試乗記

新型「エルグランド」(4代目)試乗 第3世代e-POWERとe-4ORCEでミニバンに新しい魅力をもたらした

新型「エルグランド」(4代目)にテストコースで試乗した

第3世代e-POWER+e-4ORCEを組み合わせたLクラスミニバン

 長らく開発の噂があった4代目「エルグランド」が、2025年のジャパンモビリティショーでお披露目され、いよいよ実車に試乗することができた。第3世代e-POWERに4輪駆動統合制御システム「e-4ORCE」を組み合わせたLクラスミニバンだ。

 試乗コースは神奈川県追浜にある日産のテストコース「グランドライブ」。アップダウンや乗り心地を確かめるための特殊路面があり、初見の車両を評価するには最適なコースである。

 エクステリアは、全高がこのクラスでもっとも高い1965mm、全幅も1895mmと堂々たるサイズだ。日産らしいクリーンな面構成のデザインは威風堂々としており、ボディカラーも冴えている。装着タイヤは新型エルグランドのために専用開発された横浜ゴムの「ADVAN V61」(サイズ:235/60R18)であった。

 新型エルグランドのハイライトはe-POWERを起点とした走行性能の進化にある。発電に特化した新開発の1.5リッター3気筒ターボ「ZR15DDTe」をモーター、発電機、インバーター、増減速機と一体化。コンパクトかつ高剛性なパワーユニットとして、大幅にアップデートされたプラットフォームに搭載している。

 バッテリは現行「エクストレイル」と同じ1.8kWhのリチウムイオン。エンジンは発電に徹するため高回転まで回す必要がなく、モーター駆動ならではの強力な低速トルクを発揮する。クルージング時は2000rpmほどで静かにまわりながらも、十分な発電量を確保して大きな駆動力を生み出している。

今回は正式発売前の新型「エルグランド」(4代目)に試乗する機会を得た。ボディサイズは4995×1895×1965mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3000mm(日産測定値)とアナウンスされている
タイヤは横浜ゴム「ADVAN V61」(235/60R18)をセット
インテリアではモダンで広がりのあるインストルメントパネルデザインを採用するとともに、広範囲に表皮・木目調パネルをあしらうことで高級感を演出。センター、メーターディスプレイに国内モデルとして初となる14.3インチの大画面統合型インターフェースディスプレイを採用
インテリアのシート素材にはテーラーフィットを使用し、日本の美意識に息づく気高さを象徴する紫と青があしらわれた「紫檀-シタン-」を採用
3列目シートは跳ね上げ式となっている

いろいろな場面、いろいろな道で走ってみたいクルマ

約2.5tと重量級のクルマはどのような動きを見せるか?

 試乗車は3気筒特有の音をわずかに感じさせたが、エンジン回転数が低いこと、そして高剛性ボディと徹底した遮音対策により不快感は一切ない。前後にモーターを搭載するため車両重量は約2.5tと重量級だが、モーターの特性によってアクセルを踏み始めた瞬間から力強くスムーズに動き出す。

 室内の静粛性は群を抜いている。ドライバーズシートでは風切り音やロードノイズが巧みに遮断されており、まさにLクラスミニバンにふさわしい空間だ。加速時もエンジンの回転数はそれほど上がらず、車内に共鳴するノイズもほとんどない。

 また、タイヤが発するロードノイズの小ささにはおどろかされた。タイヤ自体のパターンノイズの低さに加え、ホイールアーチ内の遮音材も効果を発揮しており、室内後部から侵入するノイズはほぼシャットアウトされている。

第3世代e-POWERは新型ZR15DDTeエンジンをはじめ、モーター・発電機・インバーター・減速機・増速機の5つの主要部品を1つにまとめた「5-in-1 e-POWERパワートレインユニット」を搭載。駆動用のモーターはトータルで500Nm以上のトルクを出すという

 乗り心地も格段に向上した。高いボディ剛性と、「インテリジェント ダイナミックサスペンション」と呼ばれる電子制御ダンパーが路面からの入力をしっかりといなし、荒れた路面が連続するシーンでもフラットな姿勢を維持する。また、ジョイント(目地)を通過するような鋭角的な突起も、乗員に衝撃を伝えないみごとな乗り心地だ。コンパクトクラスであればサスペンションが暴れそうな場面でも、終始堂々とした走りを披露してくれた。

 この可変式ショックアブソーバーはソレノイドバルブを採用しており、その効果は絶大だ。ドライブモードは「パーソナル」「スポーツ」「スタンダード」「コンフォート」「エコ」「スノー」の6段階が用意されているが、今回試乗した「スタンダード」モードの滑らかな乗り心地は特に印象的であった。

 変速段のない、シームレスで流れるような加速はe-POWERならではのものだが、この巨体に優れたフットワークをもたらしたのは「e-4ORCE」だ。前後モーターの駆動力を自在に配分し、さらにブレーキ制御も緻密に組み合わせることで、ミニバンに新しい走りの魅力を与えている。

ベースとなるノーマルモードでは滑らかな乗り心地を見せてくれた

 アップダウンのあるブラインドコーナーでは、上り勾配のターンインでスッキリとしたステアリング応答性を見せ、車体の大きさを感じさせなかった。上り坂に合わせて前輪の駆動力を最適化し、正確にクリッピングポイントへと旋回していく。続く下り勾配の切り返しでもライントレース性は乱れず、何事もなかったかのように路面をグリップする。おどろくほど重さを感じさせないのだ。

 旋回中は、前輪中心の配分から後輪の駆動力を高めることで、一貫して高いライントレース性を実現している。これぞアップデートされた4輪駆動らしい安定感だ。ブレーキ制御も絶妙なバランスで作動し、重量級のLクラスミニバンとは思えないほど気持ちの良いハンドリングを味わえた。

 全幅1895mmと大柄な新型エルグランドだが、いざ走らせてみると重さも大きさも意識させず、運転者にとっても同乗者にとっても快適な移動空間に仕上がっていた。パワートレーンの基本仕様はe-POWER+e-4ORCEの組み合わせのみで、後席には贅沢なキャプテンシートが用意される。

 走れば走るほど、あらゆるシチュエーションやさまざまな道で試してみたくなる、完成度の高い1台だった。

重さも大きさも感じさせず、運転しても快適な移動空間を実現した新型エルグランド。正式発売を楽しみに待ちたい
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛