レビュー
【ナビレビュー】ナビ初心者もマニアも納得!? ワガママに応えてくれる9V型大画面。パナソニック「ストラーダ CN-F1XD」
専用ドラレコと連動
2017年12月20日 16:29
純正カーナビやスマホナビといったライバルに押されつつある市販カーナビ。激しい競争の中、各社が競って独自性を強めることで優位性を見出している。その方向性はナビゲーション面だったり、オーディオ関連だったりとさまざまだけれども、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の「ストラーダ」が目指しているのは、ずばり“エンタメ”だ。
市販カーナビ唯一のBlu-rayビデオ再生を皮切りに、ドライブレコーダー(ドラレコ)との連携、2016年モデルではフローティング構造を採用した「DYNABIG(ダイナビッグ)ディスプレイ」を開発。従来、8V型を超えるディスプレイを採用するには、クルマに合わせた専用の車種別用フィッティングを必要としたが、この機構は専用フィッティングを必要とせず9V型大画面を多くの車種に取り付け可能とし、ここ数年トレンドとなっている大画面化への要求に独自の回答を導き出した。
こうした流れを背景に登場したのが2017年モデルだ。ラインアップは「CN-F1XD」を筆頭に「CN-F1SD」「CN-RX04D/WD」「CN-RE04D/WD」の4モデル6機種。F1系モデルでは9V型ディスプレイ搭載&Blu-ray再生が可能、REおよびRX系モデルは7V型ディスプレイを搭載する一般的な2DIN一体型となっている。
大画面化の最適解といえるダイナビッグスイングディスプレイ
今回、レビューを行なったのはフラグシップとなるCN-F1XDだ。カンタンにスペックを列記すると、2DINサイズに収まる本体に9V型HD(1280×720ドット)ディスプレイを搭載。大画面化と同時に高解像度化が始まりうれしい限りではあるが、表示そのものはスケーリングによるワイドVGA相当となっている。地図データは16GBのSDメモリーカードに収録され、そのほかBluetooth接続、スマホ連携、ハイレゾ再生などに対応するなど、まさにてんこ盛りのフルスペックだ。
そんななかでも最大の注目ポイントとなるのが、このモデルのみに搭載される新開発の「DYNABIGスイングディスプレイ」だ。これは、“スイング”の文字が加わっていることからも分かるように、従来の上下、チルト、奥行きに加え左右15度ずつのスイング機構を加えたもの。先代のダイナビッグディスプレイはもちろん、専用フィッティングが必要だったこれまでの大画面モデル、それに2DINサイズの最も一般的なモデルにおいても、基本的に画面は取り付け面に対して直角。つまり運転席から見ても助手席から見てもパースが掛かった画面を見ることになるわけ。さらに、ダイナビッグディスプレイの場合はインパネからはみ出すという構造上、一般的なモデルより画面が数cmほど手前に来る。それが9インチ画面をより大きく見せているというメリットがある半面、画面全体の視認性という面ではデメリットとなってしまっていた。
これを解消するために搭載されたのが「スイング」機構ってワケだ。左右15度ずつと制限があるため写真で見るとあまり違いがないように見えるかもしれないが、車内で画面を見るとスイングのアリ、ナシはまったくのベツモノって感じ。これまでだって「気になる」ってほどではなかったけれど、わずか15度とはいえこちらを向いてくれると単純に「いいね!」と思える。見た目だけではなくてナビの操作もラクチン。いままで端の方のボタン、具体的にはスケールの変更をする場合などに「よいしょ」って感じで少し体を動かす必要があったのが、「よっ」ってイメージで手を伸ばすだけでできるようになった。まぁ、クルマやユーザーの体格によってもこのヘンの感覚は若干違ってくるけれど、ラクになっていることに変わりはない。
同時に液晶パネルそのものも大きくブラッシュアップされた。新採用となった「ブリリアントブラックビジョン」は視野角の広いIPS液晶を採用するとともに、反射を抑える「AGAR低反射フィルム」、液晶とタッチパネルの隙間をなくした「エアレス構造」などを採用。その結果、視野角は上下、左右とも170度、明るさは約1.3倍、コントラスト比は約2.2倍と、格段のスペックアップを果たしている。同社のナビは映像の美しさでは従来モデルにおいても頭ひとつ抜けた印象だったけれど、新型はそこからさらにもう1段、階段を上った仕上がり。ナビ画面はもちろんBlu-rayビデオなどを見てもパッキリと美しい映像が楽しめる。
もう1つ、細かいながらうれしい変更点が、「AUDIO」「MENU」「MAP」のメニュー表示キーが画面に追加されたこと。ダイナビッグディスプレイの場合、ハードキーがディスプレイの上部に設置されるため、直接ボタンを目で見ることができない。ボタン自体に凹みをつけるといった工夫はされているものの、ちょっと分かりづらかったのも事実。これが画面上の、従来住所などを表示していた場所にも用意されたため、迷わず操作することができるようになった。これはうれしい改良だ。もちろん、設定で従来どおりの表示にすることも可能だ。
また、オプションで専用ドライブレコーダー(ドラレコ)が用意されたのも注目ポイント。昨今のドラレコ需要の高まりについては言うまでもないけれど、大きな画面で映像や記録場所の地図を確認できるという意味で、カーナビ連動型のメリットはかなり大きい。セッティングもドラレコの小さな画面でやるのではなく、カーナビの画面が使えるからラクラクだ。
さまざまな検索方法が用意されたカーナビ面。2種類の「スマホ連携」に対応
カーナビ面は2014年に発売されたCN-RX01Dなど「美優(びゆう)ナビ」の流れを汲んだもの。
2トップメニューによりカーナビ機能やAV機能を簡単に選択できたり、フリック、ダブルタップ、2点タッチ、ピンチイン&ピンチアウトによるスマホライクな地図操作だったりと、使い勝手のよさはそのまま。地図スクロールなど最初に動きがシブく感じることはあるものの、ダイナビッグスイングディスプレイにより画面がインパネより近くなっていることもあって操作性は抜群だ。
初めてストラーダの地図を見た場合、ビックリしてしまうのが一般的なカーナビとスケールが違うこと。このレビューでは地図表示を紹介する場合、基本を「100m」スケールとしているのだけれど、ゼンリン製の地図をベースとする同社の場合は「50m」スケールが、だいたい他社の100mスケールと同じ見た目になる。そのため、このレビューにおいても基本、50mスケールの地図を使って案内などを紹介している。
で、50mスケールの地図を眺めてみた場合、いわゆる市街地図表示相当となるため道幅や建物形状の反映、道路の色分け、緑地のグラフィカルな表示など、とても分かりやすい表現となっている。ただ、そうした情報を持ちつつも一方通行表示が25mスケール以下となっているのは市街地ではちょっと不便。また、実際に走るとなると情報が過剰に感じられる面もあって、スケールはそのままに市街地図表示を解除できる設定も用意されている。ただ、いちいち切り替えるよりは100mスケールをメインとしてしまったほうが使いやすいかも。まぁ、このあたりは好みの問題ではあるけれど。
そうした若干の不満を解消してくれるのが、ストラーダならではのカスタマイズ機能「ストラーダチューン」。本機ではさらに項目が充実しており従来のルート、ガイダンス(案内)、マップに加えVICS WIDEが追加された。こまごまとした設定の変更がカンタン!なことに加え、こうして設定した内容はユーザー情報として記録することができ、2つまでセットして好きなときに切り替えられる。家族共用のクルマで好みが違うとか、1人のときと同乗者がいるときで設定を変える、なんてマニアックな使い方にも対応できるのが意外と便利なのだ。
目的地検索は名称、電話番号、住所、周辺施設など一般的な方法が一通り揃っている。カーナビを使ったことがある人なら、まったく不安なく使うことができるはず。うれしいのは大型施設や駅などには出入口情報が用意されていること。地下鉄の駅などで待ち合わせをする際、「○番出口で」なんて場所を指定されてもクルマ側からは分かりづらいけれど、このモデルならピンポイントでその場所に行くことができる。
もう少し違う検索方法がほしい、なんて場合には「スマホ連携」を使うとイイ。今回は試すことができなかったのだけれども、連携方法は2タイプ用意されていて、1つは従来どおりの「Drive P@ss」を使う方法、そして本機ではもう1つ新たに「NaviCon」にも対応。前者は音声認識による対話型エージェントタイプ、後者はおなじみのスマホ用アプリ。また、Android Autoにも対応しているので、好みやシチュエーションに応じて使い分けることで、新しいスポットの検索などがよりスムーズに行なえるハズだ。
現時点では収録されていない新しいスポットや道路情報などは、無料の「全地図更新」により情報を更新することが可能。ストラーダの2017年モデルでは2020年12月中旬まで(予定)に1回、無料で全地図更新を行なうことができるのだ。さらに本機の場合は、同期間内で2か月ごとに更新される道路データ、4か月ごとに更新される索引データの部分更新も無料提供される。常に新しい地図がほしい、ってユーザーにはうれしいポイントだろう。
通常の案内に加え道路情報表示による運転サポートも
ルート探索は「おまかせ」を基本に「有料優先」「一般優先」「eco」「距離優先」の5ルートが同時に探索できる。このレビューでいつも探索をしているスポットをいくつか試してみたところ、新しい道路の開通などによりルートが若干変わっているものの傾向は変わらず。基本的には「おまかせ」を選んでおけばほぼOKといった印象。「もうちょっと自分好みのルートにしたい」、なんて場合は前述のストラーダチューンでカスタマイズすればいい。「有料道路優先」「道幅優先」「渋滞回避」「ルート学習」「VICS考慮」の5項目を調節することで、好みを反映させることができるはずだ。
一般道での方面案内看板、交差点拡大図といったあたりが基本。デフォルメされた拡大図を使った2画面表示は、ランドマーク表示が若干小さく見づらいのが気になるものの、大まかな道幅や距離、レーンガイドが表示されるなど十分な情報を提供してくれる。そのほか、交差点をリアルなイラストで案内する「リアル3D交差点拡大図」が約1860交差点(方向別に用意されるので画像的に約5980枚)に用意されており、進むべき方向や車線がとても分かりやすくなっている。
高速道路での案内はJCT(ジャンクション)やIC(インターチェンジ)での拡大図表示が中心。左画面に地図、右画面にSA/PA(パーキングエリア)、ICなどの施設を表示する「ハイウェイモード」も用意されるなど分かりやすい案内となっており、高速道路に慣れていないドライバーでも安心して走行することができるハズだ。
一時停止や制限速度といった道路標識を画面上に大きく表示することでドライバーに注意を促す「安心運転サポート」も搭載。高速道路のSA/PAでの逆走の注意喚起も行なってくれる。以前のモデルでは数秒で消えるもののど真ん中に拡大表示していたため若干うるさく感じることがあったけれど、本機ではレイアウトを変更。表示場所をズラすことでそうした不満を解消するとともに、ストラーダチューンで拡大表示をOFFにすることも可能になり、使い勝手も向上している。
渋滞情報はFM放送を利用したVICSを利用。本機では新たに「VICS WIDE」にも対応しており、渋滞回避ルート探索機能「スイテルート案内」にも対応。また、現在は東京都内のみとなっているが、タクシーなどの走行情報を活用したプローブ情報により、交差点の進行方向別に渋滞状況を取得して、より早く目的地に着くことをサポートしてくれる。このレビューは神奈川県で行なっているため、それを実感することはできなかったけれど、サービスが全国に広がればかなり便利な機能と言えそう。また、大雨などの気象災害情報を地図上に表示してくれる機能も備わっており、安心してドライブすることができそうだ。また、オプションのナビ連動型ETC2.0車載器を装着することで、高速道路の料金決済はもちろん、光ビーコンや電波ビーコンによる渋滞情報の取得や、それを元にした渋滞回避ルート探索が可能になる。高速道路をよく利用するなら同時に装着するのがオススメだ。
最後に自車位置精度について。GPSに加え準天頂衛星「みちびき」にも対応しており、普通に走行している限り問題なく専用機らしい安定した測位を見せてくれる。ただ、上下方向の認識、GPSの電波を受信できない場所では若干不安定になってしまう。あくまでも厳しくみた場合、という注釈が付きはするものの、もう少し改善を望みたいところではある。
Blu-rayに加えてハイレゾにも対応
大きなポイントはFLAC、WAVファイルによるハイレゾ対応を果たしたこと。同時にD/Aコンバータを核とするサウンドエンジンまわりについても、新たにカスタムコンデンサなどを採用するなど高音質化を図っている。
ソース対応はBlu-rayディスク再生をはじめフルセグ地デジ、Bluetoothによるストリーミング再生、SDメモリーカード&USBメモリーからのメディアファイル再生、SDメモリーカードへのCD録音、オプションのUSB接続ケーブルによるiPhone接続など幅広く対応。セッティング面においても、音のプロによるサウンドチューニングが手軽に楽しめる「音の匠」、スピーカーごとにディレイや出力レベルが調節が可能なモードなど多彩な機能が用意されており、マニアにも納得の内容となっている。
まとめ
市販ナビでは唯一無二のBlu-ray対応に、特別なフィッティングを必要とせずに300車種以上(2017年11月末現在、同社調べ)に大画面ナビを装着可能とするダイナビッグスイングディスプレイ。新しいストラーダのフラグシップCN-F1XDは、この2点だけでも十分に購入動機となるヒキの強さを持っている。加えて従来モデル譲りの機能にしても、さまざまなブラッシュアップが行なわれており、完成度も高められた印象だ。
ツートップメニューやストラーダチューンなど、使い勝手のよさも同社のナビの魅力と言え、カーナビビギナーや「ナビなんてスマホで十分」と思っている人にこそ使ってほしいモデルだ。もちろん、ナビ好きが使っても十分にワガママに応えくれる機能を持っている。