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日産、“LPG バイフューエル仕様”も用意する「NV200 タクシー」出発式

35台のNV200 タクシーが都内をパレード走行

2015年6月8日開催

 日産自動車は、2014年11月に発表した新世代タクシー「NV200(エヌブイニーマルマル)タクシー」の出発式を東京都内で開催した。

東京タワーの駐車場に各タクシー会社の架装を施した「NV200 タクシー」が集結

 2014年11月に発表されたNV200 タクシーは、日産の5ナンバー商用車「NV200」をベースにタクシー架装を施したほか、タクシー会社からの要望を受け、通常モデルと同じレギュラーガソリンに加え、LPGも併用可能な「LPG バイフューエル」仕様車もラインアップすることが大きな特徴。すでに海外では導入が進んでおり、なかでも長い歴史を持つ米国・ニューヨークの「イエローキャブ」に採用されたことでも話題となった。

 一般的なセダンタイプのタクシーと異なり、背の高いワゴンタイプのボディーを持つNV200をベース車両として用いることで、広々とした乗員空間と多くの荷物を収納できるラゲッジスペース、高いアイポイントによる見晴らしのよさなどをメリットとする。また、シートバックの角度調整機構を有し、リアシート上部に大型のパノラミックルーフを設定。スマートフォンなどの充電に利用できる12V電源など、装備品も豊富にラインアップされている。

グレードルーフエンジン変速機駆動方式定員価格
NV200 タクシー ガソリン車標準直列4気筒DOHC 1.6リッター4速AT2WD(FF)5名2,196,720円
パノラミックルーフ2,391,120円
NV200 タクシー LPG バイフューエル車標準直列4気筒DOHC 1.6リッター LPG バイフューエル2,816,640円
パノラミックルーフ3,011,040円
ボディーサイズは4400×1695×1860mm(パノラミックルーフ装着車の全高は1865mm)、ホイールベースは2725mm。ボディーカラーは特装色の「イエロー」
ルーフ上には各タクシー会社ごとの車名表示灯(行灯)を装着
車体後方に記念ステッカーを設定
HKS製のLEG バイフューエルシステムの装着車をラインアップ。ラゲッジスペースの助手席側に73L(NV200 タクシー ユニバーサルデザインは45.5L)のLPGタンクを設置して、航続距離を高めるほか、安いLPGで走る経済性も手に入れる。燃料のガソリンとLPGは、走行状態に合わせて自動切り替えされる
撮影車両は各種クレジットカードに加え、電子マネーでの支払いにも対応
ラゲッジ容量はガソリン車で1595L。LPG バイフューエル車(写真)でもスーツケース4個を収納可能なスペースを確保する
リアシートの下側は長さのある荷物を通せるようになっている
歩道側のスライドドアには、開閉に連動して可動する電動式スライドステップ&ステップランプを標準装備
座り心地や高級感を追究して新設計したリアシート。撮影車両ではタクシーらしい白いハーフカバーが装着されていた
固定式のガラスウインドーを持つパノラミックルーフ
NV200 タクシーのフロントシート
前後のシート間にはアクリル製の防護板のほか、ACコンセントやUSB端子でスマートフォンなどを充電できる無料充電設備、フリーWi-Fiの案内などが用意されていた

東京オリンピックで訪日する観光客にも乗ってほしい

出発式前の披露会でNV200 タクシーと並びフォトセッションを受ける日産自動車 代表取締役副社長、チーフ コンペティティブ オフィサー(CCO) 西川廣人氏(左)と日産自動車 専務執行役員 星野朝子氏(右)
日産自動車 代表取締役副社長、チーフ コンペティティブ オフィサー(CCO) 西川廣人氏

 NV200 タクシーの出発式に先立って実施された披露会では、まず日産自動車 代表取締役副社長、チーフ コンペティティブ オフィサー(CCO)の西川廣人氏が登壇。「日産はおなじみのNV200をベースにした改良車を、従来のセダンタイプのタクシーに変わる次世代のタクシーとして、欧米、あるいはアジアの国々に投入してきております。すでにご案内のとおり、有名なニューヨークのイエローキャブをはじめとするニューヨークタクシーに投入を始めており、それに加えてヨーロッパの、バルセロナやアムステルダムを中心に、NV200の電気自動車であるe-NV200をベースにしたタクシーも、すでに200台ほど街を走っております」と紹介したほか、すでにテスト導入したタクシー会社の関係者から、セダン並みの乗り心地やシートの快適性、乗り降りのしやすさ、視界の広さなどの面で高い評価を得ていると語り、さらに自身でも社用車の代わりとして使ってみて、要求度の高い日本のユーザーにも十分に広く受け入れられると確信しているとコメントしている。

西川CCOのスピーチに続き、NV200 タクシーのアンベールを実施

 車両のアンベール後に、日産自動車 専務執行役員の星野朝子氏がスピーチを実施。星野氏は「2020年に東京でオリンピックが開催されますが、その出場選手をはじめ、海外からたくさんの観戦客のみなさんが日本を訪れます。そんなお客さまは大きなスーツケースをたくさん持ってやって来られます。従来の(セダンタイプの)タクシーでは、複数のお客さまの大きなスーツケースは1台では積みきれませんでしたが、この“グローバルタクシー”ではそれが可能です。長旅でお疲れのお客さまに広々とした後席に乗り込んでいただき、リラックスした状態で都内のホテルまで向かっていただく。その道中では、大きなサンルーフから東京の街並みを見ていただくことが可能です。お客さまが東京に滞在する1週間程度の旅の幕開けを、最高に楽しんででいただけるようにする“おもてなしのスタート”としてNV200 タクシーが存在する。そんなふうに考えるだけでわくわくしてきます」とコメント。2年連続して増加している海外からの観光客に対して高いニーズがあると解説。また、国内のユーザーに対しても、スキーのような荷物の多いレジャーシーンなどで潜在的なニーズが存在していると語っている。

アンベールされたNV200 タクシーの隣で日産自動車 専務執行役員の星野朝子氏がこのクルマに込めた思いを解説

 また、実際にNV200 タクシーを導入するタクシー会社を代表して、日本交通 代表取締役社長 川鍋一郎氏が登壇。タクシー会社の社長として、ニューヨークやロンドンに足を運んで視察したときのエピソードなどを紹介しつつ、「乗務員のお客さまを迎える気持ちにおいては日本がナンバーワンです」と自負した。NV200 タクシーについては、日本では歴史的にタクシー車両はセダンとなっており、とくに流し営業の多い東京都内では、ぱっと見た瞬間にタクシーであると認識されなければ乗ってもらえず、売り上げが下がってしまう可能性があることが今後に向けた最大の課題になるとの分析を語り、一方でNV200 タクシーに設定されている「ユニバーサルデザイン仕様」によって新しいニーズが開拓されつつあることを紹介。また、同社の新規採用で応募してくる乗務員の志望動機に、車いす対応やキッズ対応などの新しい取り組みを行っていることを挙げる人が2割以上存在し、新しい試みが新たな意識を持つ乗務員を呼び入れ、新しいタクシーがどんどん生まれていくようになるという将来像について語った。

現時点で車いす対応やキッズ対応などの車両を受け持っているのは、同社の7000人の乗務員うち2%となる150人。しかし、新たに志望してくる人の25%が志望動機に新たな取り組みを挙げ、こうした新しい取り組みを進めていくことはタクシー業界の使命であると川鍋氏は語る
NV200 タクシーを導入する46社のタクシー会社
日産自動車 LCV事業本部 グローバルコンバージョン部 部長 藤井一夫氏

 車両の詳細解説は、日産自動車 LCV事業本部 グローバルコンバージョン部 部長の藤井一夫氏が担当。タクシーを取り巻く環境の変化として、海外からの観光客の増加を挙げ、とくに空港や観光地で多くの荷物を持った旅行者の姿を目にするようになり、今後はさらに増加していくとの予想を紹介。また、ストレスを抱えたビジネスマンが移動の時間を使ってリラックスしたり、少子高齢化の時代に対応するため、子育て支援や高齢者に対するいたわりなども重要になるとの見方を示し、現代的な新しいニーズに対応するためにはワゴンタイプのボディーが必要になるというのが日産自動車としての提案であると語った。

NV200 タクシー投入の背景。従来型のタクシーでは対応が難しい問題が多数存在している
新しいNV200 タクシーでは、従来型のニーズに加え、大きく4点の新しい魅力を持つ
5ナンバーサイズながら、スクエアなワゴンボディーによって広いキャビンスペースを実現
アイポイントの高さ、さらにパノラミックルーフも選択可能として開放感のある見晴らしのよい移動空間とした
定員乗車で全員分のスーツケースを収納可能なラゲッジスペース
関連会社のオーテックが架装を担当する「ユニバーサルデザイン仕様」も用意されている
テープカットセレモニーの終了後、35台のNV200 タクシーは東京タワーからお台場、銀座、皇居周辺、六本木などを巡る周遊パレード走行に出発した

(編集部:佐久間 秀)