レビュー
恐るべきグリップ力! 横浜ゴムのマッドテレーンタイヤ「GEOLANDAR X-MT」に乗った
どんな道でもトライしたくなるフラグシップモデル
2018年9月4日 00:00
趣味性に特化した製品
趣味性に特化したSUV&ピックアップトラック向けのマッドテレーンタイヤ「GEOLANDAR X-MT(ジオランダー・エックスエムティー)」が横浜ゴムから発表された。これはオフロード走行やロックトレイルを楽しむユーザーを考えて開発されたタイヤであり、一見しただけでもかなりゴツイ。横浜ゴムでは2017年に「GEOLANDAR M/T G003」を発売しているが、このタイヤはそれよりも悪路における走行性能を高めようとしたフラグシップモデルである。
トレッドのデザインは自然界の岩をイメージした「ロックコンセプトトレッド」を採用。トレッドからサイドに至るまでそのイメージは統一されており、モーグルやロックなどを走破する際にもサイドが役立つように考えられている。トレッド面は溝面積が多く、これにより悪路のトラクションを稼いでいるのだが、溝を多くすると舗装路におけるノイズが大きくなる傾向があり、そことの折り合いをつけることが課題だったとのこと。ブロックの大きさや配置を吟味した結果が現在の状態というわけだ。このブロックにはサイプがランダムに刻まれているのだが、硬い土やウェットにおける走破性も高めている。
構造についても悪路を考えられた装備が多数準備される。トラクションを得ることはもちろん、タイヤがカットされてダメージを負わないように、サイドゴムをビルドアップ。高剛性3プライ構造や大型リムプロテクトバーの採用もカットされにくいように考えられたもの。デザイン性だけでなく、内部構造についてもシッカリと対策されているところが本格派。
トレッドコンパウンドはマッドテレーン専用のコンパウンドとなる。G003と同様、摩耗に強いポリマー、グリップに強いポリマー、そしてカット&チッピングに強いポリマーをブレンドし、カーボンブラックでバランスさせたという。これによりオンロードの耐摩耗性がありつつも、悪路におけるトラクションを得るという状況が完成したそうだ。
とはいえ、耐摩耗性やパターンノイズについてはG003に対して若干劣るというデータを横浜ゴムはあえて提示しているところも興味深い。対してオフロード性能や耐サイドカット性についてはG003よりも高まっている。趣味性に特化した製品を、というコンセプトがあってこその結果だろう。ターゲットを完全に絞ったフラグシップタイヤとは、やはり尖っていて当然だろう。
恐るべきグリップ力
そんな「GEOLANDAR X-MT」をオフロードコースで走らせてみる。試乗当日は雨が降りしきる状況であり、コース上は至るところがぬかるんでいる。歩けばぐちゃぐちゃだ。こんな状況で満足に走れるのだろうか? 正直に言えばこんな状況で、しかも本格オフローダーなど試乗した経験は皆無だが、ひとまずいってみよう。
まず相棒となったのは、カスタムされたトヨタ自動車「タンドラ」だ。日本で見るとかなりバカでかく、ホイールベースだって長すぎるように感じる。これでぬかるみに行くなんて、果たして曲がれるのだろうか? そんな心配をよそに、豪快なトラクションを発揮! グイグイと加速を続けるから驚きだ。
だが、おそらくコーナーではアンダーしか出ないでしょ、なんて思い慎重に走ったのだが、ノーズは見事にスッと曲がっていくから面白い。しかもステアリングを大きく切り込んだ状況までシッカリとグリップを発揮しているから安心。そこから豪快にアクセルを開ければ、テールはスライドしながら立ち上がっていく。こんなでかいクルマを振り回せるとは……。恐るべきグリップだ。後にノーマルのジープでも試乗してみたが、その印象は変わることがない。
これならどんな道でもトライしたくなる。悪路に病みつきになりそうな見た目も乗り味も面白いタイヤだった。