事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム

第16回:夜のドライブでも見えやすくする方法

夜間、暗くて見えにくいと感じたら……。下の写真と比べてみてほしい

 クルマの運転をしていれば必ずついて回る事故の可能性。でもそんな可能性は少しでもゼロに近づけたい!! そこでいろいろな人に、普段運転で気をつけていることを紹介してもらおうというのがこの「事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム」です。今回はモータージャーナリストでレーシングドライバーの松田秀士氏執筆でテーマは「夜のドライブでも見えやすくする方法」。ディマー調整ってご存じですか?


 晴れた日のドライブで急に暗いトンネルに入ると、真っ暗で何も見えなくなってドキッとした経験はなかっただろうか?

 ボクはよくスキーに行くのだが、白銀世界での日中のトンネル(降雪地帯のトンネルは暗いもの)に備えてサンバイザーを下ろしている。流行りのパノラマルーフ車で走る時には遮光のシェードを閉じる。つまりクルマの室内をあらかじめ暗くしてトンネルの暗さに備えるのだ。サングラスも有効な手段で、トンネルに入ったら必ず外す。

 夜間を走る耐久レースに出たときには、ヘルメットにスモークのバイザーを付け、ドライバーチェンジの前にバイザーを下ろしてわざと暗くしてピットで待つようにしていた。もちろんレースカーの中ではバイザーを上げるのだが、こうすることでコースインした時に早く暗闇に目が慣れるのだ。バイザーを下ろさなければいけないレースマシン(オープンマシンなど)では黒いレジ袋などを流用していた。

 いずれも暗闇に対して目を慣れさせるためのものだが、さて、われわれの普段の夜間走行、ちょっとしたことを行なうことで、かなり視界が良くなり安全運転に繋がるもの。それはディスプレイの照度を落とすことなのだ。メーターパネルを暗くすることで、あなたの目をカメラでいう露出調整を行なって、暗い外の景色をよく見えるようにするのだ。意外とこのようなことに気付かないままに運転しているドライバーが多い。

 最近のクルマはカーナビだけでなくメーターパネルも液晶化され、さらにコネクテッドなど液晶ディスプレイを多用するようになってきた。これらすべての照度を落とすのだ。実はクルマにはDIMMER(ディマー)というコントローラーが付いているもので、それを調整すれば照度を暗くすることができる。暗くしてすぐはメーター類が見えにくく感じるかもしれないが、すぐに目が慣れる。つまり普段はそれだけ外が見えていないということになる。

カーナビとメーターをもっとも暗くして撮影したもの

 写真はカーナビとメーターの明るさをもっとも明るい状態からもっとも暗い状態に変更して、それぞれメーターに露出をあわせて撮影したものだ。極端な例だがイメージとしてはこういうことだ。もちろん上の写真がメーターが明るく、下の写真が暗くしたもの。メーターの明るさは同等だが外の明るさが明らかに違うのが分かるだろう。

 夜のドライブは好きなミュージックをかけながら、時にはロマンティックな時間を楽しめるもの。これも安全にクルマを楽しむスキルの1つと覚えておいてほしい。

松田秀士

高知県出身・大阪育ち。INDY500やニュル24時間など海外レースの経験が豊富で、SUPER GTでは100戦以上の出場経験者に与えられるグレーデットドライバー。現在65歳で現役プロレーサー最高齢。自身が提唱する「スローエイジング」によってドライビングとメカニズムへの分析能力は進化し続けている。この経験を生かしスポーツカーからEVまで幅広い知識を元に、ドライビングに至るまで分かりやすい文章表現を目指している。日本カーオブザイヤー/ワールドカーオブザイヤー選考委員。レースカードライバー。僧侶

http://www.matsuda-hideshi.com/