レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】SUV向けブリヂストン「BLIZZAK DM-V2」をCX-8で試す

圧雪路やアイスバーンでの性能はどうか?

 近年、SUVモデルは国内外のメーカーがラインアップを進めたこともあり、ファミリーユースをはじめとして人気と集めている。SUVモデルといってもボディサイズはさまざまで、Bセグメントをベースにしたコンパクトから、ミドルサイズ、フルサイズなど多種多様。また、SUVはモデルによって装着しているタイヤサイズが汎用的ではない場合もある。幅広い用途が想像できるSUVは、冬場にスタッドレスタイヤを装着していることも多いはず。そこで頭を悩ませるのが、どんな銘柄を選べばよいのか、ということだろう。

 各タイヤメーカーはSUV専用のスタッドレスタイヤを用意していて、販売のシェアを高めている。SUV専用モデルは、高荷重のSUV用に開発されたものだったり、専用サイズをラインアップしていることもある。ここでは、マツダ「CX-8」に装着したSUV&4×4専用スタッドレスタイヤ「BLIZZAK DM-V2(ディーエム ブイツー)」を紹介したい。

雪上と氷上のドライブとして都内から志賀高原までの往復約600kmを走行

ドライ路面での静粛性に長ける

BLIZZAK DM-V2を装着してもらったのは、ブリヂストンのタイヤ専門店「タイヤ館 川口」

 走行シーンの前に、まず取り付けについて触れよう。タイヤとホイールの組み付けと装着をお願いしたのは、ブリヂストンのタイヤ専門店となる「タイヤ館 川口」。

 ブリヂストンのタイヤ専門店となるタイヤ館では、すべての作業において専門店らしい配慮と丁寧な作業を行なっている。とくにタイヤを車両に取り付ける際には、センターフィットにこだわりを持って作業を実施。ホイールのボルト穴とハブボルトの径は、クリアランスがないと装着が困難なので、作業性を高めるためにボルト穴の方が大きく作られている。そのため、単に装着してナットを締め込むとセンターがずれる可能性があるという。

 そのため、タイヤ館ではブリヂストンが特許技術を持つ「B-SYSTEMセンタリングマシン」をタイヤに取り付けてナットを締め込んでいる。この独自の機器を取り付けることでタイヤに振動を与え、ホイールがしっかりとセンターに合わさった状態でナットを締め込むことが可能になる。スタッドレスタイヤを装着したのちにステアリングを握ったら、バイブレーションがなく快適に走ることができた。

大口径ホイールに19インチのタイヤ(サイズは255/50 R19)を組み付ける作業。大口径モデルの組み付けには経験や技術力が必要だが、タイヤ専門店ならではの丁寧な作業は安心感が高い
タイヤ館ではタイヤを取り付ける際、専用開発の「B-SYSTEMセンタリングマシン」を使用する。タイヤに振動を与えながらボルトを締め付けることによって、ホイールをハブの真ん中に取り付けることが可能になる。このセンターフィット技術を採用することで、タイヤが起因となる振動を抑制し、直進安定性も向上する
ホイールは「ECO FORME CRS161」を装着。CRS161は、立体感のあるダブルフェイスデザインや伸びやかなツインスポークが特徴的。スポークやリムは剛性を保ちつつも可能な限り肉抜きを行なうことで軽量化を実現している。カラーはBS/N(ブライトシルバー塗装後表面切削)
タイヤはSUV専用モデルのスタッドレスタイヤ「BLIZZAK DM-V2」。サイズラインアップは15インチ~20インチで、SUV用らしく高偏平モデルが用意されている
トレッド表面は溝の交差ポイントを増やすことで、溝に取り込んだ雪を強く押し固める特性を持つ。それにより、新雪や圧雪路でのグリップ力を向上させている
サイプの切れ込みを3次元のジグザグのデザインとすることで倒れ込みを抑えるとともに、隙間には柱の役割を果たすプロップ・ホームを採用している

 まず、ドライ路面の街中を走った印象だが、トレッド面のデザインを見るとドライコンディションでのロードノイズが高そうに思えるかもしれない。回転方向に対してのロードノイズが皆無かというとそうではないが、それでも長距離や高速道路を走っていて不快に感じることはない。その印象はBLIZZAK DM-V2を装着して2000kmほど走行した現在も変わりなく、ロードノイズに対して不満を持ったことはない。

 気になるドライコンディションでの燃費性能だが、夏タイヤを装着していたときより約5%のダウン。夏タイヤのときの平均燃費が13km/L後半から14km/Lだったのに対して、BLIZZAK DM-V2では13km/L程度になった。走行条件をそろえた訳ではないので、参考程度と思ってほしい。

制動力に不安なし

 続いて、圧雪路やアイスバーンでの性能を試すために雪が残る志賀高原へ足を伸ばしたときの印象について触れてみよう。

 2014年9月から発売されているBLIZZAK DM-V2は、BLIZZAKの最新モデルとなる「VRX2」に比べると旧モデルになる。だが、DM-V2のみの専用サイズラインアップもあり、CX-8の場合は同モデルがマッチする。

 使用しているコンパウンドは、VRX2の「アクティブ発泡ゴム2」に対してDM-V2は「アクティブ発砲ゴム」になる。アクティブ発泡ゴムは、氷の表面にできた水膜を積極的に除去する性能を備え、アイスバーンでの制動力に長ける。そのため、進化したアクティブ発泡ゴム2の方が高性能を誇るのだが、DM-V2でアイスバーン状になっている路面を走行しても、制動力に不安は感じない。テストコースなどで比較してみれば差が出るのだろうが、一般的な使用環境では不足ないと言える。

アイスバーンの路面でブレーキングをしてもしっかりと路面を掴み、制動力を発揮。BLIZZAK DM-V2は、コンパウンドにアクティブ発泡ゴムを採用することにより、路面の水膜を積極的に除去する性能を保持している

 また、圧雪路での走破性については、縦横方向ともに十分なグリップ力を発揮する。ワインディングを走っていると想像以上にコーナーの奥の曲率が高く、ステアリングを切り足すこともある。そのようなシーンではグリップ力を失うこともあるが、一般的な速度で走っていれば確実に想定したラインをトレースしてくれる。DM-V2は「マルチグルーブ」と呼ばれる専用のトレッドパターンを配していて、タイヤが空転しやすい新雪路の上り坂などでも高い走破性をみせた。1回転ごとにしっかりと雪を潰しながら掴んでいる印象で、SUVのキャラクターに見合った性能となっている。

さまざまな環境の雪道を走行したが、常に接地感があり安心して走行することができた。最新モデルとなるBLIZZAK VRX2に比べると設計自体は時間が経過しているが、雪上性能と一般的なアイスバーンの路面などでは同等の性能を感じ取れた

 先日は、春分の日にも関わらず関東一円で積雪を記録したところもあった。今シーズンは、そろそろ積雪を警戒することもないと思うが、今冬シーズン以降のSUVモデルに対するスタッドレスタイヤ選択の一考にしてもらいたい。

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。

Photo:高松弘