試乗記
スズキから新型軽EV「e SKY」が2026年秋に登場! プロトタイプをいち早く試乗してきた
2026年8月24日 11:03
コンセプトは「無理なく乗り換えられる、日常にちょうどいいEV」
日本人の移動を津々浦々まで支える軽自動車づくりにかけて、長きにわたる歴史とともに積み上げてきた技術やノウハウを持つスズキ。そんなスズキがつくる軽EV第1弾、「e SKY」のプロトタイプに試乗する機会を得た。
商品プレゼンテーションの冒頭で語られたのは、これまでの新型EVではあまり耳にしなかった言葉たちだ。乗り換えれば価値観が変わる、生活が変わる、未来が変わるといった“変わる”ことを示唆する常套句ではなく、e SKYはEVである前に“いつもの軽”であることを強調。今まで通りに、生活も価値観も変えずに無理なく乗り換えられる、日常使いにちょうどいいEVを目指したという。コンセプトは「Easy to Switch!」だ。
ボディタイプは「ワゴンR」のようなハイトワゴン軽。スズキでは現在の人気ナンバーワン軽といえば両側スライドドアのついた「スペーシア」だが、それを選ばなかったのは乗る人やシーンを限定したくなかったからという。プラットフォームは軽EV専用に新開発した「HEARTECT e」で、バッテリを車体中央に効率よく配置し、低重心化とボディ剛性アップを図っている。
そのバッテリ容量は26kWh。これは日産・サクラの20kWhより大きく、ホンダ・N-ONE eの29.6kWhより小さいが、安全性や耐久性、比較的低コストに定評のあるリン酸鉄リチウムイオンバッテリを採用しており、航続距離は双方より長い310kmを達成している。当初はエアコンを普通に使用した実用ベースで200kmを超える程度を狙っていたというが、「少ない電気でたくさん走る」ことを追求したところがスズキらしい。
スズキには企業理念の1つに「小・少・軽・短・美」という言葉があり、小さく、少なく、軽く、短く、美しく、をe SKYの開発でも実践。コンパクトで軽量な自社製のeAxleを採用し、薄型構造にこだわったバッテリ、軽自動車トップを狙った空力性能などの地道な努力によって、現時点で他では類を見ない97Wh/kmという交流電力消費率を実現している。充電口は運転席を降りてすぐにアクセスできるよう、右リアに設置。充電性能は普通充電が6kWまで対応し、充電警告灯の点灯から100%まで約4.5時間、急速充電は50kWまで対応で80%まで約25分となっている。これなら日常使い+αで、休日のちょっとした遠出もストレスなくこなせるのではないだろうか。
クローズドコースに停まっていた試乗車は、カラフルなボディカラーやシンプルな中にも愛嬌のあるフロントマスク、ブラックルーフと豊かなボディによる安心感を持ち合わせ、ひと目でいいなと思った。デザインテーマは「SMART」「ICONIC」「COZY」があり、なんとショルダーラインは1956年にスズキ初の軽乗用車として誕生した「スズライト」を彷彿とさせる、前傾のピークから軽快に抜けていく後ろ下がりのラインを採用。サイドボディはよく見ると抑揚がつけてあり、豊かな断面をつけながら空力性能にも寄与しているという。フラップタイプのドアハンドルにはどこか懐かしさを覚えたのだが、これも新作。ボディ同色が入るクォーターガラスガーニッシュと合わせ、デザインのアクセントにしたかったそうだ。そしてヘッドライトのモチーフはデジタル数字をイメージ。アルミホイールも特徴的なデザインで、いろんなこだわりが詰まっていることが伝わってきた。ちなみにスズキのSエンブレムも意匠が変わり、その第1弾モデルとなっている。
インテリアは小さな空間を広く見せる工夫でもあるという乗員を包み込むようなラウンドラインを形成し、まるで陶器のようなダッシュボードと大きくフラットなワイドディスプレイが融合した個性的なインパネが目を引いた。10.1インチのディスプレイオーディオはスズキ軽初採用で、ユーザーの操作に応じて「前進します」「バックします」というように音声案内が入るところが面白い。スズキ初の「つながるナビ」を採用し、電池残量やリアルタイムな交通状況などを加味してルート案内をしてくれるのも、初めてEVライフを送るユーザーには頼もしいはずだ。
インパネではエアコンパネルもスッキリとまとまって配置され、スズキ軽初の2段トレイコンソールやレザー調ステアリングホイール+ステアリングヒーターが採用されて、ちょっと特別感がある。シフトレバーだけが従来と変わらない形状でそこにあるのがややチグハグな気もしたが、これも今までの軽から“無理なく乗り換えられる”ようにとの配慮だろう。
シートはスズキとしては珍しい、ヘッドレスト一体型を採用していた。完全に新規ではなく、ベースはアルトのシート骨格を引き継ぎ、座ったときにサイドサポートが立った形状として、EVになったことで変わってくるクルマの動きに対応。座るところは柔らかく、サイドは硬めにというようにクッションも変えているという。
軽自動車と向き合い続けてきたスズキならではの乗り味
試乗はクローズドコースの一部にスラロームやクランクが作られている特設コースで行なわれた。スタートボタンを押すと、メーター内にターコイズブルーのグラフィックが浮かび、気分が上がる。発進直後からの加速フィールは、EVだからと身構えていると拍子抜けするくらい、軽そのものという自然でなじみやすい速度感から、振動とノイズをごっそり抜き取った感覚だ。重量物のバッテリが床下にあることによる落ち着いた低重心感もほどよく、直線では軽やかさが味わえる。タイヤはダンロップと共同開発したという「eエナセーブ」の14インチを履いていたが、それがまたいい仕事をしているようで、路面への接地感にはまったく硬さはないのに、カーブでしっかりと踏ん張ってくれてその後の立ち上がりはしなやかだ。
スラロームではもう少しステアリング操作にシャッキリ感が欲しいところもあったが、おおむね安心して的確に操作できると感じた。最小回転半径は4.4mということで、小回り性能も抜群。乗り心地はフラット感がありながらも、カーブなどではそれなりに身体の揺れは大きめになったが、後席でも落ち着いていて快適だ。静粛性は驚くほどの静かさではないものの、それも狙い通りのようで、あまり防音を頑張りすぎるとコストは上がり車重は重くなり、他の音が気になるようになってしまってイタチごっこになるため、不快に感じる周波数を排除するような考え方で対処したとのことだった。
コースを6周ほど走って、こんなに癒し系のEVは初めてというほどリラックスできたe SKY。クルマだけでなく、純正アクセサリーとして用意された普通充電コードは、雨の日や汚れた場所でコードが地面につかないように工夫されていることにも感心した。軽自動車を毎日使う人たちに、70年もの長きにわたって寄り添ってきたスズキだからこそ作れた、未来に行きすぎない、頑張りすぎない軽EVの誕生だ。











