レビュー

ラップタイム計測に便利。“スマホ連携腕時計”カシオ「エディフィス」を使ってみた

トロロッソ・ホンダのスポンサー腕時計

カシオ計算機のEDIFICE EQB-800D-1A

 カシオ計算機のエディフィス(エディフィス)と言えば、モータースポーツファンには以前はF1のレッドブル・レーシングの、そして現在はスクーデリア・トロロッソのスポンサーとしてもよく知られたブランドだ。スクーデリア・トロロッソは2018年からホンダのワークスチームとなり、トロロッソ・ホンダとなるが、2018年以降のエディフィスはスクーデリア・トロロッソのスポンサーになることがすでに発表されているため、トロロッソ・ホンダのオフィシャルな腕時計がエディフィスということにもなる。

 そのエディフィスブランドの最新製品が、今回紹介する「RACE LAP CHRONOGRAPH EQB-800」になる。EQB-800にはスマートフォンと連携して動作する「Connectedエンジン」が搭載されており、スマホにダウンロードしたアプリと連携して正確な時刻合わせ、旅行時のタイムゾーンやサマータイムの自動調整、さらにはEQB-800のストップウォッチ機能を利用して計測したラップタイムをスマホに転送して活用する機能などが搭載されている。今回このEQB-800のシルバーモデル(EQB-800D-1A)を約1カ月利用してみたので、その使用感などを紹介していきたい。

モータースポーツファンにはおなじみのエディフィス最新製品

Toro Rosso STR12

 カシオのエディフィスは、モータースポーツのファンにはおなじみのブランドだ。というのも、F1で長らくレッドブル・レーシングのスポンサーを務めていたし、現在はスクーデリア・トロロッソのスポンサーを務めており、言うまでもなく同チームは2018年からはホンダのワークスエンジン使用チームとなる。また、今シーズンは日本のSUPER GTに参戦しているTOM’Sチーム(36号車、37号車)のスポンサーにもなっており、グローバルから日本国内まで、モータースポーツファンには認知度が高いブランドの1つと言っていいだろう。

36号車 au TOM'S LC500
37号車 KeePer TOM'S LC500

 そのエディフィスブランドの最新製品がEQB-800シリーズになる。以下の3つの製品がラインアップされており、ベゼルカラー、バンドの素材などの違いをユーザーが好みに応じて選べるようになっている

モデル名ベゼルカラーバンド素材メーカー希望小売価格
EQB-800DB-1Aブルーメタル50,000円(税別)
EQB-800D-1Aシルバー46,000円(税別)
EQB-800BL-1Aブラック48,000円(税別)

 今回はEQB-800D-1Aという、メタルバンドでシルバーベゼルの製品を試用した。

メタルバンドでシルバーベゼルのEQB-800D-1A
左側面のボタンは、上側(画面左のボタン)がモード切替ボタン、下側(画面右のボタン)がBluetoothを開始するボタン
右側面のボタンはストップウォッチモードで使うもの。上側(画面右のボタン)がストップウォッチの開始と停止。下側(画面左のボタン)がスプリットタイム用のボタンで、長押しでリセット
保存用の外箱。この箱に入れた場合など、暗所では針が自動で停止して節電状態になり、無駄なバッテリー消費を避けることができる

 EQB-800シリーズの最大の特徴は、アナログ腕時計のデザインを採用していながら、対応アプリをインストールしたスマホとBluetooth接続することで、スマホからさまざまな設定変更や活用ができることにある。アプリはiOS(iPhone)版とAndroid版があり、それぞれのアプリストアからダウンロードして利用できる。スマホとの接続は、Bluetooth LE(Low Energy)という仕組みを利用する。このBluetooth LEを利用するには、スマホのBluetooth機能がBluetooth 4.0以降に対応している必要がある。

Bluetoothのマークがついているボタンを押すと通信が開始される
スマホ用アプリケーション

 なお、Bluetoothでスマホと接続して利用するというと、電池の持ちに不安を感じる人がいるかもしれない。実際、Apple WatchやAndroid Wearといった「スマートウォッチ」と呼ばれる製品の場合はバッテリーが1日程度しかもたない。それらの製品は常にBluetoothでスマホに接続して通信しており、かつ腕時計内にも演算装置が内蔵されており、それらが電力を消費しているのだ。

 それに対して本製品では、1日4回の自動時刻修正のほか、ユーザーがボタンを押してBluetooth接続モードにしない限りは通信が行なわれないため、バッテリーへの影響は最小限だ。また、充電は文字板の下面にあるソーラーパネルを利用するため、普通に使っていれば自然に充電される。スマートウォッチのように1日で電池切れになるということはないので、安心してほしい。なお、文字板に用意されている充電ゲージで現在の充電量が確認できるので、足りないようなら光に当てて充電するといいだろう。

 なお、付属のケースなど、光が当たらない暗所に夜間に起き続けると、腕時計が自動で状況を認識し、まず秒針を止める。さらにその状態が数日続くと日付け以外の針の動きが止まり、Bluetoothやアラームなどほとんどの機能も停止する仕組みになっている。腕時計をケースから出すと元のように動き出すので、必要がなければケースなどにしまっておくといいだろう。

現地に到着したらスマホアプリで現地時間に簡単に切り換え可能。出張が多いビジネスパーソンに便利

 一般的なアナログ腕時計の基本機能である、時針、分針、秒針の3つだけでなく、それ以外に日付を表示する日付窓、時針、分針からなるワールドタイムと2つの追加のメーターが用意されている。

文字板。中央下部にある2本の小さな針を備えた部分がワールドタイム

 バッテリーのメーターに関してはすでに説明したとおりなのだが、ワールドタイムの機能は海外出張が多いビジネスパーソンにはとても便利だ。ワールドタイムには、あらかじめ滞在先など別の都市の時刻を設定しておける。例えば、日本にいるうちに渡航先の時刻を設定しておけば、日本にいるときから渡航先の時刻を確認しながら時差の調整をするという使い方も可能だ。

アプリを利用すれば現地時間をあらかじめワールドタイムに設定することができ、ワンタッチでホームタイムと切り換えることもできる

 現地に着いたら時計の右下にあるボタンを押して、メインダイヤルの時刻とサブダイヤルの時刻を入れ換えることができる。もちろん、Bluetoothボタンをプッシュしてスマホと接続し、アプリのメニューから入れ換えることもできる。かくいう筆者も、年間の3分の1ぐらいは海外に出張しているのでこれは便利だ。普通のアナログ腕時計なら自分で調整しないといけないし、スマートウォッチはバッテリーが1日しか持たないという課題がある。それに比べて本製品はBluetoothでスマホと接続する仕組みをうまく活用しているので、調整は簡単に終わるけど、バッテリーの持ちは気にせずに済むといううまいバランスを実現していると言える。

出張先に到着したら、時計右下のボタンやスマホのアプリから現地時間と日本時間を入れ換える
ワールドタイムと日本時間を入れ換えるときの動作。針がぐんぐん回転して、見ているだけでも楽しい

 今回は半導体メーカーの技術説明会に参加するために出張したハワイの時刻に設定しておき、現地についたら(到着前でもいいが)スマホに接続して、現地時間と日本時間を入れ換えただけで作業が済んだ。現地滞在中にも日本の時刻がワールドタイムに表示されるので、時差のある日本に連絡するときもサッと日本時間を確認できて便利だった。

ターゲットタイムを設定すれば、どのタイミングで目的の車両が来るか予想できるストップウォッチ機能

 本製品が持つもう1つのユニークな機能がストップウォッチ機能だ。腕時計にストップウォッチがあるのは別に珍しいことではないが、本製品には他社の製品にはない特徴を備えている。それがターゲットタイムと比較してどの程度の状態にあるかを腕時計に表示する機能、そしてログをとり、そのログをスマホに転送できるという機能だ。これらの機能は、カシオがエディフィスブランドでスポンサーを務めているTOM’Sチーム(SUPER GTの36号車、37号車)が監修しており、モータースポーツの現場でより使いやすい機能になっているのが特徴だ。

 前者に関しては、あらかじめスマホでターゲットとなるタイムを設定することが可能になっている。例えば、サーキットなどで使う場合、とくにレース中のラップタイムはほぼ一定ということが多いだろう。そこで2016年の平均ラップタイムなどをあらかじめスマホで設定して転送しておくと、文字板の中央上にある「ターゲットタイムインジケーター」に目標タイムに対してどの程度の到達度であるかが表示される。

アプリでターゲットタイムを設定することができる
ターゲット車両が来たらストップウォッチで計測開始
ターゲットタイムまで残り10秒になると、ターゲットタイムインジケーターに残り時間が表示されてターゲット車両が来そうだと分かるので、スプリットタイムボタンを押す準備をする
12時~2時のオーバーゾーンに来ていれば、この周回がターゲットタイムよりも遅いと分かる

 とくに目標ラップタイムの10秒前から針が残り10秒のエリアに入り、まもなくターゲットがフィニッシュラインに到達するということが腕時計だけで分かる。ターゲットタイムインジケーターに注目していれば、目的の車両が気がついたら通過してしまっていたという計測ミスを防ぐことができる。自分のお気に入りのチームやドライバーのタイムを設定しておけば、いつ自分のお気に入りの車両が目の前を通過するか分かるので、単にタイムを測るというだけでなく、観戦にも役立つツールと言える。

 ただ、ストップウォッチモードを利用するには左上のボタンを押してストップウォッチモードにした後に、右側のボタン2つ(上が計測開始/停止、下がスプリット)を利用して操作するのだが、慣れるまでは少し時間がかかるだろう。はじめにマニュアルをよく読んで慣れてからサーキットで使いたいところだ。

スマホと接続してデータを転送すると、計ったタイムをその場でラップチャート形式で確認できる
アプリには、ラップタイムが数値とグラフで表示される

 このほかにもユニークな機能として、計測したラップタイムをデータとしてスマホに転送することもできる。スマホのアプリでビジュアル的に確認できるほか、メールなどに添付して送ることが可能。その場合は「カンマ区切り形式」と呼ばれるデータフォーマットになるので、Microsoft Excelなどにデータを読み込ませれば、表計算ソフトウェアで扱うことができ、その後の処理も簡単だ。また、計測したデータをメールで自分に送り、テキストエディタなどにコピー&ペーストして「CSV形式」と呼ばれる拡張子(.csv)のファイルとして保存すると、Microsoft Excelなどの表計算ソフトで読み込むことができるようになる。その後は表計算ソフトを使ってグラフを作ったりすることも思いのままだ。

サーキットでラップタイムを計測している様子
データはメールなどに添付して送ることも可能。カンマ区切り形式になっている

 以上のように、EQB-800は高級感あふれるアナログ腕時計のデザインでありながら、Bluetoothを利用して接続する機能を追加することで、これまでの高級腕時計のよさに、デジタルの利便性を付加した製品になっている。とくにワールドタイムの機能は便利で、スマートウォッチのように1日しかバッテリーが持たない製品やデジタル腕時計はあまり好みではないが、スマホと組み合わせて利用する利便性は追求したいというビジネスパーソン、さらにサーキットで憧れのドライバーがいつ通過するなのか分かるようにしたいといった用途に使ってみたいというモータースポーツファンなどにお勧めしたいひと品だ。

笠原一輝