試乗記

新型「エルグランド」(4代目)公道試乗 快適性とともに走りを両立した唯一無二のミニバン

16年ぶりのフルモデルチェンジとなったエルグランドを公道で試した

2代目までの姿に原点回帰

 2025年8月の栃木テストコースにおけるプロトタイプ試乗からおよそ1年。追浜で乗った最終プロトタイプからも5か月が経過した新型エルグランドに、ようやく公道で試乗する機会がやってきた。メカニズムなどの細かな話はその時の模様をご覧いただきたい。

 初代の登場から29年、そして先代の登場からは16年の月日が経過と、まさに待ちに待った4代目である。3代目エルグランドは個人的にも子育て初期にお世話になったクルマであるから思い入れもタップリ。くわえて同行する編集担当はいまも3代目オーナーだったりするから、2人してややテンションは高めだ。

 試乗会場で与えられたクルマは「G e-4ORCE」というグレードで、自動車専用道路においてハンズオフを可能とするプロパイロット2.0やBOSEプレミアムサウンドシステム、そして高遮音ガラスやツインガラスルーフなども与えられる、つまりは全部盛り仕様である。ちょっと欲しいものを加えていけば、乗り出しは軽く900万円くらいにはなってしまうという代物。その価格を見て2人ともに冷静になったのは言うまでもない(汗)。

 ただ、価格だけじゃなく存在感もまた威風堂々としている。特別塗装色となる至極(シゴク)に塗られたボディは、膨張色でもないのに大きさを強烈に感じる。それもそのはず、ボディサイズ4995×1895×1970mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3000mm、最低地上高165mmとなかなかの大きさ。ちなみに旧型のそれは4945×1850×1815mm、ホイールベース3000mm、最低地上高150mm。ライバルとなるアルヴェルのそれは4995×1850×1935mm、ホイールベース3000mm、最低地上高150mm。幅と高さがこれまでにない存在感に繋がっている。

今回試乗したのは16年ぶりのフルモデルチェンジとなった新型「エルグランド」。”威風堂々”とした外観、上質で先進的な空間とともに乗り心地のよさ、運転の楽しさについてもレベルアップさせた意欲作になる。新型エルグランドは大きく「X e-4ORCE」(689万7000円)と「G e-4ORCE」(757万9000円)の2グレード展開となり、試乗車は後者
ボディカラーは日本で古来より高貴さや格式の高さを象徴する色から着想した「至極(シゴク)」。ボディサイズは4995×1895×1970mm(全長×全幅×全高。プロパイロット2.0装着車の値)、ホイールベースは3000mm
フロントグリルは日本の伝統工芸である「組子」をモチーフとしたもの。Gグレードではドアサッシュモールがカッパーゴールドに。Xグレードはサテングレーメタリックとなり、ここが外装でグレードを見分ける数少ないポイント
足下は18インチアルミホイールに横浜ゴム「ADVAN V61」(235/60R18)を組み合わせ、Gグレードのみ装着できるプロパイロット2.0を選択するとルーフアンテナが2つになる。なお、新型エルグランドでは「プロパイロット」「プロパイロット(ナビリンク機能、渋滞時ハンズオフモード、車線変更支援機能付)」「プロパイロット 2.0」の3パターンが用意され、Xではプロパイロットが標準装備でハンズオフモード付きプロパイロットをオプション設定。Gではハンズオフモード付きプロパイロットが標準でプロパイロット 2.0がオプション設定となる

 けれども乗り込んでみるとその大きさはさほど気にならない。ドライバーズシートからはアイポイントの高さからくる取りまわしのしやすさがあり、シートポジションを最も低くしたとしてもボンネットの端も目視可能なほど下方向に開けた視界がある。低床でミニバンにしてはアイポイントがかなり低かった旧型とはまるで違う世界観だ。というよりむしろ、新型のアイポイントが本来の姿のようにも感じる。プレサージュとの統合、そして走りを優先した結果が旧型の低床スタイルだった。だが、世間からはあまり受け入れられなかった苦い思い出がある。2代目までの姿に原点回帰したことは座った瞬間に感じられるものだった。

 そしてサイズアップした割には取りまわしもしやすい。最小回転半径も旧型から0.1mアップの5.8mだし、カメラ関係が充実しているから狭い場所で苦労するようなことはなかった。それよりも開放感を得られる視界の良さは、シアターレイアウトを採用しているだけあってどのシートにいても得られるし、空間的余裕も感じられる。余談だが電動でチルト&テレスコピックが調整可能なところもうれしいポイント。

Gグレードは紫と濃紺を組み合わせた「紫檀 -シタン-」、ホワイト基調で仕上げた「銀雪 -ギンセツ-」(撮影車)を設定。旧型エルグランドでは前席間の移動を容易にしていたが、新型では幅広で高いコンソールを組み合わせてパーソナル性を高めている
新型エルグランドは全グレードで電動駆動四輪制御技術「e-4ORCE」を採用
ボタン式シフトを採用
走行モードはパーソナル、スポーツ、スタンダード、コンフォート、エコ、スノーを用意
シート地はXグレードが合皮なのに対し、Gグレードはテーラーフィットを採用。さらに助手席オットマン、前席/2列目ベンチレーションシートとともに、100V AC電源(1500W。セカンド1個、ラゲッジ2個)も標準装備となる

新型エルグランドの特徴とは

ワインディング、高速道路で試乗してみた

 走りは重厚感があり、静粛性高く、フラットライドが得られること、これが新型エルグランドの特徴的な部分だろう。

 先代(3.5リッター・4WD仕様)よりもおよそ400kg重くなった新型だが、それがネガティブとはなっていない。落ち着きある乗り心地に寄与している。1.5リッターの第3世代e-POWERユニットはあくまでも黒子に徹している感覚が強く、アクセルを深く踏み込まない限りエンジン回転はなかなか跳ね上がらない。アクティブノイズコントロールもよく効いているようで、とにかく車室内は静か。高遮音ガラスの恩恵もあり、高速巡航でもその静けさは相変わらず得られる。

 プレゼンではあのライバルよりも5dbも静かだとアピールしていたが、それも嘘じゃないだろう。おかげでBOSEが生み出す音色はかなりクリアだし、音楽の音圧のみをダイレクトに受けられるところがうれしい。広がりある音は、まるでどこかのホールにでも出かけたかのようだ。誰に迷惑をかけることもなく、大音量で音楽が楽しめる、そこも新型エルグランドの魅力の1つだ。

 それでいてモーター駆動でトルクはいつでも要求した通りに生み出されているから不満ナシだ。旧型3.5リッターと同等以上に走らせることを狙っただけのことはある。そんな動力性能にも関わらずレギュラーガソリン仕様だというのだから恐れ入る。しかも燃費はWLTCモードで16.8km/Lを達成する。先代(3.5リッター・4WD仕様)は実際より良い数値が出やすいJC08モード燃費で9.2km/Lだったのだから、実際のところは倍近い燃費向上を果たしたのは大したものだ。

パワートレーンで採用された第3世代e-POWERは、専用設計により効率を高めた新型ZR15DDTeエンジンをはじめ、モーター・発電機・インバーター・減速機・増速機の5つの主要部品を1つにまとめた「5-in-1 e-POWERパワートレインユニット」で構成。フロントのYM52モーターは最高出力151kW(205PS)/4400-8500rpm、最大トルク330Nm(33.7kgfm)/0-4300rpmを、リアモーターのMM45は最高出力100kW(136PS)/5500-10900rpm、最大トルク195Nm(19.9kgfm)/0-3000rpmを発生。WLTCモード燃費は16.8km/Lとした

 そしてe-4ORCEと「インテリジェント ダイナミックサスペンション」が生み出すフラットな乗り味もまたこれまでにない世界観だ。加減速時には前後のトルクをうまく制御してくれるし、コーナーリング時にはサスペンションやブレーキの協調制御によってうまく曲がってもくれる。重く背が高い車体がワインディングで楽しいと思えるほどの走りを展開してくれるのだからおどろくばかり。

ミニバンでもワインディングで楽しさを感じられるのは新型エルグランドならではの魅力

 一方でコンフォートモードにしてゆったりとしやなかに走ることも可能にする。リアは路面のアタリを少なくすることを狙っているようで、ややダンピング不足のようなフワつきがあるが、それは街乗りの極低速における移動ではゆりかごにでも収まったかのようであり、セカンドシートに収まるとすぐに眠くなってしまいそう。こうした両極端な世界をスイッチ1つで変更できてしまうところがおもしろい。パッセンジャーばかりを優先するのではなく、ドライバーズカーとしての姿もきちんと与えたところが走りにこだわるエルグランドらしさといえるだろう。

 オプションとはなるがプロパイロット2.0によるハンズオフドライブも、しっかりと真っ直ぐ走り安心感高く走ったところもうれしい。標準装備となるスムースストップによるカックンブレーキ防止策はなかなかうまく働いているなと感じた。0.3Gくらいまでのブレーキにおいて最後にブレーキの液圧を抜くことで静かに止まってくれるこのシステムがあれば、ビギナードライバーに運転を任せたとしても快適に過ごすことができそうだ。

プロパイロット2.0もあるとうれしい装備。グレード選びで悩む最大のポイントは、3種類あるプロパイロットのどれを選択するかになってくるかも

 このようにかなり目がハートになりそうな仕上がりだが、一点だけ惜しいと思えた部分がある。それはセカンドシートの仕上げだった。かつてもテストコースで感じた部分なのだが、背もたれやアームレストに微振動が出てしまっていたのだ。ダイナミックダンパーを与えるなどしてテストコースで走った時よりも軽減したとのことだったが、座面の印象は良いがそれ以外がもう少し……。微振動でいえばサードシートのほうが何もなく快適だったりする。

 そしてエルグランドの十八番とも言える中折れシートは、背もたれを倒し気味にした時もしっかりと前を向けられて良かったのだが、その際にアームレストがバンザイしてしまうのが残念だった。これはシートベルトをかつてのようにピラーではなく、シートに収めたことで、背もたれを起こした時にベルトを弛ませてしまうことを恐れたからなのだろう。安全という意味ではごもっともな仕様ではあるが、快適性という意味ではもう少し他の策を期待する。

 とはいえ、やはり魅力タップリな新型エルグランド。やっと登場したのだから、今後じっくりと煮詰め、進化することをやめずにいてほしい。

セカンドシートの仕上げは惜しいと思ったが、全体の印象は良好。快適に乗れ、走りも楽しめるミニバンという唯一無二の価値をひっさげた新型エルグランドは、8月末時点で9000台の受注を突破。受注のグレード構成比はXが9%、Gが57%と上級グレードに需要が寄っている傾向。オプションではBOSEプレミアムサウンドシステムを70%が選択、そのうち40%がプロパイロット2.0を選んでいるという
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛