トピック

ダイハツ「コペン GR SPORT」デビュー! サーキットでその実力を速攻チェック

標準車、Sグレードとの違いは? 日下部保雄氏がレポート

2019年の東京オートサロンでその存在が明らかになった「コペン GR SPORT」が10月15日に発売される。その市販モデルについて、モータージャーナリストの日下部保雄氏がレポート

ダイハツとTOYOTA GAZOO Racingのメーカーの垣根を超えた交流の中で誕生

 2014年に軽自動車「コペン」がフルモデルチェンジして以来、安定したペースで売上を上げている。この間、コペンを巡るさまざまな取り組みが行なわれ、ファンとの交流イベントも継続的に続けられている。専任スタッフがコペンを作り上げるのを見ることができる「コペンファクトリー」、コペンオーナーの聖地・鎌倉にあるドライバーズカフェ「Copen Local Base Kamakura」、そのほかにもダイハツのファンづくりのための「LOVE LOCAL by DAIHATSU」などを開催してきた。


最新の「LOVE LOCAL by DAIHATSU」イベントレポート

ダイハツ「LA400K コペン」発売5周年の節目に、日本の真ん中のサーキットに200台のコペンが集合!
https://car.watch.impress.co.jp/docs/topic/special/1208937.html


 現在のコペンは「Robe(ローブ)」「XPLAY(エクスプレイ)」に加えて丸目の「Cero(セロ)」がラインアップされ、それぞれにサスペンションをハードにしたSグレードが揃っている。Ceroの派生モデルとしては2019年に200台限定でクーペも発売し、瞬間的に売り切れるほどの熱狂ぶりだった。

 そんな中で、コペンシリーズの第4弾となるのが今回紹介する「コペン GR SPORT」だ。2019年の東京オートサロンでダイハツとトヨタブースにコンセプトモデルが置かれていたので、オヤと思った方も多いと思うが、それが現実のものとして発売された。

 コペン GR SPORTは、ダイハツとTOYOTA GAZOO Racingのメーカーの垣根を超えた交流の中で誕生した。車両開発はダイハツ側で行なわれ、TOYOTA GAZOO Racingの凄腕ドライバーのアドバイスと知見を活かし、同じ目標に向かって開発が進んだという。

TOYOTA GAZOO Racingの知見を活かしながら、ダイハツ側で開発を行なったコペン GR SPORT。取材を行なったスパ西浦モーターパークには開発陣が勢ぞろいしてその魅力を語ってくれた

 そもそも、ダイハツはユーザーからの走りの要望に応えたい、トヨタはもっといいクルマづくりをしたいという両社の思いがあり、それが合致して今回コペン GR SPORTが実現した。GRというネーミングが示しているように、ダイハツとトヨタの関係を強く意識するものだが、これはトヨタの販売店でもコペン GR SPORTが販売されるということからも伺い知ることができる。

 ライトウェイトスポーツのカテゴリーに属するコペンだが、電動ハードトップのコンパクトなオープン2シーターはユニークな存在。コペンは女性にも人気があり、丸目ヘッドライトのCeroの人気も高い。

「気楽にスポーツドライビングを楽しめるスポーツカー」を目指すコペン GR SPORTのエクステリアでは、ワイド&ローの水平基調のフロントグリルが特徴で、前後バンパーも他のGR系モデルと共通の角ばった形状になっている。また、内装でもGR SPORT専用メーター、ピアノブラック調センタークラスター、レカロシートなどのアイテムが備わっている。

 ボディ補強はフロントブレースとセンターブレースが主なポイントだが、ショックアブソーバーにはKYB製が組み込まれている。この点は後述する。

コペン GR SPORTのエクステリアでは専用のフロント&リアバンパー、フロントバンパーエアアウトレット、床下スパッツなどの採用により直進安定性、路面との接地感を向上。水平基調を強調するデザインによりスポーツカーらしいワイド&ローを表現した。なお、同モデルの価格はCVTモデルが238万円、MTモデルが243万5000円。生産はダイハツ本社 池田工場のCopen Factoryで行なわれる
足下はGR SPORT専用のBBS製鍛造16インチアルミホイールにブリヂストン「POTENZA RE050A」(サイズは165/50R16)の組み合わせ。ショックアブソーバーはKYB製で、それに合わせてスプリングレートを最適化。路面の入力に対してしなやかに追従する足まわりに仕上げた
エンジンは他のコペンシリーズから変更はなく、直列3気筒DOHC 0.66リッターターボ「KF」型エンジンを搭載。最高出力は47kW(64PS)/6400rpm、最大トルクは92Nm(9.4kgfm)/3200rpmを発生
インテリアではピアノブラック調加飾のセンタークラスター&ドアグリップをはじめ、自発光式3眼メーター、レカロシート、MOMO製革巻きステアリングホイール、カードキーなどがGR SPORT専用になる

標準車、Sグレードとの違い

 テストしたのはスパ西浦モーターパーク。ここはサーキットのようなハイグリップ舗装ではなく一般的な舗装で評価しやすく、天候もこの日は酷暑がぶり返した晴天だった。

 最初にノーマルのコペン(MT)で走る。ルーフは閉じた状態だったので、オープン時に時おり感じるボディのブルブル感はない。操舵力も軽すぎず重すぎずで適度。ハンドルを切った時も過敏でない反応をする。ハンドルを切り増しするような場面でも素直な追従性を持っており、バランス感がよい。

 また、乗り心地の面でも路面の継ぎ目を通過した時もショックをよくいなしてくれ、路面のウネリに対してもスムーズだ。トランスミッションは前軸荷重の少ないMTだったが、タイトコーナーでもフロントの追従性がよく滑らかだ。とがったところはないが、乗りやすいのがスタンダード仕様だった。ちなみにスタンダード仕様ではショーワのショックアブソーバーを使っている。

 続いてビルシュタインダンパーを使うSグレードのハンドルを握った。トランスミッションはCVTになる。こちらのセッティングはサーキットをより楽しく走れるようにチューニングされている。路面の荒れているところではショックアブソーバーのガス反発力が強く、突き上げが強い。その代わりに速度が上がるにつれて接地感が高くなり、路面をよくとらえてくれる。

 コーナーでのハンドルレスポンスも高く(EPSは標準車と同じ仕様のはずだが)、ハンドルを切るとスッとノーズが入っていくところはかなり性格を変えていると感じた。舵の効きもロールが抑えられていることもあり、舵の効きも追い切りへの反応もよい。ちょっとゴロゴロした感じはあるが、サーキットで気持ちよく走れたのがSグレードだ。

コペン GR SPORT(MT)

 さて待望のGR SPORT。前述のようにCVTとMTの2機種に試乗できたが、いずれもルーフトップは閉じたままの走行だった。タイヤはすべて共通のブリヂストン「POTENZA RE050A」(サイズは165/50R16)。最初に感じたのは、ピットロードの路面ギャップを通過する際にしなやかにアシが動くことで、突き上げ感は小さい。Sグレードとは対照的なマイルドな動きは標準車に近い。

 コーナーではGR SPORTの特徴がよく表れる。ステアリングレスポンスに優れているが、それだけでなくボディ後半部との一体感のある動きには感心した。他のグレードは、極端な言い方をすればハンドルを切るとまず前が動いて、遅れて後ろが追従するようなイメージだったが、GR SPORTでは前後一体となった動きで、すっきりした感触だ。ロールは抑えられているが、押さえつけるようなものではなく、自然なロール感を伴う。

 乗り心地を含めた走りの部分では、KYB製複筒式ショックアブソーバーの味がよく出ている。フロントは低フリクション仕様、リアは現状のリファイン品で、スプリングはSグレードに比べて前後とも下げられ、ショックアブソーバーの減衰力や特性に合わせられている。

 GR SPORTの一体感はボディ補強の効果が大きい。とはいうものの、レーシングカーのようにガチガチに補強されているわけではなく、コペンの特性を出すように追加のボディパーツを入れている。

 フロントブレースは、エンジンルーム下部に入った横バーから車体剛性を司るXブレースをつないだもので、前後剛性を上げることでステアリングレスポンスを向上させている。さらにXブレースの後半部に入れられたセンターブレースと、そこから後方に伸びるリアブレースの形状変更で旋回時の引っ張り剛性が上げられている。このパーツがGR SPORTの一体感に大きく貢献している。また、フロントストラットタワー部の溶接スポットの位置を変更することで、コーナリング時の余分な動きを抑制することができたという。

コペン GR SPORT(CVT)

 一方、空力に関してはトヨタの知見が生かされている。バンパー形状を変更したことでボディに粘りつく空気の流れを整流し、さらにフロントグリルから入った空気の流れをフロントフェンダーのインナーライナーから吐き出すことでフロントの接地感にも効果を上げている。

 もう1つ大きいのは、床下にスパッツを装着することでリアの揚力係数が向上していること。空力は微妙な変更で特性が変わる繊細なものだが、デザインだけでなく、これらの空力パーツでコペンの安定性は大きく変わった。

 ちなみにトヨタお手の物の空力パーツ、ディスチャージテープはTRD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)からディーラーオプションとしてコペン専用品が販売される。位置は前後バンパーの側面になる。

ダイハツディーラーで販売されるオリジナルアクセサリー装着車
ブラックメッキ仕様のコペンバッヂが前後に備わるほか、リアまわりではCOPEN×HKSスポーツマフラーが目立つ存在
メッキのドアアウターハンドル、カーボン調のドアハンドルプロテクションがオプション設定
フューエルリッドガーニッシュはアルミとカーボンのコンビ
フロントウィンドウまわりやドアミラー、ルームミラー、シートバックの加飾がカーボン調になる「ドレスアップパック」も用意
TRDがリリースするオプションパーツ装着車。こちらはダイハツディーラーでも購入が可能とのこと。フロントスポイラー、サイドスカート、リアサイドスポイラー、フロントコーナースポイラー、トランクスポイラー、フューエルリッドガーニッシュといった外装パーツとともに、パフォーマンスダンパー®もラインアップする
※パフォーマンスダンパーはヤマハ発動機株式会社の登録商標

 GR SPORTは標準車ともSグレードとも違う方向付けで、低速域から高速域までの乗り心地を含め、またウネリの大きなワインディングロードでもハンドリングが楽しめるコンパクトスポーツになっていた。

 今回、コペンのラインアップにGR SPORTが追加されることで、これまでのコペンにはない新たな乗り味が加わる。走りの幅が広がることで、また新しいユーザーからも注目を浴びることになろう。GR SPORTの意義は大きく、今後につながる大きな一歩になる。

日下部保雄氏による動画インプレッション(4分43秒)