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F1開幕前に「レッドブル・トロロッソ・ホンダ」が来日。ハッシュタグ #namethecar でマシン名募集
「ホンダも少しずつ頑張ってトロロッソさんと前進していきたい」と、ホンダ 山本部長
2018年3月18日 06:00
東京都港区の六本木ヒルズアリーナで3月17日、翌週の3月22日にオーストラリアGPで開幕するF1(FIAフォーミュラ・ワン世界選権)の2018年シーズンに、今シーズンからタッグを組んで新たに参戦する「レッドブル・トロロッソ・ホンダ」がファンミーティング「Red Bull Toro Rosso Honda DAY in TOKYO」を開催した。
当日はBMX・MTBの「AIR TRICK SHOW」、ダンスパフォーマンスの「FOUND NATION」によるオープニングパフォーマンスが1時間にわたって繰り広げられたあと、ステージ上で今シーズンのF1を戦うニューマシン「STR13」のカラーリング(実際にレースを走る車両ではなく、エンジンなどを搭載しない展示用車両)が披露され、メインセレモニーとなるトークセッションがスタートした。
余裕を持って考えるために身体を鍛える必要があるとハートレー選手
トークセッションの序盤では、レッドブル・トロロッソ・ホンダの10号車を担当するピエール・ガスリー選手、同28号車を担当するブレンドン・ハートレー選手の2人が登場。モータースポーツ番組の実況なども務めるサッシャ氏が司会となって進められた。
まずはガスリー選手、ハートレー選手の幼少時代を撮影した写真が会場の大型ビジョンに映し出され、両選手の経歴などについて紹介。ガスリー選手は2017年に日本のスーパーフォーミュラに参戦していたことに触れ、「去年はフランスよりも長い時間をこの日本で過ごしましたが、日本のことは大好きで、食事も大好きです。日本の皆さんは本当に優しくて大好きなんですけど、こうやって日本に戻ってくることができて、それも昨年よりさらに大きな歓迎をしてもらえていると感じて本当にうれしいです」とコメント。
ハートレー選手は父親や兄もレース参戦していたことなどから「僕の経歴はピエールに似ていますが、子供のころ、兄の後を追ってカートをやるようになって、子供のころのモータースポーツに対するイメージは、サーキットで父や兄を応援するというところから始まりました。ニュージーランドでは12歳でカートを卒業するという謎のルールがあって、そこからフォーミュラカーに移り、15歳でレッドブルにピックアップされてヨーロッパに移住しました。6歳のころから『F1ドライバーになりたい』と思っていたのですが、その夢が実現しました」と語った。
また、F1では運転しているだけでなく、頭脳もフル回転させているという話題から、ハートレー選手が多数のスイッチを備えているF1マシンのステアリングには、60ページ以上あるマニュアルが用意されていると明かした。しかし、60人ほどいる担当エンジニアが多くの部分をフィードバックしてくれるので、自分はレース中にエンジニアができないスイッチ操作でクルマの設定変更を行なうぐらいなので、走行中に95%ぐらいは運転に集中していると語った。
さらにハートレー選手は、走行中は頭などに最大で5Gという力がかかり、頭だけでなく体幹を鍛える必要があると説明。運転では身体よりも頭脳を多く使うが、余裕を持って考えるために身体を鍛えている必要があり、肉体的なスポーツだとした。
このトレーニングについて、ガスリー選手は「今日もホテルに1時に着いて、9時からジムでトレーニングしていた」コメントしたが、そこにハートレー選手が「僕は6時30分にはジムにいた」と割って入り、これにガスリー選手が「でも、僕の方がジムで長い時間を費やしたから」と応酬。新人選手2人が笑いながら自身をアピールする場面も見られた。
STR13のテスト結果に手応え
中盤からはレッドブル・トロロッソ・ホンダのチーム代表であるフランツ・トスト氏、本田技研工業 モータースポーツ部 部長の山本雅史氏の2人もトークセッションに参加。トスト氏はコメントの冒頭で「コンニチハ、キテクレテアリガトー」と日本語で挨拶。「私は昔、長い間日本にいたのですが、日本の人々や文化、日本という国が好きなので戻って来れて嬉しいです」と語った。
いよいよ来週となったF1開幕に向け、山本氏は「応援してくれるファンの前で、昨年まではホンダとしても非常に苦しいシーズンでした。本当に悔しい思いをしたので、トストさんと新たなスタートができて、来週のオーストラリアでの開幕を楽しみにしています。今日は本当にありがとうございます」と口にすると、会場からは「がんばれー」との声援と拍手がわいた。
シーズン開幕に向けては、テストでの好調が伝えられているニューマシンのSTR13について両選手に感触を質問。
ガスリー選手は「テストでは1週目にどのチームよりも多い周回数を稼いで、2週目はもうすこしパフォーマンス方面に集中しました。そこでも非常にいい結果が出て、中段グループは接近した戦いになると思いますが、これからもシーズンを通して開発を続けていきますし、ポテンシャルはあると思っています。どんどんクルマを成熟させて戦っていけたらと思いますが、非常にいい感触を掴んでいます」と回答。
ハートレー選手「非常に好調なテストになりましたが、2カ月前に(スクーデリア・トロ・ロッソの本拠地のある)ファエンツァの工場に行ったときからポジティブなものを感じていました。今回のテストで一番最初にコースに入っていったのは私たちですが、そこから信頼性の問題は1つも起きませんでした。これは最初の大きな目標だったのです。中段グループは大変な戦いになるとは思いますが、テストの結果を受けて非常にポジティブな、高い目的設定をしています。最初のレースからポイントを稼ぐのは大変なことだと思いますが、チャレンジしていきたい」と回答した。
また、同じ質問に対してトスト氏は「ここに至るまで、さくら市にあるホンダのR&Dが非常にいい準備をしてくれました。信頼性も、パフォーマンスも上がったパワーユニットを用意してくれました。3826kmの距離を走りましたが、これはシーズン前のテストとしてトロロッソ史上最も長いもので、これはとてもポジティブです。中段の戦いは拮抗しており、確かに大変です。とくにシーズン前半はそうでしょう。しかし、私たちはアップデートしますし、ホンダからも必ずアップデートされるということで、未来に向けてポジティブなシーズン前になっています」と応えた。
山本氏は「トストさんも言ってくれたように、ホンダでは栃木県のさくら市にモータースポーツ関係、とくにF1の開発場所があって、そこのメンバーも非常に頑張ってくれています。今年はシーズン通して(エンジンの使用上限数が)3基が上限なんですね。それを載せ替えるタイミングでは常にアップデートして、信頼性を高めることを目標にしています。そこをトロロッソさんと共有して進めているので、ファンの皆さんの期待に応えられるように、ホンダも少しずつ頑張ってトロロッソさんと前進していきたいと思っています」と語った。
後半には公開取材会が行なわれ、まず代表質問として、モータースポーツ記者会 副会長の大谷氏からガスリー選手に「スーパーフォーミュラとF1のマシンの違い」について質問。ガスリー選手は「昨年スーパーフォーミュラで走ってみて、ダウンフォースが強いクルマだと思いました。それがF1に行くために非常にいいトレーニングになりました。馬力ではF1は955馬力ぐらいあって、スーパーフォーミュラは550馬力ぐらいでトップスピードはかなり違いますが、ダウンフォースの部分では勉強になりました。ファクトリーで働いている人数も、F1は2台のマシンのために1000人ぐらいが働いていますが、スーパーフォーミュラはもう少し規模が小さいというあたりが違いになるかと思います」と答えている。
また、2017年のル・マン24時間レースで優勝したハートレー選手に「今年のF1モナコGPで優勝すると、現役ドライバーとしてモナコ、ル・マンの両方で勝つことになりますが、同じようなことを狙っている選手がもう1人、F1にいますが、モナコは5月、ル・マンは6月なので、あなたが先に達成できる可能性がありますが、意気込みを聞かせてください」と質問。
ハートレー選手は「今年はちょっと難しいかなとは思います。昨年はル・マンで優勝できて、さらにF1デビューも果たしました。最後の最後でチャンスがあってびっくりしたんですけど、今年、こうしてF1ドライバーとして座っているとも思いませんでした。それまでは耐久レースで結果を残してきたからです。(ガスリー選手から「アロンソ選手がいるけど」と投げかけられ)そうだけど、彼はもうホンダエンジンを持ってないから」と回答している。
このほか、来場者からの質問で女性から「マシンに名前は付けますか?」と質問され、ガスリー選手は「僕のマシンは“ガスモビル”」と回答。ハートレー選手は「まだ付けてないし、付けないね」と回答したが、それに続けて「でも、もしツイッターで名前を考えて投票してくれたら付けるかも」と発言。これを受けてトスト氏が「選ばれた人は鈴鹿に招待します」と続け、これに山本氏も追従。トロロッソとハートレー選手が使っているハッシュタグ、さらに「#namethecar」を付けてハートレー選手のマシン名が募集されることになった。
10月に「EDFICE×ホンダレーシング」コラボモデルが発売!
トークセッションの終盤には、展示されたマシンのフロントノーズに刻まれた「EDFICE(エディフィス)」のロゴマークをサッシャ氏が紹介。オフィシャルパートナーとしてスポンサードしており、両選手がこの場で着用しているのも「スクーデリア・トロロッソ」とEDFICEの最新コラボレーションモデルだと述べ、それぞれに使った感想を質問。
ガスリー選手は「去年から使っていますが、これはBluetoothでスマホと連携できるので、去年は日本とフランスを行き来することが多く、到着するとスマホのデータに合わせて時刻を勝手に変えてくれるんです。今年はトロロッソモデルでデザインがかっこいいことも気に入っています」とコメント。
ハートレー選手は「これは2つのタイムゾーンが設定できて、片方にいつもニュージーランドを設定しています。家族や友達に連絡するときに相手の時刻を認識できるので嬉しいです。あと、スマホとつながることもすごく便利なんですが、僕はカシオの時計が昔から好きで、電卓が付いている腕時計とか、TVのチャンネルが変えられるヤツも持ってたんです。カシオの大ファンなんです」と語った。
サッシャ氏は両選手が着用している最新モデルが4月に発売予定になっていると語ったほか、さらに10月7日に決勝レースが行なわれるF1日本GPのタイミングで、EDFICEとホンダレーシングのコラボレーションモデルが発売予定になっていることも明らかにした。すでに絶賛製作中とのことで、サッシャ氏は「どうもカーボンらしいということですが、山本さん」と山本氏に質問。
山本氏は「トロロッソのモデルと近いもので、ベースがカーボンです。ちょっと新しいアイテムをカシオさんが一生懸命(開発を)やってくれていて、ちょっと変わった初のベルトを使ったり、皆さんが楽しめるようなホンダレーシングバージョンを製作中です。鈴鹿GPでカシオさんが発売してくれると聞いていますので、それも楽しみにしていただければと思います」と説明した。
最後にはトスト氏が「ホンダとトロロッソでこれからも努力していくことを約束します。これは成功するためですが、成功できると確信しています。さくらのホンダの皆さんによる素晴らしいR&D活動でいいものを届けてくれていますから、これを力にしていきたい。『ガンバリマス』。皆さん、また鈴鹿で会いましょう」とコメントしてトークセッションは締めくくられた。