ニュース
【ナビレビュー】9型大画面カーナビ「イクリプス AVN-ZX02i」を神戸で実走レビュー
美しい大画面と操作性のよさに、フラグシップらしい充実のナビ機能を装備
(2013/2/25 00:00)
ナビゲーションとAV機能を1つのボディーに凝縮した、いわゆるAVN機。それを最初に世に送り出したのがイクリプス(富士通テン)だ(※1)。それまではインダッシュにオーディオ、ダッシュボード上にモニター、そしてシート下やトランクにナビ本体というパターンが標準的だった。その後、AVN機が当たり前となっている現状を見れば、それがクルマのインテリアデザインに与えた影響の大きさが分かるハズだ。
このAVN機の元祖は1997年にデビューしたのだけれど、モニターサイズはデビュー当時の5.8型から7型までに進化すると、その後「AVN機=7型モニターを備えた2DIN一体型モデル」というお約束が長く踏襲されることになった。そこに楔を打ち込んだのが車種別フィッティングを使った大画面化の流れだ。インパネまわりのパネルを独自に用意することで、2DINサイズの限界だった7型を超えるモニターの搭載が可能になったワケだ。
イクリプスが選んだのは9型。標準的な7型と比べると数字上はわずか「2」しか違わないが、面積比でいえば約1.8倍。これにより地図の見やすさと操作のしやすさ、それに迫力ある映像を実現したのだ。と、前置きが長くなってしまったけれど、今回は9型モニターを採用した「AVN-ZX02i」のレビューをお届けしたい。
美しい大画面と操作性のよさ
AVN-ZX02iの特長はなんといっても、その9型モニターにある。アタマでは分かっていても実車に装着されているのを見ると、そのインパクトは相当に大きい。試乗車となった「ヴェルファイア」はインパネまわりのサイズが大きいこともあって目立ちにくいものの、それでもなお7型との画面サイズの違いを明確に感じることができるほど。
パネルの解像度はワイドVGA(800×480ドット)と7型カーナビと変わらないもの。映し出される映像はLEDバックライトやデジタル接続の採用、そして「Vivid View Processor(ヴィヴィッドビュープロセッサ)3」、照度センサーを使った直射日光補正機能などにより、コントラストと彩度が高く、輪郭もクッキリ。テレビやDVDビデオなどの動画を見るのにはもってこいといえる美しさだ。
9型化のメリットはナビゲーション面にもある。一般的に解像度を変えずに画面を大型化した場合、地図はそのサイズに合わせて引き延ばされるだけ。地図の縮尺で考えると、7型で100mが1cmだったとすると、9型なら1.3cmぐらいになるハズだ。だが、本機の場合は縮尺は7型と変わらず。つまり、画面サイズが大きくなった分は、そのまま表示範囲の拡大にあてられているため、より広い範囲を見通すことができるワケだ。イメージ的には7型モニターなら周囲のボタンが表示されている部分まで、そっくりそのまま地図表示領域となった感じ。下部のメニューはオフにすることもできるため、実質的に縦方向の表示領域が増えた、と言えなくもない。その一方、ボタンや文字は解像度ベースで表示されるため画面サイズに応じて大きく表示され、操作性や視認性の向上につながっているなど、ただ単に大きい!だけじゃないのだ。
操作性と言えば、フリック&ドラッグ対応なのもポイント。イクリプスナビならではのレスポンスのよさとあいまって、地図のスクロールはまさにストレスフリーで感動的。動画も掲載しておくので、ぜひチェックしてほしい。
家族で楽しめる楽しい連携機能
AVN-ZX02iのもう1つの特長となるのが、ナビ本体とニンテンドーDSをBluetooth接続することで目的地検索が行える「ナビリモコン」のほか「観光案内」や「ご当地クイズ」が楽しめる「クルマでDS」機能だ。
DS関連については以前の記事「ニンテンドーDS連携9型大画面ナビ「AVN-ZX02i」ファーストインプレ」で詳しく紹介しているので、そちらを参照して欲しい。
●ニンテンドーDS連携9型大画面ナビ「AVN-ZX02i」ファーストインプレ
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120529_534536.html
スマートフォンとの連携機能も搭載。こちらもBluetoothを利用するもので、ニンテンドーDSとは排他接続になる。使用するアプリは「NaviCon」や「smartnAVVi Link」といったおなじみのもので、スマホ側で目的地を検索してナビに地点情報を送信するタイプ。ナビ側にデータが収録されていない施設を見つけたり、駐車場なら満空をチェックしてから目的地として設定したりと、アプリ次第で便利に使えるのが嬉しい。Bluetooth接続が面倒に思えるかもしれないけれど、一度設定してしまえば手間いらずだし、ハンズフリー通話を使うならどちらにせよ必要。さらに移動時でも同乗者による目的地設定が可能とメリットも多い。
このほか、iPhoneのカメラを使って撮影した周囲の映像にナビの案内を合成表示する「Driview」なんて機能も用意されている。
フラグシップらしい充実のナビ機能
地図データは16GBのSDカードに収録。一部には未だHDDナビが上級モデル、SDカードなどを使ったメモリーナビはベーシックグレード的な妙なヒエラルキーが存在している雰囲気があるけれど、まったく無意味といっていい。情報量的にも住所検索が約3900万件、電話番号検索が約2900万件と同等。項目もジャンルや周辺、提携駐車場、郵便番号など必要十分。不足と感じるならスマホを併用することで補完も可能だから、使っていて不自由さを覚えることはないハズ。
あえて難点を挙げるとするなら、地点データのリンク不足か。これはパナソニックのナビレビュー時にも言及しているが、たとえば羽田空港を探す際には「とうきょうこくさいくうこう」と入力する必要がある。もっとも、この場合はジャンルで「空港」を選んだほうがスピーディに検索が可能。用意されている機能を上手く使うのがキモといえる。
ルート探索は「推奨」を基本に「有料優先」「一般優先」「距離優先」「別ルート」と、最大5ルートの同時探索が可能。探索時には過去のVICSデータを元にした統計情報により現在だけでなく、到達予想時刻や曜日による規制も考慮される。また、もっとも省燃費となるルートには「e」マークがつくなど、イマドキのモデルらしい配慮も。加えて、5ルート時も探索に要する時間はほぼ瞬時といえるレベルなので、「目的地を見つけてルート探索してから出発」という、カーナビにとってもっとも基本的なシーケンスがまったく苦にならないのが嬉しい。
また、地図データをSDカードに収録することで、更新がラクなのもユーザーにとってはメリット。SDカードをナビから取り外し、パソコンでデータをダウンロード&書き換え、ナビに戻すだけで新しいデータが利用できる。本機の場合、ナビ購入後は最大3年間無料で地図の更新が可能となっている。
豊富な表示モードで安心のルート案内
地図表示はHDDモデル時代からの伝統を踏襲。カーナビらしい道路を重視した内容で、色分けや道幅の反映などメリハリのある表示だ。文字情報やグラフィカルな表現は少ないものの、クルマで使う地図と考えれば視認性がよく、分かりやすい仕上がりといえる。
また、建物の形状などを表示する市街地図表示は50mスケール以下、一方通行表示は25mスケールで表示可能だ。
ルート案内はシンプルな交差点拡大図が基本。CD/DVDナビ時代からずっと使われている表現ながら、デフォルメした道路を中心にレーンガイドやランドマーク表示、交差点までの距離をバーで示すなど、とてもわかりやすい表現といえる。音声による案内タイミングも的確だ。加えて複雑な交差点など要所要所にイラストによる複数の案内パターンが用意されており、慣れていないルートでも安心して走行できる。
測位精度も据え置き型ならではの高いレベルだ。今回はいつもの横浜や都内でなく、富士通テンのある神戸でチェックしたが、高低差の認識およびGPS信号を受けられない地下駐車場においても安定した精度を見せた。
多彩なメディア対応などAV機能も充実
メディア機能は、音楽CD/DVDビデオをはじめ、4アンテナ×4チューナー仕様のフルセグ対応地デジ、Bluetoothを使った音楽のストリーミング再生、USBメモリーなど多彩。さらにオプションの接続ケーブルを用意すればiPhone/iPod接続により音楽だけではなく動画再生も可能だ(ただし、動画再生についてはLightningコネクタ搭載のiPhone 5など非対応)。また、エンタメ専用のSDカードスロットが用意されており、同梱のSDカード(8GB)に音楽CDのリッピングもできるなど、使い勝手はHDDナビと変わらないといえる。
冒頭でも触れたけれど、9型の大画面による映像は美しく迫力も満点。映像コアを受け持つVivid View Processor 3の効果は絶大で、Hiにするとさすがに誇張された印象が出てくるものの破綻するほどではなく、まさに微ビット! といえる鮮やかな映像を楽しむことができる。必要とあればオフ、Low、Mid、Hiと切り替えられるので、ナチュラル派ならLowあたりをチョイスしておけば具合がよさそうだ。
変わらないことのメリット
カーナビは進化の激しい製品。当然のように次々と新しい製品が市場に出てくることになる。だが、イクリプスのナビは機能を加えながらも、ナビとしての使い勝手が大きく変わっていないところが大きな美点だ。実際のところハードウェアが大きく変わると、使い勝手や操作性が変わってしまう製品が少なくない。世代が進むことで機能は増えたけれど、ルート探索にかかる時間が倍になった、なんてモデルもある。そんな中、同社ナビのユーザーはそれを意識せず使いこなすことができるワケだ。
このAVN-ZX02iも、そうした延長線上にあるモデル。エンジンをかけるとすぐに使い始めることが可能な高速起動、スムーズな地図スクロール、瞬時といえるルート探索など、これまでよい部分をしっかりと受け継いでいる。そして、さらに大画面モニターの採用やフリック操作の実現、スマホ&ニンテンドーDSとの連携を可能にするなど楽しめる機能が追加され、従来モデルにはない魅力が追加されている。
同社のナビを使っているユーザーには間違いなくオススメできるし、このスペックには表れない操作性のよさは今まで使ったことがない、なんてユーザーにもぜひ体感してほしい。
また、AVN-ZX02i用の車種別フィッティングが用意されていないクルマには、同等の機能を持つモデルとして7型モニター採用の「AVN-Z02i」もラインアップされている。国産車のオーナーであるなら、ほとんどの車種で装着できるハズだ。
※1:付属品の購入なしで基本機能が使用できるワンパッケージ商品として
【お詫びと訂正】記事初出時、AVN機の元祖のモニターサイズが7型となるような表現がありましたが、正しくは5.8型となります。該当個所の表現を変更しました。