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【WEC 第7戦 富士】小林可夢偉選手「タイヤ無交換作戦にリスクはあったが、賭けてみる価値があると考えた」

LMP1上位3チームによる記者会見より

2016年10月16日 開催

記者会見に臨んだLMP1上位3チームのメンバー

 静岡県小山町の富士スピードウェイで開催されたFIA世界耐久選手権(WEC)の第7戦となる「富士6時間耐久レース」は10月16日17時にチェッカーを迎え、予選4位からスタートした6号車トヨタ TS050-Hybrid(ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ/小林可夢偉組)が優勝した。その模様は別記事([スタート~2時間まで]、[2時間~4時間まで]、[4時間~ゴール])で紹介したとおり。

 本記事では、ゴール後に行なわれたLMP1でトップ3に入ったメンバーによる記者会見の模様をお伝えしていきたい。

タイヤ無交換作戦はリスクはあると思ったが、賭けてみる価値があると考えた

小林可夢偉選手

――優勝したクルー、特に最終スティントを走った小林可夢偉選手、スゴイ走りだった。

小林可夢偉選手:もう“ワォ”しか出てこなかった。チームは非常によくやってくれていた。今週の走り出しはよくなかったけれど、みんながベストを尽くしていた。もちろん、最大の後押しになったのは僕らのサポーターの皆さんだし、皆さんもよぅご存じの“トヨタのビッグボス”がきていたことも後押しになった。僕たちはル・マン24時間レースでは競争力があったけど、その後のレースではイマイチだったので、ここ富士でふたたび競争力を持つことができて、こんな結果を出せてよかった。

――ダブルスティントはどうだったのか? 逃げ切れると思っていたのか?

小林可夢偉選手:2スティント同じタイヤで走るというのは言うまでもなく難しかった。しかし、エンジニアがそれができるかって聞いてきた。もちろんリスクはあると思ったけど、賭けてみる価値はあると思っていた。ただ、10秒というマージンは十分だとは思えなかったので、周回遅れをうまく捌きながらできる限りのラップタイムで走ることを心掛けた。

マイク・コンウェイ選手

――マイクはどう思った?

マイク・コンウェイ選手:こんな素晴らしい結果を出すことができて、チームに感謝したい。可夢偉の走りは本当にすごいとしか言い様がない。可夢偉の最終スティントでタイヤを変えたら勝てなくなることは分かっていたので、その可能性に賭けることにしたんだ。タイヤは僕のスティントでもなんの問題もなかったし。

ステファン・サラザン選手

――ステファンはどうだったか? このレース前の3戦はとても苦戦しているように見えたけど……

ステファン・サラザン選手:このレースに勝てたことは一言で言えば“アメージング”って気分だね。ここ3戦はとても苦戦していたので、ここではいいクルマを持ってくることができて、チームもよい仕事をしてくれた。クルマそのものは前の3戦とあんまり変わっていないのだけど、コースが僕たちのクルマに合っていたのだと思う。ここに来る前から、これまでよりもよい戦いができるとは思っていたけど、正直勝てるとは思っていなかった。勝因は言うまでもなく可夢偉の走りだよ。

「タイヤ無交換作戦はリスクが大きいと考えた」とポルシェクルー

2位となった8号車アウディのクルー。左からロイク・デュバル選手、ルーカス・ディグラッシ選手、オリバー・ジャービス選手

――2位になった8号車アウディのクルーに聞く。まずオリバーから

オリバー・ジャービス選手:勝てなかったことは残念だけど、ドライバーチャンピオンシップで2位を維持して1位に少し近づくことができた。今日は6号車のクルーがすごくよい仕事をしたってことだと思う。6時間もレースをして差がたった1.4秒って本当にすごいことで、ここに来てくれた沢山のファンによいレースを見せることができたと思う。

ルーカス・ディグラッシ選手:正直このレースではポルシェとの戦いになると思っていたので、トヨタがよい仕事をしたことは驚いた。また、彼等はダブルスティントができたけど、僕たちは難しかった。可夢偉は本当にいい仕事をしたよね。6時間もレースして1.4秒差というのは本当にすごいこと。僕たちが僅差で2位だったというのは残念だけど。

ロイク・デュバル選手:1.4秒差というのは本当に惜しかったよね。僕らも彼等もミスをしなかった。僕たちのクルマのパッケージは最高で勝てるチャンスがあったけど、それでも勝てないことがあるのがモータースポーツだ。まぁだけど、最終セクターで可夢偉を抜くなんてことにならなくてよかったよ、そうしたらここのみんなにとってすべて台無しになってたところだ(笑)。だからこれでよかったんだと思う、次回のレースこそ勝ちたいね。

3位となった1号車ポルシェのクルー。左からブレンダン・ハートレー選手、ティモ・ベルンハルト選手、マーク・ウェバー選手

――3位となったポルシェのクルーに聞く、まずはティモから。なぜ最終スティントタイヤを変えたのか?

ティモ・ベルンハルト選手:6時間も走って3つのメーカーがこんな僅差でゴールするということは、WECにとってはとてもいいことだと思う。トラフィックの処理には非常に苦労したけど、それもこのレースの一部で、みな条件は同じだ。レースは楽しめたので3番手はわるくないと思う。トヨタとアウディとは非常に接近戦だったので、タイヤを変えた方がいいと判断したんだ。いずれにせよ、きちっとポイントを取れて次の上海のレースに迎えることはよいことだ。

ブレンダン・ハートレー選手:3つのメーカーが互角の戦いができていることは、WEC全体にとっていいことだと思う。タイヤを変える決断だけど、タイヤを変えないことはあまりにリスキーだと判断したので変えることにした。

マーク・ウェバー選手:最初に、ホームレースで可夢偉は本当によいレースをしたと思う。僕自身はレースをエンジョイした。まだ改善すべきところはあると分かったので、次のレースにそれを生かしたい。タイヤを交換するのはギャンブルだと考えたので変えることにした。我々のクルマはトヨタとは違うクルマだし。日本での最後のレースをこんな風に表彰台で終わることができてよかった。