レビュー

【タイヤレビュー】ブリヂストンの新型プレミアムスポーツタイヤ「POTENZA S007A」。ポテンザ S001の後継製品

ブリヂストンの新型プレミアムスポーツタイヤ「POTENZA S007A」を試乗した

 ブリヂストンのスポーツタイヤ、「POTENZA(ポテンザ)」に新製品が加わった。

 ポテンザにはリアルスポーツ系、カジュアルスポーツ系、そしてプレミアムスポーツ系の3本のラインがあり、それぞれRE-71R、アドレナリン RE003、S001が代表的な商品として市販されている。

 今回の新製品はプレミアム系のS001の後継にあたるS007Aと呼称されるが、S001もランフラット(RFT)がラインアップされる関係もあり、当分は併売される。S007Aは時代の変遷に従って、大径化するタイヤ傾向に沿ってデザインされた。実際にこのゾーンでは18インチ以上装着の車両が増えている。

ポテンザ S007A。ハイパワーなプレミアムスポーツ向けのタイヤとして設計されている

 タイヤの開発コンセプトはウェット性能を維持しながらドライ性能の向上を図ったもので、3本のリブパターンを中心にしたオーソドックスで安定感のあるデザインになっている。

ブリヂストンのプルービンググラウンドをベースに試乗した
S001のトレッドパターン
S007Aのトレッドパターン
タイヤのプロファイル
左からアウト側、センター、イン側のトレッドパターン。S001に比べ直線を活かしたデザインとなっており、横溝も減っていることからより高剛性になっていることが分かる
S007Aの性能チャート。S001に比べて、ドライ性能をすべての面で大幅にアップしているのが分かる

 従来製品であるS001と比較して特徴的なのは、タイヤ展開幅の広さと各ブロックの角をラウンドさせていることで、リブセンターの圧力分布を高めて接地性を上げていることにある。またセンターブロックからは横溝を排し、パターン剛性をサイズによっては16%も向上させている。その両サイドのリブも幅を広げることで14%の剛性アップ(代表的なサイズ)、さらにショルダーブロックは溝角度を変えて、ここでも剛性は9%アップとしている。

 内部ではサイド剛性の変形を抑える構造を採用し、コーナリング時など横力が働いた時のサイドウォールの変形を抑えている。

 これによってS001では操舵初期に圧力分布がアウト側ブロックサイドによってしまうのに対して、S007Aでは比較的均一な圧力分布に保たれている。大舵角時にもイン側の圧力もかかるような接地面になっているので、グリップ力低下は少ないとされる。

 さて試乗は那須にあるブリヂストンのプルービンググランドで行ない、専用ウェットハンドリングコースで2台のジャガー XEを使い、S001とS007Aの履き比べを行なった。ウェット専用のコースは散水が可能で、路面ミューはところどころ変わっているが、0.3~0.4に保たれていると思われる。

 ジャガー XEは重量配分の優れたスポーツセダンで、ドライビングの楽しいクルマだ。タイヤサイズはオプションの225/45 R18だ。

S001とS007Aのウェット路面における比較試乗

 ウェット性能はS001とS007Aでは同等との評価グラフがあったが、実際にはコーナーでも接地面形状が変わらず、排水性も優れているのでウェット性能は少し上がっている。まずハンドル応答性がやや向上しており、ノーズが向きを変えるのが早い。さらにリアのグリップも上がっているので、一定のラインをトレースしている時の舵角が小さい。全体グリップは若干上がっているので安定した姿勢を保てるが、舵角を大きくするとその反動で姿勢が乱れることがある。

 ウェットグリップはグレーディングではbだが、その中でも幅があるのは周知の事実。S007Aは少しアッパーレベルに入るだろうか。

S001とS007Aをプルービンググラウンドで履き比べ

ドライ路面はアウディ A4とトヨタ 86で比較試乗

 ドライハンドリング比較は、大きなRが続く一般道のワインディングロードをイメージしたコースで行なわれた。起伏やブラインドコーナーがあり、路面も普通の舗装で適度に荒れている。

 試験車両はAWDのアウディA4(225/50 R17)とFRのトヨタ86(215/45 R17)の2車種で、それぞれS001とS007Aを履いた2台の車両が用意された。

 比較するとA4のS001ではハンドル・ニュートラル幅が少し広い感じがしたが、S007Aではセンターが締まり、さらにハンドルを切った時のライントレース性が高く、ウェット同様にグリップ力が高い。さらに切り増しをした時にグイと曲がっていく感じはなかなか好感度が高く、コーナリングパワーの立ち上がりも早いのが分かる。

 レーンチェンジでは早めに姿勢が変わり、滑らかだが連続して少し早め(といっても日常と比べ少し早い程度)のハンドル操作をした時はクルマの動きが予想より早くなる。しかしリアのグリップは高いままなので、安定して姿勢が保たれる。A4とはハンドリング面で非常に相性がよい。

 続いて乗った86ではA4ほどではないが、ハンドルを切り増した時のコーナリングパワーの高さは変わらず感触がよい。左右に切り返した時のヨー収束の高さも高いままで、操舵角も小さいのが好ましい。スポーツタイヤらしい動きだ。また操舵時の保舵の変化がなく、スッキリとした切れ味だ。

 S007Aの相性としては前輪荷重の大きなA4のマッチングがより優れているように感じられた。

郊外路や高速道路での試乗

ジャガー XEで高速道路を走行

 続いて公道に出て、郊外路と高速道路を走る。まず車両はジャガー XEでウェット試乗時とタイヤサイズは変わらない。

 ジャガーはタイヤに正直に反応するが、ここでもスポーツタイヤらしいガッチリとしたハンドルのキレのよさを堪能することができた。グイグイと曲がって行くのだ。

 ただハンドルレスポンスがよい半面、少しユッタリを走りたい時もタイヤからの反応が強めなので、プレミアムカテゴリーとはいえスポーツタイヤであることを認識した。ハーシュネスも強めで路面によってはゴロゴロとした路面の凹凸を伝える。

FFのアルファ ロメオ ジュリエッタでは、タイヤが完全に勝っていた

 続いてFFのアルファ ロメオ ジュリエッタに乗った。久しぶりのジュリエッタで、手を伸ばしたイタリアンドライビングスタイルが懐かしい。タイヤサイズは225/40 R18。

 ジュリエッタにはタイヤが勝っており、パワーをかけても何も起こらない。がっちりとしたグリップは頼もしい半面、ハーシュネスも強めになり、ロードノイズも大きめだ。

 結論から言うとS007Aはスポーツタイヤらしく、強いケーシングと接地面の強いトレッド面が、このタイヤの力強さの源だ。レグノのコンフォート性能とは明確に差別化が図られている。重量級のハイパフォーマンスの車両までカバーするスポーツプレミアタイヤの価値は十分高いと感じられた。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛