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中嶋一貴選手ら3名のドライバーが2016年のル・マン24時間レースを振り返る
10月14日~16日開催のWEC 第7戦 富士6時間耐久レースについても抱負を語る
2016年7月16日 23:50
- 2016年7月16日 開催
7月16日、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催中の全日本選手権スーパーフォーミュラ第3戦期間中に、同サーキットで10月14日~16日に開催される予定のFIA世界耐久選手権(WEC)第7戦 富士6時間耐久レースに関する記者会見を行ない、WECとスーパーフォーミュラの両方に参戦しているアンドレ・ロッテラー選手(アウディ)、小林可夢偉選手(トヨタ)、中嶋一貴選手(トヨタ)の3人のドライバーと、ル・マン24時間レースを運営するACO(フランス西部自動車クラブ)の理事で、WEC富士アンバサダーを務めている寺田陽次郎氏が登壇した。
この記者会見では、残り5分でトヨタが勝利を失うという衝撃な結果となったル・マン24時間レースの振り返りと、WECに向けた意気込みなどが語られた。
次戦ニュルブルクリンクで弾みをつけ、10月のWEC富士では優勝したいと中嶋一貴選手
6月18日~19日(現地時間)の2日間にわたり、フランス ル・マン市のサルテサーキットにおいて、毎年恒例のル・マン24時間レースが行なわれた。その結果は、多くの方がご存じのとおり、レースのほとんどを2台のトヨタ(小林可夢偉選手の乗る6号車と、中嶋一貴選手が乗る5号車)が支配し、6号車がトラブルで後退してからは、中嶋一貴選手/セバスチャン・ブエミ選手/アンソニー・デビッドソン選手のトリオが操る5号車が、ライバルとなる2号車ポルシェをリードし続けた。
誰もがトヨタの勝利を疑わなかった15時55分(スタートから23時間55分)、ゴールに向けたアンカードライバーの役割を担っていた中嶋一貴選手が無線で「ノーパワー、ノーパワー(パワーがない、パワーがない)」と叫ぶ音声がテレビ放送に流れた。最上位クラスであるLMP1-Hは約3分半で1周するので、実質的にはあと2周という段階で、中嶋一貴選手がドライブするトヨタ TS050ーHYBIRDはメインストレートで停止してしまう。その横をライバルとなる2号車ポルシェ919 Hybridが通過し、トヨタはまたも敗者になってしまったのだった。
その衝撃の結末から約1カ月。最初に挨拶をしたACO理事/WEC富士アンバサダーの寺田陽次郎氏は「最後の最後まで一貴、そしてトヨタさんが勝つだろうと思っていた。普段ならレースはフィニッシュするまで信じないけれど、今年はトヨタさんが勝っていい年だと思っていた。その勢いを持って、ぜひとも日本のWECのレースになだれ込んでほしい」と、隣に座る中嶋一貴選手のことを気遣いながら、トヨタが優勝まであと一歩に迫ったことを賞賛し、日本で行なわれるWEC 第7戦 富士6時間耐久レースでトヨタがリベンジをすることに期待感を示した。
また、「ル・マンが終わったあと、お土産を買いに行ったときにそこのマダムに『一貴は大丈夫か』と聞かれた。ル・マンで日本のメーカーが勝つためには、ル・マンで市民権を得ないといけないと考えているのだが、それを聞いたときにトヨタさんはすでに市民権を得ているのだと思った」と述べ、今年トヨタは惜しくも勝てなかったが、ル・マンのインナーだと現地のファンにも認められているのだと思ったと説明した。
その中嶋一貴選手は、「3レース終わってまだ1度もフィニッシュできていないため、チャンピオンシップどうこうとは思っていない。しかし後半戦から仕切り直して、よりよい戦闘力を発揮できるようになると思っている。来週のニュルブルクリンクで行なわれる第4戦で弾みをつけて、富士のレースでは何度かいい思い出もあるので、もう1度優勝したい」と述べ、ル・マンで起こったことは過去のこととして、これからの後半戦で巻き返したいと前向きな姿勢を示した。
小林可夢偉選手、これからのWECや来年のル・マンでの雪辱を期す
次いで、ル・マン24時間レースでは2位に入賞した6号車トヨタのクルーとなる小林可夢偉選手は、「今シーズンからLMP1-Hに初参戦しているが、初戦は2位、第2戦はエンジンが壊れてリタイヤ、ル・マンではほぼ半分以上はトップを走っていたが、ちょっとしたトラブルから遅れてしまうレースになった。そろそろ勝てるぞという時がきており、第4戦のニュルブルクリンクで優勝を目指す。富士では優勝を目指すのではなく、優勝しないといけない。いいクルマを作ってくれたチームのためにもそういう結果を残したい。ホームレースとなる富士6時間レースで勝てるように、自分もクルマも仕上げていって、日本のファンの前で勝ちたい」と意気込みを語った。
また、WECではアウディ7号車のクルーとなるアンドレ・ロッテラー選手は、「スーパーフォーミュラではチームメイトである一貴の優勝をお祝いしたかった。ハリウッド映画でもあのような筋書きは無理なぐらいの展開で、レースというのはゴールするまで何が起こるか分からないという典型になってしまった……。僕たちのチームにとっては、ちょっと厳しいシーズンになっている。新車を用意して開幕戦では優勝したが、スキッドプレートが削れすぎて失格になってしまった。第2戦のスパでは一転して性能が足りていなかった。クルマは非常に革新的だが、よい時とわるい時があり、まだまだ熟成していく必要がある。ル・マンでもターボの問題が両方のクルマに起きてしまった。第4戦のニュルブルクリンクからハイダウンフォースのパッケージになるので、仕切り直して頑張っていきたい」と述べた。
なお、報道陣からは小林可夢偉選手に「ル・マンの表彰台から見た風景はどうだったか?」という質問がでたが、小林可夢偉選手は「率直に言って、状況が状況だったので嬉しくなった。チームとしてル・マンに勝ちにいっていたので、勝てそうなレースが残念な状況で勝てなかったので、人生で一番嬉しくない表彰台だった」とした。
さらに表彰台からはどんな風に見えたのかと再度聞かれると「右にブラット・ピットがいて、彼をずっと見ていた(笑)。彼はシャンパンをずっと飲んでて、そのシャンパンが美味しそうだなと思って見ていた」と述べて笑わせたあと、「ル・マンは2位で喜ぶモノではない。優勝するためにエンジニアもクルマを作ってきてくれている。WECのレースではドライバーがヒーローではなくて、チームがヒーロー。チームとして24時間レースに勝利する、それが重要だと考えている」と述べ、トヨタチームとして一丸になって今シーズン残りのWECのレース、そして来年のル・マン24時間に挑戦していきたいとまとめた。