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日産、2016年後半に新型「自動運転車」「新ハイブリッドコンパクトカー」を公開
株主向けに自動運転車の試乗会を開催
2016年6月22日 20:08
- 2016年6月22日 開催
日産自動車は6月22日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で第117回定時株主総会を開催した。今年度の株主総会は2098人の株主が集まって行なわれ、決議事項として「剰余金の処分」「監査役1名選任」「監査役の報酬額改定」の3項目を議案として扱った。議案はそれぞれ賛成多数で承認・可決されている。
剰余金の処分では、日産ではすでに中間配当として21円/1株の配当を実施しているが、さらに期末配当として21円/1株を配当。これにより、合計の当期配当金は42円/1株、総額は937億6027万7772円としている。これに加えて株主還元の一環として、今年度に3億株、または4000億円を上限に自己株式の取得も行なっている。
監査役1名の選任については、この総会で監査役の任期満了となる安藤重寿氏が再選されている。監査役の報酬額改定では、2005年に開催された第106回定時株主総会で決議された年額1億2000万円以内という監査役の報酬額について、グローバル展開している各日本企業の報酬水準などを勘案し、報酬額を年額2億2000万円以内と改定した。
このほかに、5月13日に発表した2015年度の通期決算内容を株主に対してあらためて報告。2015年度通期の連結売上高は、前年比7.2%増の12兆1895億円。連結営業利益は前年比34.6%増の7933億円、売上高営業利益率は6.5%。当期の純利益は前年比14.5%増の5238億円となっている。自動車事業のフリーキャッシュフローは4812億円で、2015年度末は自動車事業で1兆5029億円のキャッシュ・ポジションとした。詳細については関連記事の「日産、2015年度通期決算を発表。営業利益は前年比34.6%増の7933億円」を参照していただきたい。
2016年後半に自動運転技術「プロパイロット」搭載車などの株主向け試乗会を開催
議案採決に先立つ事業報告では、西川氏による決算内容の解説や事業展開の総括に続き、総会の議長でもある日産自動車 社長兼CEOのカルロス・ゴーン氏から2015年度の振り返りと2016年度以降の事業展開、グローバル戦略といった経営方針が説明された。
2015年度の日産は、前年度から10万台増となる542万台をグローバルで販売して過去最高を記録したほか、複数の戦略的なパートナーシップの推進、拡充によって経営の効率化を推し進めているほか、商品面ではEV(電気自動車)、自動運転技術、コネクテッドカーといった「インテリジェント・モビリティ」の開発に取り組んでいる。日産は167カ国で事業を行なっており、世界28カ所に生産工場を持つ企業として、2016年も中国市場における日系メーカーのNo.1、欧州市場での韓国メーカーも含めたアジアメーカーNo.1の座と、米国市場での日系メーカー2位のポジションを守っていくとの決意を表明した。
具体的な製品としては、日本市場では中核モデルの一部を刷新する予定であるほか、先だっての2015年度通期決算の席でも明かされているように、最新のハイブリッドパワートレーン「e-POWER」システムを搭載する新型コンパクトカーを国内導入。これに加え、単一車線での自動走行機能を実現する「プロパイロット」の技術を他市場に先駆けて商品化。先進的な技術の数々によって日産ブランドのイメージを高めていくという。なお、e-POWERシステム、プロパイロット技術などを搭載した車両について株主にひと足早く体験してもらうため、2016年後半に発表会と試乗会を実施する予定であることも発表された。
このほか、中国市場では2016年度に新型「シルフィ」「マキシマ」「ティーダ」を投入してラインアップを強化するほか、東風汽車と共同して進めているブランド「ヴェヌーシア」で8つめの車種となる「T90」の発売も計画している。欧州市場では2016年から生産を開始する「マイクラ(日本名:マーチ)」を、今回から初めてフランスにあるルノーの工場で生産することも紹介された。
2016年度中にグローバルで投入する新型車では、前出のマイクラやすでにCar Watchでもたびたび紹介している「GT-R 2017年モデル」のほか、コンパクトSUVの「キックス」を中南米市場に投入。キックスは今夏に開催予定のリオデジャネイロ オリンピック・パラリンピックの公式車両として披露することが明らかにされ、中南米以外の市場にも純に展開する予定とのこと。また、ルノーと共同開発した小型商用車「NV300」の発売も予定している。
また、日産の営業利益で高い割合を占めるようになっている販売金融やアフターセールスについても注力して、アフターセールスではアクセサリー商品のパーソナライゼーション、コネクテッドカーのオプションを活用したクルマのアップグレードなどに取り組んでいくという。
このほか、5月12日に発表された三菱自動車工業との戦略提携契約については、購入、車両プラットフォームの共用、新技術の開発分担、生産拠点の共用など複数の面でシナジー効果を生み出すことを狙いとして、日産は三菱自動車の強みであるピックアップトラックやSUV、プラグインハイブリッドなどを活用。三菱自動車は直面している課題の解決やコーポレートガバナンスの構築、顧客からの信頼回復などの面で日産の助力が得られるとしている。また、2社に止まらず、ルノーやダイムラー、アフトワズなどアライアンスに参加しているすべてのパートナー会社がメリットを享受できるとしている。
こうした各種の施策により、2017年3月期の連結売上高は約11兆8000億円。連結営業利益は7100億円。売上高営業利益率6.0%。当期純利益は5250億円と見込んでいる。
例年話題に上がるゴーン氏をはじめとする役員の報酬については、後半の質疑応答の冒頭部分で資料を使いつつ説明。2015年度のゴーン氏の報酬額は10億7100万円で、2014年度から3.48%増加。コンサルティング会社のタワーズワトソンによるデータでは、CEO報酬の総額は同様のグローバル企業27社と比較した平均値、中央値より下まわるものになっていると明らかにしている。
また、役員報酬の総額は2008年に承認された年間役員報酬総額に対して45%低い16億4500万円となっているが、これについてゴーン氏は「日産自動車の強みは強力な指導者層にある。グローバルに事業展開していることで多彩な人材が登用されており、この多様性が日産の本質的な強さ。勢いを維持すべく、最強のマネージメント勢をキープする必要がある。我々の優秀な人材は常に世界の企業から注目されており、実際に日産の幹部を他社が採用している。このため、競争力のある報酬を用意する必要がある」とコメントしている。
質疑応答では7人の株主が質問を実施。このなかで、2015年からフォルクスワーゲン、三菱自動車、スズキと立て続けに表面化した不祥事に対して、日産では内部通報などの手段を講じているのかという問いかけに対し、まずゴーン氏が「同業他社で問題が起きたときには、自社でも問題がないかチェックするようにしている。例えばディフィートデバイスのようなものについては、そのようなものを使う気が起きないように、そして使う必要がないように制度化している」と回答したほか、商品担当の日産自動車 副社長の坂本秀行氏が、「技術的な内部通報については私のところに直接届くようになっています。また、日産では問題が起きないよう非常に強いシステムを持っており、開発の作業などで採取されたデータは、なるべく人の手を通さず機械的に収集されるように制度設計しているので、人による作為が入らないようにしています」と説明した。
また、不祥事に関連して、三菱自動車の燃費不正では対象となる「eKワゴン/eKカスタム」「eKスペース」、日産「デイズ」「デイズ ルークス」の購入者に対する補償として最大10万円が支払われることが発表されているが、三菱自動車が負担するこの補償金以外に、日産独自になにかしらの施策を講じる計画があるかについて問われ、日産自動車 専務執行役員の星野朝子氏がユーザーに多大な迷惑と心配をかけたことに陳謝したほか、ディーラーに点検などで足を運んでもらったときにはほかにも問題が起きたりしていないかしっかりとチェックし、各ユーザーに対して補償について個別に連絡するとコメントした。
最後の質問者は自身が20年にわたり日産の株式を保有しており、株価が倍増して当初0だった配当も42円/1株まで出るようになったゴーン氏の手腕を賞賛しつつ、東日本大震災や三菱自動車の燃費偽装といった逆風にさらされるたびに、逆に日産の経営が強化されていると感じていると指摘。その秘訣などについてゴーン氏に質問した。これに対してゴーン氏は「すべての危機はチャンスである、危機からエスケープしたいと考えるなら経営には関わるべきではない。危機を脱出したときには成長がある。これは日産の経営陣すべてのメンタリティとなっている。危機を直視してチャンスを見つければ会社が成長できる」と語り、「いつもポジティブな結果についてアピールしているが、私が皇帝や王様になるようなことはない。なぜなら、自動車会社の仕事は決して1人でできるものではなく、成果が出たときには経営陣や従業員の努力が背景にある。また、どこかで終わりがくるようなものではなく、いつまでも続けていく必要がある。ポジティブな結果を強調するのは自慢しているのではなく、これからも続けていきたい、続けるためにいい結果を知ってもらう必要があるからだ」と述べている。