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インテル、クルマの未来を示すコクピットデモを展示

「インテル フューチャー・ショーケース2014」開催

2014年11月14日開催

「インテル フューチャー・ショーケース」に展示された「クルマでのパーソナルエクスペリエンス」

 インテルは11月14日、都内において報道陣向けに「インテル フューチャー・ショーケース2014」を開催した。インテル フューチャー・ショーケースは、「現在」のデジタル技術から、将来の普及に向けて開発が進む「未来」のデジタル技術を展示するもの。5月のヨーロッパでの開催を皮切りに、世界を順次巡っており、アジアではこの日本が初開催。その後台湾、シンガポールで順次開催されていく。本記事では、フューチャー・ショーケースの中からクルマに関連するものを取り上げる。

「クルマでのパーソナルエクスペリエンス」

インテルの考えるクルマとのコミュニケーションが「クルマでのパーソナルエクスペリエンス」。メーターパネルのほか、HUDなど多数のインフォメーションディスプレイを備える

 「クルマでのパーソナルエクスペリエンス」と題されたデモは、クルマのコクピットを簡易的に再現しており、インテルの考えるクルマと人との関係をみせるものとなっていた。

 そのポイントはドライバーを認識・個人認証することにある。クルマのコクピットにはドライバーが誰かを認識するための仕組み(たとえばIDカードや顔認証、指紋認証など)が備え付けられており、ドライバーが乗り込むだけでいつもの通勤路や通学路がナビゲーションにセットされる。デモの担当者は、このシステムはアメリカで普及しているカーシェアリングを想定したものだといい、カーシェアリングに必須のドライバー認証からの一連の流れを演じてくれた。

タブレット端末を利用したHUD。タブレット端末の映像を、ハーフミラーを通して表示する
最初にドライバーの認証を行う。デモなので生体認証を行ったと仮定し、本人問い合わせ画面からスタート
各種のスタート作業がインフォメーションディスプレイに表示される

 ドライバーを認識してクルマが走り出すと、その視界には大型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)が広がる。このHUDには速度計などの情報のほか、赤信号での停止時には青になるまでの時間がカウントダウンされる。青になるまでの時間が分かることでドライバーはいらいらせず信号を待つことができるようになる。これは信号のタイミングをナビゲーションシステムに与えることで実現でき、渋滞解消のシステムとしても期待されている。

 この信号待ちの時間が分かることを利用して、このコクピットではさらにインテリジェンスなコミュニケーションが行われる。たとえば運転しているときに友人からメールが入ってくる。このメールを運転中に読ませるのではなく、信号で止まったときにメールの内容がインフォメーションディスプレイに表示される。信号で止まる時間があらかじめ分かっているため、このようなことができるのだ。

 また、このクルマでは他車の交通情報も把握。デモではスクールバスが近づいてきたことをナビゲーションが知らせ、それをよけるルートにするかどうか問い合わせてきた。とくに気にせず従来どおりのルートを進むと、スクールバスが対向車線から現れ、バス停で停車。スクールバスが停車したため、こちらのクルマも停車することとなった。このように、あらかじめ停車する事態を予測してくれ、ナビゲーションも行ってくれる。

走行画面。HUDの右下に「15」の文字が見えるが、これは信号が青になるまでの時間
青になるまで15秒の時間があったため、Eメールがインフォメーションディスプレイに表示された
スクールバスが近づいたので、リルートするかの問い合わせ画面
リルートせずそのまま直進。スクールバスに引っかかってしまった
助手席にもインフォメーションディスプレイがあり、グルメスポットの検索、そしてドライバー側ナビへの送り込みができるようになっていた
駐車場情報もあらかじめ知ることができ、自動駐車も行っていた

 そのほか、ドライバーの顔の表情を読み取っているため、イライラしていきなりアクセルを踏んだときなどは急加速しないような仕組みも導入。あらかじめ空いている駐車スペースを知ることもでき、縦列駐車も(画面上ではあるが)自動で行っていた。

 これはあくまでデモのため、クルマが必ずこうなっていくというものではない。ただ、将来のクルマは信号や駐車スペース、他車の走行情報など環境情報を処理していくことで、よりインテリジェントなものになっていくのは間違いない。

「コネクテッド・カーでのセキュリティ」

「コネクテッド・カーでのセキュリティ」デモに使われていた、スロットレーシングカー。アクセルはボリュームで制御するので、現代のクルマと同じような仕組みと言ってよいかも

 コネクテッド・カーでのセキュリティと題したデモでは、スロットレーシングカーを使って、外部からの攻撃による暴走を実演。現代のクルマは、電子スロットルを装備するなど、アクセル操作は電気信号によって伝えられている。具体的には、アクセルの踏み込み量をデジタル化=数値化。その数値をメモリ上の特定位置に記録し、その数値をECUが読み出すことで燃料噴射が行われている。たとえば、そのメモリの特定値に10と書かれていれば、フルスロットルの10%の燃料噴射が行われるということになる。

 逆に言えば、クルマのシステムを外部から乗っ取り、メモリの特定番地を書き換えてフルスロットルにすればクルマは暴走してしまう。このデモではインテルのシステムを導入することで、メモリの特定番地が保護され、そのような暴走が起きないことをみせていた。

コネクテッドカーのコントロール基板
コネクテッドカーの内部アーキテクチャ。OSの上にGSMドライバとCANドライバが乗っている。GSMドライバーをオーバーフローさせて、CANドライバーが使用するメモリを書きかえる
コマンドラインレベルに入ることができた。速度をコントロールするためのメモリ番地を確認
patchコマンドで、ff(フルビット、最高スロットル開度)をメモリに書き込み。この後クルマは暴走した
必要なメモリ番地をプロテクトできる

 そのほかのクルマ関連としては、インテル RealSense 3Dカメラ搭載タブレットなども展示。RealSense 3Dカメラは、今秋搭載製品が出始めたばかりの最新技術。奥行き情報を計測可能なため、PCなどでは3Dプリンタとの接続デモが行われているが、1つの可能性としてジェスチャーコントロールが示されている。

●富士通、ユビキタス製品の総力を結集した新製品発表会(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20141009_670670.html

 会場ではそのRealSenseの次世代版もデモ。現在のRealSense 3Dカメラとは異なる仕組みを持つといい、テーブルに置かれた立方体のスケールを算出していた。

インテル RealSense 3Dカメラの入ったノートPC
インテル RealSense 3Dカメラモジュール
次世代タイプのインテル RealSense 3Dカメラの入ったタブレット端末。立方体のサイズを算出している

 現在のRealSenseであれば、カーナビのコントロールなどに応用できるほか、次世代のRealSenseではクルマの自動運転にも利用できるかもしれない。クルマの自動運転ではリアルタイム性が重視されるためその辺りの配慮も必要だろうが、さまざまなデバイスが高速化することで解決できる部分もあるだろう。

 次世代視線入力システムやワイヤレス給電システム「Alliance for Wireless Power(A4WP)」などもクルマに応用できる分野であり、インテルの技術がどれだけクルマ分野に入ってくるのか楽しみな展示会だった。

キーボード上部にある2つの赤外線照射ユニット(デジタルカメラのため紫に写っている)が瞳の動きを捕捉。スクロールや、注視することでの選択アクションが行えた
Alliance for Wireless Power(A4WP)のデモ。Qi(チー)と異なりムービングコイルを使わず、給電できる範囲も広い。その代わり給電ピークは若干低く、今後ワイヤレス給電のスタンダードの座をQiと競っていく

(編集部:谷川 潔)