奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2012」【後編】 「レース後は26年間見たことのない光景……」 |
前編では金曜日のフリー走行1回目、2回目までの模様をお届けした。後編は予選が行われた土曜と決勝が行われた日曜の撮影記をお届けしたい。
ほぼ徹夜状態で臨んだ前日は帰宅直後に爆睡したため、土曜日は朝4時頃に目がさめた。録画したF1グランプリニュースやフリー走行をチラッと見ながら、前日撮った画像の一部をチェック。翌週掲載予定の「WTCCフォトコンテスト」攻略ガイドの原稿書きに追われた。
夜が明け、明るくなってきたのでパンクした自転車に空気を入れてみるとシューっと空気が漏れる音がする。よく見るとリアタイヤのトレッドに穴が開いているのでタイヤ交換が必要と判断。修理はしばらく先になりそうだ。
息子は土曜日はパスして日曜の決勝を見に行くと言うので、鈴鹿の駐車場に置いてきた息子の自転車を筆者が利用することにした。日曜日は娘の自転車を借りることで日本グランプリは乗り切る作戦だ。
ここからは前編に続き交通情報。関西方面の方やクルマを利用しない方はセッション開始まで飛んでいただきたい。土曜のセッションは金曜より1時間遅く11時から始まる。7時半に出発、伊勢湾岸道に入ると渋滞の表示が出ていた。この日はF1渋滞。鈴鹿IC(インターチェンジ)から四日市、四日市JCT(ジャンクション)まで断続的に渋滞。筆者の降りるみえ川越ICも出口渋滞となっていた。
通常は手前の湾岸桑名ICで降りるのだが、来年以降のデータ取りのために渋滞の列に並んでみた。渋滞は出口1kmの看板の少し手前から始まった。このICは出口の部分から料金所までかなり距離がある。渋滞はその先の国道23号の合流まで続いているはずなのでトータルの渋滞はかなり長くなる。Web上の地図で本線の出口から国道23号の合流地点までの距離を計測すると1.1km。高速本線上の渋滞を足すと2.3kmくらいとなった。
みえ川越ICの出口1kmチョット前から渋滞となっていた | 料金所の先の分岐にはF1日本グランプリの案内。渋滞は国道23号に入っても続いた |
名港潮見から通常15分のところを32分。約17分のロスだ。これなら手前のICで降り、混雑する国道23号を通らずここまで来る裏道を使った方が時間短縮できそうだ。
その後は流れるかと期待したがどうやら四日市市内まで渋滞しているようなので、富田のあたりで海側に逃げ少し先で合流、橋を越えた次の信号を右折してゴソゴソっと関西本線の反対側を四日市市内まで進み、吉野屋の先の信号で23号に復帰した。時刻は8時50分、自宅を出発して1時間20分、高速を降りて23号に合流してから25分も経過していた。
期待に反して大陸橋も渋滞。その先からやっと流れ始め鈴鹿市内までは順調に進んだ。前日は柳ランプウェイから市内に入ったが、23号から側道に降りるクルマが少し並んでいる。遠くから視認したときはギリギリ信号1回分と判断したが、前を走るクルマが一斉に側道に入り本線に届きそうな列になったので信号3回と判断しここはスルー。マルハンの交差点まで23号を走り右折して市街地へ入った。
コースを変更したのでマックスバリューの68円か78円の格安おにぎりは諦めコンビニで買い出すことにした。通常、こちらのルートの場合はミニストップかサークルKを利用しているが、今回は意図してローソン。何故ローソンかと言えば、ローソンはF1チケットの公式サプライヤーでローソンシートなども販売しているからだ。小さなことだがこれもF1を支えていくための貢献だ。
帰りに寄ったローソン鈴鹿南玉垣店 |
アピタの手前を右折したところにあるローソン鈴鹿南玉垣東店で買い出し、ついでにLチキ買っても食べた。ちなみに帰りは同じ通りにあるローソン鈴鹿南玉垣店でLチキを買っている。どうでもいい話だが、東海地方のコンビニで焼き鳥とかフライドチキンを買うと、7割くらいのお店はおしぼりを付けてくれる。残り3割はお願いすると付けてくれる。ところが東京では、「ありません」と断られることが時々ある。地域の差なのか、教育の差なのだろうか。今回の2店は何も言わなくても付けてくれた。
コンビニを出てそのまま道なりに道伯町方面へ。道伯4丁目からサーキットへ向かう道は渋滞していたのでゴソゴソっとかなり凄い裏道を抜け9時半に駐車場に到着した。
■土曜日
この日は11時からフリー走行が1時間、14時から予選が行われる。この日から各スタンドは指定席となり、チケットを持った人しか入ることができない。また、全長200mmを越える望遠レンズの制限もあるので主な撮影場所はカメラマンエリアとフリーなエリアとなる。
フリー走行の撮影場所はスプーンカーブ。西ストレートゲートまで自転車で移動し徒歩でスプーン進入部分にたどり着いた。2009年はスプーンにL席、M席、N席がありスプーン全体が幕で覆われていたが、ここ最近は昔のような自由席に近い雰囲気となっている。M席は残っているがかなり小さめ。スプーン進入の正面はカメラマンエリアとなっている。
M席の仮設スタンド。かなり小さくなった | 2009年のスプーンは7つほどスタンドがあり、スプーン全体が幕で覆われチケットがない人は見ることができなかった | スプーンのイン側に積まれたスポンジバリア。F1のときだけ撤去されここに積まれる |
スプーン進入の正面はカメラマンエリア、テントからテントの間はカメラマンチケットのビブスがないと入れない |
最初はスプーン進入のブレーキングを開始するあたりを横から流し撮り。雑草を掻き分け急な斜面の途中で撮影を開始した。ズームレンズの焦点距離は122mm。天気がよいのでND4フィルターを使用して絞り込み過ぎないように調整。シャッター速度は1/125秒だ。
筆者はスプーンカーブは撮影だけでなく、観戦ポイントとしても高く評価している。走行台数が少ないときは撮った後のマシンをスプーン1つ目、2つ目を通過し西ストレートを立ち上がる様子を目と耳で楽しんでいる。
今回はフリー走行なので、各ラップの攻め具合にバラつきはあるが、シューマッハよりニコの方が速いな、マッサよりアロンソの方が立ち上がりのアクセルオンが1車身くらい速いな、などと素人が見てもドライビングの差が分かりやすいのがスプーンカーブだ。スプーンのマイナス点は遠いということだろう。
最初の撮影は進入のブレーキングポイントを流し撮り | 元画像をリサイズ。焦点距離122mm、シャッター速度1/125秒 | レタッチしてフォトギャラリーに掲載(1920×1080ピクセルで掲載) |
続いてスプーン1つ目付近の土手に移動。300mmのレンズに付け替え進入側を斜め前から、クリッピングから立ち上がり側を斜め後ろから撮影。ここもシャッター速度は1/125秒で撮影。ここまではフリーエリアでの撮影となった。
スプーン1つ目進入を300mmのレンズでシャッター速度1/125秒で撮影 | 斜め後ろからも撮影 |
レタッチしてフォトギャラリーに掲載(1920×1080ピクセルで掲載) |
レタッチしてフォトギャラリーに掲載(1920×1080ピクセルで掲載) |
ここで全車チェッカーとなるが、筆者はここからカメラマンエリアにダッシュ(と言うほど速くはないが)。走行を終えたマシンはメインストレートでスタート練習を行う。そのままコースを1周してピットに戻るから1ラップだけ撮影のチャンスが残っている。スローシャッターで撮影する流し撮りは1発で決めるのは難しいが、正面から高速シャッターで写し止める撮影は100%とは言えないがかなり高い確率で撮影できる。
シャッター速度1/500秒の撮影なら1ラップでも大丈夫 |
大急ぎでビブスを着用しスプーンに進入するマシンが正面から撮れる位置に移動。ND4フィルターも外し、AFポイントをセンターから左側に変更。シャッター速度1/500秒でピットへ戻るマシンを写し止めた。
レタッチしてフォトギャラリーに掲載(1920×1080ピクセルで掲載) |
これで午前中のセッションは終了。スプーン入り口付近の高台にある日陰でチョット休憩。西ストレートゲートの駐輪場まで徒歩で戻り、そこから自転車でシケインゲートの駐輪場まで移動した。シケインゲートはシケインと130Rの中間付近。友人は130Rの指定席に向かい、筆者はグランドスタンド裏を抜けパドックトンネルをくぐってパドックへ。
前日はほぼ徹夜に加え自転車のパンクで西コースから徒歩移動となり疲労困憊だったが、この日は少しゆとりがあったのでパドックの様子を撮影。トロロッソチームのホスピタリティの前にレッドブリテンが置いてあったのでゲットした。スカパー!のF1グランプリニュースを見ている方はご存じの視聴者プレゼントの定番だ。中を見ると……この号ではF1に関する記述はなし、いろいろなスポンサードをしているレッドブルなのでジャンルは多岐にわたっているが、レース好きの視点でみると「なんじゃこりゃ」という感じ、航空機の機内誌に近いイメージだろうか。レッドブルはオーストリアの企業なので表記はドイツ語。表紙にもOKTOBER 2012と書かれている。
メディアセンターの入り口前で広報の方が赤絨毯を敷く作業をしていたのでパチリ。メディアセンターで食事をして出てくるとあっと言う間にインタビュースペースが完成してきた。予選終了後、決勝終了後に各ドライバーはここでテレビの取材を受ける。
パドックは人もまばら。手前が最終コーナー側、奥が1コーナー側。右側の各チームのホスピタリティは前年のランキング順に1コーナー側から並んでいる……はず | ロータスチーム |
スクーデリア・トロロッソ | レッドブリテンが置かれていた |
メディアセンター入り口付近で赤絨毯を敷く作業 | あっと言う間にインタビュースペースが完成していた |
午後の予選は出走台数の多く時間も長めとなるQ1だけヘアピンで撮影し、Q2、Q3は息子から預かった(元々筆者が購入した)G席2エリアで観戦する予定。今年のテーマはレースを楽しむことだ。
エキストラ・ビューエリア。目の前に加え向こう側を通るマシンも見えるがUBSの看板がじゃま |
ヘアピンに向かう途中でシケインと130Rの中間にあるエキストラ・ビューエリアからコースをチラ見。シケインへの突っ込みが目の前で観戦でき、向こう側にダンロップからデグナーに向かうマシンも見ることができる。チョット残念なのは向こう側の走行ラインがUBSの看板(の背中)で見えないこと。レースをスポンサードしてくれる企業は大事なのだがもう少し上か下にズラしてくれたらと感じた。
前日はヘアピンの常設席下のカメラマンエリアで撮影したので、今回は進入側の土手で撮ることにした。記憶が薄いがここでの撮影は3年ぶりくらいとなる。
このエリアにはカメラマンが10人程度。ヘアピン正面と仮設スタンド左は少し多め、常設席下は等間隔に埋まっている感じだ。今年はヘアピンの5つのエリアに入れると価格が少し高く設定されている。ヘアピン常設席下は人気が高く混雑するためだが、混むのは常設席下だけでまわりの4つのエリア逆に空いている。
手前の進入側は10人程度。仮設スタンドの左側のエリアは少し多めだが空いている | ヘアピン正面のカメラマンエリアは20人程度 | 常設席下のカメラマンエリアは等間隔に埋まっている |
アマチュアカメラマンに優しい鈴鹿サーキットなので、来年は常設席以外の残りの4つのヘアピンエリアは、ほかのカメラマンエリアと同様に通常のカメラマンエリア用ビブスを付けた人でも入れるようにしてほしいものだ。
ヘアピンへ進入側の土手からは進入するマシンを横から、クリッピングへ向かうマシンを後ろから、立ち上がりを再度横から撮ることができる。最初は土手の最上段で撮り始めるが、進入側から切り込むところまでは金網越しで撮れない。1回目のアタックが終わり2回目のアタックまで走行が減ったところで、土手の後ろの壁に登っている方に「そこだと金網が避けられますか」と聞き「だいぶ違いますよ」とのことだったので、老体にむち打って筆者も壁の上に移動した。
土手の最上段では切り込んだ位置でも金網がじゃま | 壁の上からはマシンの走行ラインによって金網が避けられるたり避けられなかったりするがだいぶ改善された |
このセッションではアップで撮ったり、マシン全体を撮ったり、横、斜め後ろ、真後ろとバリエーションを付けて撮影、フォトギャラリーでも少し多めの掲載をしている。掲載を最後まで迷ったのは真後ろから撮ったブルーノ・セナの1枚。通常だとボツにしてもよいのだが、ブレの芯にチラっと写るヘルメットが何故か甥っ子ではなく、故アイルトン・セナに見えたので掲載することにした。
元画像には金網が写ってしまった | トリミング、レタッチしてフォトギャラリーに掲載(1920×1080ピクセルで掲載) |
こちらはマシン全体を撮影 | レタッチしてフォトギャラリーに掲載(1920×1080ピクセルで掲載) | 掲載を迷った1枚。チラッと見えるヘルメットが何故かアイルトン・セナに見える |
セッション終了後に先ほどアドバイスをしてもらった北関東から来たというお兄さんと雑談。Impress Watchの読者様とのことで、壁の高さが分かる写真を撮影ポーズで撮らせていただいた。
壁の上でしばし雑談 | 微妙に高い壁。歳をとると高いところは避けたかったが…… |
ヘアピン進入のカメラマンエリアから130RのG席は近い。Q1とQ2の短いインターバルで移動するが、席を探している内にQ2が始まった。最上段のブロックの少し前の方に友人を発見するがそこそこ混んでいたのでセッション中は空いていた後ろの席で待機しながら観戦+チョット撮影。
G席では短めのズームレンズでチョットだけ撮影した | レタッチしてフォトギャラリーに掲載(1920×1080ピクセルで掲載) |
FAN VISIONを見ながら観戦する外国人のお兄さん | iPadを使用して観戦、見ているのはおそらくF1公式サイトのライブタイミング。お隣もiPhoneを使用しながら観戦 |
Q2が終わったところで自分の席に移動。Q3はライコネンのスピンでイエローが出た直後に可夢偉が目の前を通過し4番手タイム。ペナルティで降格になりそうな雰囲気もあり素直に喜べないまま予選が終了した。
G2席2エリアの仮設スタンドは、もう少しデグナー側が見えるかと期待したがそうでもない。友人も130Rの先の土手と木がなければデグナーが見えるのにと言っていた。観客視点で言うとじゃまな土手だが、報道用の撮影エリアとしてはまぁまぁ重要で、デグナーを上から撮れるお気に入りの撮影ポイントだ。現実的には、ここに仮設スタンドができるのはF1グランプリだけ。3日間のために山を削るのは難しいだろう。
セッション終了後にG席2エリアからの景色を撮影。130Rからシケインに向かうマシンに加え、ダンロップからデグナーに向かうマシンもチラッと見える | 130Rの先の土手と木がなければデグナーが見えそうだが…… | Pokka1000kmでその土手の上からデグナー2個目を撮影した写真(1920×1080ピクセルで掲載) |
全てのセッションが終わったのでシケインゲートの駐輪場から駐車場へ。シケインゲートの駐輪場は初めて利用したが意外にお勧めかも。逆バンクゲートからシェルのある鈴鹿サーキット前の交差点までは自転車にはかなりきつい登り坂だが、その中間にあるシケインゲートの駐輪場からはそれほどきつくない。
加えて、ヘアピン西ゲートからJ席の下を通過してヘアピンに向かう徒歩ルートはかなりの高低差となるが、シケインゲートからヘアピンまではかなりフラット。実際の移動時間は微妙だが楽に移動できそうな感じがした。
シケインゲートの駐輪場から道伯町の駐車場までは少し登ってその先はゆるい下り坂。ほとんどペダルをこがなくてもOKで自転車導入効果は抜群だ。数分で駐車場まで移動することができる。
車中泊している友人のクルマのバッテリーが上がったとのことで、筆者のクルマを使ってエンジン始動。それでもセッション終了から30分後の3時40分には駐車場を出発した。
土曜日になるとサーキット周辺はかなり渋滞する。道伯町方面もセブンイレブンから平田町方面は既に渋滞している。セブンイレブンのある交差点からファミマの先まで信号2個分の渋滞を避けるため帰りも凄い道を通ることにした。
左右の枝が何度もボディーをこする道を通る |
途中でクルマを止め道の様子を撮影。左右の木の枝がボディーとこすれるくらいの道幅で、クルマはもちろん、歩行者とすれ違うのも困難な道だ。RX-8に乗る友人は「絶対に通りたくない」と言っている。ここを通るとクルマのボディーにコンパウンドで落とせる程度の傷が付く。傷は付くがおそらく10分から15分くらいの時間短縮となる。
1つ目の渋滞を回避し、白子駅に向かう道を少し走って信号を左折。小腹が空いたので途中のローソン鈴鹿南玉垣店でLチキ。朝来た道の逆ルートだがマルハンの前で渋滞していたので右折して少し手前で国道23号に合流した。
23号に入るとマルハン、なか卯の前の電光掲示板に今日、明日はサーキット周辺は交通規制と表示されていた |
国道23号はしばらく順調に流れ、四日市市内の海山道あたりで軽く渋滞。ここで右折して三菱化学の前の道に移り、大陸橋の側道から23号に復帰。その後は渋滞もなく出発から50分ほどでみえ川越ICに乗り17時過ぎに帰宅した。
この日は元気だったので、帰宅後にスカパー!で前夜祭の中継を聞きながら撮った写真を軽くチェック。今年は報道エリアの撮影ではないので、フォトギャラリーに掲載する絵のバリエーション不足を懸念していたが何とかなりそうな感触。可夢偉の3番グリッド確定にホッとし、前夜祭のグロージャン=ミサイルの話題を聞きながら、「復帰後のシューマッハも追突が多いからミサイル・シューマッハだよな」などと思いながら仕事を続けた。
すでに「小林可夢偉、F1日本グランプリ表彰台記念 フォトギャラリー(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121009_564862.html)」と「2012 F1日本グランプリ フォトギャラリー(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121016_566243.html)」の2本のフォトギャラリーを掲載済みで、可夢偉の写真は一部重複するがそれぞれ33枚、63枚の写真を掲載している。
編集部からはレイアウト的に3の倍数ということ以外に枚数の規定はないので筆者の自由裁量となっている。以前はそれほど時間のかからなかったフォトギャラリーだが、最近は1日で完成しなくなった。年齢的な衰えかと思っていたが、この原稿を書く途中で過去のフォトギャラリーを見て、最近時間がかかるようになった理由が分かった。
レースのフォトギャラリーを始めたのは2009年の途中から。例えば2009年のSUPER GT第5戦SUGOのフォトギャラリー(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090729_305417.html)は、マシンが27枚、ドライバーが5枚、レースクイーンが7枚だが、同じSUGOで行われた今年のSUPER GT(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120808_551869.html)では、マシンが66枚、ドライバーが24枚、レースクイーンが39枚とトータルで3倍以上になっている。
加えて2009年は同じ場所で撮った写真を数枚ずつ時系列的に並べているだけだ。最近はと言うと、GT500クラスは全車最低1枚、上位チームは複数枚。GT300クラスは入賞した10位までは最低1枚、上位は複数枚、下位チームは人気、注目度、レース展開(優勝争いするもリタイヤなど)を考慮して写真を選択している。印刷したリストに正の字を書いてカウントするわけだ。
枚数は1番撮りにくいレーサーの写真を3の倍数で決める。例えば21枚になったらレースクイーンはそれより多い枚数で30枚とか。マシンはその合計の51枚以上といった感じで使用する写真の選択が一旦完了する。
この後のリネーム作業もかなりの時間を費やしている。リネーム=写真を並べる順番だ。最初の6枚はGT500クラスとGT300クラスの表彰台に上がったマシン。その後は右向き、正面、左向き、その下の段は右向き、背面、左向きといった感じで同じ向きのマシンが連続しないようにする。全てをそうすると右側が全部左向きになってしまうので、時々順番を入れ替える。同じマシンの写真、同じ場所で撮った写真は離して掲載。同じ色系のマシンは連続させない。例えばモチュール、ガライヤ、ARTAが並ぶと赤、赤、赤になるので近付かないようにする。最後の方は右向きしか残ってないぞ……とか、同じマシンが残ってしまったぞ……となるので、全体を見て入れ替えや、必要なら写真自体をモチュールを外してカルソニックに代えるといった作業をして完璧とはいかないが完成となる。連続して見たときに右向きの写真、背面の写真、動的な写真、静的な写真、アップの写真、ワイドの写真、赤いマシン、シルバーのマシンといった感じで常に違う印象の絵が並ぶようにしている。
60個所も撮影ポイントがあるわけではないし、セッション中の移動の限界もあるので、同じ場所で撮った写真が数枚ずつ含まれるが、順番を離すことで分かりにくくしている。おそらくスライドショー的に連続してみるとその効果があると思われる。
根本的な能力不足とそんな言い訳もあってレース後の掲載が遅い。編集の方にも読者の方にも申し訳ないと思っているが、フルHDで掲載しているサイトは貴重だと思うし、レース写真を撮る方のためにEXIFの情報を残しているサイトもほとんどないと思うのでご了承いただきたい。
■日曜日
日曜日の朝を迎えた。結果として日本中のレースファンが感動する日、日本のレース史に残る日、多くのファンの記憶に刻まれる日本グランプリ決勝が行われる日だ。
決勝スタートは15時。その前に行われるレジェンドF1とドライバーズパレードに間に合えば充分なので、出発時刻は10時とした。
決勝に備え、朝からこのレースでテスト投入するIT機器のセットアップを開始した。レース観戦をより楽しむためには、レース展開を見失わないことが大切だと思っている。場内放送もあるが、実際にマシンが走り出すと爆音にかき消され聞こえなくなる。鈴鹿サーキットや富士スピードウェイの場合はPit-FMが放送されるのでFMラジオは必需品だ。しかし実際にサーキットに行かれた方は経験があると思うが、場所によってPit-FMが聞こえないことがある。
筆者はSUPER GTを全戦撮影しているが、サーキットによってはFM放送がなく、報道エリアにいるとモニターはもちろんラップボードも見えず、場内放送も聞こえないケースは珍しくない。順位の入れ替わりの激しいSUPER GTでは誰が1位なのか分からなくなってしまうこともある。
そこで考えたのは生中継のスカパー!の音声を聞きながら撮影する方法だ。スカパー!の音声を自宅のパソコンにLine入力し、パソコン側はSkypeを起動しておく。自動応答を設定しておけば、iPhoneのSkypeから自宅のパソコンにつなげば放送中の音声を聞くことができる。Skypeなのでマレーシア・セパンサーキットの取材でも国内レースと同じように放送を聞きながら撮影が可能だ。
サーキットや撮影場所によって音が途切れることはあるが、おおよそのレース展開は把握できる。ところが、昨年の日本グランプリの決勝では回線が切れたり、聞こえなかったりしてほとんど役に立たなかった。昨年も土曜の予選では可夢偉がQ3進出した瞬間をデグナーで聞きガッツポーズとなったので問題はなかったし、今年のPokka1000kmでも問題はなかった。おそらく決勝になると観客の数も増えるし、ライブタイミング等にアクセスする人も増えて、回線の問題でつながらないのかと考えている。今年はカメラマンエリアで観戦+撮影なので、Pit-FMとSkypeで受信状態のよい方を選択する予定だ。
新たに投入するIT機器は8月に発売されたアイオープラザ(アイ・オー・データ機器)のVULKANO FLOWだ。VULKANO FLOWはレコーダーなどの映像をパソコンやスマホで外出先から見ることができる機器だ。今回の目的は息子がiPhoneで生中継の映像を見ながら観戦できるようにすることだ。
VULKANO FLOWで録画した映像を見るにはリモコンを記憶させるなどの作業が必要だが、生放送の映像を見るだけなら配線しIDとパスワードを設定するだけでいい。後は息子のiPhoneに有料(1100円)のアプリを入れれば映像、音声を視聴することができる。
自宅でテストしてみると、無線LAN環境では快適だが3G環境ではやや画質が厳しそうだ。即時性よりもストリーミングの連続性を重視するためバッファに溜めてから映像を再生するようで10秒ほど遅延が発生していた。後は現地で実際に使用してみないと分からない。
娘の自転車を積み込み10時に出発。高速も国道23号も渋滞はなく、11時に鈴鹿のマックスバリューに到着。サーキットの近くは渋滞していたので、凄い裏道だけ通って駐車場に到着した。
友人はすでにGPスクエアにいるとのこと。2台の自転車でメインゲートに移動。そこから場内のショップなどを見ながらGPスクエアまで行き友人と合流した。自宅を出る前に前日座ったG席について「デグナー見えないしスプーンの方がいいかも」と息子に話していたが、友人も同じ意見で息子と友人は決勝をスプーンで観戦することとなった。
鈴鹿レジェンドコレクションVol.1はフェラーリ5台セットで5000円 | 鈴鹿レジェンドコレクションVol.2はマクラーレン3台セットで3000円 |
2010年ベッテル優勝モデル 7500円は限定1000台が完売。1991年中嶋悟モデル 8800円も限定1500台が完売 | 決勝前のGPスクエアは人、人、人 |
筆者の方はそのままパドックに移動。レジェンドF1をピットウォールから一応撮影。ドライバーズパレードが始まるまでの時間に駆け足でピットを一往復して撮影。ドライバーズパレードに向かうドライバーも一応撮影した。
レジェンドF1 |
シューマッハのピット | アロンソのピット | ベッテルのピット |
マクラーレンはエアガンも設置完了 | フェラーリはエアガンはまだ装着されていない | ザウバーはこの後タイヤ交換の練習を行う |
決勝はS字のC席とD席の間にあるカメラマンエリアと考えていたが、逆バンクも少し撮ろうと作戦を変更。金曜日は逆バンクの入り口側で少しだけ撮ったので、この日は立ち上がり側。ここも大型モニターは目の前。Pit-FMの受信状態がよくなかったのでSkypeを選択しスタートの時を待った。Skypeもクリアではないが、なんとかレース展開は把握できそうだ。
繰り返しとなるが今年のテーマはレースを楽しむこと。決勝では撮影は二の次だ。ご存じの様にスタートでアロンソがリタイヤするなどのアクシデントが発生し可夢偉は2番手。個人的には現役ナンバーワンと思っているアロンソがリタイヤしたのは残念だが、可夢偉2位、ラストランのシューマッハも残ったのでわるくない展開だ。
目の前の大型モニターの映像は少し遅延があるようで実際のマシンはコーナー1つくらい前を走っている。モニターを見てまだS字と思っていると目の前にマシンが来てあわてる感じだ。マシン同士の距離が近いと連続して流し撮りは難しい。可夢偉とバトンが近いのでバトンの写真が少なめな展開。優勝して国際映像のカメラに向かってジェシカに教わった日本語で「やったー」と叫ぶ親日家のバトンも応援する1人だが、今日ばかりは頼むから空気を読んでくれと心の中でつぶやいていた。
1回目のピットでバトンにアンダーカットはされそうになるが可夢偉が前でコースに戻ると筆者もガッツポーズ。撮影もしつつなかなか忙しい。ペレスがコースアウトした瞬間は誰だか分からずヒヤっとするが可夢偉でないと分かりホッ。
バトンは抑えたが前が詰まったため後からピットインしたマッサが先行。最初は今シーズンのマッサならその内落ちてくるから大丈夫と思ったが、残念ながら徐々に差が広がっている。
撮影は金曜に忘れたエクステンダー(テレコンバーター)を持ってきたので300mmに付け420mmで正面から撮影。その後はシャッター速度を変えながら流し撮り。レース観戦の比率が高く気付いたら50分ほど経っていた。
エクステンダーを付け420mm、シャッター速度1/640秒で撮影 | 300mmに戻しシャッター速度1/60秒で撮影 | 逆バンクD席のカメラマンエリアもほぼ満杯だが、お隣E席の最上段のカメラマンエリアにも望遠レンズの列 |
レタッチしてフォトギャラリーに掲載(1920×1080ピクセルで掲載) |
レタッチしてフォトギャラリーに掲載(1920×1080ピクセルで掲載) |
C席とD席の間にあるカメラマンエリア。レース後に撮影 |
ここで逆バンクからS字方面に移動。D席5エリアのカメラマンエリアで少しだけ撮影。すぐにC席とD席の間にあるカメラマンエリアに移動した。ここでPit-FMを聞いてみると、この場所はとてもクリアに聞こえたのでSkypeから乗り替えた。
最初は下段に降りて後ろ姿を撮影。左上の登ってS字の切り替えしを斜めに流し撮り。最後は右下に降りてS字入り口の縁石付近を流し撮り。可夢偉とバトンの差が徐々に差が縮まるのを心配しながらの撮影が続いた。
最後の最後はPit-FMに大きなミスが発生。残り2周を間違えてファイナルラップと放送。この時点で撮影は完全に放棄。バトンの追撃から逃げ切って3位獲得と思い「やったー」と叫んだら残りもう1周。回りにもPit-FMを聞いている人がいて微妙に一部の人だけ歓声が上がった。
後から冷静に映像を見れば、チェッカーを受けるベッテルを映さず3位争いの映像が流れ続けるわけはない。ファイナルラップのヘアピンでバトンが背後に迫ったところで映像はベッテルに。可夢偉はどうなったと心配していると3位でチェッカーを受ける瞬間が映りホッと胸をなで下ろした。
可夢偉が表彰台を獲得し、シャンパンで乾杯する鈴木豊太郎、幸恵ご夫妻 |
ウイニングラップはシャッター速度を1/500秒に変更。ファンに手を振るベッテルを撮影。可夢偉はS字では手を上げずに通過していった。機材を片付けていると、すぐ近くにいたご夫婦がF1公式シャンパンのMUMMを取り出し乾杯をしていたのでパチリ。
レース後は26年間見たことのない光景を目にすることとなった。大型モニターが設置してある東コースは、1コーナーも2コーナーもS字も8~9割の観客が表彰式を待って席を立たないという感動的なフィナーレとなった。
レース後のA1席 | レース後のA2席 |
レース後のB席とC席 | レース後のD席5ブロック |
表彰式が終わり帰路につく。自転車はメインゲートに置いたので場内は人の流れが悪いと考え逆バンクゲートから外に出てメインゲートの駐輪場へ。ここで息子と合流して駐車場へ移動。自転車2台をクルマに積み込み5時半に駐車場を後にした。
最後も木の枝をボディーにこすりながら渋滞を回避。前日と同じルートでマルハンのところでプチ渋滞から逃げ国道23号に合流。23号の交通量は多いが、決勝日にしては観客が席を立たなかったせいか渋滞は遅めな印象だ。
柳ランプウェイを過ぎたところに1個所だけガードレールが切れていて側道に降りられるところがあるので早々に23号から離れ、側道から右折して23号の下を立体交差でくぐって海側の道へ回避。四日市の大陸橋まで順調に進み側道から再び23号に合流。後は何もなく伊勢湾岸道を経由して18時半には名港潮見を降りて名古屋市内に入った。
友人が撮った「スプーンでVULKANO FLOWから送られた映像を見る息子」なのだが天気がよくて画面は写せなかった |
9年ぶりのF1が歴史的なレースとなったことに息子も満足そうだった。スプーンカーブに関してはドライバーの走りの差が分かると言っていた。VULKANO FLOWは映像は厳しかったが、音声はクリアで役に立ったとのこと。電話が主目的のSkypeは遅延が少ないが途切れやすく、ストリーミングの連続性を重視するVULKANO FLOWは遅延は大きいが途切れにくいということだろうか。このあたりは筆者自身でもう少し検証をしたいと思っている。
筆者自身は今年の日本グランプリを思う存分楽しむことができた。長年F1日本グランプリのベストレースは22年前、鈴木亜久里が表彰台に立ったレースだと言い続けてきたが、今は今年の日本グランプリと22年前の日本グランプリは甲乙付けがたいと思っている。
帰宅すると編集長から「小林可夢偉、F1日本グランプリ表彰台記念 フォトギャラリー」を連休明けに掲載できるように作成してほしいとメールが入る。F1の原稿の前に「WTCCフォトコンテスト」攻略ガイドを書き上げようと思っていたが急遽小林可夢偉の画像を選びフォトギャラリーを作成。その分遅れて「WTCCフォトコンテスト」攻略ガイド」の前編、後編を書き上げ、全マシンを対象とした「2012 F1日本グランプリ フォトギャラリー」は木曜の深夜にレタッチまで完成するが、リネームの手前で時間切れ。金曜は一睡もせず早朝から富士スピードウェイのWEC取材に向かい、ホテルでリネームをして「2012 F1日本グランプリ フォトギャラリー」を完成。WECから戻りこのほぼブログ原稿を書き(イマココ)、これが終わるとWECのフォトギャラリーを作成し週末はWTCCだ。ハッキリ言って死にそうだ。
そんな中、小林可夢偉がシートを失いそうだというニュースが入ってきた。一昨年のこの記事の最後に「もし可夢偉選手がフェラーリやマクラーレンに乗ってチャンピオン争いをするときが来たとして、そのとき日本グランプリが開催されなくなっていたらどれほど悲しいことだろう」と書いた。事態は逆で小林可夢偉のいない日本グランプリの可能性が出てきたことになる。
実際にスポンサーの資金が必要なのか真実は分からないが、もしそうだとすれば日本の企業で可夢偉を応援できるところはないのだろうか。NECのロゴがあるがNECでは支えきれないということなのだろうか。フジテレビが可夢偉を応援することは不可能なのだろうか。
企業が無理なら、SUPER GTのGSR初音ミクのように個人スポンサーを集めて可夢偉を応援することはできないのだろうか。東京都の尖閣諸島購入寄付のように、尼崎市が小林可夢偉応援基金を集める活動はできないのだろうか。ふる里納税制度で尼崎市に納税したら、それが可夢偉の活動資金になるなら筆者はすぐに住民税の納税先を尼崎市に変更したい。小林可夢偉は日本中のレースファンに感動を与えてくれた。今度は日本中のファンが小林可夢偉を支えることができればと筆者は願っている。
(奥川浩彦)
2012年 10月 19日