【連載】橋本洋平の「GAZOO Racing 86/BRZ Race」奮闘記

第57回:7年間のレース生活に終止符。本当にこれまでありがとうございました

 6月16日より、いよいよGAZOO Racing 86/BRZ Raceのエントリー受付が開始された。7月25日~26日のスポーツランドSUGOが2020年シーズンの開幕戦となる。新型コロナウイルスの影響で先延ばしにされてきたレースも、いよいよ動き出した。

 今シーズンはSUGO以降、8月30日のオートポリス、9月26日~27日の十勝スピードウェイ、10月17日~18日の岡山国際サーキット、そして11月21日~22日のツインリンクもてぎという全5戦となるそうだ。2019年に比べればかなりレース数は減ってしまったが、この情勢であっても開催にこぎつけることができたことはよかった。

 だが、僕はその場に参加することはできない。実は昨シーズンいっぱいでこれまでのサポート体制に終止符を打つことになったからだ。クラブマン・エキスパートクラスにおいてチャンピオンを獲得したところでひと区切りということもある。2020年はディフェンディングチャンピオンとして同じクラスでライバルを迎え撃つのか? それともプロフェッショナルクラスにステップアップして、次の世界を見て行くのか? ……などと考えていたが、それははかない夢となってしまった。

 もちろん、自前のクルマで参戦していたのだから、やりようによっては参戦を継続することも可能といえば可能だった。資金難なら、せめてスポット参戦だけでもと考えたが、中途半端にやるくらいならやめておいたほうがいいと周囲に諭された。身も心も財布もボロボロになりながら、辛い戦いをするのは見ていられないと、リング脇からタオルを投げ込まれたかのようである。僕にもそれを跳ね除けて参戦してやろうという無鉄砲な勢いはなくなってしまった。燃え尽き症候群というヤツだったのかもしれない。2020年初頭、チャンピオンを獲得した浮かれ気分は吹き飛び、所有していた86を売却した。

2019年12月15日に行なわれたTOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL 2019。その中で「86/BRZ Race 2019 Exhibition」が開催され、筆者も参加。これが86/BRZ Raceにおける最後の活動となった

 それ以降、レースに関わるすべてと距離を置いた。正直に言ってしまえば、クルマと関わることさえ辛かった。裏を返せばそれだけ86レースと関わった7年間が充実していたという証だ。40歳間際のさえないフツーのオッサンが生活のすべてを注ぎ込み、一瞬でも輝けたアノ世界には本当に感謝している。86というクルマ、レースのオーガナイザー、そしてあらゆる面でサポートしていただいた方々、今まで本当にありがとうございました。機会があればまた戻って来たいと思います。それまでどうか、このレースを継続していて欲しいと願ってやみません。

 まだこの世界を見ていない方々、そして興味はあるけれど参加していない方々には、1度くらい首を突っ込んでみることをお勧めしたい。クルマ好き、レース好きにとって、最高の環境があるはずだから……。

7年間にわたり本連載を読んでいただいた読者の皆さま、本当にこれまでありがとうございました。86/BRZ Raceは続いていくので、参加したり応援しに行ってもらえたらうれしいです!

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車はトヨタ86 RacingとNAロードスター、メルセデス・ベンツ Vクラス。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学