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10月6日~9日に開催されるF1日本グランプリの見どころ一挙紹介

調子を上げているマクラーレン・ホンダの凱旋レースとなるか

2016年10月6日~9日 開催

 今週末の4日間に渡って、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットにおいて「2016 F1世界選手権 エミレーツ 日本グランプリ」が開催される。1年に1度しかないF1の日本GPということもあり、心待ちにしているファンも少なくないだろう。

 そんなF1日本GPは、今年も例年同様に見所が多数あるグランプリになりそうだ。優勝争いで言えば、前戦(第16戦)のマレーシアGPの結果がレッドブルによる1-2フィニッシュという衝撃的な結果になったこともあり、「レッドブル RB12」が得意とする高速コーナーを多数持つ鈴鹿サーキットでも王者メルセデスとの熱いレースが期待できそうだ。

 また、日本のファンにとってはマレーシアGPで7位、9位とダブル入賞を果たしたマクラーレン・ホンダの鈴鹿での活躍にも注目が集まるところだろう。シーズンの後半戦、マクラーレン・ホンダは尻上がりに調子を上げてきており、第11戦ハンガリーGP以降で見れば、コンストラクターズ選手権で5位のウィリアムズを上まわるポイントを上げており、毎戦“4位グループ”のトップを争うレベルまで実力を上げてきている。

鈴鹿でも引き続きメルセデスvsレッドブルの構図になる可能性は高い

ポールスタートからレースをリードしたルイス・ハミルトンだったが、レース残り15周でエンジンから出火してリタイヤとなった
第16戦マレーシアGPのポディウム

 先週末に開催された第16戦マレーシアGPの結果は、まさに衝撃的な結果だったと言ってよい。レースはポールポジションからスタートしたメルセデスのルイス・ハミルトンがトップを快走していたが、残り15周の1コーナーでエンジンから出火してリタイヤを喫することになったのだ。

 その結果、優勝、そして2位に入ったのは、ハミルトンに続いて2位と3位を走っていたレッドブルのダニエル・リカルドとマックス・フェルスタッペン。また、スタート時の1コーナーでフェラーリのセバスチャン・ベッテルに追突されて最後尾まで下がっていた、ハミルトンのチームメイトであるニコ・ロズベルグが追い上げて3位に入るというレースになった。まさに、好事魔多しというレースだったと言えるだろう。

 今シーズンのレッドブルの車両であるRB12は、コーナーリングマシンとでも言うべきコーナーが速いマシンに仕上がっている。エンジンに関しては、引き続きメルセデスに比べて非力と言われているTAGホイヤーのバッヂをつけたルノーエンジンを使っていることもあり、コースにストレートが多いモンツァなどのレースでは苦戦しているものの、ベルギーやシルバーストーンといった高速コーナーが多いコースでは健闘している。おそらくこの傾向は高速コーナーが多い鈴鹿サーキットにも当てはまるだろうから、レッドブルにとって鈴鹿は“戦えるコース”に分類できるだろう。

 これに対してメルセデスのマシンは、どこのコースに行っても速い。実際、メルセデスがポールポジションを獲得できなかったのは第6戦モナコGP(このときはレッドブルのリカルドがポール獲得)だけで、それ以外はすべてハミルトンかロズベルグがポールを獲得しているのだ。従ってメルセデスが依然として最速マシンであることに疑いの余地はない。

 今週末の日本GPでの焦点は、メルセデスの2人のうちどちらがポールを獲って優勝するのか、あるいはそこにレッドブルの2人が絡むことができるのか、そこにあると言えるだろう。

尻上がりに調子を上げているマクラーレン・ホンダに期待

 そして日本GPでのもう1つの注目点は、このところ尻上がりに調子を上げているマクラーレン・ホンダの活躍だろう。マレーシアGPではフェルナンド・アロンソが7位、ジェンソン・バトンが9位と2台揃ってのダブル入賞を果たしている。

 前半戦こそ2015年同様に厳しいレースが続いていたマクラーレン・ホンダだが、実は後半戦になってからのマクラーレン・ホンダは、コンストラクターズ選手権の4位をフォースインディアと争っているウィリアムズと同じレベルの結果を残している。第11戦ハンガリーGP以降のコンストラクターズポイントを見ると、

フォースインディア 51点(124点、4位)
マクラーレン・ホンダ 30点(62点、6位)
ウィリアムズ 29点(121点、5位)
※カッコ内はシーズン総合のポイントと順位

 となっており、コンストラクターズ選手権5位のウィリアムズを上まわるポイントを獲得しているのだ。フォースインディアにまでは追いついていないものの、ウィリアムズには対抗できるレベルまでマクラーレン・ホンダの総合力が上がってきていることを示している。おそらく鈴鹿でも、フォースインディアとウィリアムズ、そしてマクラーレン・ホンダの3チームによる激しい“コンストラクターズ4位グループ選手権”が展開されることはまず間違いないだろう。

第16戦マレーシアGPまでに42点を獲得し、ドライバーズランキングで10位となっているフェルナンド・アロンソ

 マクラーレン・ホンダにとっての好材料は、アロンソのマシンで使っているICE(内燃エンジン)がマレーシアGPで2トークンを使ってアップグレードしたパワーユニットになっていることだろう。アロンソはマレーシアでこの新しいICEを投入して、グリッド降格ペナルティ(年間5機より多いパワーユニットを投入する場合はグリッド降格ペナルティとなるレギュレーション)を受けたが、マレーシアではそれを予選、決勝のレースには利用しなかった。この意図は鈴鹿用としてとっておくと考えるのが妥当であるため、この新しいICEが鈴鹿で使われる可能性が高い。この新しいICEは軽量化などが図られており、当然のように性能向上も期待できる。鈴鹿でどのような性能を発揮するのか、要注目と言えるだろう。

2017年にジェンソン・バトン(写真右)に変わり、ストフェル・バンドーン(写真中央左)がフェルナンド・アロンソ(写真左)とレースドライバーを務める。写真中央右はマクラーレン会長兼CEOのロン・デニス氏

 また、この鈴鹿の日本GPは、マクラーレン・ホンダの正ドライバーとして走るジェンソン・バトンの、とりあえずのラストランとなる。マクラーレン・ホンダは2017年シーズン、レースドライバーとしてアロンソと、今年はスーパーフォーミュラに参戦しているストフェル・バンドーンの組み合わせにすると発表しており、バトンはマクラーレン・ホンダとの2年契約を更新して再来年の2018年にレースドライバーとして復帰する可能性を残しながら、2017年はリザーブドライバーになることがすでに決定している。

 もちろん再来年に復帰する可能性はあるが、2年後のF1がどうなっているかなどを予想することは難しいだけに、今回がF1ドライバーとしてバトンが鈴鹿を走る最後になる可能性もゼロではない。その意味で、バトンファンにとって今年の日本GPは見逃せないレースと言えるだろう。

2009年のF1ドライバーズチャンピオンであり、これまでに15回のF1優勝を飾ってきたジェンソン・バトン。2017年はマシン開発でチームに貢献するとしている

マニアックな楽しみ方として、各チームのIT系スポンサーにも注目

Qualcommは2015年からメルセデスとテクノロジパートナー契約を締結している

 PC Watchやケータイ Watchなど、Car Watchの僚誌であるIT系メディアの読者であれば、各チームのスポンサーになっているIT系のベンダーに注目してみるのも面白いだろう。ざっと各チームをチェックすると、以下のようなベンダーをスポンサーとして確認できる。日本GPに出かけたとき、あるいはTVに写るマシンなどを見るときには、これらのベンダーのロゴをチェックしてみると、よりマニアックな楽しみ方ができるかもしれない。

メルセデス

エプソン:キヤノンとトップシェアを争うプリンターメーカー
Qualcomm:スマートフォン用SoCやセルラーモデムなどを提供する半導体メーカー
Blackberry:かつては独自のビジネス向けスマートフォンOSを提供していたスマートフォンメーカー

レッドブル・レーシング

TAG Heuer:世界的な時計ブランド。近年ではAndroid Wearベースのスマートウォッチを提供している
AT&T:米国の通信大手。傘下のAT&T Wirelessは米国第2位の携帯電話キャリア

フェラーリ

Kaspersky Lab:ロシアのセキュリティソフトウェアメーカー。創業者の名前がブランドになっており、PC用のアンチ・ウィルスソフトウェアなどが有名
Claro:メキシコの大富豪カルロス・スリム氏が所有する南米に強い通信企業、南米16カ国で携帯電話サービスなどを提供している

フォースインディア

Claro:フェラーリと同じくカルロス・スリム氏が所有する南米に強い通信企業
NEC:日本の電気機器メーカー。サポートの主体はNEC本体ではなく、ドライバーのセルジオ・ペレスを後援するカルロス・スリム氏と関係があるメキシコの現地法人
Telcel:メキシコの携帯電話キャリア。カルロス・スリム氏の傘下企業
Telmex:メキシコの通信事業者。カルロス・スリム氏の中核企業

ウィリアムズ

BT:元々のBritish Telecomの名前が示すように英国の通信事業者。日本で言えばNTTのような企業

マクラーレン・ホンダ

SAP:ドイツのソフトウェアメーカー。エンタープライズ向けのERPソフトウェアなどで高いシェアを誇っている。なお、読み方はエスエーピーでサップとは読まない
NTTコミュニケーションズ:NTTの子会社でインターネットサービスプロバイダのOCNを運営しているほか、NTTドコモのMVNOとして携帯電話サービス事業も行なっている
JVCケンウッド:旧日本ビクターとケンウッドが合併した誕生した音響、無線機器メーカー。マクラーレンには1980年代から一貫して無線システムを提供している

フォースインディアの「VJM09」では、エンジンカバー部両サイドの最上段にNECのロゴを掲出
NTTコミュニケーションズは7月からマクラーレン・ホンダと3年間のテクノロジー・パートナーシップ契約を締結している
トロ・ロッソ・フェラーリ

カシオ・エディフィス:カシオが展開する腕時計のブランド。2015年まではレッドブルをサポートしていたが、今年からトロ・ロッソのスポンサーに
Acronis:PCなどに向けたパーソナル向け、エンタープライズ向けのバックアップツールを提供するソフトウェアメーカー。今シーズン中盤からトロ・ロッソのスポンサーになった

ハース・フェラーリ

Microsoft Lumia:MicrosoftのLumiaは米国などで販売されているWindowsスマートフォンのブランド。Lumiaのロゴがドライバーのヘルメットバイザーについている

ルノー

EMC:Dellが買収した法人向けのストレージ機器を販売する企業
Microsoft:Windowsで知られる世界的なソフトウェアメーカー

MRT・メルセデス(マノー)

Airbnb:民泊サービスを提供する企業。世界的なブームを背景に急成長中
Shazam:iPhoneやAndroidなどで利用できる音楽認識アプリShazamを提供する企業

ザウバー・フェラーリ

三菱電機:生活家電やカーナビなどのコンシューマ向け製品を販売しているほか、多種多様な産業向けの製品を提供している日本の総合電機メーカー

トロ・ロッソは7月にAcronisと“長期的なパートナーシップ契約”を結んでいるほか、日本企業のカシオ計算機とも2016年1月から2年間のオフィシャルパートナー契約を締結している

F1ドライバーサイン会など各種イベントも開催予定。チケットとイベント情報を要チェック!

鈴鹿のF1日本GP用WebサイトではF1日本GPを楽しむための各種基礎知識やイベント情報などを掲載

 F1日本GPのチケットは、現在も鈴鹿サーキットのWebサイトなどで販売されている。今年の鈴鹿のF1日本GP用Webサイトはコンテンツが充実しており、チケット情報、イベント情報のほか、初めてF1を観戦するファン向けのコンテンツなどが用意されており、F1を観戦する前にひととおり目を通したいところだ。

 また、Car Watchの読者であれば、鈴鹿サーキットFree Wi-Fiの情報はぜひチェックしておきたい。F1のようなビッグイベントの場合、1つの基地局に多くのユーザーが集中するため携帯電話の回線がつながりにくくなることがある。そんなとき、バックアップとしてこのFree Wi-Fiを覚えておけば、スマートフォンの接続先をそちらに切り替えることで通信できる可能性がある。Wi-Fiという仕組み自体もユーザーが集中すると速度が低下する可能性はあるのだが、使える回線は複数あった方がいいのは言うまでもない。現地に行くユーザーは忘れずにチェックしておこう。

初日の10月6日には、F1ドライバーと間近に交流できるサイン会やピットウォークなどを実施

 また、日本GPの期間中、グランドスタンド裏のGPスクエアでは多数のイベントが行なわれる予定になっている。それらのイベントには豪華なゲストが登場することもあるので、イベントのスケジュールは必ず鈴鹿サーキットのWebサイトにあるイベント一覧で確認しておきたい。憧れのF1ドライバーに会いたいというファンであれば、10月6日16時からに行なわれるサイン会が一番のチャンスだ。

 参加するには10月6日の9時からGPエントランスで配布されるF1ポストカードを入手し、そこに書かれている番号が抽選で当選すれば参加できる。鈴鹿サーキットによれば1100人の当選があるそうなので、当選の確率も高そうだ。どうしてもF1ドライバーに会いたいという人は、10月6日の木曜日から鈴鹿サーキットへGO!だ。

 毎年のように歴史に残るレースが展開されている鈴鹿のF1日本GP。今年はどんな名勝負を生み出してくれるのか、ぜひとも現地に行って確認してみてほしい。

2015年のF1日本GPスタートシーン