ニュース

【特別企画】「SUBARU BRZ R&D SPORT」SUPER GT開幕直前リポート

2シーズン目を迎えた最新のBRZ GT300に迫る

 昨シーズン大きな話題とともにデビューしたSUBARU BRZ GT300だが、シリーズ中はその速さを見せつけるシーンが多々ありながらも、一度も表彰台に登ることなく年間チームランキング12位で幕を閉じた。ニュルブルクリンク24Hレースに参戦するインプレッサとともにスバルモータースポーツの中核を担うBRZの最新情報を、3月14~15日に行われた岡山国際サーキットでの合同テストのリポートとともにお届けしよう。

2012年同様、年初の東京オートサロンでマシンとチーム体制のお披露目

 マシンとチーム体制の発表は2012年同様、今年の1月に開催された東京オートサロンで行われた。辰己英治総監督、ドライバーの山野哲也選手、佐々木孝太選手とともにマシンも初お披露目となった。しかしながらちょうど2カ月後に行われた合同テストでのマシンと見比べると違いも多く、ショー用の外板を纏ったモデルであったであろうことも昨年同様だ。

東京オートサロンでの参戦発表には多くの観客が集まり、その関心の高さがうかがえた

2013年シーズンを戦うマシン詳細

 基本的なデザインは2012年シーズンと大きな差はなく、エンジンそのほかの基本構造も含め昨シーズンのマシンの正常進化版だ。そのマシンについてR&Dスポーツの澤田氏、そして山野、佐々木両ドライバーにうかがってみた。

●R&Dスポーツ 澤田稔テクニカルコーディネーター
 元々昨年のマシンが大きな問題を抱えていた訳ではないので、新調した部品も多いとはいえ基本的には昨年からの正常進化版です。変更点といえば今年からはタイヤが、メーカーはもとよりサイズが大きく変わりましたのでそれに伴ない、タイヤを活かすためのセッティングを中心に煮詰めています。また剛性を確保しながら軽量化をも達成するために様々な部分を改良しています。

●山野哲也選手
 パッと見て分かるのはタイヤと外から見たエアロの一部。でも僕は形は一緒でも中身は違うと捉えています。フレームワークやサスペンションのレイアウト、エンジンの搭載位置、燃料タンクの搭載位置など見えない所が相当変わっています。レーシングカーというのは1個パーツを変えただけでもの凄く変わるので、変更したパーツの数を考えると4~5年分アップデートした感じです。運転していると相当進化していると感じます。

●佐々木孝太選手
 筋が1本通ったしっかりとした剛性を感じます。一言でいうと車がシャキッとしてレーシングカーっぽくなりました。まだピーキーなところもあるのですが、その辺を煮詰めればFIA-GT勢に対抗する速さをアピールできると思います。

 その表現方法は三者三様だが、確実に進化し、「速さ」に磨きがかかっていることは間違いなさそうだ。3月14日~15日に行われた岡山国際サーキットでの合同テストでもBOP(車両ごとの性能調整)適用前だったとはいえ、両日ともに3~4位の好タイムで終えている。

写真左がR&Dスポーツ テクニカルコーディネーターの澤田稔氏。右はR&Dスポーツ代表 本島伸司監督
山野哲也選手
佐々木孝太選手

写真で見る2013年型SUBARU BRZ GT300

オートサロン発表時ともボンネットのエアインテークやカナードの有無に違いが見られるが、大雑把に言えば、黒いカーボン地がむき出しの部分が昨年からの変更個所だ
2012年途中から採用されたフラッシュサーフェス化のためのライトカバー。テープで止めてある
オートサロンでのお披露目時には、カバーが装着されていない
黄色いカバーが装着されているが、2013年はビスで止められている。
タイヤはヨコハマタイヤ(横浜ゴム)からミシュランへ変更。BRZはGT300クラス唯一のミシュラン装着車となる。昨年は前後異なっていたサイズは前後とも同サイズとなった。各タイヤメーカーの個性が出るレインタイヤのパターンは昨年とまったく異なる

 ミシュランタイヤについて山野選手は「ライバルたちが困っているようなコンディションで強さを発揮できるのではないかと感じています。そこがシリーズ全体を考えると大きな力になると考えています」と語っていた。

前後フェンダーの変更は空力の改善とともにタイヤサイズの変更に伴うもの
昨年はシーズン途中のタイヤ変更に伴ないオーバーフェンダーで幅が拡張されていた
エンジンの搭載位置はより後方へ移動したが高さに変更はない(写真左、中)。写真右は昨年オートポリスの時のエンジンルーム。細部に変更が見られる
写真左は昨年の富士第6戦。今年は作り直して随分スッキリした。翼端に付く青いカバーを外すとちゃんと上下逆になった翼型の断面が確認できる(写真中、右)
昨年は後方にあった給油口(写真左)が車体右側に移された(写真中、右)。従来給油口があった場所にある小さな穴はリアカメラだろうか
リアのディフューザーの形状は昨年と同じようだ
写真の左側に見える赤いスターターボタンは市販車のSTIモデルと同じボタン。STI車ユーザーにはちょっと嬉しいトリビアか
ヘッドライトはIPF

 STI 辰己総監督、R&Dスポーツ 本島監督をはじめドライバー、スタッフともに大きな変更は無く、昨年と同じ体制で2013年シーズンに望む。

レースクイーンは新体制に

2013年のレースクイーン「BREEZE」。左から上條かすみさん、春菜めぐみさん、青山めぐさん、森江朋美さん

 レースクイーンはメンバーの変更があり、名称も「SUBARU BRZ GT GALS」から「BREEZE」となった。メンバーはレガシィB4時代からスバルチームのレースクイーンを務める春菜めぐみさん、昨シーズンから引き続き上條かすみさん、そして今シーズンから新たに、青山めぐさん、森江朋美さんの2人が加わり4人でBRZのピットに華を添える。すでにオフィシャルWebサイトやFacebookページも開設されているのでチェックしてみよう。

辰己英治総監督より

 「今シーズンのマシンは今までの延長線上にある正常進化版です。それはウチ(スバル)の得意な所をもっと伸ばそうという方向です。2リッターエンジンのBRZが大排気量エンジンのマシンとパワー勝負するのは無理がありますので徹底的な軽量化と低重心化、そして重量物を徹底的に車体の中心に集め、より旋回能力を高めコーナーリングスピードで勝負します。それは市販のBRZと同じFRレイアウトで2リッターエンジンでのチャレンジにこだわっているということでもあるのです」(辰己総監督)

 辰己総監督のこだわりに、かつて富士重工業 車両研究実験部で初代レガシィをはじめ数多くの量産車の開発に携わってきた顔、そしてかつて全日本ダートトライアルのトップドライバーであった選手の顔、その2つの顔が見え隠れする。

 コーナーリングマシンとして進化を続けるBRZにとって、開幕戦の舞台となる岡山国際サーキットは相性のよいサーキットだ。また第2戦の富士もストレートスピードの速いマシンが有利なようで、実はホームストレート以外はコーナーが連続するコースで相性はわるくないと辰己氏は語る。

 開幕戦岡山、第2戦富士、ともにスバルファンシートがすでに設定されているのでサーキットに足を運んでみるのもいいだろう。BRZの初勝利は案外近いのではなかろうか。

(高橋 学)