試乗記
新型「エルグランド」(4代目)公道試乗 快適性とともに走りを両立した唯一無二のミニバン
2026年9月7日 10:00
2代目までの姿に原点回帰
2025年8月の栃木テストコースにおけるプロトタイプ試乗からおよそ1年。追浜で乗った最終プロトタイプからも5か月が経過した新型エルグランドに、ようやく公道で試乗する機会がやってきた。メカニズムなどの細かな話はその時の模様をご覧いただきたい。
初代の登場から29年、そして先代の登場からは16年の月日が経過と、まさに待ちに待った4代目である。3代目エルグランドは個人的にも子育て初期にお世話になったクルマであるから思い入れもタップリ。くわえて同行する編集担当はいまも3代目オーナーだったりするから、2人してややテンションは高めだ。
試乗会場で与えられたクルマは「G e-4ORCE」というグレードで、自動車専用道路においてハンズオフを可能とするプロパイロット2.0やBOSEプレミアムサウンドシステム、そして高遮音ガラスやツインガラスルーフなども与えられる、つまりは全部盛り仕様である。ちょっと欲しいものを加えていけば、乗り出しは軽く900万円くらいにはなってしまうという代物。その価格を見て2人ともに冷静になったのは言うまでもない(汗)。
ただ、価格だけじゃなく存在感もまた威風堂々としている。特別塗装色となる至極(シゴク)に塗られたボディは、膨張色でもないのに大きさを強烈に感じる。それもそのはず、ボディサイズ4995×1895×1970mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3000mm、最低地上高165mmとなかなかの大きさ。ちなみに旧型のそれは4945×1850×1815mm、ホイールベース3000mm、最低地上高150mm。ライバルとなるアルヴェルのそれは4995×1850×1935mm、ホイールベース3000mm、最低地上高150mm。幅と高さがこれまでにない存在感に繋がっている。
けれども乗り込んでみるとその大きさはさほど気にならない。ドライバーズシートからはアイポイントの高さからくる取りまわしのしやすさがあり、シートポジションを最も低くしたとしてもボンネットの端も目視可能なほど下方向に開けた視界がある。低床でミニバンにしてはアイポイントがかなり低かった旧型とはまるで違う世界観だ。というよりむしろ、新型のアイポイントが本来の姿のようにも感じる。プレサージュとの統合、そして走りを優先した結果が旧型の低床スタイルだった。だが、世間からはあまり受け入れられなかった苦い思い出がある。2代目までの姿に原点回帰したことは座った瞬間に感じられるものだった。
そしてサイズアップした割には取りまわしもしやすい。最小回転半径も旧型から0.1mアップの5.8mだし、カメラ関係が充実しているから狭い場所で苦労するようなことはなかった。それよりも開放感を得られる視界の良さは、シアターレイアウトを採用しているだけあってどのシートにいても得られるし、空間的余裕も感じられる。余談だが電動でチルト&テレスコピックが調整可能なところもうれしいポイント。
新型エルグランドの特徴とは
走りは重厚感があり、静粛性高く、フラットライドが得られること、これが新型エルグランドの特徴的な部分だろう。
先代(3.5リッター・4WD仕様)よりもおよそ400kg重くなった新型だが、それがネガティブとはなっていない。落ち着きある乗り心地に寄与している。1.5リッターの第3世代e-POWERユニットはあくまでも黒子に徹している感覚が強く、アクセルを深く踏み込まない限りエンジン回転はなかなか跳ね上がらない。アクティブノイズコントロールもよく効いているようで、とにかく車室内は静か。高遮音ガラスの恩恵もあり、高速巡航でもその静けさは相変わらず得られる。
プレゼンではあのライバルよりも5dbも静かだとアピールしていたが、それも嘘じゃないだろう。おかげでBOSEが生み出す音色はかなりクリアだし、音楽の音圧のみをダイレクトに受けられるところがうれしい。広がりある音は、まるでどこかのホールにでも出かけたかのようだ。誰に迷惑をかけることもなく、大音量で音楽が楽しめる、そこも新型エルグランドの魅力の1つだ。
それでいてモーター駆動でトルクはいつでも要求した通りに生み出されているから不満ナシだ。旧型3.5リッターと同等以上に走らせることを狙っただけのことはある。そんな動力性能にも関わらずレギュラーガソリン仕様だというのだから恐れ入る。しかも燃費はWLTCモードで16.8km/Lを達成する。先代(3.5リッター・4WD仕様)は実際より良い数値が出やすいJC08モード燃費で9.2km/Lだったのだから、実際のところは倍近い燃費向上を果たしたのは大したものだ。
そしてe-4ORCEと「インテリジェント ダイナミックサスペンション」が生み出すフラットな乗り味もまたこれまでにない世界観だ。加減速時には前後のトルクをうまく制御してくれるし、コーナーリング時にはサスペンションやブレーキの協調制御によってうまく曲がってもくれる。重く背が高い車体がワインディングで楽しいと思えるほどの走りを展開してくれるのだからおどろくばかり。
一方でコンフォートモードにしてゆったりとしやなかに走ることも可能にする。リアは路面のアタリを少なくすることを狙っているようで、ややダンピング不足のようなフワつきがあるが、それは街乗りの極低速における移動ではゆりかごにでも収まったかのようであり、セカンドシートに収まるとすぐに眠くなってしまいそう。こうした両極端な世界をスイッチ1つで変更できてしまうところがおもしろい。パッセンジャーばかりを優先するのではなく、ドライバーズカーとしての姿もきちんと与えたところが走りにこだわるエルグランドらしさといえるだろう。
オプションとはなるがプロパイロット2.0によるハンズオフドライブも、しっかりと真っ直ぐ走り安心感高く走ったところもうれしい。標準装備となるスムースストップによるカックンブレーキ防止策はなかなかうまく働いているなと感じた。0.3Gくらいまでのブレーキにおいて最後にブレーキの液圧を抜くことで静かに止まってくれるこのシステムがあれば、ビギナードライバーに運転を任せたとしても快適に過ごすことができそうだ。
このようにかなり目がハートになりそうな仕上がりだが、一点だけ惜しいと思えた部分がある。それはセカンドシートの仕上げだった。かつてもテストコースで感じた部分なのだが、背もたれやアームレストに微振動が出てしまっていたのだ。ダイナミックダンパーを与えるなどしてテストコースで走った時よりも軽減したとのことだったが、座面の印象は良いがそれ以外がもう少し……。微振動でいえばサードシートのほうが何もなく快適だったりする。
そしてエルグランドの十八番とも言える中折れシートは、背もたれを倒し気味にした時もしっかりと前を向けられて良かったのだが、その際にアームレストがバンザイしてしまうのが残念だった。これはシートベルトをかつてのようにピラーではなく、シートに収めたことで、背もたれを起こした時にベルトを弛ませてしまうことを恐れたからなのだろう。安全という意味ではごもっともな仕様ではあるが、快適性という意味ではもう少し他の策を期待する。
とはいえ、やはり魅力タップリな新型エルグランド。やっと登場したのだから、今後じっくりと煮詰め、進化することをやめずにいてほしい。



























