レビュー

【タイヤレビュー】静か、快適、滑りにくい。グッドイヤーの新コンフォートタイヤ「E-Grip コンフォート」をウェット路面で試す

従来モデルからパターンノイズ、通過騒音、ハンドリング、操縦安定性が進化

 グッドイヤーが2014年から新シリーズとして市場導入している「EfficientGrip(エフィシエントグリップ)」シリーズ。2014年に最上位モデルとなる「EfficientGrip(E-Grip)Performance」が発売され、同年に「E-Grip ECO EG01」、2015年に「E-Grip SUV HP01」が登場した。

 E-Gripシリーズは、安全性はもちろん、高い運動性能、上質な乗り心地、時代が求める燃費性能や経済性などのすべてが集約されているといい、グッドイヤーがすべてのドライバーに提案する新しいコンセプトを用いている。

 そして、2月1日よりE-Gripシリーズに「EfficientGrip Comfort」(E-Grip コンフォート)と「EfficientGrip Performance SUV」(パフォーマンス SUV)の2モデルが追加されることになった。パフォーマンス SUVについては別記事で触れるので、本稿ではE-Grip コンフォートの特徴や性能、試乗での印象をお伝えしたい。

2月1日に発売となる新乗用車用コンフォートタイヤのE-Grip コンフォート。低燃費タイヤながら応答性に優れたハンドリング性能、高いコンフォート性能などを特徴とする「EAGLE LS EXE」の後継モデルで、14~20インチの計51サイズをラインアップ。開発・生産は日本で行なわれている
E-Grip コンフォートでは非対称パターンデザインを採用。トレッドパターンでは両ショルダーブロックの配列を従来から細分化するとともに、ピッチ配列の最適化によって周波数分布と音圧レベルを平準化するなどし、従来モデル(EAGLE LS EXE)からパターンノイズを28%、通過騒音を1.0dB低減することに成功した。さらに接地形状の最適化によってレーンチェンジ時などに体験できるヨーレートを19%改善している

快適性を第一に、ロードノイズの低減や乗り心地のよさを追求

 グッドイヤーでは、低燃費タイヤでも走りの楽しさを味わってもらいたいという思いから「EAGLE LS EXE」が以前からラインアップされていた。低燃費モデルながらもハンドリング性能やコンフォート性能を追求してきたEAGLE LS EXEの後継モデルが「EfficientGrip Comfort」となる。ラベリング制度による性能表記は転がり抵抗が「AA」、ウェットグリップが「b」(一部サイズは「c」)。モデル名称のとおり、快適性を第一に考えて開発を行なっていて、ロードノイズの低減や乗り心地のよさを追求している。

 トレッドパターンを確認すると、従来品のEAGLE LS EXEよりもショルダーブロックが細かくなっているのが分かる。ブロックのピッチ数を13%向上させることによって、パターンノイズは28%、ロードノイズは7%の低減ができたそうだ。

 また、大型センターリブの配置やマルチプルリブデザインを採用するなどによって接地面の圧力を均等化させることができ、ハンドリング性能や乗り心地も改善しているという。使用するコンパウンドは、「フレキシブルキャップコンパウンド」と呼ばれる柔軟性の高い素材を表面に用いることで、路面からの衝撃を吸収している。加えて、ラウンドプロファイルの採用やカーカスコードをより細かくすること、ビード部に従来よりも硬いゴムを使うことなどによって、タイヤ全体で乗り心地を引き上げている。

E-Grip コンフォートの商品概要
E-Grip コンフォートのポジショニングイメージ
E-Grip コンフォートの性能向上一覧
トレッドパターンについて
ショルダーピッチ数を従来の69から78と、13%向上させたことで路面のピッチ音を分散させ、ノイズを抑制することに成功
従来モデル(EAGLE LS EXE)からパターンノイズを28%、ロードノイズを7%低減
静粛性能について
接地形状を最適化したことで路面追従性が安定
ヨーレートはEAGLE LS EXEから19%改善
通過騒音の抑制、低燃費性能の向上などが図られた
EAGLE LS EXEとE-Grip コンフォートの性能比較レーダーチャート。パターンノイズ、通過騒音(車外)、ハンドリング(官能評価)、操縦安定性(ヨーレート)が進化したことが見て取れる
E-Grip コンフォートのサイズ一覧
EAGLE LS EXEとE-Grip コンフォートの比較をマークXで実施

 テストコースを使用した試乗は、実際に従来品となるEAGLE LS EXEとE-Grip コンフォートの比較ができた。試乗日はあいにくの雨模様で雨量も多く、想定したテスト環境とは異なっていたのかもしれないが、それでも進化の度合いは十分に感じることができた。

 まず、純正と同様の215/60 R16サイズを履いたマークXに乗り込む。E-Grip コンフォートに乗って最初に感じたのが、ステアリングに伝わってくる不要なバイブレーションがカットされていること。これはインフォメーション性に乏しいという訳ではなく、路面状況はしっかりと伝えつつ、ドライバーが不快となる振動を押さえ込んでいるということ。テストコースは舗装が荒れた道路を再現した路面と通常の路面の2通りの環境があり、どちらでもE-Grip コンフォートの静粛性が確認できた。

 EAGLE LS EXEのパターンノイズは高周波が多く、ドライバーやパッセンジャーの耳に音が届きやすい。しかし、E-Grip コンフォートはトレッドパターンの見直しにより可能な限り高周波をカットしているために、静粛性が高く感じられたのだ。加えて、波状路での走行シーンも設けられていたのだが、ここではタイヤ自体が振動を減衰するような感覚があり、乗員に不快な振動が抑えられていることが分かった。

舗装が荒れた道路を再現した路面、通常の路面でE-Grip コンフォートとEAGLE LS EXEの性能比較

 マークXで静粛性や乗り心地を確かめたところで、続いてプリウス PHVを使って低μ路でのダブルレーンチェンジやフルブレーキ性能の試乗を実施。ここではE-Gripシリーズの「コンフォート」「エコ」「パフォーマンス」の3モデルが用意された。

E-Gripシリーズの「コンフォート」「エコ」「パフォーマンス」の3モデルを比較試乗

 E-Grip コンフォートの性能は3モデルの中では真ん中になるのだが、どのシーンでもパフォーマンスに近い結果を得られた。低μ路の路面μは0.3で、これはウェット路面よりも滑りやすい状況で、積雪路に近い環境となっている。パフォーマンスは40km/hに近いスピードでステアリングを切り込んでもフロントタイヤが反応してクルマが旋回する。一方のコンフォートはそこまではいかないが、それでも30km/hを越えた速度でもダブルレーンチェンジが可能だった。

 60km/hからのフルブレーキして完全停止するまでの制動距離に関しても、パフォーマンスが約15mで、コンフォートが約20m、エコが約30mという結果で、性能としてはパフォーマンスに近い印象を受けた。

プリウス PHVで低μ路でのダブルレーンチェンジやフルブレーキ性能を体験

 グッドイヤーでは、E-Grip コンフォートをコンパクトカーやセダンのリプレイス、またインチアップユーザーに向けたモデルと想定。サイズラインアップは14インチから20インチまでの計51サイズが用意されている。上質な乗り心地や静粛性を維持しつつ、ハンドリング性能も犠牲にしていないところを考えると、多方面の車種から支持されるモデルとなるのではないか。

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。