レビュー
【ナビレビュー】9V型大画面で「楽ナビ」最上位の「AVIC-RQ902」は機能充実の下克上(?)モデル
大きな画面が魅力のワイドXGA(1280×720ピクセル)
2018年10月26日 16:11
このところ「80周年記念モデル」や「xシリーズ」といったトピックがあったこともあって、フラグシップとなるサイバーナビの影に隠れてしまい気味の感がある楽ナビ。ちなみに、この連載「ナビレビュー」で楽ナビを紹介するのは2015年以来となり、こちらもご無沙汰といった感じ。そんな状況ではあるものの「分かりやすさや」「使いやすさ」、さらに「お手ごろ価格」という点を踏まえれば、やはり一番に購入対象に挙げたいモデルであることには変わりない。
楽ナビシリーズは2017年モデルから末尾が数字3ケタの「x01」に変更されており、今年リリースされる2018年モデルは「x02」と数字が1つ繰り上がっている。アタマの「x」は数字が大きい方が上位モデルだ。バリエーションが多いこともあって店頭で見分けづらいものの、このあたりをチェックすると位置付けや現行モデルなのかを見分けることができる。で、新型には新たに9V型モニター搭載の最上位モデル「AVIC-RQ902」と、DVD/CDプレイヤーを省略したベーシックモデルの「AVIC-RZ102」が追加となった。計10機種と幅広いユーザーへのマッチングを果たすことで、さらに裾野を広げようというのが2018年モデルの特長と言えるだろう。
ついに9V型大画面モデルが登場!
今回レビューをお届けするのは、その新たに追加となったAVIC-RQ902。同モデルにおける最大のポイントはナニかと言えば、楽ナビ初採用となる9V型モニターを搭載している点だ。これまでの8V型より画面サイズがひとまわり大きくなり、地図の見やすさや操作のしやすさ、DVDビデオなど映像ソースもより楽しめるようになった。採用されているパネルはグレアタイプの「ブリリアントフィニッシュパネル」で、表示のクオリティは折り紙付き。タッチパネルは感圧式でドラッグやフリックによる地図操作にも対応する。
と、ここまでは従来と同じだけれど、この9V型大画面モデルのみ解像度がワイドVGA(800×480ピクセル)ではなくワイドXGA(1280×720ピクセル)となっているのだ! まぁ、地図を含めた画面データそのものはワイドVGAベースなので、スケーリングによる表示にはなってしまうのだけれど。とはいえ、マニアでもない限りそれが気になることはないハズで、そんな些細(?)な点よりも大きな画面であること自体が魅力。タッチパネル操作時の使い勝手のよさや、映像ソースを視聴している際には7V型との差は歴然だ。
で、大画面ナビで問題となるのがクルマへの装着だろう。標準的な2DINスペースでは7V型が限度で、8V型モニター搭載機(2018年モデルはAVIC-RL902)では車種別に用意されている「取り付けキット」を組み合わせての装着が前提となっている。大画面なのはよいものの、やはり別途コストが掛かるのは敷居が高い。だが、今回はもともと9インチの取り付けスペースを持つトヨタ自動車「エスティマ」「プリウス」、および日産自動車「セレナ」などが対象で、「カローラ スポーツ」など純正フィッティングキットがリリースされているモデルにも装着可能だ。現状では取り付けるクルマ次第ってことになってしまうものの、こうした車種が増えていけば余計なコストを掛けずに、手軽に大画面ナビの装着が可能になるワケで、ユーザーには嬉しい状況になりつつあるのだ。
そのほかのスペックをざっと書いておくと、
・16GB内蔵メモリに地図データを収録
・CD/DVDプレイヤー内蔵
・SDメモリーカード対応(SDXC、~128GB)
・USBマスストレージクラス対応(~16GB、1A)
・Bluetooth 3.0+EDR接続対応
・iPod/iPhone接続対応(要別売ケーブル)
・ETC/ETC2.0接続対応
・HDMI入力対応
・4チューナー×4アンテナ採用の地上デジタルTVチューナー(12セグ/ワンセグ)内蔵
といった内容になる。本機は画面サイズも含めて楽ナビの最上級モデルとなるだけに、まさに全部入りといえる充実度になっている。
もちろん、カロッツェリアならではの「スマートループ」をはじめとした通信機能にも対応。オプションのデータ通信専用通信モジュール「ND-DC1」または「ND-DC2」を接続するか、または手持ちのスマートフォン(要Bluetooth PAN/DUNプロファイル対応)を利用することもできる。ただ、取材時は発売前とあって使うことができなかったため、画面を含めて動作状況を紹介することができない。もっとも、このあたりは従来モデルと変わっていないから、気になる人は関連記事を参照してほしい。
ただ、1つ注意してほしいのが、以前のモデルでは用意されていた「フリーワード音声検索」は非対応となってしまった。ユーザーの使用状況を鑑みての結果なのだろうけれど、長い名称の入力には便利だったから残念ではある。ただし、音声入力用のマイクは従来通り付属しており、ハンズフリー通話で利用することができる。
安全運転のサポートやカスタマイズなど安心便利なナビ機能
ナビゲーションまわりに関しては、ここ数年、飛び道具的な大きな機能追加は行なわれていない。逆に言えば楽ナビらしい部分はそのままなので、「とっつきやすい」と言えなくもない。メニューまわりも整理されており、ある程度カーナビに触ったことがあるなら、悩まずに使いこなすことができるハズだ。
ざっくりと地図まわりから紹介していくと、まず画面モードは一般的な2D表示のほかに、鳥瞰図タイプの「スカイビュー」、ドライバー目線で道路や建物を表示する「ドライバーズビュー」、異なる縮尺や視点の地図を2画面で表示できる「ツインビュー」、音楽や映像と地図を同時表示する「AVサイドビュー」を用意。高速道路などで表示可能な「ハイウェイモード」も健在だ。また、通常表示のほかに地名などの文字を拡大表示する「文字拡大モード」、文字情報を道路関連だけに抑えた「道路重視モード」と、さらに100mスケールでの一方通行表示と、ドライバーの好みによって選べる「カスタマイズモード」が用意されている。こうした地図画面の切り替えは専用画面にまとめられており、カンタンに変更・選択できるようになっていてとても便利だ。
また、楽ナビならではとなるのが「一時停止表示」「冠水地点表示」「ゾーン30」といった情報。特に一時停止表示は進行方向やルート上にある場合、画面上への表示とともにアラーム音で教えてくれるのが嬉しい。こうした機能が実現できるのは楽ナビならではの高い自車位置精度があってこそだ。
検索機能は名称をはじめ、住所、電話番号、周辺施設、ジャンルといったモードが用意されている。さらに通信環境が用意されていれば「フリーワード検索」も利用可能。場所やスポットの名称が分からない場合など、こちらを利用すると見つけられる可能性が高くなる。「もっとカンタンに!」というなら、スマホアプリ「NaviCon」との連携がオススメ。車外で検索しておいてクルマに戻ったら場所を転送、なんてことが可能だ。古くからある機能だけれども、こちらも案外使われていないようなのが残念。スマホナビより圧倒的に便利だから、ぜひ使ってみてほしい。
また、カロッツェリアならでは、と言える「営業時間考慮周辺検索」も便利な機能だ。対応施設はガソリンスタンド、駐車場、ATM、コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、ファストフード、回転寿司、喫茶・カフェの8ジャンルで、営業時間外の施設は閉店していることを示すアイコンで表示してくれる。「行ってみたら開いてなかった」なんて時間をムダにしなくても済むのは嬉しい。さらに駐車場に関しては、事前にクルマのサイズを入力しておけば駐車不可なスポットも教えてくれるし、通信環境があれば「タイムズ」や「リパーク」などの混雑状況もチェック可能なのだ。
据え置きタイプのナビの場合、スマホナビなどと異なり地図の鮮度がどうしても落ちてしまうのが難点の1つ。だが、しかし。本機を含む上位モデルでは地図更新が最大3年間無料で行なえるのだ。この間、道路データは毎月、地点データは年10回、さらに年2回全データの更新が行なわれる。更新作業はPCでダウンロードしたデータをSDメモリーカードにコピー、それを本機で展開するという手間が掛かるものの、常に新しい情報や道路を利用することができるのは嬉しいポイント。通信モジュールが接続されている場合、道路データや施設データといった差分更新を自動で行なうことも可能だ。
多彩な案内と操作性のよさで気持ちよく目的地へ
目的地を選択して「ここへ行く」ボタンを押すと、まず推奨ルートが探索される。楽ナビの美点と言えるのが、この時の探索速度。ほぼ瞬時と言えるレスポンスで最新のサイバーナビを凌ぐほど。まさにサクサクといった感じで、「速さこそ正義!」と思えること請け合い。あとは「案内開始」を押せば目的地に向けて走り出すことが可能になる。ここでワンクッション置いて「6ルート地図」を選択すると「推奨/有料標準」をベースに、「推奨2/有料標準」「推奨/有料回避」「推奨2/有料回避」「エコ優先/有料標準」「幹線優先/有料標準」の計6パターンが探索される。違いは「距離」「所要時間」「料金」「推定燃料費」「推定CO2排出量」の各パラメータの優先順位となっており、それぞれの数値は探索画面の「6ルート地図」や「6ルートリスト」で確認することが可能だ。さすがに6ルートを選ぶと探索時間が余計に掛かるものの、それでも「遅いな」と感じるほどではない速度だ。
ルートの案内もこれまでどおりといった印象。交差点での案内はサイバーナビの案内がシンプルになってしまったのと対照的に、こちらは交差点拡大図のほかにオートアングルチェンジやドライバーズビュー、それにアローガイドと豊富。どの案内が見やすいかはユーザーの好み次第といったところ。もちろん、一般道では方面看板やレーンガイドが豊富に用意され、ルート案内の有無に関わらず表示されるので安心して走ることが可能だ。
自車位置精度に関しては、バリューモデルの楽ナビとはいえカロッツェリアならではのハイレベルなモノ。スマホナビは論外としても、据え置き型ナビでも怪しくなりがちな高速道路と一般道が上下に並走している場所で高速道路を乗り降りしても、すぐに自車位置を測位してリルートを行なうなど、一切の破綻を見せない完璧さ。GPSの電波を受信できない地下駐車場でも、少しの迷いもなく正しい場所を示してくれる。サイバーナビではなくなってしまった駐車場マップも、この精度の高さあってのタマモノだ。
で、こうしたナビ性能の高さをサポートしてくれるのが、別売のスマートコマンダー(税別7000円)の存在。サイバーナビ用のモノとは異なり、赤外線で通信を行なうため装着位置が限定されるものの、細かな使い勝手ではそれを凌ぐデキなのだ。
本体は片手にすっぽり収るコンパクトサイズのボディで、ジョイスティックとロータリーボリューム、それに「現在地」「AV」、任意のコマンドを直接実行できる2つの「カスタムダイレクトキー」と、4つのボタンが用意されている。ジョイスティックは地図のスクロール用となっており、ダイヤルは側面スイッチの切り替えにより「地図スケールの拡大/縮小」または「ボリュームの上/下」が行なえる。また、ジョイスティックを押し込むことで専用の「ダイレクトメニュー」を実行することが可能だ。特にサイバーナビと違うのがカスタムダイレクトキーに割り当て可能なメニューの豊富さで、もっとカスタムボタンが欲しくなってしまうほど。
サイバーナビ譲りの豊富な音質調整機能を搭載
楽ナビ最上位機種だけに、対応ソースを含めAV機能も充実。ずらっと羅列していくとDVDビデオ/CD、フルセグ地デジ、Bluetoothオーディオ、iPhone/iPod、USB/SDカード、AUXと何でもござれ。さらに本機にはHDMI入力も用意され、デジタルカメラやビデオの接続も可能。9V型画面を活かして映像を楽しむことができる。音質調整に関してもサイバーナビ譲りの「タイムアライメント」や「13バンドグラフィックイコライザー」、サブウーハー接続時に嬉しい「ハイパス/ローパス機能」など、バリューモデルとは思えないほどの充実ぶりだ。
機能充実の下克上(?)モデル
楽ナビなんて名前が付いているものの、その中身はハイエンドモデルにも迫るパフォーマンスを持っているというのが本機を触っての率直な感想。もちろん、より精度の高いルート品質だったり、細かなチューニングの豊富さだったりと、上位モデルには上位モデルならではのよさがある。それは間違いのないところ。ただ、バリューモデルならではの速度面でのアドバンテージ、今となっては逆に豊富なルート案内モード、シンプルな「NaviCon」を使ってのスマホ連携など、「普通に使うなら何の不満もナシ!」って感じ。
価格はオープンプライスとなっているけれど、通販サイトなどを見る限りかなりお手ごろな設定となっている様子。それでいてこれだけの機能を持ったカーナビを手に入れることができるのだから、お買い得感の高さは十二分。「ナビはスマホで十分」と考えている人にこそ使ってほしいモデルといえる。
【お詫びと訂正】記事初出時、スマートコマンダーを同梱としておりましたが、正しくは別売となります。お詫びして訂正いたします。