【連載】橋本洋平の「GAZOO Racing 86/BRZ Race」奮闘記
第8回:ナンバー付きレースならではの楽しみ方。フェリー&自走で北海道 十勝へGO!
(2014/7/25 17:05)
「GAZOO Racing 86/BRZ Race」の第4戦・富士スピードウェイでは、ニュータイヤ「POTENZA RE-11A 4.0」が投入されたにも関わらず、残念ながら好成績を残すことができなかったワタクシ。決勝ではジャンプアップ賞なるものをいただくほどのパフォーマンスを発揮することができたが、「予選が雨じゃなければもっとよかったのに!」などとタラレバをウジウジ言い始めてしまう自分が今でもいる。これもジメジメした梅雨のせい!?
ならば梅雨のないところへ行けばいいじゃないかと考えていると、次戦はなんと北海道の十勝! これは願ったり叶ったり。カラッとしたところで気分爽快走ろうじゃないかと参戦プランを練り始めることにした。
大洗港~苫小牧港まで「さんふらわあ ふらの」で移動
実は、昨年も十勝インターナショナルスピードウェイで86/BRZ Raceは行われていたのだが参戦しなかった。なので、どうやって北海道へ上陸し、レースへ出場するのが得策なのかを知らずにいたのだ。そこで昨年の十勝に参戦したエントラントに聞いてみると、陸送業者に86を託し、自分は飛行機でサーキットへ向かったという方々がほとんどだった。ならば僕も真似できるかといえば答えはノー。そんな豪華プラン、マネーが許さないのである。
そこで行き着いたのがナンバー付きレースカーの旨味を活かし、できるだけ86で自走をし、あとはフェリーでひとっ跳びというプランだ。ただ、闇雲に自走する距離を増やせばリーズナブルかといえばそうでもなさそう。高速代、ガソリン代、そしてドライバーの疲労度というバランスを考えた結果、茨城県の大洗港から北海道の苫小牧港までを繋ぐ、商船三井フェリー(http://www.sunflower.co.jp/ferry/index.shtml)の「さんふらわあ ふらの」での移動を選ぶことにした。
乗船した「さんふらわあ ふらの」は、総トン数1万3539t、載荷重量6805tという大型フェリーで、大型トラック160台、乗用車77台を収容可能。定員は705名も乗ることができるらしい。乗ればレストランはあるわ、ゲームセンターやシアターはあるわ、大浴場はあるわの豪華ぶりで、移動は快適そのもの。乗船中はメカニックとともに打ち合わせをしつつ、ゲームセンターのパチスロで動体視力を鍛えるトレーニング(?)も敢行。そして疲れた後は、日ごろの睡眠不足を補うため、ただひたすら睡眠をむさぼることに。19時間という移動時間は長すぎるかと思っていたが、もう少し長くてもよかったと感じるほどの充実した時間が流れたのだった。
せっかくの北海道を楽しまないとネ……
そんなこんなで苫小牧。だが、そこから十勝へ直行とはならなかった。それもこれも、船内で見つけた観光ガイドに触発されたから。苫小牧からどれくらいの移動時間でどこへ行けるかを示した地図が、我々を観光モードにさせたのだ。疲れ知らずのフェリー移動が、こんな考えを生んでくれたのである。
結果として目指したのは、なんと小樽! いつかは行きたいと考えていた小樽運河と石原裕次郎記念館……。レースのことなどどこへやら。脱線もいいところだが、こんなことが許されるのもナンバー付きレースカーならではの世界だろうと己を納得させ、北海道観光を楽しむことに。写真でしか見たことがない小樽運河、そして幼少時に僕のクルマ好きを後押ししてくれた「西部警察」に登場した車両を間近で見ることで、気分は最高潮に達していた。
だが、小樽にいたのも3時間ほど。あとはひたすら十勝を目指し、3時間ほどの北海道ドライブを楽しむことに。ただひたすら続く直線を走り、だだっ広い空を見上げれば、やはり本州とは違うと感じる。
実は北海道ドライブは仕事で何度か経験したことがあるが、そのいずれもが飛行機でやってきて現地で与えられたクルマに乗るだけというもの。よい経験だが、どこか味気なさが残るものだった。だが、今回ばかりはチト違う。自分のクルマ、それもレースカーで北海道ドライブができるのだから最高だ。
今季最高のリザルトを獲得
そんな観光モードが終了し、いよいよ十勝入りだ。仕事で数周走ったことがあるサーキットだが、それも十数年前のお話。ハッキリ言ってどこがどう曲がっていたかさえ記憶が定かではない。まずは慎重に走り、コースの感触を掴もうと努力した。
だが、平坦であり、どこも同じような景色が広がるこのサーキットは、掴みどころがないことこの上ナシ。時には場所を間違え、ギアを間違えアタフタすることもしばしば。クルマに初心者マークでも貼りたい気分である。
ただ、少し慣れて余裕ができてくると面白さも分かってきた。あまり大きな操舵角を必要とせず、高いスピードでコーナーに飛び込めるあたりは自分好みだ。さらにPOTENZA RE-11A 4.0が生み出すドライグリップの高さも好感触。コレならそこそこイケるかも。練習時には久々にシングルの順位を獲得することもあったのだ。
期待が膨らんだ予選。だが、練習時のように上手くはいかなかった。ニュータイヤを装着し挑んだのだが、結論から言えばそのタイヤのオイシイところを使うことができなかったのだ。アタック1回目、2回目ともにタイトターンの立ち上がりでイン側リアの空転が多く、以前悩まされた電子制御が介入。本来7500rpmでレブリミットのはずが、7000rpmでレブリミッターが効いてしまう症状に悩まされたのだ。これが意味するのはトルセンLSDが寿命を迎えたということ。第1戦を終えた後に交換したトルセンLSDがもうダメになってしまったのだ。使い始めて4戦目のことだった。
実は北海道遠征するにあたり、車両整備は万全にしようと意気込んでいた。4速が入りにくくなり、明らかにタイムロスしていたトランスミッションはオーバーホールを実行。切れがわるくなっていたクラッチもまた、クスコ製のメタルクラッチに交換した。これで万全と思っていたところに落とし穴である。
とはいえ、その症状が出ないようにアクセルオンを遅らせて再びタイムアタック。なんとか現状でのベストを出すことに成功して、予選を終えることに。順位は14位だった。参加台数が少ないとはいえ、強豪揃いの中にしてはまずまずだと自分を納得させることに。こんな順位で済んだのも、タイヤがバージョンアップしたおかげだろう。
続く決勝はかなりの混戦。スタートを上手く決め、2台抜くことに成功! さらに上へと意気込んだ。だが、クルマは思うように走らない。手負いのマシンはタイトターン立ち上がりで制御が介入して失速。抜いたクルマにあっけなく抜き返されるという悔しい思いをすることになり、最後は13位でチェッカーを受けた。だが、正式結果が出ると上位マシンで失格(タイヤ溝の不足)があり、順位が繰り上がって12位になっていた。できればトップ10に入りしてポイントを獲得したかったところだが、今回ばかりはこれでヨシとしよう。今季最高のリザルトを獲得できたのだから。
帰り道、傷ついた心を癒そうと、富良野のラベンダー畑を見ることにした。まだ時期ではなかったところは残念……けれども麦畑も見れたし、まあよしとしますか。そして再び苫小牧から「さんふらわあ」に乗り帰郷することに。行きは4人部屋のスタンダードルームだったが、帰りはちょっと優雅にデラックスルームで身体と心の疲れを癒したのでありました。
というわけで、今回の北海道遠征はすべてが満足とは行かなかったが、とても思い出深い旅とレースを味わうことができた。陸送と飛行機でお手軽にこなすのもよいけれど、一番このレースを堪能できたのは僕だと自負している。「一番86/BRZ Raceを楽しんだで賞」みたいなものがあったら、間違いなく優勝だったと思うんだけどな。
次戦(第6戦)の86/BRZ Raceは7月26日の富士スピードウェイ。十勝以上の結果が残せるよう頑張ります!