東京オートサロン 2016
TOYOTA GAZOO Racing、10年目の節目となるニュル24時間レース参戦体制発表会
「あなたみたいな運転の仕方を知らない人にああだこうだといわれちゃ困る」。故成瀬氏のモリゾウ選手への言葉がニュル参戦のきっかけ
(2016/1/16 00:00)
- 2016年1月15日開催
「あなたみたいな運転の仕方を知らない人にああだこうだといわれちゃ困る」
発表会は、2007年からスタートしたTOYOTA GAZOO Racingのニュルブルクリンク24時間レース(以下、ニュル)への挑戦に対するプレスブリーフィングからスタート。トヨタ自動車のテストドライバーとして数々のクルマの味付けを手掛けていた故成瀬弘氏のひと言から始まった挑戦の軌跡を、モリゾウ選手(豊田章男氏)、トヨタの評価ドライバーを務める勝又義信氏、ニュル挑戦経験25回以上を誇る木下隆之選手の3名が振り返った。
モリゾウ選手は、最初のきっかけについて成瀬氏の「あなたみたいな運転の仕方を知らない人にああだこうだといわれちゃ困る」というひと言だったと振り返る。それ以来、ヤマハのテストコースなどで運転トレーニングを始め、評価ドライバーの免許を取得したという。そんな中、ある時期に成瀬氏から驚くべき言葉を聞く。「ニュルでレースに出てみようか」。モリゾウ選手は「そんなのウソでしょ」「満足に1周も走れないのにレースなんかとんでもない」と、その第一印象を語る。レースに出たいという気持ちはあったものの、立場を考えれば簡単にYesとは言えない。当然ながらまわりの人達もほとんどが反対する。「道楽」とか「危険予知能力がない」など、ずいぶん言われたそうだ。そうした一方で、「自動車会社の人間がクルマに乗って何がわるい」「クルマが好きで何がわるい」という想いもあった。そうした反骨精神からスタートしたのがニュルへの挑戦というわけだ。
だが、TOYOTA GAZOO Racingのニュル挑戦を聞いて別の思いを抱く人もいた。当時ホンダで走っていた木下選手は「すごく嫌だった。観光気分でひっかきまわして引き上げるんじゃないかと思った」と、ネガティブな印象を率直に話す。だが、レースウイークの装備品チェックの場でモリゾウ選手が並んでいるのを発見。「サポートの人に頼めばいいのでは?」と尋ねたところ、「並ばないとニュルに出た気にならない、学べない」という答えが返ってきた。その時に「GAZOO Racingは面白いな」と思ったという。木下選手はその翌年からチームに加わることになった。
勝俣氏は、モリゾウ選手について「2010年に成瀬氏が亡くなって以降、運転が変わった」と話す。今では「スポーツ4駆に乗ったらトヨタの中で一番上手い」とまで言い切ったところで時間切れとなり、ブリーフィングは終了した。
参戦体制発表会
参戦体制発表会にはチーム代表となる豊田章男氏をはじめ、各チームのドライバーおよびチーフメカニックが登壇。
豊田氏は「ここに並べてあるクルマ、最初2007年の時はアルテッツア1台でした。それが毎年毎年こうやって軌跡を重ねることによって、そちらに並んでいるクルマが派生してきたクルマです。もともと“もっといいクルマを作ろうよ”ということをベースに、はじめは中古車1台でスタートした活動も、皆さんに支えられて形になってまいりました。今年、また10年目を迎えるにあたり、このメンバーでニュルへの挑戦をいたします。私自身は出るか分かりませんが、今年はよりプロで固めまして、その中でも“クルマの味付け人”という私どものテストドライバー、メカニックチームとともにもっといいクルマづくり、味づくりの旅に挑戦しようと思っています。皆様の応援が非常に彼らのエネルギーになると思いますので、この10年変わらずご支援いただきましたのと変わらない応援をいただきたいと思います。それが皆様方に逆に笑顔をお届けする一番の近道になるんじゃないかと思いますので、応援のほどよろしくお願いします」と、10年目の決意を語った。
TOYOTA C-HR Racing
新型クロスオーバー車のコンセプトモデルを活用して「もっといいクルマづくり」に挑戦。ドライバーを務める影山正彦選手は「今年はC-HR Racingという新しいクルマを託されまして、まだ発表前のクルマなんですが、クルマづくり、人づくりに私自身も貢献していけるように、また心新たにチーム一丸となって貢献していきたい」と話した。
LEXUS RC
2015年に続き2年目の参戦となる。ドライバーの木下隆之選手は「RCは2年目になりますけれども、コンペティションなので当然性能は追及していきますが、それだけではなく外から見ていてすごく乗りやすそうだと思えるような、新しいゾーンに踏み込めればと思っています」と抱負を語った。