レビュー
【ナビレビュー】文句なしに美しい液晶と使いやすいナビ機能、パナソニック「ストラーダ CN-F1XVD」
高度化光ビーコン対応ETC2.0車載器で信号待ちストレスが大幅軽減
2018年11月16日 00:00
カーナビ黎明期からずっと製品のリリースを続けているパナソニック。2003年に「ストラーダ」ブランドを確立してからは、地デジチューナーや車載用Blu-rayプレーヤーをいち早く搭載するなど、エンタメとの融合を重視してきた。
2016年以降、ストラーダの柱となっているのが、フローティング構造を採用した「DYNABIG(ダイナビッグ)ディスプレイ」による大画面化だ。大画面化はここ数年、カーナビ業界のトレンドといえる流れになっているものの、通常、乗用車における一般的なカーナビ取り付けスペースとなる2DIN(幅180mm)には7V型ディスプレイが限界。トヨタ系の一部には9V型が収まるスペースが用意されている車種もあるけれど、それは現状ではまだまだ「あくまで例外」。なので、それを超える場合には別途、専用フィッティングキットを購入して取り付ける必要があった。だが、しかし。DYNABIGディスプレイでは、ディスプレイ部をスタンド形状のアームによる支持とすることで、実に350車種以上のクルマで9V型ディスプレイの装着を可能にしたのだ。
そして2017年モデルではそれをさらに進化。左右方向への角度調整を可能とする「DYNABIGスイングディスプレイ」を搭載。上下、チルト、奥行きに加え左右15度ずつのスイング機構により、ディスプレイ部をかなり柔軟に調整できるようになった。振動で画面がグラグラして見づらいようなことはほとんどなく、調整もいたってカンタンと、まさにスグレモノの機構だと言える。
というのが、2017年までの流れのおさらい。最新型となる2018年モデルは最上位モデルとなる「CN-F1XVD」が、Blu-rayプレーヤー&DYNABIGスイングディスプレイを搭載。光学ドライブをDVDに変更するとともにスイング機能を省略した「CN-F1DVD」も用意。一方、7V型ディスプレイ搭載モデルは2DIN対応の「CN-RX05D」「CN-RA05D」「CN-RE05D」、ワイド2DIN(幅200mm)対応の「CN-RX05WD」「CN-RA05DW」「CN-RE05WD」と、6機種をラインアップしている。
やっぱり魅力的なDYNABIGスイングディスプレイ
今回のお題は当然、最上位モデルとなるCN-F1XVDだ。まず、注目したいのが液晶パネル。「カーナビレビューで最初に来るのが液晶パネルってどうよ?」なんて意見があると思うけれど、ココは人間が認識する上での最終的なアウトプット。オーディオで言えばスピーカーにあたるのだから、重要視するのは当然なのだ。
で、だ。注目の液晶パネルは9V型サイズ(1280×720ドット)の解像度を持ったIPSタイプの「ブリリアントブラックビジョン」を採用。長年、ワイドVGA(800×480ドット)が主流だったカーナビ界においてはようやくと言える高解像度化に加え、広視野角&高輝度のIPS液晶とくれば、ここはもう感涙モノのスペックだ。もっとも、地図データはドットバイドット表示ではなく、ワイドVGAのスケーリングを引き伸ばしているのが残念感漂うところ。とはいえ、画質面ではディスプレイ表面に反射を抑える「低反射(AGAR)フィルム」とともに、液晶とタッチパネルの隙間をなくした「エアレス構造」を採用するなど、車載用ディスプレイとしては群を抜く、まさに抜群に美しい映像を描き出すことが可能。言葉で言い表すのは難しいところだけれど、あえて書くとすると「PCのサブディスプレイにするからココだけの商品も売ってくれ!」と、非常に分かりづらいけれど個人的には最大級のホメ言葉(?)を記したい。
相当に脱線してしまったけれども、スペックは引き続き。地図データは16GB(SDメモリーカード収録)、Bluetooth接続、Android Autoなどのスマートフォン連携、ハイレゾ再生、USB/SDカードからの動画や音楽、画像再生などにも対応している。もちろん、ブリリアントブラックビジョンの美しさを堪能できるBlu-rayディスクの再生、加えてフルセグ地デジTVにも標準対応。まぁ、最上位モデルだけに、欲しいものは何でも揃うといった感じだ。
ETC2.0がいよいよ本気(マジ)に!?
さて、イキナリだけど「ETC2.0って結局、高速料金の支払いにしか使えないよね」と思ってた人は挙手。まぁ、VICS(電波ビーコン)機能をDSRCとして内蔵したこともあって安全運転支援とか、渋滞回避支援とかって機能もあるけれど、FM多重放送を使った「VICS WIDE」による渋滞情報表示もあるわけで、ユーザーからは分かりづらい状況といえる。
そんな状況をさらに分かりづらくしようと企んでいる(?)のが、オプション設定されている高度化光ビーコン対応ETC2.0車載器「CY-ET2500VD」だ。これは読んで字のごとく、ETC2.0車載器を高度化光ビーコンに対応させたモデル。実は同社のETC2.0車載器はナビ連動タイプが2モデル、スタンドアローンタイプが1モデル、従来のETC車載器が1モデルと計4モデルを揃える。でも、高度化光ビーコンに対応しているのは、CY-ET2500VDだけなのだ。ほら、ヤヤコシイ。
ともあれ、「じゃあ、高度化光ビーコンってなによ?」って話になるけれど、これは従来からの光ビーコンが機器更新の時期になったことに合わせ、通信速度の向上(64kbps→256kbps)などを図った新型の光ビーコンのこと。詳しい内容についてはそれぞれで検索してもらうとして、1番注目したいのは「信号情報活用運転支援システム(TSPS)」で、「信号通過支援」「赤信号減速支援」「発信遅れ防止支援」「アイドリングストップ支援」(CN-F1XVDは対応していない)の4つの機能を持っている。あまりウダウダ書くとナビレビューじゃなくなってしまうので要約すると、「このまま走ると先の信号が赤(青)になる」とか、赤信号で停車中に「あと何秒で青になる」なんて情報をナビ画面上で教えてくれるモノ。
この機能は当然ながら高度化光ビーコンが設置されている道路に限られてしまう。対象道路は一般財団法人 道路交通情報通信システムセンターのWebページで確認できるのでチェックしてほしい。これが意外と広範囲に設置されており「いつの間に……」と思えるぐらいの普及度だったりしてちょっとビックリ。で、実際に使ってみるとモノスゴク実用的で便利で嬉しい情報、っていうのが第一印象だ。効果の面で言えば「目的地に早く着ける!」なんてことはないものの、運転のストレスが何割か軽減されるように感じられた。“何割”なんて書くと大げさなように思えるかもしれないけれど、この体験があまりにも衝撃的だったため、「この機能のためだけにナビを買い換える!」と思ってしまったほどだと書けば理解していただけるだろうか。
褒めてばっかりでもアレなので気になる部分も書いておきたい。それは画面上での表示位置および表示サイズに、「慌てて追加しました」的なヤッツケな感じが見える点。ここはせめてドライバー側(画面右側)に表示するなど、もうひと工夫ほしいところだ。
2017年モデル譲りのドライブレコーダー(ドラレコ)も用意される。ドラレコに関してはもう書く必要はないと思われるので割愛するけれど、ナビ連動型ならではの表示や設定の分かりやすさ、車内ですぐに確認できるなどメリットが大きいのは言うまでもない。
スマホ連携で最新スポットも万全
地図や画面まわりは2016年に発売された「CN-F1D」以降のモデルを踏襲している。
基本メニューはストラーダがこだわっている「2トップメニュー」を軸に、左右フリックでナビ、AVを切り替えられるもの。トップ画面に表示される項目はカスタマイズできるので、自分がよく使う項目を設定しておくと操作をよりスピーディに行なうことができる。
カスタマイズというと、もう1つ挙げておきたいのが「ストラーダチューン」。ここには「ルート」「ガイダンス」「マップ」「VICS WIDE」の4つのメニューが用意されており、コマゴマとした設定を分かりやすく変更することが可能だ。もう1つ、地図画面上にセット可能な「ランチャー」なんてのもある。要は特定の機能へのショートカットを集めておくことができるもので、いちいちメニュー画面に戻って階層を辿って~、なんて操作をしなくても済むようになる。これも使いこなすと便利な機能だ。
地図画面も従来モデル譲り。ただ、細かいところではあるものの画面左端のボタン類が、従来モデルよりわずかに大きく表示されるようになった。ドライバーからは遠いサイドになることもあって、この変更は地味ながらも嬉しいポイントといえる。さて、毎度書いているけれど、ストラーダの場合、50mスケールが一般的なナビの100mスケール相当になっているのが特長。もっとも、スケールのベースをどのぐらいで設定するかってだけのハナシなので、実用上はまったく問題になることはないのだけれど。ともあれ、今回は50mスケールをベースに話を進めていきたい。
さて、その50mスケール。事前に設定しておくことで、通常表示と市街地図表示を選ぶことが可能となっている。市街地図表示の場合、道幅や建物の形状、道路の色分け、緑地の表現など、見た目にも詳細な地図となるため分かりやすさは抜群。逆にルート案内中など、表現が過剰と思える場合は通常表示を使えばいいことになる。ただ、この切り替えがメニューの深いところにあるのため、変更するのがちょっと面倒なのが難点。前述のストラーダチューンに含まれていてほしい項目だ。もう1つ要望を書いておくと、現状、一方通行の表示は25mスケール以下のみ対応となっているため、ここは50mスケールでの表示にも対応を望みたい。
画面モードの切り替えは地図画面左上のコンパスボタンを押すことで、フロントワイド、3D、ノースアップ、2画面をトグル切り替え。2画面表示時の右画面は事前にメニューから設定しておくことで、地図やルート情報などを選択することができるようになっている。
目的地検索は名称、電話番号、住所、周辺施設など一般的な方法が用意されている。それぞれのメニューも分かりやすく、同社、他社を問わずカーナビを使ったことがある人なら、すぐに使うことができるはずだ。検索した施設などに関しても情報が豊富に収録されており、例えば駅や大型施設などでは「出入口」や「駐車場」が、コンビニなどでは駐車場やATMの有無、酒・たばこの取り扱いなどまでチェック可能だ。
と、まぁ、使い勝手や情報量については手堅くまとめられ、分かりやすい印象。ただ、ストラーダに限らず車載カーナビで問題になるのが、新規スポットをはじめとした未収録の場所を探したい場合だ。住所検索でなんとかするとか、地図上で当たりを付けるとか、場当たり的に対処することもできなくはないけれど、ここはもう素直に通信機能を持つスマホと連携するのが手っ取り早い。本機の場合、一番カンタンなのは業界標準的な存在となっている「NaviCon」アプリを使う方法だ。スマホにアプリを入れてBluetooth接続を行なう必要があるものの、ハンズフリー通話を使うならBluetooth接続はマストだし、アプリそのものも長年使われているだけに分かりやすくスピーディな検索が可能。また、本機はAndroid Autoにも対応しているので、そちらも利用することができる。ただ、“情報の鮮度”って面でのメリットはあるものの、あくまで“ナビゲーション”と考えるなら、ナビ本体の機能を使った方が高性能なのは当然だ。
さらにもう1つの選択肢として用意されているのが、同社製スマホアプリ「Drive P@ss」でスマホ接続を行なうことで利用できる音声検索を活用すること。これはいわゆるコンシェルジュ的な使い方をする機能で、ナビと対話していくことで目的地を探し出すといったもの。この機能、音声の認識はなかなかのハイレベルで、ナビとのやりとりは至ってスムーズ。探し出したスポットを目的地として設定することもカンタンだ。ただ、Android AutoやNaviConとは排他接続なので、「どっちも使いたい!」ってことになると、接続を変更する手間がちょっと面倒に感じられるかもしれない。
スマホうんぬんはともかく、ナビの鮮度を保つためには無料で行なえる地図更新も活用したいところ。本機の場合、道路地図、案内画面、音声案内、地点検索の各データを更新する「部分更新」が年間6回(最大3年間、2021年12月10日までを予定)、さらに市街地図まで加えた「全地図更新」を3年間に1回、無料で行なうことが可能。ここしばらくは首都圏を中心に新規開通道路が数多く予定されていることもあり、こうした特典が付いているのは嬉しい限り。しっかり活用したい。
カスタマイズ可能なルート探索と分かりやすい案内で安心
ルート探索は目的地設定時に推奨ルートでの探索が行なわれるほか、必要とあれば「おまかせ」「有料優先」「一般優先」「eco」「距離優先」の5ルートを同時に探索することができる。目的地の前に寄り道したい、なんて場合の追加もカンタンだ。
普通ならこれで終わりになるトコロだけれど、ストラーダにはストラーダチューンがある! ルートの項目を選ぶことで「有料道路優先」「道幅優先」「渋滞回避」「ルート学習」「VICS考慮」のパラメータを調整することができる。運転に慣れていないなら道幅優先を「広」にとか、とにかく渋滞がイヤだ! って場合なら道幅優先を「狭」&渋滞回避を「高」なんて具合に設定すればイイ。ゲーム感覚で自分好みのルートになる設定を探すのもアリだ。
一般道での案内は交差点拡大図を基本に、道中では方面案内看板やレーンガイドがサポートするといった味付け。さらに一部交差点には実車をベースにしたイラストによる「リアル3D交差点拡大図」も用意されており、分かりやすい案内をしてくれる印象。一方、高速道路での案内はJCT(ジャンクション)やIC(インターチェンジ)での拡大図表示を中心に左画面にICなどの施設を表示する「ハイウェイモード」を用意。こちらも分かりやすい案内で、高速道路を走り慣れていないドライバーも安心できるハズ。
従来モデルでも採用していた制限速度や指定方向外進行禁止などの道路標識情報を画面上に大きく表示してくれる「安全運転サポート」は、「ゾーン30」や高速道路での逆走検知・警告を加えて「安全・安心運転サポート」へと進化。ドライバーの「うっかり」を防止するって面ではかなり有効な機能と思える。
自車位置精度でのトピックは、準天頂衛星「みちびき」に対応していること。この11月1日からは正式サービス開始となり、24時間測位可能となったことで、精度向上が期待される。……ものの、今回のテストを行なったのはそれ以前のため、その恩恵を受けることはできなかった。残念。
で。毎度おなじみの場所で走ってみたところ、通常の場所では当然ながらまったく問題なく、ナビ専用機ならではの完璧な精度を見せた。このレビューならではの意地悪な場所、つまり高さの異なる一般道と高速道路の認識、GPSの電波を受信できない地下駐車場での認識に関しては、ややブレる場面も。もっとも、どこか別の場所を示してしまうわけではないし、少し走行すれば正しい位置に復帰するため、普通に使っている分には特に問題になることはないレベルだ。
圧巻の映像ソース再生
エンタメ系はDYNABIGスイングディスプレイの性能がフルに活かせるところ。Blu-rayディスクや地デジの視聴は、車内で楽しむレベルとしては圧巻の美しさ。HDMI出力が用意されているため、モニターを追加すれば走行中にリアシートで映像を楽しむことも可能だ。
音声系ではSDメモリーカードやUSBメモリーを使ったハイレゾ再生に注目。オーディオ専用のカスタマイズメニュー「オーディオチューン」を使えば、イコライザーなどのお手軽系から、各スピーカーのレベルやディレイ調節といったマニアも納得のコダワリ調整まで自由自在に行なえる。
まとめ
1番のウリはやはりDYNABIGスイングディスプレイ。液晶マニア垂涎(?)の9V型IPS液晶は文句なしに美しい映像を描き出してくれるし、上下左右に向きを調整できるのも嬉しい。加えて、この魅力的なディスプレイを専用フィッティングキットなしで装着できるのも、お手軽だしお財布にやさしい。2017年より対応確認が取れた車種が増え、現状では350車種以上となったのも嬉しいニュースと言えるだろう。より多くのユーザーが手軽に大画面ナビを楽しめるようになったワケだ。
性能面では尖った部分はないものの、大きな不満を覚える部分もなく、すべてにおいて平均以上といった印象。オプションもいろいろと用意されており、ユーザーの使い方に合わせてシステムアップが楽しめるのもポイントの1つ。最後に忘れてはならないのが、「ETC2.0車載器を同時に購入するなら“CY-ET2500VD”が鉄板」なこと。TSTPの未来感はぜひ味わってほしい部分なのだ。