記

ジープ初のマイルドハイブリッド搭載モデル「レネゲード e-Hybrid」に試乗して感じたいいトコロ、気になるトコロ

ジープ「レネゲード e-Hybrid」

2027年のフルモデルチェンジを前に、マイルドハイブリッド化

 ジープブランド初となるマイルドハイブリッドが、「レネゲード e-Hybrid」として登場。合わせて日本仕様は1.4リッター直列4気筒ターボと、プラグインハイブリッド「4xe」のラインアップが整理され、このマイルドハイブリッドに一本化された。

 そんなレネゲードの登場は2015年と、いまから10年以上も前の話だ。丸型のLEDライトとセブンスロットグリルのデザインがまったく古さを感じさせないせいもあるが、実は現行ジープシリーズのなかでも、一番の長寿モデルとなった。

ジープのマイルドハイブリッドモデル、レネゲード e-Hybridに試乗!

 ちなみに公式でもレネゲードは2027年のフルモデルチェンジを発表しているから、残り2年を切ったこの段階で電動化を果たすとは、ステランティスも律儀だ。つまりそれだけレネゲードが、彼らにとっては大切な存在だということなのだろう。フィアット、アルファ・ロメオ、プジョー、シトロエンと、48Vマイルドハイブリッド車のラインアップ拡充を急ピッチで進めるステランティスとしては、ラングラーに次ぐジープのコアモデル「レネゲード」の環境性能適合を、見過ごせなかったというわけだ。

レネゲード アルティテュード e-Hybrid(グラファイトグレー C/C)。価格は544万円。ボディサイズは4255×1805×1695mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2570mmというコンパクトSUVモデル
17インチアルミホイールに、ブリヂストン「トランザ T005」(215/60R17)を装着
ジープに共通する7スロットルグリルを装着
SUVらしいブラックルーフレールを標準装備

 そんなレネゲード e-Hybridのパワートレーンは、直列4気筒1.5リッターターボに2つのモーターを組み合わせている。具体的にはエンジン側にベルト式スターター・ジェネレータ(BSG)、7速DSG内の偶数側ギヤにP2モーター(20PS/55Nm)を組み込んでいる。電力の供給は0.8kWhの液冷式48Vバッテリだ。

 このシステムはアルファ・ロメオ「トナーレ」と同じものだが、エンジン出力はトナーレが最高出力160PS/5750rpm、最大トルク240Nm/1700rpmであるのに対し、レネゲード e-Hybridの最高出力は131PS/5250rpmに抑えられている。対して最大トルクは240Nm/1500rpmと、数値は同じだがわずかに低回転からこれを発生させている。駆動方式はFFだ。

最高出力96kW(131PS)/5250rpm、最大トルク240Nm(24.5kgfm)/1500rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.5リッターターボエンジンを搭載。駆動用に17.5Ahのリチウムイオン電池を搭載し、7速DCTに組み込まれた最高出力15kW(20PS)/6000rpm、最大トルク55Nm(5.6kgfm)/2000rpmを発生するモーターを駆動する。駆動方式は2WD(FF)で、WLTCモード燃費は17.7km/L

 さっそく運転席に腰かけると、ちょっと高めの着座位置や、適度にタイトな室内がジープに乗っている気分を盛り上げる。

 助手席側ダッシュボードには大ぶりなハンドグリップが装着される、無骨で若々しいインテリア。中央に据えられたモニターは8.4インチから10.1インチと拡大されたが、いまどきのインフォテイメントとしては普通だ。

 とはいえタッチスクリーン式の画面にはナビやオーディオ、空調システムのコントローラー、パワートレーンのエネルギーフローがコンパクトにマルチタスク表示されていて、見た目に不足は感じない。またクラスター内のメーターも、10.25インチのデジタルタイプとなった。

レネゲード アルティテュード e-Hybridのインパネ
革巻きステアリングホイール
メーターの照度やライト類のスイッチをステアリングコラムの右側に配置
革巻きシフトノブ
シフト下部には電動パーキングブレーキのスイッチやエンジン走行用のスイッチ、VDCをOFFにするスイッチを配置
10.1インチモニターを採用するオーディオナビゲーションシステム(Uconnect)を標準装備
エアコンの操作スイッチなど
フルカラーの10.25インチマルチビューディスプレイ。メーターの表示などが好みに応じて変えられる
シートはフロント、リアともにレザー表皮を採用。フロントシートにはシートヒーターが搭載される
自然を感じられるデュアルペインパノラミックサンルーフはメーカーオプション
レネゲード e-Hybridのラゲッジ。床面のボードは高さを変えられる
リアシートは40:20:40の分割可倒式。シートアレンジも豊富

マイルドハイブリッドでもしっかり感じる“ジープ”らしさ

 走り出しの印象は、電動パワステの操舵フィールもあわせてどっしりと重厚。そのキャラクターを考えればシートはウォータープルーフな仕様でもよいと思ったが、肉厚なレザーシートと車体の剛性感がマッチしていて、FFながらも走り出しからジープ感を楽しむことができる。

 アクセルをそっと踏み出すと、モーターの駆動で静かに走り出す。ほどなくしてエンジンはかかってしまったが、その切り替わりも滑らかで、ターボエンジンゆえに静粛性も保たれている。ジープだからある程度のがさつさは許容しようと思っていたが、むしろちょっと肩透かしなくらいのおとなしさだ。ステランティスが推し進めるこの2モーター式マイルドハイブリッドは、モーターの存在を意識させてくれる。軽自動車のマイルドハイブリッドを知っている感じからすると、マイルドとストロングの中間の「フツーのハイブリッド」という印象だ。

ゆっくり走り出したときからもうジープらしい

 ちなみにカタログ燃費は17.7km/Lだが、ゆったり走らせるとピーク値で19km/L台までメーター燃費を高めることができた。

 乗り心地も、どっしりしていて快適だ。ストローク量を適度に取った足まわりはスプリング剛性が割としっかりしているが、60扁平タイヤのエアボリュームと初期特性のソフトなダンパーが、路面からの入力をじわっと吸収してくれる。その上で最終的にボディが上から突き上げを抑え込んでくれるから重厚感もある。装着されるタイヤは一般的な夏タイヤ(ブリヂストン トランザT005)だから、オールテレインタイヤのようなゴロゴロとしたパターンノイズやバイブレーションもない。

 ステアリングレスポンスは、ゆったり系だ。すわりの効いた電動パワステやしっかりした足まわりのフィーリングからキビキビ曲がる感じを想像すると、初期の操舵レスポンスがわりとスローなことにギャップを感じる。しかしその穏やかにロールを深めていくキャラクターこそがジープの血筋だ。

ステアリングレスポンスはゆったり穏やか系

 こうした落ち着きのあるキャラクターだから、高速巡航はとても快適。エンジン回転数は100km/h巡航で2000rpmちょっと回っているが、ミラーサイクルを基本として効率重視で走る直列4気筒1.5リッターターボは、まったりと静かだ。そしてときおり、勝手に充電していたりする。

 追い越し加速も、そつなくこなす。同じBセグメントながらフィアット・600eの1.2リッターではなく、1.5リッターを選んだのは正解だと思う。レネゲードはキビキビしたキャラクターじゃないから、パワー面では融通が利いたほうがいい。

 そしてACCを効かせれば、さらに快適なクルージングが楽しめる。惜しいのは、30km/h以下でシステムが解除されてしまうことで、これだけストレスなく走れるのに渋滞時の全車速追従機能はもったいないと感じた。せっかく最新のハイブリッドシステムを投じたのだから、ADAS機能もがんばってほしかった。

高速巡航も快適

 シャシーの古さをまったく感じさせないどころか、ハイブリッドシステムを搭載しながらよりジープらしさを増した「レネゲード e-Hybrid」。その価格は今回試乗した最もベーシックなアルティテュードで544万円とかなり高価だ。

 しかし「それならランクル250のガソリンモデル買いますよ」というのは無粋だ。レネゲードは「小さなジープ」を欲しい人が買うクルマなのだから。強いて言えば、その強いキャラクターではMINIがライバルにあげられそうだけれど、やっぱりレネゲードには「このカタチが欲しい!」という人に乗ってほしい。そして価格を含めたハードルを乗り越えた暁には、人とかぶらない、快適で、意外にも燃費が良くて実直なコンパクトSUVを手に入れることができるだろう。

快適で、実直な個性的なコンパクトSUVという魅力がレネゲードには詰まっている
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:安田 剛