試乗記
デビュー間近の新型「エルグランド」(4代目)試乗 フラットライドに対する取り組みは抜かりなし!
2026年5月18日 10:00
ライバルを凌駕するサイズ
2026年夏に発売される日産のフラグシップミニバン・エルグランドに乗ることになった。昨年、カモフラージュのカバーが施されたプロトタイプを栃木のテストコースで試乗した模様をお伝えしたことがあるが、今回はカバーもなくほぼ売られる状態。思い返せばあのカバーを装着していることで静粛性などの本当のところは分からずだったこともあるから、どんな仕上がりなのか楽しみだ。
今回は追浜のグランドライブというテストコースで実車を目の当たりにしたが、やはり屋外で実車を見ても今度の新型はなかなかの存在感だ。やはり4995×1895×1965mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3000mm(日産測定値)というサイズ感はかなり思い切った数値に感じる。旧型のそれは4965×1850×1815mm(Urban CHROME系の全長は4975mm)でホイールベースは3000mm。すなわち全長は30mm、全幅は45mm、全高は150mm拡大されたわけだ。
ちなみに、いま巷で溢れているライバルのアルヴェルのそれは4995×1850×1935mmでホイールベースは3000mm。つまりは全幅で45mm、全高で30mm、新型エルグランドが大きいというわけだ。結果としてスッキリとしたデザインながらもキーワードである威風堂々を達成できているのだろう。
ドライバーズシートに乗り込むには旧型より若干よっこらしょと乗り上がるような感覚があるが、2列目のアプローチは1段目のステップが先代よりも下げられているそうで、階段を上る感じで乗り込める。一度シートに収まってしまえばかなり見晴らしが良い。グランドライブの対岸には八景島シーパラダイスがあるのだが、その景色がよく見えるようになったものだと感心する。これならロングドライブする時にかなり気分が良いことだろう。
e-4ORCEとインテリジェントダイナミックサスペンションの合わせ技がポイント
さて、前置きはこれくらいにしておいて実際の試乗だが、走り始めてまず感じたことは静粛性がとにかく良いことだった。パワーユニットは第3世代e-POWERでありモーター駆動なのだから当然なのだろうが、「エンジンはどこへ行っちゃった?」なんて思うほどに黒子に徹している印象がある。これは明らかにライバルを凌駕していると思えるほど。風切り音もかなり抑え込まれた印象だ。高性能遮音膜を挟み込んだ超高遮音ガラスを後席ドアガラスまで広範囲に採用したことも効いているのだろう。また、ASC(アクティブサウンドコントロール)によるノイズキャンセリングもかなり効いている印象がある。
エンジンは発電特化型のZR15DDTe型3気筒1.5リッター。海外のキャシュカイに搭載されていたものをベースとしている。STARC燃焼(Strong Thmble &Appropriately stretched Robust ignition Channel)コンセプトを採用し、熱効率42%を達成。また、大量EGR(Exhaust Gas Recirculation)、高圧縮比、低フリクション、ロングストローク、大型ターボ、ミラーサイクルが設計アプローチとなる。潤滑油は0W16とし、エンジン内部の抵抗を低減。オイルメンテナンス距離は1万5000kmから2万kmに延長された。ADAC(ドイツ自動車連盟)の燃費評価に基づく独自試験では、旧型キャシュカイと比較し、実走行条件で最大16%の燃費向上、高速道路では14%の燃費向上が確認されているという。
今回はじめて明らかになったニュースとしては燃料をレギュラーガソリンとしたことだった。実は以前試乗した時はまだハイオク仕様だったらしいが、昨今の燃料高騰なども考えてそれが改められた。排気量は1.5リッターで自動車税も安いのだからありがたい。さらに旧型3.5リッター以上のパフォーマンスがありながら、燃費は倍近い数値を叩き出すというから楽しみだ。
まだ詳細なスペックなどは明らかになっていないが、キャシュカイのエンジン最高出力116kW/最大トルク250Nm、モーター最高出力151kW/最大トルク350Nmよりは大人しくなるのか? けれども新型エルグランドの場合、リアモーターとの組み合わせにより最大トルクは500Nm以上と発表されている。おかげでフル加速での100km/h+αまでの加速感は必要十分以上に俊敏に走る。高速域の伸び感は控えめだが、日本国内で不満に思うようなことはないだろう。
このエンジンは5-in-1(ファイブインワン)システムの一部となる。モーター、ジェネレーター、減速ギヤ(モーター)&増速ギヤ(発電)、インバーター、そしてエンジンをトータルでマネージメントして制作したことが今回の特徴だが、それによりユニット全体の剛性を第2世代e-POWERよりも60%ほど向上させることが可能になり、共振点周波数を高くすることが可能となった。これにより車体が持つ低い共振点周波数との干渉が回避でき、振動や静粛性が向上。エンジンの振動は40%も減少したという。以上のような合わせ技があってはじめて「エンジンはどこへ行っちゃった?」となったのだろう。
フットワーク系はとにかくフラットライドだ。2t半ばくらいにはなりそうな重厚感溢れる乗り味に加えて、その重量に負けないコントロール性が心地いい。車輪速、ヨーレイト、横G、操舵角、ドライブモード、モータートルクといった情報から車体挙動推定を行ない、1/100秒毎に演算、そしてリアルタイムに減衰力を調整する「インテリジェントダイナミックサスペンション」と名付けられた電子制御ダンパーがかなりの武器となっているのは間違いない。
コンフォートモードを選択すればかなりしなやかにも走れるし、スポーツモードを選択すればコーナリングでも軽快かつロールも少なく駆け抜けてくれる。その際、いずれのモードでどこかで不快感を感じるようなことのない仕上がりが心地いい。コンフォートモードで走っていてペースを上げたとしても、それなりに動きを収めてくれるし、対してスポーツモードでゆっくり走れば、最低限のしなやかさは忘れていない。かなり懐の深い足まわりに感じる。加えてブレーキには「Smooth Stop」を搭載し、停止寸前にブレーキ踏力を抜かずしてカックンブレーキにならないように調整するシステムまで搭載しているのだからさすが。フラットライドに対する取り組みは抜かりなしだ。
話はそれだけで終わらず、「e-4ORCE」もフラットライドを達成する大切なアイテムだ。加減速の際にはリアモーターが程よくトルクを制御している。だからこそ揺らぎが少ないのだ。また、先ほどスポーツモードで軽快かつロールも少なく駆け抜けると記したが、これ「e-4ORCE」の後押しがあってこそ。ワインディングでは前後モーターとブレーキの協調制御により少ない操舵角で曲がってくれる感覚に溢れているのだ。この「e-4ORCE」と「インテリジェントダイナミックサスペンション」の合わせ技があるからこそ、重くて背が高いエルグランドでも満足のいく走りが可能となるのだろう。
こうした走りはセカンドシートやサードシートに座っていてもかなりの快適性をもたらしてくれる。ドライバーがちょっとラフに操作したとしても不快になるようなこともない。静かにフラットに走ることがかなり心地良い。
唯一弱点だと感じたのは、セカンドシートにおける微振動が出ていることだった。背もたれやアームレストに感じるごくわずかなものなのだが、他があまりにも静かにフラットになったおかげで目立ってしまっているように感じてならない。ライバルのように防振ゴムを奢りフロアからフローティングした状態でシートを取り付けることはできなかったのかと質問してみたが、衝突試験的に不利になるのでそれは不可能だったとのこと。なかなか悩ましい話だろうが、何らかの対策を最後にやってもらえればパーフェクトかな? というのが正直なところ。正式に一般公道を走り出した時、一体どうなっているのか? 今年の夏を楽しみにしていたい。


































