写真で見る日産「フーガ」


 初代フーガがセドリック、グロリアの後継車としてデビューしたのは2004年のこと。それから5年。評価の高かった広い室内空間、美しく造り込まれたインテリア、そして走りのよさといった部分をさらにブラッシュアップして生まれたのが2代目となる新型フーガだ。

ロングノーズ、ショートデッキで普遍的なFRの美しさを表現
 新型のメインテーマとして掲げられたのは「走・美・快」。この3つの中でも重視されたのは「美」の部分。海外ではインフィニティブランドでの発売となることもあって、国産車のみにとどまらずドイツ車のプレミアムカーまでがその相手。そんな中で独自の存在感を主張するためには、目だけにとどまらず心まで惹きつけるデザインが必要になってくるワケだ。

 全体的なプロポーションはFRならではの普遍的な美しさをベースとしたもの。いわゆる「ロングノーズ、ショートデッキ、ワイドトレッド」といったキーワードを元に、全幅を40mm拡大、全高を10mm減少、Aピラーを50mm後退と大幅なシェイプアップを実施。その結果、長いノーズから伸びる特長的なキャラクターライン、ボリューム感溢れるフェンダー、ヘッドランプなど細部に渡るフィニッシュと、ボディーサイズを十二分に活かした魅力的な表現がなされている。

 加えて単純なデザイン面の美しさを追求しただけではなく、スポイラーなどのパーツを装着することなくCd(空気抵抗)値0.26を実現するとともに、フロント/リアともにゼロリフトを達成。まさに“機能美”といえるフォルムを創りあげている。

 インテリアは「美」=華やかさと「快」=心地よさを追求。コストダウン優先で通常は他車と共通化されることが多いスイッチ類を高級車専用部品として新規で製作したほか、アロマ効果を持たせたフォレストエアコンなどを採用。さらに上質さを求めるオーナー向けには「プレミアムインテリアパッケージ」を用意。純銀粉を手ですり込んで仕上げる純銀本木目フィニッシャー、柔らかな触感と自然な風合いが特長のセミアニリン本革、スエード調の生地を採用した天井など、贅を尽くした仕様となっている。

「快」を加味した走りの性能
 「走」は初代から定評のあった部分だが、「快」を加味してさらなる進化を実現している。まず、すべての土台となるプラットフォームはFMパッケージに改良を加え、高剛性&低振動化を強化したもの。エンジンは3.7リッターのVQ37VHR(245kW/333PS)と、2.5リッターのVQ25HR(165kW/225PS)の2タイプで、どちらもマニュアルモード付の7速ATとの組み合わせになる。

 加えてアクティブ・ノイズ・コントロールを採用することで、ロックアップ領域の拡大による燃費の向上や、低回転域のコモリ音を減少させ気持ちのよいエンジンサウンドを実現している。

 サスペンションは新設計となるリアマルチリンクをはじめフーガ専用設計のもの。Type Sに採用される「スポーツチューンドサスペンション」、後席の乗り心地を重視した「コンフォートサスペンション」仕様車には、幅広いシーンで最適な特性を得られるダブルピストンショックアブソーバーを採用している。

 バリエーションは3.7リッターエンジン搭載車でベースとなる「370GT」のほか、20インチアルミホイールやアルミキャリパー対向ピストンブレーキなどを装備した「370GT Type S」、プレミアムインテリアパッケージやセーフティシールドパッケージ、コンフォートサスペンションなどを標準装備する「370VIP」の3モデル。

 2.5リッターエンジン搭載車はベースとなる「250GT」のほか、パワーリクライニングシートなど後席まわりの居住性を高めた「250GT Type P」、アクティブAFSやフォレストエアコンを省略した「250GT Aパッケージ」の3タイプ。さらにアテーサE-TSによる4WDシステムを備えた「370GT FOUR」、「370GT FOUR Aパッケージ」2タイプと、合計8タイプが用意される。また、来秋にはハイブリッドシステムを備えたフーガハイブリッドも登場予定だ。価格は後日発表となる。

ドアミラー両端を結んだ長さは初代フーガと同サイズながら、ボディー自体の全幅を40mm拡大。FR車らしい安定感とボリューム感溢れるシルエットとなっている。また、単純にフォルムを重視しただけではなく、エアロパーツなどの付加物なしの状態でCd値0.26、前後ゼロリフトを実現している。この写真では分かりづらいがフロントウインドー上部中央付近にLDP(車線逸脱防止支援システム)用のカメラが設置されている。撮影車両は370GT、オプションのプレミアムインテリアパッケージ、BOSEサラウンド・サウンドシステム、セーフティシールドパッケージを装着。ボディーカラーはディープブロンズ

 

大きく盛り上がったフェンダーライン、低く抑えられたボンネット、低い位置に配置されるとともに大きな開口部を持つグリルなど、存在感と迫力は従来のいわゆる高級車のイメージを覆すモノサイドウインドーのシルエットもブラッシュストロークを採り入れている。このあたりのフラッシュサーフェス化も空力的には効く部分だリアフェンダーからトランクにかけてのボリューム感はセダンには見えないほど。艶っぽさはジャガーEタイプを彷彿とさせる
フロントからリアフェンダーへと続く独特のキャラクターライン。フェンダーはもちろん、フロントドアやリアドアまでも複雑な面構成を採用しているリアのゼロリフトを実現する要となっているトランクリッド。中央部のふくらみや後端のエッジ形状など、あまりにも複雑な面構成のためアルミを使えずスチールパネルを採用するタイプS以外のモデルは18インチのアルミホイールと245/50 R18タイヤの組み合わせ
ドアミラーはシンプルな形状。助手席側ドアミラーにはサイドブラインドモニター用のカメラを内蔵しているバンパー内にはFCW(前方車両接近警報)などで使用されるセンサーを設置シャープなイメージのヘッドライトは丸型4灯をモチーフに、新型フーガのキーデザインとなっている「筆の勢い(ブラッシュストローク)」を加えた造形。また、微妙なエッジを設けることで空力性能を向上させるアプローチも行われている
ヘッドライト&フォグランプの点灯状態。ヘッドライトは外側からハイ/ロービーム、ポジション、ウインカー。タイプSはインナー部がスモーク仕上げとなる
ヘッドランプと似た意匠を持つLED式のリアコンビランプ。点灯時は横向きの「U」字型に点灯する

 

3.7リッターの排気量を持つVQ37VHRユニット。吸気バルブタイミングとリフト量を無段階で最適制御するVVELを搭載し、最高出力295kW(333PS)/7000rpm、最大トルク37.0kgfm/5200rpmを実現。FMパッケージによりフロントミッドに搭載するが、フロントノーズが長いため、前方には広いスペースが確保されている
タイプS以外も4輪ディスクブレーキを採用するが、キャリパーは前後とも一般的なフローティングタイプ

 

電動チルト・テレスコピックタイプの本革巻きステアリングは全車に標準。ステアリングスイッチはクルーズコントロールのほか、オーディオ・ナビ・ハンズフリーフォン用などを装備
メータークラスター左右にもサテライトスイッチを用意。メーターの照度調節やトリップメーターのリセット、アクティブAFSのON/OFFなどが行なえるステアリングコラム右下のパネルにはトランクオープナー、VDC、アクティブ・ノイズ・コントロールのスイッチが並ぶ。これらのスイッチ自体も流用ではなく新規で型が起こされたもの
シフトレバー後方にドライブモードセレクターを配置。「STANDARD」のほか「ECO」「SPORTS」「SNOWw」のモードが用意され、それぞれに応じてエンジン特性はもちろんミッション、4輪アクティブステアなどの特性を変化させ様々な走りが楽しめるATのシフトレバーはP-R-N-Dの4レンジ+マニュアルレンジを備える。本革巻で気持ちのいい手触りセンタークラスター上部にはエアコンとナビ関連の操作パネルとなる。エアコンは森の空間を演出するアロマディフューザー、「1/fゆらぎ」を再現する吹き出しパターン最適制御、快適な湿度を保つ湿度検知制御などを搭載する世界初のフォレストエアコンを搭載
センタークラスター下部にはCDプレーヤーをはじめとしたオーディオ系が収まる。ナビ&オーディオは全車にカーウイングス対応ナビゲーション、6スピーカーのフーガホログラフィックサウンドシステムが標準。5.1chサラウンド対応&16スピーカーのBOSEサラウンド・サウンドシステムはオプションセンターコンソールにはドリンクホルダーとシガーライター&灰皿。どちらもスムーズな動作で開閉するフタ付き
エンジンのスタータースイッチはプッシュボタン式。スイッチ照明付きで暗闇ではホタルのようにゆっくりと消灯~点灯を繰り返す
センタークラスターには高級車ならではのアナログ時計を配置。これも新規に製作されたものダンパー付きでスムーズな開閉動作のグローブボックス。ロック機構&照明付きで全車にETCユニットがビルトインされている
センターコンソールボックスは2段式で、上段は小物の収納に便利な小型トレイに、下段にはDC12Vの電源ソケットやUSB端子などを用意運転席・助手席ともにサンバイザー裏には照明付きバニティミラーを装備。運転席側にはチケットホルダーも用意される。プレミアムインテリアパッケージ車は見た目にも美しいスエード調のルーフインテリアを採用
ルーフ中央にはマップランプ付きのオーバーヘッドコンソールを装備。サングラスなどの収納に便利なホルダー付きだブラッシュストロークをイメージした曲線形状に加え、メッキと木目、ソフィレスを採用した表皮と異なる素材を組み合わせることで高い質感を感じさせるドアトリム。ソフィレスは本革以上の質感を目指した合成皮革。パワーウインドーのスイッチも専用パーツサイドシルを飾るアルミ製のキッキングプレート。これもブラッシュストロークを意識したパターンが加えられている
セミアニリン本革を採用したシートは高級感はもちろん、空気溝位置などの最適化や高減衰ウレタンの採用により快適性を向上するとともに疲労感を軽減。運転席はスライド、リクライニング、リフター、ランバーサポートの各調整を電動で行える。また、パーソナルドライビングポジションメモリーシステムの採用により、自分専用のインテリジェントキーを使うことで、シートやステアリングの位置を自分が設定したポジションに自動調整してくれるBOSEサラウンド・サウンドシステム装着車はヘッドレスト横にもスピーカーを配置
助手席には電動調整式のオットマンを装備。最大まで展開すれば相当にリラックスした姿勢を取ることが可能。そのほかスライドとリクライニングも電動調整式だ
ゆったりとしたリアシート。フロントシートを最大限まで後方にスライドしても、リアシートは十分成人男性が座れるだけの空間が確保されている。収納可能なアームレスト部はトランクスルーも兼ねているが、開口部はそれほど広くない
センターコンソールボックス後部にはエアコンの吹き出し口と映像&音声の入力端子を用意
標準グレードの内装。シート表皮は前後ともネオソフィール/ジャガード織物の組み合わせ(ブラックカラー)。エアコンディショニングシートではなくなるためスイッチも省略される。センターコンソールなどの木目も銀粉本木目ではなく木目調仕上げとなる
9インチのゴルフバックを4個収納可能なトランクルーム。カーペット下にはスペアタイヤのほかジャッキや工具類を収納。荷物やネット固定用のフックが備えられているほか、地デジ用のB-CASカードリーダーも
カーウイングス対応ナビゲーションを標準装着。8インチのワイドVGAモニターを採用したHDDモデルで、カーウイングス会員の走行情報を利用した最速ルート探索に対応。画面右のボタンでリアルタイム地図更新も可能。AV機能面では12セグ/ワンセグ地デジ対応のほか、USBメモリファイルの再生、iPod接続にも対応している。モニターには車両情報の表示も可能だ
各種電子デバイスのON/OFFはユーザー自身での設定が可能。単純なON/OFFのみでなくECOペダルやオートライドなどは効き具合の調節もできる
サイドブラインドモニターおよびバックビューモニターを標準装備。前者には車幅と車両前端を、後者には車幅と進路、予想進路を示すラインを表示する。センターコンソールの「カメラ」ボタンで表示可能だ
白色照明により視認性の向上と高級感を両立したメーターパネル。大径のタコメーターとスピードメーター、両サイドに水温計と燃料系を配したトラディショナルなデザインを採用。AFSやLDP(車線逸脱防止システム)の動作インジケーターも用意
タコメーターとスピードメーターの間にはさまざまな情報の表示が可能なディスプレイを配置

 

「世界トップクラスの走り」を目指して開発されたタイプS。4輪アクティブステアなど電子デバイスによる安全性やスタビリティを確保する一方、サスペンションは従来からの機械的なパーツでのパフォーマンスアップにこだわった。その結果、採用されたのがダブルピストンショックアブソーバー
20インチホイールの装着は開発当初からの決定事項だったと言う。ホイール径アップに伴ってブレーキもグレードアップされており、フロントがアルミキャリパー対向4ピストンでローター径355mm、同じくリアは2ピストンで350mmとなる
インテリアも専用パーツの追加でレーシーな雰囲気をアップ。ステアリングまわりにはマグネシウム製のパドルシフトを、フットレストを含むペダルはアルミタイプとなる
ボディーカラーは全7色。今回メインで紹介している370GTのディープブロンズと、この370GT Type Sのガーネットブラックはどちらも特別塗装色で新色となる
370GT Type Sをベースにエアロパーツをはじめとした各種ディーラーオプションを装着した車両。フロントまわりでは下部が張り出したエアダム風の造形を持つエアロフォルムバンパー、グリル内部の格子をブラックアウトしたミッドナイトブラックグリルを装着。アグレッシブなムードに一変
ボディーサイド~リアにかけては、サイドシルプロテクターとトランクエンドに装着する小振りなリアスポイラーを装着ホイールはボディーカラーに合わせたガンメタリックカラーに。サイズや意匠は変更なし迫力あるルックスと気持ちのよいサウンドが楽しめるS-tuneスポーツマフラー。オールステンレス製だ

 

 

(安田 剛)
2009年 11月 13日