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日産キャラバンで「モーションコントロールビーム」を体感! いったいどんな原理で走りを激変させているのか?

日産「キャラバン」の走りを激変させるという「MCB(モーションコントロールビーム)」を体感する機会を得た

特徴はその内部構造と取り付け方にあった!

 装着すると確実に走りの変化を実感できることから、アイシンが手がける「モーショーンコントロールビーム(以下、MCB)」は、このところどんどん信望者を増やしているらしい。

 MCBの特徴は、その内部構造と取り付け位置にある。内部構造には2つの特徴があり、1つはボディが変形するような荷重(入力)に対し、スプリングでそれと同等の反力を発生させて変形を抑制する「スプリング機構」。

 もう1つは内部にある樹脂をスチールケースに押し当てることで摩擦を発生させ、微振動を吸収することでスプリング機構の変形抑制効果を向上させる「摩擦機構」。この2つの機構によってわずか1mmにも満たないボディのよじれや微振動を吸収してくれるのだ。

日産「キャラバン」用MCB。フロント用が短い2本、リア用が長い1本。ブラケットとネジ類もすべて付属する

 また、今回装着したのは、MCBをよりコンパクトサイズに成形した「MCBコンパクト」で、300mmと600mmの2種類の長さがあるほか、1000Nmと3000Nmの2種類の圧力設定があり、取り付ける車種に合わせて製品を選択し、車種専用ブラケットで装着。内部の樹脂をケースに押し当てる力を微調整することで、幅広い車種に対応できる高い汎用性も持っている。

MCBの内部。赤色のスチールケースの左右に、縦方向に収まっているのがボディが変形するような荷重(入力)と同等の反力を発生させるスプリング。黄色の部分の下側にある白い物体が樹脂で、上からネジを締め込むことでスチールケースとの摩擦が発生し、微振動を吸収してくれる
ケースを外すと内部の樹脂をスチールケースに押し当てる力を調整する六角ネジが現れるが、すでに車種別に設定済みなのでユーザーが購入後に調整する必要はない

 その効果を確認するために、愛知県にある「MOON FACE(ムーンフェイス)」を訪れた。実は若いころに一度、代表の阿部さんを取材したことがある。それは茨城県にある筑波サーキットで開催されていた、チューニングカーのタイムアタックイベント。阿部さんは当時フルチューンした日産の「シルビア(S15)」を持ち込んで、驚異的なタイムをたたき出した。その取材を担当したのが筆者だったのだ。

 最近ではハイエースやジムニーのイメージが強い「MOON FACE」だが、実はサーキット界隈にもかなり本格的に力を入れていた時期があり、ひいては国内のメジャーなレースにも携わっていた。そう知ると阿部さんがいかなる実力の持ち主なのか、ご想像いただけよう。

ムーンフェイスは、2002年に茨城県にある筑波サーキット・コース2000で開催された、チューニングカー日本一の最速王を決める「筑波スーパーバトル」にて、日産の「シルビア(S15)」を走らせ、当時のFRクラスのコースレコードとなる58秒142をマーク。そのころから足まわりのノウハウを確立してきた
筑波サーキットだけでなく、鈴鹿サーキットも積極的に走り込み、マシンの熟成を図っていたムーンフェイス。ストリート用のチューニングパーツも数多く開発している

キャラバンは開発が難しかった?

 先述したとおり、MCBは長さや摩擦係数の異なる種類があり、いずれかを選択して、どこにどのように装着するかが、開発陣のウデの見せどころになる。

MCBは日産「キャラバン」用やスズキ「ジムニー」用を開発しているムーンフェイスのほかにも、TRD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)、トムス、サード、スプーン、オートエクゼ、プローバ、D-SPORTなど、名だたるチューニングパーツメーカーも採用していて、幅広いメーカーの車種ですでに高い評価を得ているアイテム

 最適なサイズと圧力のMCBをチョイスして、その車種に最適な装着場所を見つけなければならない。そのうえで実は非常に重要な役目を担うのがブラケットだ。阿部さんはブラケットも、装着する位置や形状を綿密に検討し、3Dプリンターでいくつも試作品を作りながら、最適な位置を決めたという。

キャラバンのリア用ブラケット。長さはMCBに合わせることになるが、MCBにきちんと仕事をさせるためにはしっかりとした剛性が必要という
高度な機械溶接機を使うことでほとんど段差のないきれいな溶接部分となっている
入力をしっかり吸収できるように何度も検証して最適な角度を見出している。また、あらかじめナットを溶接しておくことで取り付けやすさにも配慮している
金属をメッキしたネジだとメッキが剥がれたり錆たりするので、ムーンフェイスではステンレス製の削り出しネジを選択している

 また、ブラケットはたわむことのないよう4mm厚の鋼板を用いて、経年劣化をしないよう機械溶接を万全に施している。さらには、ディーラーでも簡単に装着できるように、ナットをあらかじめ溶接しておくという気配りまでしているあたりもさすがである。ブラケットをどう設計するかも、チューナーにとってはウデの見せどころだと阿部さんは胸を張る。

MCBとブラケットを止める部分は、もっとも効果を発揮できるように、締め付けトルクも55Nmに指定されている
日産キャラバンのフロントまわり。左がノーマル状態、右がMCB装着状態
日産キャラバンのリアまわり。左がノーマル状態、右がMCB装着状態。実際にはMCBの下にスペアタイヤが装着される

 キャラバンの場合、フロントはステアリングラックの付いたサスペンションクロスメンバーと、エンジンクロスメンバーの間を「MCBコンパクト」の300mmを2本使ってV字型に装着する。両クロスメンバーの間は離れているので、確かにここをつなぐと相当に効きそうだ。

 リアはスペアタイヤが装着されているスペースの上側のフロアとの間に、「MCBコンパクト」の長さ600mmのを、サイドメンバー後方にあるサービスホールを用いて装着する。位置的にはもっとも効きそうなリアオーバーハングの最後端となっている。

 ただしキャラバンは、スペアタイヤとフロアの間がすごく狭いため、針の穴に糸を通すかのごとく、取り付け位置を割り出すのに苦労したという。

フロント装着部。車体にあるネジを利用してブラケットを装着し、そこにMCBを接続する
リア装着部。ナットのない部分は、あらかじめネジ山が設けられている車体のサービスホールを利用する

 ちなみに日産キャラバン用MCBの価格は、フロント用が9万6800円、リア用が5万9400円、前後セットが14万9600円。なお、フロント用は2WDにしか装着できないのでご注意いただきたい。

ムーンフェイス代表取締役の阿部卓郎氏。若かりしころは中部エリアで1-2を争うモータースポーツガレージで修業を積み、23歳でムーンフェイスを起業。筑波FR最速マシンを生み出したのち、そのノウハウを活用し、ハイエースやキャラバン、ジムニーなどの足まわり改善パーツを開発している

装着するだけでこんなに変わるとは……!?

 というわけで、まずはMCB装着前のノーマル状態のキャラバンにしばらく試乗して感触をつかんでおき、MCBを装着するとどう変わるかを確認してみたのだが、走り始めてもうすぐに違いがハッキリ分かってとても驚いた。

動き出した瞬間に違いを感じられ、まさに驚きしかなかった

 とにかくクルマが軽くなった感じがする。出足からして、走り始めのその最初のアクセルの一踏みでスッと前に出るし、ステアリングの切り始めからちゃんとついてくる。だからクルマが軽くなった感じがするわけだ。装着前は、出足も曲がるときも、すべて一瞬の間(ま)があるのだが、MCBのおかげでトラクションが増し、ステアリングまわりもムダな動きが払拭されたからだろう。

 また、荒れた路面と走ったときにも、段差や凹凸を乗り越えたときの衝撃も緩和されるし、装着前はいつまでも振動が続いていた感じだったのが素早く収束するようになった。ボディの上屋の動きがぜんぜん違って、装着後のほうが目線のブレが少ないし、リアの跳ねもいくぶん緩和されて、乗り心地もだいぶよくなった。キャラバンはもともとハイエースと比べると標準状態での足まわりがやや硬く、よけいに路面の影響を受けやすいので、違いが分かりやすいのかもしれない。

目線のブレが少ないし、乗り心地もよくなった

 高速巡行時の安定感も違う。キャラバンのノーマルは、全体的にあえてステアリングを重くしていて、動きを鈍くすることで挙動を乱れにくくし、直進安定性を確保していると思うが、そこもぜんぜん印象が変わって、ステアリング切ると素直にスッと切ったとおりに動いてくれる。

 レーンチェンジでも装着前はいっぱい切って“グラッ”と動いてリアが遅れてついてきてオツリをもらっていたが、装着後は思い通りに動くので修正舵の必要もなく、戻るときもスッとキレイに戻る。動き方がぜんぜん変わっている。

 タイトなコーナーを走っても、ちゃんと切り始めから思ったとおりに正確に動いてくれるので、不安なく入っていける。舵角も小さくなっている気がするし、とにかく安心感が全然違う!

ステアリングの操作に素直についてくる感覚は安心感にもつながる

 ブレーキも、よく同乗者がカックンとなって不快に感じないように、止まる直前に踏力を抜いたりするものだが、装着前はそこをコントロールしても受け付けてくれない印象だったところ、装着後はちゃんと抜いたとおりスッと動いてフラットな姿勢に戻ってくれるようになった。

 装着前だとボディがよれて安定感がなかったのが、よれ自体を吸収してくれるので、安定して荷重がかかるのだろう。だからちゃんとどんな操作にも素直に応えてくれる感じだ。これまでは、「まぁ、こんなもんか……」であきらめていた部分が、ちゃんと正確に応答するようになり、操縦安定性も乗り心地もよくなり、積極的に「これいいじゃん!」と感じられる乗り味に生まれ変わっていた。

走り出しからクルマが軽くなった感じがして、余計なアクセルの踏み込みが不要となり燃費が向上する効果もありそうだ

 キャラバンはMCB装着前も、あらゆるところがある程度ゆるい状態でバランスが取れていたので、別に普通に乗れないことはないし、特に何も意識しなければ文句はなかったが、ひとたびMCBのよさを知ってしまったからには、もう装着せずにはいられなくなるという人が続出しそうだ。

Genbのアイテムは、オートバックスやスーパーオートバックスといったカー用品店でも多く取り扱っているので、ぜひ店舗で実物をチェックしてみてほしい

Photo:堤晋一