ニュース

メルセデス・ベンツ、2017年の年頭記者懇談会で「GLC クーペ」の2月22日発表を予告

「2017年も過去最高を記録した昨年同等の販売を目指す」と上野金太郎社長

2017年1月25日 開催

「GLC クーペ」の2月22日発表を予告したメルセデス・ベンツ日本株式会社 代表取締役社長兼CEO 上野金太郎氏

 メルセデス・ベンツ日本は1月25日、同社の2016年の状況と2017年の目標、親会社の独ダイムラーが進める中長期戦略などに関して報告する年頭記者懇談会を開催した。

日本におけるメルセデス・ベンツの2016年を振り返り、今年の目標について語ったほか、独ダイムラーの中長期戦略などについて説明するメルセデス・ベンツ日本株式会社 代表取締役社長兼CEO 上野金太郎氏

 会の冒頭では、メルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏が登壇。上野氏は「昨年の新車の販売状況についてお話をさせていただきたいと思います。メルセデス・ベンツは、グローバル、さらに日本のいずれも過去最高台数を達成することができました。グローバルでは6年連続、日本でも4年連続で過去最高を更新することができ、大変好調な1年と思っていただければと思います。グローバルでは、初めて200万台を越えまして、2004年以来、12年ぶりに高級車市場であるプレミアムブランドのナンバー1に返り咲くことができました。ダイムラーの会長は、1月9日にアメリカのデトロイトで『メルセデス・ベンツにとって歴史上最も成功した年』とコメントしておりました。最新のテクノロジーを搭載した数々の新車を投入し、さらに中国市場のてこ入れを図り、10万台以上の上積みをできたことがこの首位奪還に繋がったとコメントしております」。

「東京オートサロン 2017」で日本初公開した新型「スマート ブラバス」と並んでプレゼンテーションを行なう上野氏
2016年の販売は、グローバルで6年連続、日本で4年連続過去最高を更新した
日本において近年堅調に販売が伸びているSUV。メルセデス・ベンツ日本では2016年を「SUV Year」と銘打ち、年初からSUVモデルを多数導入。ブランド内の構成比率は、数年前はひとケタ台だったが、2016年には20%を越えた。SUVラインアップの拡充を図り、全体の底上げをしたことが成功要因の1つとなった

「日本におきましても、約6万7000台をメルセデス・ベンツは販売いたしまして、2年連続で純輸入車ナンバー1、4年連続プレミアムブランドナンバー1と好成績を残すことができました。メルセデスのなかでは、中国、アメリカ、ドイツ、イギリスに続いて日本は5番目のマーケットのポジションを維持しております。昨年の成功要因については、主に新車効果と私どもは考えております。グローバルでも、日本でも中核モデルである『Eクラス』に大きな注目が集まり、SUVも好調、そして最量販モデルである『Cクラス』、さらに小型車を中心に堅調に台数を伸ばすことができました。本年も、先進性のある魅力的なプロダクトの展開、お客様が満足されるブランド体験『カスタマーエクスペリエンス』の提供という2つの軸を中心に活動して参ります。ぜひ、メルセデス・ベンツを可愛がっていただければと思います」と2016年を振り返り、状況説明と今年の目標を発表した。

2016年はクーペやカブリオレといったスペシャルティモデルも強化。クルマに対する憧れや所有する喜びを醸成する貴重なモデルという位置づけ
コンパクトカーの「スマート」にとっても2016年は記念すべき年となった。2015年の東京モーターショーで発表されたことを皮切りに、2016年にはターボモデルやカブリオレが発売され、年末には「ブラバス」モデルを発表。1年間で約4500台を販売し、前年の2015年と比較して+350%という大きな飛躍となった
会場に展示された「スマート ブラバス forfour Xclusive」
メルセデス・ベンツとスマートを合わせて、2016年の年初には26車種127モデルであったが、現時点では30車種155モデルと選択肢が拡大している
アフターセールスの分野でも、2016年は2015年に続いて好業績の年となった。昨今の新車販売増によって保有台数が68万台を超え、サービス台数も増加傾向で推移。また、部品売り上げ金額は、メンテナンス部品の需要が拡大し、2016年から本格的に参入したタイヤビジネスにおいても結果を残したほか、アクセサリーコレクションの拡販などで前年比+9%を達成している
2016年は自動車の発明から130年、メルセデス・ベンツ日本の設立30周年のメモリアルイヤーとなっていた

 また、2016年はダイムラー・ベンツが自動車を発明してから130周年、そしてメルセデス・ベンツ日本も設立30周年という節目の年となったことを上野氏は説明。グローバルと日本のどちらでも記念すべき年に高実績となったとした。

 自動車を取り巻くビジネス環境が大きく様変わりつつあり、親会社の独ダイムラーが先日のCES(コンシューマー・エレクトリック・ショー)で中長期戦略について発表。ダイムラーは131年前に自動車を発明した起業家精神にあふれる企業であり、自動車作りの哲学や伝統を大切にしながらも、いつも次の時代への中長期戦略を立ていると解説。今回はキーワードとなる4つの柱から頭文字を取り、「CASE」と呼称されているという。

「C」の「Connectivity」は、クルマとドライバー、クルマとクラウド、クルマとクルマなどをコネクトさせることで、クルマがより安全で利便性の高いモビリティに変化。心身一体型のアプローチの取り入れ、クルマに健康要素を取り入れる技術も用意する。まだ開発途中だが、車内、およびドライバーが装着しているデバイスのセンサーからデータを収集し、ドライバーの心身の状態を読み取って分析し、音楽・光・空調・シートをリラックスできるように調整する。また、クルマが脈拍などからドライバーの状態を検知し、応答がない場合は自動でブレーキを掛けたり、安全な場所で停止させ、さらに救急車を呼ぶといったこともしてくれるようになる。

ダイムラーの新しい中長期戦略「CASE」
クルマとドライバーをコネクトさせ、クルマに健康要素を取り入れる

「A」の「Autonomous」はいわゆる自動運転で、最近力を入れている領域は、マップデータとAIの活用。地図データによって、右折・左折をしたりカーブを走行する前に自動で減速させるといった技術も開発している。どの位置から減速を始めれば理想的に、かつ完全にカーブを曲がれるかAIが瞬時に計算し、人の判断を介さず、人が運転するのと同様にスムーズな減速加速が可能となる。

 また、AIの活用により音声認識や画像認識の技術レベルも急速に高まっており、今後は人間の表情や言葉のトーンからドライバーの要望やコンディションを読み取り、最適な提案をしてくれるようになると予想されている。

 これらを含めて、ダイムラーの自動運転技術はソフトウェア・ハードウェアともかなり高いところまですでにでき上がっており、あとは規制の問題が非常に大きいという。ダイムラーは2020年から2025年にかけて、自動運転の技術とその普及が世界中で爆発的に飛躍すると予測している。

「S」は「Shared」で、モビリティの1つのケース。ダイムラーが実施している「car2go」という乗り捨て型のカーシェアサービスは、世界中ですでに200万人のユーザーメンバーを有し、成功を収めている。car2goだけではなく、カーシェアのビジネスも続々と展開し、年末に自家用車を使用していない時間に人に貸し出す「Pia to Piaカーシェアリング」をミュンヘンでパイロット的に実施。ユーザーに今までとは違う体験を提供し、クルマの利便性や快適性を経験してもらうことで、常にクルマに興味を持ってもらうのが目的となっている。

ダイムラーの自動運転技術はすでにかなり高いところまででき上がっているという
「car2go」というカーシェアサービスも運営している

「Electric」(エレクトリック モビリティ)の「E」は、ダイムラー全車種において電動化していく方向性を示している。新たに「EQ」というブランドを作り、2025年までに10車種展開を考えているという。どの車種にも使えるプラットフォームを作り、事業の柱としてビジネスモデルを構築する方向。クルマ本体のみならず、ソーラーパネルを含む充電施設、受電設備や家庭での充電システム、公的サービスとしての充電設備、バッテリーのリサイクルまで全てがプロジェクトに含まれている。一般ユーザーにとっては充電がEV(電気自動車)購入の障壁となっているため、家の車庫に駐車しておくだけで充電できる「非接触型充電システム」なども開発中。航続距離は500km程度をターゲットとしている。

EV(電気自動車)購入のハードルを下げるため「非接触型充電システム」なども開発中
「EQ」という新ブランドを作り、2025年までに10車種の展開を計画
2017年の台数目標は、年間トータルで2016年の数字を超えること。ビジネスネットワークの規模から考えて、現状の合計7万台というかなり高い水準にすでに達していると分析。販売店と協力して「安定した7万台」の販売を維持する体制作りに注力していく。これまで新規拠点の開設や移転・改装を年間平均で約15店舗ほど実施しており、2017年は約30拠点を計画する
ベストカスタマーエクスペリエンスを最重要課題に位置付けるほか、新車発表を初めとした全ての活動を実施。商品は全く新しい車種を含め、年内に5車種以上を発表する予定

 2017年に発売する車両では、2月22日にプレミアムミドルSUV「GLC」の派生モデルである「GLC クーペ」を発表すると予告。そのほかに中核モデルである「Eクラス ファミリー」の投入も予定しており、CASEに乗っ取った新しい技術を搭載するモデルを、年内に発表できるよう準備を今進めていると明らかにした。

 また、ハイパフォーマンスモデルの「メルセデスAMG」は2017年に50周年を迎える。これを祝って発表前の「メルセデスAMG GT R」を特別に参考展示。この車両は1月13日に“世界初のAMG専売拠点”としてオープンした「AMG 東京世田谷」でサプライズ公開されたものとなる。

「GLC クーペ」を2月22日に発表すると予告
「Eクラス クーペ」は1月のデトロイトショーで世界初公開されたモデルだ
自動車の発明120年に続き、今年は「メルセデスAMG」が50周年を迎える。メルセデス・ベンツ日本では世界初のAMG専売拠点である「AMG 東京世田谷」をオープンするなど、積極的な展開を図っている
「メルセデスAMG GT R」

 メルセデス・ベンツと並ぶ同社のブランドであるスマートについても、メルセデス・ベンツと同じく2016年実績を超えることを目標にしている。スマートは日本の交通事情にフィットしたモデルであり、今後はさらに台数を伸ばしていけるような基盤作りを進める方向性を表明した。グローバルで展開している「smart city project」を日本にも導入し、年央に初めてのスマート専売拠点を京都府にオープンする予定。単に新拠点を開設するだけではなく、京都府と連携した活動も準備が進んでいる。

「日本の交通事情にフィットしたモデル」と分析するスマートは、年央に初のスマート専売拠点を京都府にオープンする予定とのこと
2016年から全国の販売店で活躍している「プロダクトエキスパート」。ショールームで来客対応するが、販売には関わらないという全く新しい職種だ

 また、メルセデス・ベンツ日本では現在、30車種155モデルを展開し、モデルの選択肢は数年前と比べて大きく拡大した。クルマの機能も進化しており、ユーザーにていねいに説明する機会を提供することが必要であるとの考えから、2016年から全国の販売店に「プロダクトエキスパート」という全く新しい職種を設定し、全拠点での配置を開始している。

 このプロダクトエキスパートは、ショールームでのお客様対応全般を担当する一方、実際の販売などは行なわず、ユーザーごとの疑問や不安を払拭してセールスやサービスに円滑に引き継ぐことで、組織全体で高いレベルのユーザーサービスが実現できるようリードしていくキーパーソンとなっている。

 プロダクトエキスパートを積極的に店舗に採用するための専用プログラムを開発し、コーチングや360度評価などの仕組みも導入。自ら学び改善していけるような環境を整えることにより、高いレベルでの来客対応ができるような状態を維持する。また、販売店におけるデジタル化を促進して、販売店スタッフがスピーディに、かつ効率的に最新の情報を入手。ユーザーに提供・提案できるようインフラごと整備を進めていきたいと上野氏は語った。

安心してクルマに乗り続けられるようメンテナンスプログラムを充実させているほか、代車に最新モデルを配備して新たなブランド体験を提供している

 ユーザーが安心してクルマに乗るためにはサービスの強化も不可欠で、メルセデス・ベンツでは新車購入時から3年間の無償保証プログラム「メルセデス・ケア」に加え、4年目、5年目も安心して乗れる有償のプログラム「保証プラス」、さらに「メンテナンスプラス」を用意。加えて6年目以降の車両にも適応できる「メンテナンスプラス ライト」の設定もあり、スマートにも「メルセデスケア smart」を導入している。これに加え、2016年から「メルセデス・ベンツ自動車保険プログラム」の取り扱いを全販売店で開始した。

「メルセデス・ケア」では整備を保証してきたが、改定により最新のサービスを提供することになり、カーナビの地図データ無料更新サービスの回数を増やすことや、ツーリングサポート利用時の対応の質を向上させることなどが例として挙げられた。さらに、点検や整備、修理などでサービス入庫するとき、代車の使用は最新のメルセデス・ベンツに触れてもらう機会と考えて配備の充実を進めてきたが、予定する台数の配備が完了し、サービス期間のユーザーに新たなブランド体験を提供できるようになったこともアピール。また、2月からはサービス入庫するユーザーを対象とした「究極のドライブキャンペーン」などを実施。普段はなかなか体験できないメルセデスAMG GTの試乗を、希望者に抽選で提供するなど、今までになかったようなアプローチも進めていく。

 2009年から積極的に取り組んでいる「新しいお客様との接点作り」については、2017年も継続的に取り組みを進める。その代表格と言えるブランド発信拠点「メルセデス・ベンツ コネクション」は、これまでに東京都と大阪府で合わせて約550万人以上が来場し、試乗も5万件を超えているという。2016年は東京の隣接地に新たなブランド体験施設「メルセデス・ベンツ コネクション ネクストドア」をさらに拡張。3カ月ごとにそのテーマを変え、さまざまなイベントを開催した。夏場にはサッポロビールとのコラボで、自動車会社としてはユニークなビアテラスの営業を実施。年末に飾られたクリスマスリースは「世界最大のクリスマスリース」ということでとくに話題となった。

 一方、大阪では2016年10月から「フューチャー メルセデス」と題し、2015年の東京モーターショーで世界初公開されたコンセプトカー「Vision Tokyo」を敢えて大阪で展示。最新のVR機器を用いて未来感あふれるイベントを展開している。このメルセデス・ベンツ コネクションは“クルマを売らないショールーム”で、東京ではユーザーの声やスタッフ側の経験をベースにした「ネクストステージ」というコンセプトを掲げ「よりくつろげる空間」「よりカーライフを豊かにする空間」、そして「よりメルセデスを深く体験できる空間」を目指して1月13日にリニューアルを行なった。

コンセプトカー「Vision Tokyo」

 メルセデス・ベンツ コネクション ネクストドアでは、今年も数カ月ごとにこれまで同様のユニークなイベントを開催していく予定。現在は第4弾となる「SKY TRIAL PARK」を開催中で、実演や試乗をつうじて、よりブランドを知ってもらうためのプログラムとなっている。メルセデス・ベンツの自動パーキング機能やスマートの最小回転半径を体験できるほか、2月5日までの期間限定で昨年に話題となった特製ラーメンの新作が販売される。

「Hydro Flask」というブランドとのコラボで作成したステンレスボトルはこの1月25日から販売開始。Hydro Flaskは保冷・保温どちらにも使える全断熱ボトルとしてアメリカ西海岸やハワイで大人気のブランドで、日本では今年の春から正規輸入が始まるのだが、メルセデス・ベンツのブランドマークを入れて、一般の正規販売に先駆けて発表。メルセデス・ベンツの代理店をつうじて先行販売する
25年にわたって続けているCSR活動の「Art Scope」。2015年からは名称を「Mercedes-Benz Art Scope」と変更している

 このほかにメルセデス・ベンツ日本は、CSR活動として1991年から25年の長期にわたり、グループ会社と共同で「Art Scope」という文化芸術支援活動を実施している。現代美術の若いアーティストを日本とドイツの間で相互に派遣し、異文化での体験、創作活動をとおして交流を図るというプログラムとなっている。これまでに計30人を支援して、長い歴史のなかでは著名なアーティストも輩出。2015年にはこのArt Scopeを「Mercedes-Benz Art Scope」と名称を変更し、プログラムの内容も一部見直して継続している。2017年は5月末から東京 品川の原美術館で展覧会を実施する予定となっている。

 最後に上野氏は「本年も先進性のある魅力的なプロダクトの展開、お客様が満足されるブランド体験『カスタマーエクスペリエンス』の提供という2つの軸を中心に活動して参ります。ぜひメルセデス・ベンツを可愛がっていただければと思います」とコメントして会を締めくくった。