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【オートモビル カウンシル】マツダ、資生堂開発の「魂動」デザインを象徴するフレグランス「SOUL of MOTION」を初披露

「魂動」デザインの「強さ」「情熱」「生命観」をフレグランスで表現

2016年8月5日~7日 開催

「MX-5 RF」の前で、「魂動」デザインを象徴するフレグランス「SOUL of MOTION」について語るトークショーの1シーン。右から株式会社資生堂 化粧品開発センター シニアパフューマー 森下薫氏(フレグランス開発担当)、株式会社資生堂 宣伝・デザイン部 パッケージ&スペースデザイン室 室長 チーフクリエイティブディレクター 信藤洋二氏(デザイン担当)、マツダ株式会社 常務執行役員 デザインブランドスタイル担当 前田育男氏

「オートモビル カウンシル2016」のマツダブースでは、資生堂がマツダの「魂動(こどう)」デザインを象徴するフレグランスとして開発した「SOUL of MOTION」が初展示されている。視覚に訴えるだけでなく感性に訴えかけるブランド体験を提供する目的で、「魂動」デザインを多面的に表現する方向性の1つとしての展示となっていて、来場者は実際に香りを体験できる。

「SOUL of MOTION」は、ウッディー、レザー、ローズをベースに「魂動」を象徴する独自エッセンスを配合。「削ぎ落とした先の凝縮された興奮」を意味する「emotional simplicity」をテーマにしている。オーバーキャップの素材にはステンレスを採用し、エッジと曲面へのつながりが美しい。

 イベント初日の8月5日、この「SOUL of MOTION」に関して報道陣向けにトークショーが開催されたので、その内容をお届けする。

「SOUL of MOTION」はガラスケース内の展示。エッジから曲面へのつながりが美しくデザインされたステンレスオーバーキャップ
オーバーキャップを外すとガラス容器が出てくる。ほぼ無色透明
フレグランスの解説と来場者が香りを試す棚

 これまでマツダデザインでは、「クルマはアート」として「魂動」を題材にさまざまなアーティストとコラボレーションを行なってきた。今回は新たなコラボレーションとしてフレグランスが生まれたのだが、クルマとフレグランスは結びつきがないイメージが一般にはある。

 この結びつきの意味を、マツダ 常務執行役員 デザインブランドスタイル担当の前田育男氏は、「クルマとフレグランスは密接には繋がっていません。“クルマはアート”というスローガンでさまざまなアーティストとコラボレーションを行なってきていて、工芸家の方や建築家、美術家などと新しいクリエーションのスタイルを届けてきました。今まではスケッチなど2Dからフォルムの3Dへということやってきたのですが、今回はその領域を飛び越えて、香りという四次元的な内容へと広げていき、そこから受けられる刺激を次のクルマに生かしていきたいという想いがあり、スタートさせました」とコメント。

 コラボレーションのパートナーとして資生堂を選択した理由については、「業界トップのブランドということもありますが、企業の規模とかよりも、老舗のブランド“銀座資生堂”として、新しいチャレンジもしつつ守っている部分もある。そういったところを肌で感じてみたかったという思いがありました。具体的に言えば、“魂動”という文字を資生堂の書体で書いていただくと、これほど印象が変わるのかと驚きました。字体にもブランドに込めた想いが表れています。いろいろな刺激を受けることができました」と語った。

株式会社資生堂 宣伝・デザイン部 パッケージ&スペースデザイン室 室長 チーフクリエイティブディレクター 信藤洋二氏。デザインを担当

 このコラボレーションを初めて聞いたときのことについて、今回デザインを担当した資生堂 宣伝・デザイン部 パッケージ&スペースデザイン室 室長 チーフクリエイティブディレクターの信藤洋二氏は、「最初の打ち合わせ時にはまったくイメージがつかめず、テストコースでクルマを運転させていただいたり、クレイモデルに触れさせていただいたりして、マツダデザインの神髄に触れ、今回のコラボレーションの本気度が理解でき、パフューマーの森下と発想を膨らましていきました。マツダからの熱い想いがビシビシと伝わってきました」と印象を語った。

 続けて、「銀座という話題も出ましたが、銀座という街は“伝統にこだわらない本物志向”という考え方で発展してきています。資生堂も銀座に創業し、常にそういった想いでもの作りを続けています。マツダデザインとして、日本の本物を知りつつ、その価値を世界に発信しようとするそのブランディングに対する想いを、このプロジェクトを通じて学ぶこともできるのではないかと期待して参加しました。資生堂は2016年で創業144年になりますが、デザイン部と研究所ができてちょうど100周年になります。デザインとエンジニアリングと共同でなにか新しい価値を作りたいという考えもありました。香りは目に見えないものなので、どう表現するかが中身と外側のコラボなのですが、クルマでもエンジニアとデザインのコラボをしています」。

「“魂動”デザインをどう具体化しようかということには、今回のチャレンジで面白い試みになりました。ちょうど100年前に初代社長の福原信三が、彼自身も写真撮影をする芸術家でもあったのですが、眼には絵画、耳には音楽という芸術があるが、嗅覚にもあっていいんじゃないかと考え、それが香水だとしました。香水を芸術の域にまで高めたいという想いがあり、言葉としても遺しています。マツダからの“アートとして香水を作りたい”というオファーはとてもモチベーションになりました」とコラボレーションの意義などについて語った。

株式会社資生堂 化粧品開発センター シニアパフューマー 森下薫氏。フレグランス開発を担当

 今回、フレグランス開発を担当した資生堂 化粧品開発センター シニアパフューマーの森下薫氏は、「最初にクルマに乗ったときの高揚感を表現した爽やかなシトラス系の香りでは、『ありきたりな香りではチャレンジではない』と即却下されました。最終的には、“魂動”をダイレクトに表現した香りが選ばれました。“魂動”をどう香りで表現するかについては、感じられる“強さ”や“情熱”“生命観”といったことを表現できるだろうと考えました。“強さ”をウッディーノート(木の香り)、“情熱”をローズ(バラの香り)、“生命観”をレザーノート(なめし皮の香り)で表現しました。そうするとエッジが立った香りになってしまうので、本当はシトラスやフルーティなども入れていきたかったのですが、日本の美を意識してできる限り削ぎ落とし、シンプルに作ることを意識しました」。

「却下時の要望として、『金属的な香りができないか』と言われて驚いたことを覚えています。通常、メタリックな香りはよくない表現として、『メタリックな香りを抑えたい』などとして使われます。ここまでチャレンジをするのかと感心しました。幸いライム系のなかにシャープなキンとした香りがあったり、カシス系のなかにグリーンの固いイメージがあったりするので、うまく組み合わせればメタリックですが心地よい香りができるんじゃないかと、“魂動”にうまく融合させて完成させました。前田さんのひと言がなければここまでたどり着かなかったかと思います」と語り、実際にアートとしての香りを開発する難しさについて明かした。

 ボトルのデザインについて信藤氏は、「ボトルのほうも、日本の美意識のなかでも研ぎ澄ませていくことで洗練されていくという考え方で、トリミングを考えてみました。実際にはいくつか別プランを提案していましたが、このプランが香りの特徴である金属をカバーで表現していることで選ばれました。このカバー自体がステンレスでできていて、重量感があるアートピースとなっています。ガラスボトルがステンレスで覆われているということ自体が、フレグランスのデザインとしてはあり得ない、見たことのないデザインです。常識を覆すチャレンジと言ってもいいでしょう。機能面でもデザインしていて、持ち上げると下からスッとボトルが現れ、引き出して使うという形になっています」と解説した。

マツダ株式会社 常務執行役員 デザインブランドスタイル担当 前田育男氏

 最後に前田氏は、「3パターン見せていただいたなかで一瞬で染みたのが、この金属のパターンでした。シンプルで綺麗な形をしている。なかのボトルもシンプルです。余計なことは一切していない。それが我々が求める日本の美意識追求の志に近いと感じました。最初に却下した香りは、とても慣れ親しんだ香りだったためです。おそらくいろんな人に適した、心地よいフレグランスを作ってくれたのだと思いますが、心地よくなるためではないというところが言いたかった部分でした」。

「今回、アーティスト同士が真剣にぶつかり合うことで、いろいろなものが生まれるんだなと新たな発見がありました。異業種ではありますが、志を合わせると求めるものはシンクロしてくるんだなと。こういった活動のベネフィットはあると感じました。フレグランスをマツダが持つということは、オートモビル カウンシルのテーマでもある“大人のクルマ文化を作っていく”ということにもプラスになると思います。マツダはそこを目指していきたいと考えています。文化というからには、クルマという道具だけでは成立しません。使う人がいて、ライフスタイルがあり、そこになにかプラスになるものが必要になってきます。そういう意味で、このフレグランスをとおしてマツダという企業を感じていただけれればと思います。まだ分かりませんが、将来的にはいろんな人たちに香りを実体験していただき、常にマツダをそばに感じていただきたいという想いはあります」とトークショーを締めくくった。

ボトルを持ち上げると、カバー下からボトルが現れる
メッセージカードの「魂動」。資生堂の字体となる
トークショーのステージ上に置かれた「SOUL of MOTION」
報道陣向けに配られた香りを体験できるキット
同封されていた2つ折りのメッセージカードの表面
カード内側には日本語によるメッセージが記載されている
香りがつけられた同封のムエット(試香紙)にも「SOUL of MOTION」の刻印