橋本洋平の“夢のガレージハウス”探訪記

第1回:積水ハウスの家と繋がるビルトインガレージ

連載第1回目は積水ハウスのビルトインガレージについて紹介する

ガレージにまつわるさまざまな情報をお届け

 クルマって冷静に考えるとかなり不思議な存在だ。その魅力に取り憑かれれば色やスタイルにこだわり、汚れれば洗車やコーティングに余念がなく、美しい景色が見つかればそれと共に写真に収めることもしばしば……。移動するためのただの機械でしかないのに、いつの間にかかけがえのない存在に。もはや家族同然って人だって珍しくはないだろう。

 だからこそできるだけ快適な空間で過ごしてほしいし、いつまでもきれいでいてもらいたい。そこでカバーをかけたり、カーポートを建てたり、それでは飽き足らずガレージがほしいとエスカレートするわけだ。

 そんな欲求を満たした時、一体どのような生活が待っているのか? そこに興味を持った筆者とCar Watchは、これまで手を出そうとしなかった世界を模索することにした。クルマやパーツではなく、これからはクルマを収めるためのスペースについても取材してみようとなったわけだ。

 今後はハウスメーカーが手掛けるガレージはもちろん、賃貸のガレージ物件、カーポート、ガレージで役立つアイテムなども紹介していきたいと思っているので、ご自身がガレージを作られる際のお役に立てれたら幸いだ。

積水ハウスが作り出すビルトインガレージの魅力とは?

積水ハウスの体験型展示場「Tomorrow's Life Museum」内にある「紫門さんち。」。ビルトインガレージが備わるのが特徴

 そんな連載第1回目となる今回は、車庫の最高峰ともいえるビルトインガレージである。住宅の一室をクルマ用スペースにしてしまおうというこのタイプ、まさに家族同然に愛車を扱うことが可能なそのビルトインガレージとはどんな世界か? トップバッターとしてご登場いただくのは、国内外で事業を展開する「積水ハウス」である。何から何まで最上級という状況をまずはじっくりと見ていくことにしよう。

 今回訪れたのは茨城県古河市にある積水ハウスの体験型施設「Tomorrow's Life Museum」。北関東自動車道の境古河ICから10分ほどの距離に位置している。積水ハウスの関東工場が隣接しており、いかにも工業地帯といった感覚なのだが、「Tomorrow's Life Museum」の敷地内に突入すると一気にテーマパークのような世界が広がってくるからおもしろい。

「Tomorrow's Life Museum」の公式サイト

 この施設内には技術を五感で体験できる建物のほか、7つのモデルハウスが散りばめられている。窮屈に立ち並ぶよくある住宅展示場とはようすが異なり、巨大な公園のあちらこちらに家があるような贅沢な空間だ。敷地センターには大きなツリーハウスが備えられており、実際に子供を連れて遊べるようにもなっている。来場者にはランチを準備し、広場で食事をできるようなサービスもあるそうだ。

 今回はそんな7つのモデルハウスのうちの1つ、「紫門(さいもん)さんち。」を見学する。もちろん紫門さんとは架空の人物なのだが、設定がとにかく細かくそれがおもしろい。アートギャラリーオーナーの紫門徹さん(55)は奥さまと2人暮らし。愛車を眺めてお酒を飲むことが好きな人物だ。六本木で現代アートギャラリーを経営していて、自宅でもお気に入りのアートを販売している。妻のあやさん(50)は博物館や美術館などが所蔵する資料を整理するキュレーター。趣味は料理で、お客さまを自宅に呼んでホームパーティをしたのちに、ゲストルームで宿泊できるようにしたいのだとか。建築地は千葉市稲毛区。1F床面積は50.5坪、2F床面積は38.2坪、延床面積は88.7坪という設定だ。

「紫門(さいもん)さんち。」の1階間取り
「紫門(さいもん)さんち。」の2階間取り

 このように、7つの住宅にはそれぞれにコンセプトがきちんと設けられており、今回の「アートと暮らす家」のように高級感のあるラグジュアリーな建物ばかりではなく、ファミリーユースの一般的な住宅もあったりする。もちろん、一般的な住宅の一部だけを今回のようにビルトインガレージにすることだって可能だから安心してほしい(笑)。

「紫門さんち。」のビルトインガレージは窓がいくつも付いているシャッターが取り付けられ、クルマも自宅の一部として見せているところが特徴的。ちょっとしたショールームのようである。シャッターは収納ボックスを持たない天井に沿って収納されるオーバースライダータイプを採用。開閉音が静かで高級感もなかなかだ。そこにクルマをバックで収めてみると、壁面にも大きな窓が取り付けられていることや、後部のフロアには間接照明が備えられ、暗さが一切感じられず安心してクルマを止められるところがうれしい。

厚かましくも愛車であるRZ34をガレージに入れさせていただき、ガレージハウスのある生活を垣間見た
土地の面積や建築条件によって異なるものの、ガレージ付きの家は積水ハウスでも人気があるという
窓付きのシャッターを採用するとともに側壁にも窓があり、高級感がありながら開放的な雰囲気を実現している

 ガレージに降りてみると、壁面がフラットで出っ張りなどが一切ない作りだから乗り降りもしやすかった。壁には絵画や自転車などを飾れるようになっているところもポイントが高い。取材当日は雨だったのだが、傘を広げることもなく自宅に入っていけるところは実用度も高い。トランクから荷物を出して、ウォークスルーシューズクロークを通り抜ければもう玄関の横まで行けてしまう。この使い勝手があるのなら、お買い物帰りの奥さまだってきっと喜ぶはず。やはり家と繋がるビルトインガレージは最高だ。

日々の買い物を快適なものにしてくれるウォークスルーシューズクロークも魅力

注目ポイントは「くつろぎの空間」

ビルトインガレージの脇にあるくつろぎスペース。クルマ好きであればいつまでもいれそうな場所だ

 そんな実用性だけでなく、くつろぎの空間となっているところが今回のビルトインガレージの最大のアピールポイントなのだろう。クルマの助手席側には小上がりがあり、そこでクルマを眺めながらお酒を飲めるようなスペースも確保されているのだ。そこからやや俯瞰で愛車を眺めれば、至福の時が訪れること間違いなしである。また、そのスペースの反対側にはフローリングからフラットにウッドデッキが伸びているのも特徴的。ガレージというとかなり閉鎖された空間であることが多いが、「紫門さんち。」は逆に開放的に感じられてしまうほどの明るさが広がっているところが好感触だった。

 ここまで開放的な空間を達成できたのは、積水ハウスならではの高強度な構造躯体があるからこそ。安全性と心地よさを守りながら多彩な空間提案のために、現在のような自由度のある設計が可能になっている。軽量鉄骨造「ダイナミックフレーム・システム」構法を用いた今回の住宅は、1階と2階以降の通し柱を同じ位置にする必要もない作りだ。だから今回のようにガレージの奥に窓を設けることもできたのだ。

 その気になれば通常3・4階建てで採用している積水ハウスオリジナルの重量鉄骨造「フレキシブルβシステム」構法を用いて、1階に3台分、開口部9mのガレージを設けることもできるという。高い安全性はもちろん、自由度の高さがあること、それが積水ハウスのメリットの1つ。

 なお、木造住宅のシャーウッドでも今回のようなガレージを作ることは可能だというから、気になる方はお問い合わせを。

ビルトインガレージの小上がりスペースの先には、庭と接するオープンスペースも

 いきなり頂点ともいえるビルトインガレージの世界を見てしまったわけだが、改めて思えたのは開口部を作るということがいかに難しく、そして贅沢なのかということだった。大地震が来てもビクともしない強度を持っていることも大切なのだから。ただ、そこを乗り越えた時、世界は一気に広がることも見えてきた。こんな大空間があるのなら、クルマをどけて雨の日に子供やペットを遊ばせることもできるだろうし、換気扇だって完備だからバーベキューだって可能かもしれない。クルマを置くだけでは終わらない空間が広がっているようにも思えた。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学