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【WEC 第7戦 富士】タイヤ無交換作戦に成功した小林可夢偉! 6号車トヨタが今シーズン初優勝
2位の8号車アウディと1.4秒差。富士スピードウェイに君が代が響き渡る
2016年10月16日 18:50
- 2016年10月16日 開催
静岡県小山町の富士スピードウェイで開催されたFIA世界耐久選手権(WEC)の第7戦となる富士6時間耐久レースは10月16日17時にチェカーを迎え、予選4位からスタートした6号車トヨタ TS050-Hybrid(ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ/小林可夢偉組)が優勝。
小林可夢偉選手はWEC LMP1で初優勝。最後にステアリングを握った可夢偉選手は、2位の8号車 アウディ R18(ルーカス・ディグラッシ/ロイク・デュバル/オリバー・ジャービス組)をわずか1.4秒差で振り切った。
3位は1号車 ポルシェ919 Hybrid(ティモ・ベルンハルト/マーク・ウェバー/ブレンダン・ハートレー組)。
レースのほとんどを支配した8号車アウディ、トヨタ6号車の最終スティントは小林可夢偉に
11時にスタートが切られた6時間のレース。レースが4時間を経過した時点(別記事参照)では、ポールからスタートした8号車 アウディ R18(ルーカス・ディグラッシ/ロイク・デュバル/オリバー・ジャービス組)がリード、1号車 ポルシェ919 Hybrid(ティモ・ベルンハルト/マーク・ウェバー/ブレンダン・ハートレー組)、6号車トヨタ TS050-Hybrid(ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ/小林可夢偉組)が追いかける展開となっていた。
5回目のピットストップに一番早く入ったのは174周目のデュバル選手がドライブする8号車 アウディ R18(ルーカス・ディグラッシ/ロイク・デュバル/オリバー・ジャービス組)。このペースでピットストップをすると、最後のピットストップにかかる給油時間が長くなり、その間に抜かれる可能性がある。アウディとしては飛ばせるまで飛ばすしかなく、ハイペースでトップを走行していた。
ここで動いたのはトヨタ陣営。トヨタの6号車は計算上は184周まで引っ張れるところを、177周でサラザンをピットに入れ、小林可夢偉選手にドライバー交代。エースの可夢偉選手を投入して、スピードでポルシェやアウディを引き離す作戦だ。
ポルシェも183周にベルンハルトがドライブする1号車をピットに入れ、若いハートレー選手に交代させて対抗を目指すが、1号車がピットアウトする先を、可夢偉選手がドライブする6号車トヨタがその鼻先をかすめていく。これで、可夢偉選手が運転する6号車 トヨタは2位に上がり、8号車アウディが終盤に長い給油時間のピットストップをする必要があると考えると、実質上のトップに浮上したと言える。
その後、1号車ポルシェをドライブするハートレー選手は6号車トヨタをドライブする可夢偉選手を追いかけ回し2台のマッチレースがコース上で展開された。2人の若いドライバーの戦いは見応えがあり、一時はハートレー選手が可夢偉選手をオーバーテイクしたが、その後再び抜き返すという、耐久レースというよりはF1のようなスプリントレース的な戦いが繰り広げられた。可夢偉選手の速さはその後も続き、前を走る8号車アウディ、後ろを走る1号車ポルシェとほぼ同じようなタイムでラップを重ねた。
タイヤ無交換のギャンブルにでたトヨタ6号車、小林可夢偉がタイヤをケアして1.4秒差でアウディを振り切る
210周目にデュバル選手がドライブする8号車アウディがピットイン。ここでアウディ陣営は残されていた最後のニューセットタイヤを投入。給油に時間がかかっている分をデュバル選手+ニュータイヤで取り返す作戦にでる。それに対し、その数周後にピットインしたトヨタ陣営は、コース上の順位を重視して、タイヤ無交換でそのまま可夢偉選手を行かせるギャンブルにでる(その分ピットストップの時間を節約できるからだ)。
アウディ8号車がピットストップに85秒かかったのに対して、6号車トヨタは60秒で可夢偉選手を送り出すことに成功。これで、6号車 トヨタは8号車アウディの前に出ることに成功した。
こうなると残る焦点はこの時点でトップを走っていたポルシェがどのような戦略にでるかだが、ポルシェは給油、ドライバー交代、タイヤ交換のフルサービスを実行。1号車ポルシェがピットアウトすると、1位可夢偉選手の6号車トヨタ、2位は約9秒差でロイク・デュバル選手の8号車 アウディ、3位は12秒差でマーク・ウェバー選手の1号車ポルシェという順位になった。
レースの焦点は、タイヤを変えていない可夢偉選手の6号車トヨタのタイヤは最後まで持つのか、ニュータイヤで追い上げている8号車ロイク・デュバル選手はどこまで迫れるのか、まさにそこになった。
残り30分の段階まで、可夢偉選手は9秒近い差を維持していたが、徐々にタイムが落ちてきており、残り20分の状態で、差はわずか6秒。差はじりじりと詰まっていき、残り10分で両車の差は4.4秒にまで縮まる。WECでは、複数のクラスが混走しているため、その処理によってはタイムをロスすることがあり、結末が誰にも分からないという緊張がサーキット全体を覆うことになった。
しかし、6号車 トヨタをドライブする可夢偉選手はタイヤをケアしながら周回を続け、最終ラップには差を1.4秒まで詰められたものの、リードを守り切ってゴールし、今シーズンの初優勝をトヨタにプレゼントすることになった。
2位は最後まで追い上げた8号車 アウディ、3位は1号車ポルシェ、4位はもう1台の5号車トヨタ、5位はポイントリーダーに2号車ポルシェが獲得した。
6時間走ってきて、これだけの差でゴールするという事実で、現在のWECの戦いがいかに厳しいものであるかを象徴しているし、2016年の富士6時間耐久レースは歴史に残るレースだったと言っていいだろう。レース後には表彰台でチーム本籍地の国歌「君が代」がサーキットに響き渡り、地元のヒーロー可夢偉選手の大活躍と相まって富士スピードウェイのスタンドはかつてないぐらいの盛り上がりを見せていた。
LMP1の結果(暫定)
順位 | カーナンバー | ドライバー | マシン | タイヤ | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 6 | ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ/小林可夢偉 | Toyota TS050 - Hybrid | MI | 244周 |
2 | 8 | ルーカス・ディグラッシ/ロイク・デュバル/オリバー・ジャービス | Audi R18 | MI | 1.439 |
3 | 1 | ティモ・ベルンハルト/マーク・ウェバー/ブレンダン・ハートレー | Porsche 919 Hybrid | MI | 17.339 |
4 | 5 | アンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴 | Toyota TS050 - Hybrid | MI | 53.799 |
5 | 2 | ロマン・デュマ/ニール・ジャニ/マルク・リーブ | Porsche 919 Hybrid | MI | 1周 |
6 | 13 | マセオ・チェスター/ドミニク・クラハイマー/アレクサンドレ・インペラトーリ | Rebellion R-One - AER | DL | 15周 |
R | 4 | サイモン・トラマー/オリバー・ウェブ/ピエール・カッファー | CLM P1/01 - AER | DL | 165周 |
R | 7 | マルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノア・トレルイエ | Audi R18 | MI | 208周 |
ハイブリッドではない、LMP1に関しては4号車CLM P/01・AERがレース途中でリタイヤしたため、13号車 レベリオンR-One-AER(マセオ・チェスター/ドミニク・クラハイマー/アレクサンドレ・インペラトーリ組)が総合でも6位に入って優勝した。
LMP2は最後の最後で26号車オレカ・ニッサンが逆転で優勝
無風かと思われたLMP2だが、トップを走ってきた26号車 オレカ 05-ニッサン(ロマン・ルシノフ/アレックス・ブランドル/ウィル・スティーブンス組)がピットインすると、トップに立っていたのは43号車 リジェ JS P2・ニッサン(リカルド・ゴンザレス/フィリッピ・アルバカーキ-/ブルーノ・セナ組)。26号車は他のチームとはピットシーケンスが異なっており、最後のピットストップが終わると2位になってしまっていたのだ。
しかし、その数周後の1コーナーで、26号車 オレカをトライブしていたウィル・スティーブンス選手が、43号車リジェ JS P2をドライブしていたブルーノ・セナをオーバーテイク。しかし、その時に軽く接触して抜いていったことがドライブマナー違反として、26号車にペナルティが科せられた。ただし、ペナルティはピットスルーなどではなく、43号車に順位を戻すというもの。それにより再び26号車が43号車を追いかける展開となった。再び1秒差の戦いになったが、レースが残り5分になった段階でスティーブンスがドライブする26号車がセナ選手がドライブする43号車をストレートで今度はクリーンにオーバーテイクし、そのまま優勝した。
この他、GTE PROは予選2位からスタートしてレースのほとんどを支配した67号車 フォードGT(アンディ・プリオール/ハリー・チックネル組)、GTE AMはポールからスタートした98号車 アストンマーチンV8ヴァンテージ(ポール・ダララ・ラナ/ペドロ・ラミー/マティアス・ラウダ組)がそれぞれ優勝した。