試乗記

ボルボのコンパクトSUV「EX30」に追加されたAWDモデルの乗り味とは? クロスカントリーとともに確認

ボルボが2025年8月に導入したコンパクトSUV「EX30」のAWDモデルに試乗する機会を得た

 ボルボ史上最もコンパクトで、スタイリッシュなBEV(バッテリ電気自動車)として注目されている「EX30」が、2025年の夏にラインアップを5グレードへと拡充した。

 今一度おさらいすれば、EX30のラインアップは、まずシングルモーターとツインモーターで大別される。シングルモーターの最もベーシックなモデルが51kWhのLPF(リン酸鉄)バッテリを搭載する「Plus Single Motor」で、一充電あたりの走行距離は390km(WLTC値)。対して69kWhのリチウムイオンバッテリを搭載するグレードは走行距離が560km(同)となり、運転支援技術とインテリアの違いによって「Plus Single Motor Extended Range」と「Ultra Single Motor Extended Range」にグレード分けされている。

EX30グレード&主要諸元一覧

 そして今回試乗したのが新たに日本に導入された「Ultra Twin Motor Performance」で、その名の通りフロントに115kW(156PS)/200Nmのモーターを備えるAWD仕様。ちなみにリアのモーターは全車共通で、その出力は200kW(272PS)/343Nm。フロントのモーター出力を加えたシステム最高出力は315kW(428PS)、最大トルクは543Nmを発揮するハイパフォーマンスぶりだ。

ボルボEX30 Ultra Twin Motor Performanceのボディサイズは4235×1835×1550mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2650mm、最低地上高は175mm、車両重量1880kg、最小回転半径は5.4m
試乗車のボディカラーはヴェイパーグレーメタリック。価格は629万円でオプションのドライブレコーダー(17万3250円)、UV&IRカットフィルム(4万9500円)が追加され、総額651万2750円

 さらに「Ultra Twin Motor Performance(以下、ツインモーター)」にはクロスカントリー仕様「Cross Country Ultra Twin Motor Performance(以下、クロスカントリー)」が設定され、足まわりの変更によって最低地上高が20mmアップしたことで、5グレードのなかで唯一全高が1565mmとなっている。

 今回はその最もハイパフォーマンスなグレードとなるツインモーターのAWDモデルと、クロスカントリーを乗り比べてみた。

左が「Cross Country Ultra Twin Motor Performance」で、右が「Ultra Twin Motor Performance」。果たして乗り味の違いとは?

0-100km/h加速3.6秒とボルボ史上最速のツインモーターから試乗

 ということで、まずは標準車高のツインモーターから試乗開始。

 スターターボタンすら省いたEX30の始動は極めてシンプルで、シートベルトを締めてドライブモードに入れれば、あとはアクセルを踏み出すだけで発進OKだ。この素っ気なさと、ノイズの少ないスカンジナビアンデザインのインテリア、そして無音のままスーッと走り出す三位一体のパフォーマンスが、近未来感を盛り上げてくれるのは相変わらずである。

Ultra Twin Motor Performanceのホイールは20インチ×8.0Jの「5スポーク・エアロホイール」を標準装備。カラーはダイヤモンドカット/ブラック。装着タイヤはグッドイヤーの「エフィシェントグリップ パフォーマンス SUV」でサイズは前後とも245/40R20
最近のボルボの象徴ともいえる「トールハンマーヘッドライト」を採用
リアには「Twin Motor」の文字が刻まれたプレートがあしらわれる

 注目はフロントに搭載されるモーター、これがもたらすハイパフォーマンス化だが、街中をゆるっと流すだけでも乗り味に違いがうっすら現れていた。

 かつて試乗したシングルモーターの「Ultra Single Motor Extended Range」は、シャッキリ感のある足まわりをベースに、後ろからトルクで押し出すキビキビ感が心地良かった。

 対してAWDとなったツインモーターは、まったりと大人びた乗り味が特徴的だった。

デコラティブ(装飾)パネルの約30%は再生プラスチックを原材料にしていて、トップレイヤーにはリサイクル素材や再生可能な素材を使用している
ステアリングの上にDMC(ドライバー・モニタリング・カメラ)を搭載。注意力散漫や疲労度を検知して警告する「ドライバー・アラート・コントロール」機能も完備
ダッシュボード中央には12.3インチのセンタースクリーンを配置。アクセルOFFで回生ブレーキを行なうワンペダルドライブの設定は画面内で変更できる
シート素材はテイラード・ウールブレンドで、シートカラーはミスト。運転席と助手席は8Wayパワーシートでシートヒーターも備える
ラゲッジスペース容量は318Lを確保。また後席の背もたれを倒せば、荷室床下の61Lの収納スペースと合わせて、最大718Lまで拡張可能

 そのAWD駆動は物理的なクラッチによって制御されていて、通常モードだと後輪駆動主体になるという。その割に乗り心地が落ち着いているのは、フロントにモーターを搭載したことでピッチングが収まっているからだろうか。とにもかくにもゆっくり走らせている限りは、とても平和なBEVである。

 しかし、いざアクセルを踏み込むと、そのしとやかさが吹き飛ぶほどの、パンチの効いた加速が得られる。ちなみに0-100km/h加速は3.6秒とボルボ史上最速、ガソリンエンジン車のプレミアムスポーツカー並みに強烈。BEVで言うとヒョンデの「IONIQ5 N」の3.4秒に次ぐ俊足ぶりだ。

 感心したのはその溢れんばかりのパワーを、4輪が上手にコントロールしきっていたこと。スポーツモードに転じれば駆動は常時AWDとなり、微妙なアクセルコントロールに対してもそのトルクをギクシャク感なく裁ききってくれる。

パワフルでありながら、そのパワーをしっかりと4輪でコントロールしているほか、アクセルを急に閉じてもトルクの変動が少なくターンインもしやすい

 ターンインではアクセルを急に閉じてもトルクの変動が少なく、スムーズにカーブへとアプローチして再加速できる。ちなみに回生ブレーキはハイモードにすればワンペダルドライブ、オフではコースティング走行が可能になる。

 残念だったのは、このナチュラルなハンドリングに対してリアサスが、コーナリング中に若干アオられること。聞けばそのリアサスペンションは、後述するクロスカントリー以外、全て共通なのだという。だから軽量なRWD(後輪駆動)モデルだとシャッキリとメリハリのあった足まわりが、重たくハイパワーなツインモーターではやや剛性不足なのかもしれない。

リアサスペンションの剛性はもう少しほしいところだ

 よってセオリー通りに話を進めるならば、ツインモーターの足まわりは、もう少しスタビリティを高めた方がよいということになる。一方で街中での快適な身のこなしを考えると、そもそもこんなにパワフルである必要はないとも思えた。もう少し足まわりを引き締めるにしても、同時にトルクの出方を滑らかに制御した方が、ボルボらしいと感じた。そこはこれからの洗練に期待だ。

Cross Country Ultra Twin Motor Performanceにも試乗

 となると車高を高めたクロスカントリーの挙動は、さらに不安定になるのかとおもいきや、面白いことにその挙動はベース車よりもまとまっていた。

EX30 Cross Country Ultra Twin Motor Performance。試乗車のボディカラーはヴェイパーグレーメタリック。価格649万円
クロスカントリー専用のフロントシールドは、スカンディナヴィア山脈北部にあるスウェーデンの最高峰「ケブネカイセ山」周囲の標高線をトポグラフィーで描いている
クロスカントリー専用の19インチ×7.5Jホイールは、5スポークでカラーはマットグラファイト/マットブラック。装着タイヤはグッドイヤーの「エフィシェントグリップ パフォーマンス SUV」でサイズは前後とも235/50R19
雨水などは隙間に逃がす設計のフレームレスサイドミラーを採用。クロスカントリーは車高が高い分わずかに鏡の面積が大きくなっている(左がクロスカントリー、右がツインモーター)

 ワインディングのような場面でややフロントの応答性が過敏になるのは、タイヤサイズがベースモデルの245/40R20サイズから、235/55R18インチへと高扁平になっていることがやや影響している。しかしこれを加味して曲率に合わせゆっくり操舵していけば、ライントレース性はとても素直である。そして肝心なターンミドルでは、リアサスの動きがきちんと抑えられていた。

インテリアカラーは、自然素材とリサイクル材とバイオ素材を融合した「パイン」で、スカンジナビアの森の常緑樹の松やモミの葉からインスピレーションを得た色彩となっている。ダッシュパネルは亜麻を織ったスタイリッシュな装飾で、インテリアに自然で温かみのあるスカンジナビアの雰囲気をもたらす「Flax decor」仕様
シートはウール30%とリサイクル・ポリエステルを70%使用したテイラード・ウールブレンド。フロントシートのクッションのデザインを変更し、シートの座り心地を改善している

 前述の通りクロスカントリーはバネ・ダンパー、そしてスタビに及ぶまで専用のレートや減衰設定となっている。そしてこれがいわゆる悪路を走るためだけでなく、20mm上がった車高を支える方向性にもきちんと対応できている。

 だからクロスカントリーにこうしたアグレッシヴな走りが必要なのかをひとまず脇に置けば、最もハイパフォーマンスなEX30のシャシーとしては、これが現状の最適解だ。全高が1550mmをわずかに超えたことでタワーパーキングの選択肢は減ってしまったが、昨今の流行りも含めて選ぶなら、筆者はクロスカントリー推しである。

バネやダンパー、スタビなどが専用のレートや減衰設定となっているクロスカントリー

 インテリアは一見するとあまりに素っ気なさ過ぎて、価格とのギャップを感じてしまう。しかし、その簡素な樹脂性のプラスチックや、デコラティブ・パネルと呼ばれるパイン柄の木目パネルにリサイクルPVCが使われるなど、今このEX30がボルボで一番カーボンフットプリントが少ないクルマであることを知れば、こうした簡素ささえもが魅力だと思えてくる。

20mm上がった車高にきちんと対応したしっかりとした走りが好印象

 全長4235mmのコンパクトなボディに秘められたパワーは、ちょっとやり過ぎなくらいに有り余っている。かたやそのスピードを確認するための速度表示が、中央のタッチパネルにしかなく、視線移動を強いられるのも安全を最重要視するボルボとしては疑問が残る。いわゆるメーターナセルを省くことで前方視界を広げ、上手にコストを節約していることは認めるが、少なくともヘッドアップディスプレイの装着はして欲しい。

EX30のシャシーであればクロスカントリーがベストな乗り味に感じた

 などと小言を言いながらもボルボEX30に惹かれてしまうのは、このクルマが未来を向いているからだ。環境と安全を守りながら、これからのモビリティをリアルに探究する姿勢とセンスの良さに惹かれるのである。EVという手法は、確かに脱炭素への近道ではあるけれど、その手段の1つに過ぎない。

未来のモビリティをリアルに探究するボルボの姿勢とセンスの良さに惹かれる仕上がりだった
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:安田 剛