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【インタビュー】コンマ何秒を巡る戦い、室屋義秀選手が千葉大会を振り返る

残り5戦の戦略などについて語った

室屋義秀選手(No.31 チーム ファルケン)

「レッドブル・エアレース千葉 2017」(6月3日~4日開催)で母国大会2連覇を果たした室屋義秀選手(No.31 チーム ファルケン)が、東京都内で開催されたブライトリング主催の取材会に出席して、集まった取材陣の質問に答えた。

 千葉大会で優勝した室屋選手の戦いをあらためて振り返ると、決勝日のRound of 14で室屋選手はペトル・コプシュタイン選手(No.18 チーム シュピールベルグ)と対戦。室屋選手は55秒590を記録し、一方コプシュタイン選手は55秒597で、0.007秒差で室屋選手がRound of 8に進出。

 続くRound of 8で、室屋選手はマット・ホール選手(No.95 マット ホールレーシング)と対戦。室屋選手は54秒964を記録するもペナルティにより最終的なタイムは56秒964となった。ホール選手もペナルティをもらい57秒295となり、結果、室屋選手がFinal 4に勝ち上がった。

 優勝者を決定するFinal 4。室屋選手が最初にアタックして55秒288を記録。続いて、室屋選手と最初に対戦したコプシュタイン選手が2番目にアタックして55秒846を記録。

 残る2名は第2戦までのポイントランキングの1位と2位のアタックが続いたが、いずれもペナルティを受け、マティアス・ドルダラー選手(No.21 マティアスドルダラー レーシング)が57秒943、マルティン・ソンカ選手(No.8 レッドブルチーム ソンカ)が56秒533と、室屋選手のタイムを超えることができず、室屋選手の優勝が決定した。


──千葉大会を振り返って、トラックの特徴や戦略について教えてください。

室屋選手:Round of 8では、相手が(2016年ランキング2位)マット・ホール選手だったので攻めるしかないと、55秒切る54秒台のタイムで攻めて、結果としてペナルティとなってしまった。

 なのでFinal 4では、55秒を切る54秒台のタイムだとこちらのリスクが高くなるので、一か八かの勝負は負けるので止めようと、元のプランに戻すことを考えました。

 結果として55秒288。これは対戦相手にとって楽に勝てるタイムではないんです。これが55秒8~くらいになってくると、対戦相手に“大丈夫”と思われてしまうタイムなのですが……。

 で、ドルダラー選手もソンカ選手も54秒台で攻めてきましたが、パイロンヒットやミスにつながってしまった。これがコプシュタイン選手と一緒の55秒8~ぐらいのタイムであったら、彼らが通常通り飛んで勝っていたでしょう。

──心理戦があるのですね。

 実力どおりに最初に設定したタイムで飛ぼうと、元に戻ったのが結果としてよかった。そういう風に飛べば年間をつうじてポイントもたまるのですが……。これがなかなか難しい、こちらも熱くなっちゃうので(笑)。

──最初コプシュタイン選手とのバトルは0.007秒差でした、この時の心境は?

室屋選手:(勝ち負けを知った時は)コックピットにいて、無線で勝ったか負けたかを教えてくれるのですが、ギリギリだったかなあと思っていたら“ウィナー”と言われ”あっ勝った!”と。相手のタイムは覚えていなかったので、何秒差だったのかはコックピットを降りてから知りました。結果としてコプシュタイン選手もRound of 8に残っていて、相当速いタイムだったんだと思いました。

残り5戦の戦略や見通し

 レッドブルエアレースは、千葉大会に続き残り5戦はハンガリー「ブダペスト」、ロシア「カザン」、ポルトガル「ポルト」、ドイツ「ラウジッツ」、アメリカ「インディアナポリス」で開催される。

──残り5戦の戦略や見通しは?

室屋選手:千葉大会はターンが多くて速度レンジが低いので、そうするとウイングレット勢が速い。千葉大会は我々にとっては苦しいトラックで、実は1番のタイムも出せてないんです。なのでインディやラウジッツも苦しめで、残りのブダペスト、ポルトは直線でスピードが出るので若干有利という見立てです。有利なところは確実に勝ちにいって、苦しいところでもファイナルに残ることでポイントを狙っていく。

 今はチャンピオンシップをリードしているので、優勝にこだわらなくてもいい状態。昨年のドルダラー選手も3勝でチャンピオンでしたし、もう1つ勝利を獲得すればチャンピオンシップも夢ではない。

──エアレース以外の活動についても聞かせてください。

室屋選手:国内ではエアショーを見てもらうのが大きな仕事。エアショーには5万人、大きいところだと25万人の方が集まるので、少しでも多くの人に飛行機に興味を持ってもらえるようにしていきたい。

決勝後の記者会見。左から、ペトル・コプシュタイン選手(No.18 チーム シュピールベルグ)、室屋選手、マルティン・ソンカ選手(No.8 レッドブルチーム ソンカ)