レビュー
【タイヤレビュー】ブリヂストンの新型プレミアムスポーツタイヤ「POTENZA S007A」。ポテンザ S001の後継製品
2018年7月18日 00:00
ブリヂストンのスポーツタイヤ、「POTENZA(ポテンザ)」に新製品が加わった。
ポテンザにはリアルスポーツ系、カジュアルスポーツ系、そしてプレミアムスポーツ系の3本のラインがあり、それぞれRE-71R、アドレナリン RE003、S001が代表的な商品として市販されている。
今回の新製品はプレミアム系のS001の後継にあたるS007Aと呼称されるが、S001もランフラット(RFT)がラインアップされる関係もあり、当分は併売される。S007Aは時代の変遷に従って、大径化するタイヤ傾向に沿ってデザインされた。実際にこのゾーンでは18インチ以上装着の車両が増えている。
タイヤの開発コンセプトはウェット性能を維持しながらドライ性能の向上を図ったもので、3本のリブパターンを中心にしたオーソドックスで安定感のあるデザインになっている。
従来製品であるS001と比較して特徴的なのは、タイヤ展開幅の広さと各ブロックの角をラウンドさせていることで、リブセンターの圧力分布を高めて接地性を上げていることにある。またセンターブロックからは横溝を排し、パターン剛性をサイズによっては16%も向上させている。その両サイドのリブも幅を広げることで14%の剛性アップ(代表的なサイズ)、さらにショルダーブロックは溝角度を変えて、ここでも剛性は9%アップとしている。
内部ではサイド剛性の変形を抑える構造を採用し、コーナリング時など横力が働いた時のサイドウォールの変形を抑えている。
これによってS001では操舵初期に圧力分布がアウト側ブロックサイドによってしまうのに対して、S007Aでは比較的均一な圧力分布に保たれている。大舵角時にもイン側の圧力もかかるような接地面になっているので、グリップ力低下は少ないとされる。
さて試乗は那須にあるブリヂストンのプルービンググランドで行ない、専用ウェットハンドリングコースで2台のジャガー XEを使い、S001とS007Aの履き比べを行なった。ウェット専用のコースは散水が可能で、路面ミューはところどころ変わっているが、0.3~0.4に保たれていると思われる。
ジャガー XEは重量配分の優れたスポーツセダンで、ドライビングの楽しいクルマだ。タイヤサイズはオプションの225/45 R18だ。
ウェット性能はS001とS007Aでは同等との評価グラフがあったが、実際にはコーナーでも接地面形状が変わらず、排水性も優れているのでウェット性能は少し上がっている。まずハンドル応答性がやや向上しており、ノーズが向きを変えるのが早い。さらにリアのグリップも上がっているので、一定のラインをトレースしている時の舵角が小さい。全体グリップは若干上がっているので安定した姿勢を保てるが、舵角を大きくするとその反動で姿勢が乱れることがある。
ウェットグリップはグレーディングではbだが、その中でも幅があるのは周知の事実。S007Aは少しアッパーレベルに入るだろうか。
S001とS007Aをプルービンググラウンドで履き比べ
ドライハンドリング比較は、大きなRが続く一般道のワインディングロードをイメージしたコースで行なわれた。起伏やブラインドコーナーがあり、路面も普通の舗装で適度に荒れている。
試験車両はAWDのアウディA4(225/50 R17)とFRのトヨタ86(215/45 R17)の2車種で、それぞれS001とS007Aを履いた2台の車両が用意された。
比較するとA4のS001ではハンドル・ニュートラル幅が少し広い感じがしたが、S007Aではセンターが締まり、さらにハンドルを切った時のライントレース性が高く、ウェット同様にグリップ力が高い。さらに切り増しをした時にグイと曲がっていく感じはなかなか好感度が高く、コーナリングパワーの立ち上がりも早いのが分かる。
レーンチェンジでは早めに姿勢が変わり、滑らかだが連続して少し早め(といっても日常と比べ少し早い程度)のハンドル操作をした時はクルマの動きが予想より早くなる。しかしリアのグリップは高いままなので、安定して姿勢が保たれる。A4とはハンドリング面で非常に相性がよい。
続いて乗った86ではA4ほどではないが、ハンドルを切り増した時のコーナリングパワーの高さは変わらず感触がよい。左右に切り返した時のヨー収束の高さも高いままで、操舵角も小さいのが好ましい。スポーツタイヤらしい動きだ。また操舵時の保舵の変化がなく、スッキリとした切れ味だ。
S007Aの相性としては前輪荷重の大きなA4のマッチングがより優れているように感じられた。
郊外路や高速道路での試乗
続いて公道に出て、郊外路と高速道路を走る。まず車両はジャガー XEでウェット試乗時とタイヤサイズは変わらない。
ジャガーはタイヤに正直に反応するが、ここでもスポーツタイヤらしいガッチリとしたハンドルのキレのよさを堪能することができた。グイグイと曲がって行くのだ。
ただハンドルレスポンスがよい半面、少しユッタリを走りたい時もタイヤからの反応が強めなので、プレミアムカテゴリーとはいえスポーツタイヤであることを認識した。ハーシュネスも強めで路面によってはゴロゴロとした路面の凹凸を伝える。
続いてFFのアルファ ロメオ ジュリエッタに乗った。久しぶりのジュリエッタで、手を伸ばしたイタリアンドライビングスタイルが懐かしい。タイヤサイズは225/40 R18。
ジュリエッタにはタイヤが勝っており、パワーをかけても何も起こらない。がっちりとしたグリップは頼もしい半面、ハーシュネスも強めになり、ロードノイズも大きめだ。
結論から言うとS007Aはスポーツタイヤらしく、強いケーシングと接地面の強いトレッド面が、このタイヤの力強さの源だ。レグノのコンフォート性能とは明確に差別化が図られている。重量級のハイパフォーマンスの車両までカバーするスポーツプレミアタイヤの価値は十分高いと感じられた。