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SUPER GT第6戦SUGO、GT500は100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT がホンダ勢として初優勝

クラッシュや大渋滞と大混乱なレースを制す

2015年9月20日決勝レース開催

GT500優勝の100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)

 SUPER GT 第6戦「2015 AUTOBACS SUPER GT Round 6 SUGO GT 300km RACE」は、9月19日~20日に宮城県の宮城県柴田郡村田町にあるスポーツランドSUGOにおいて予選、決勝が行われた。決勝日となった9月20日のスポーツランドSUGOは快晴で、タイヤがレースを左右する熱いレースになるかと考えられたが、レースを左右したのはそれ以外の要素、しかもそれはレースとは対局にある“渋滞”だった。

 そうした大混乱のレースを制したのは100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)で、ホンダのNSXが優勝するのは今シーズン初めて。GT300は今シーズンから導入されたマザーシャシーの25号車 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)で、松井選手はGT300初優勝となる。

GT300優勝の 25号車 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)

39号車 DENSO KOBELCO SARD RC Fが裏ストレートで激しいクラッシュ。セーフティカー出動

 “大渋滞”、それが今回のレースを象徴する一言。その大渋滞は、別にレース後につきものの、サーキットから帰路につく車が引き起こす、大渋滞ではない。その大渋滞とは、レース中のピットで発生したのだ。

 レースは秋晴れの空の下で行われた。14時のスタートは、最近のSUPER GTではもはやお約束となりつつある、白バイとパトカーの先導で始まった。警察車両先導の効果(?)もあってか、最近のスタートはいずれもクリーンなものになることが多いが、今回のレースもその例外でなく、GT500のスタートはグリッドについた全車順位通りに1コーナーを通過した。

 ただし、ポイントランキング3位の36号車 PETRONAS TOM'S RC F(伊藤大輔/ジェームス・ロシター組)は、エンジン交換をしてレース中に10秒のペナルティストップをこなさなければならないことをが決定していたにもかかわらず、エンジンが始動せず、ピットレーンクローズになるまでにピットを離れることができず、ピットスタートになってしまった。このピットスタートと、レース開始後に10秒のペナルティストップをこなしたため、36号車はいきなり周回遅れになり、勝負圏外になってしまった。

GT500のスタート

 スタートで飛び出したのは、ポールポジションを獲得した46号車 S Road MOLA GT-R(本山哲/柳田真孝組)。本山選手がドライブする46号車は、2位からスタートした山本選手のドライブする100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTを徐々に引き離す展開で、本山の勝ちパターンに持ち込みつつある状況だった。
 100号車は、46号車を追い上げるどころか、逆に3位グリッドからスタートした64号車 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)に追い上げられている状況で、23周目前後には64号車が100号車をストレートでオーバテイクし2位にあがり、そのままトップの46号車追い上げに入ると見られた。

 ところが、その100号車を追い抜いた時に、64号車はメインストレートのピット側にある段差に右のリアを強くヒットしており、サスペンションが壊れたため、スローダウンを強いられることになる。64号車は一度ピットインしてタイヤなどを交換して出て行くが、サスペンションの交換をせざるを得なくなり、そのままピットインしてリタイアすることになった。

1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)

 その直後の25周目、ポイントを巡って激しい争いを行っていた、1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)がバックストレート手前でスピン、ピットスタートになった36号車を除けば最後尾を走っていた12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)の後方へと下がってしまった。

 このスピンが混乱の引き金になったのか、1号車の直後を走っていた38号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)を裏のストレートで抜こうとした39号車 DENSO KOBELCO SARD RC F(平手晃平/ヘイキ・コバライネン組)が38号車の幅寄せにより行き場がなくなり、グリーンへ飛び出し、その反動で反対側のガードレールに激しくクラッシュして、コース中央に戻ってきて停止するという大事故が発生した。ドライブしていた平手選手は車から降りて無事は確認されたものの、車がコースをふさいだことからセーフティーカーが出されて、レースはフルコースイエローでセーフティカー先導で進められることになった。

ピットオープン後の(ほぼ)全車ピットインで、ピット出口は大混乱に

 その間にクローズされていたピットレーンがオープンになったのはレースの31周目、すでに1人のドライバーがこなすべき規定周回(レースの1/3、今回は81周だったので28周)を越えていたこともあり、周回遅れを回復したい一部のチームを除き、GT500、GT300のほぼ全車両がピットインする展開になった。この段階で1位の46号車、2位 100号車、3位 37号車 KeePer TOM'S RC F(アンドレア・カルダレッリ/平川亮組)、4位 6号車 ENEOS SUSTINA RC F(大嶋 和也/国本雄資組)、5位 24号車 D'station ADVAN GT-R(佐々木大樹/ミハエル・クルム組)、6位 12号車ぐらいまでは無事にピットアウトできたが、7位以下は大混乱となった。

 今回のピットは1コーナー側にホンダ勢が陣取っていたが、スポーツランドSUGOのピットは非常に狭いため、車を斜めに止める必要があり、ホンダ勢が出て行こうとしたときに、車を後ろに下げていると、7位の1号車以降の車がそこに停止せざるを得なくなり、それ以降も同じようなことが起きて、ピット出口は大混乱。しかも、その間にレースが再開され、先導車がストレートに帰ってきたため、ピットの出口が赤信号になり、ピット出口で待っていた車はそのまま待たされることになり、ピット作業でトラブルが発生していたポイントランキング2位の38号車はピット出口で待たされることになり、周回遅れになってしまった。

100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTが優勝、12号車はかろうじてポイントリーダーの座を維持

 レースが再開され状況が落ち着いてくると、1位 46号車GT-R、2位 100号車NSX、3位 37号車RC Fとなり、またポイントリーダーの12号車、ランキング4位の1号車が6位、7位に浮上していた。

 レースが大きく動いたのは、37周目、トップ46号車との差を徐々に詰めていた2位100号車がメインストレートで46号車をオーバーテイクし、そのままトップになった。その後100号車は46号車との差を徐々に引き離していき、10秒近い差を常にマネージメントし、結局そのままゴールして、ホンダに今シーズン初優勝をプレゼントすることになった。

 100号車が独走を始めた後も、GT500の大混乱は続いた。魔物が住むと言われているSUGOサーキットが最初に牙をむいたのは、12号車 GT-Rに対してだった。12号車 GT-Rは黄旗追い越しのペナルティを2度とられ、1度は20秒のストップ、もう一度が30秒のストップという2回のピットストップペナルティを科せられ、ピットイン時のロスタイム2回分と50秒の停止となってしまったため、2週遅れにまで転落し、結果完走した11台のうち最下位の11位となり、ポイントを獲得することができなかった。

 ただ、それでも今回の優勝でポイントを大きく伸ばしてポイントランキング2位となった100号車の49点に2点リードのポイントリーダーの座は維持できている。今回のレースではほかにも、37号車 RC F、38号車 RC F、1号車 GT-Rにもドライブスルーペナルティが出されており、そちらの意味でも大混乱のレースだったと言ってよい。

24号車 D'station ADVAN GT-R(佐々木大樹/ミハエル・クルム組)

 終盤の見所は3位を走っていた6号車 ENEOS SUSTINA RC Fと、4位を走っていた24号車 D'station ADVAN GT-R(佐々木大樹/ミハエル・クルム組)の表彰台をかけた争い。GT300を挟んで何度も、6号車を操る国本選手に揺さぶりをかける24号車の佐々木選手だが、抜くまでにはいたらない。だが、後4周を残すだけとなった77周目の最終コーナーでうまくトラクションをかけることに成功した24号車の佐々木選手は、メインストレートでスリップストリームに入り、1コーナーでアウトにでるとブレーキングをできるだけ遅らせて見事なオーバーテイクを成功させた。これにより、ヨコハマタイヤに第4戦の優勝以来となる今シーズン2回目の表彰台をプレゼントした。

 なお、レースでは6位 15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(小暮 卓史/オリバー・ターベイ組)、7位 1号車 MOTUL AUTECH GT-Rの順でゴールしたが、その後15号車に対してタイム加算のペナルティが加えられ、6位と7位の順位が入れ替わることになった。

カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)

 今回の第6戦を終わった時点で、ドライバーランキングのポイントリーダーは依然として12号車 カルソニック IMPUL GT-R、2点差で今回優勝した100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT、さらに6点差で46号車 S Road MOLA GT-Rと38号車 ZENT CERUMO RC F、その後7点差で1号車 MOTUL AUTECH GT-R、8点差で36号車 PETRONAS TOM'S RC Fが続く展開となっている。

 次戦のオートポリス(10月31日~11月1日)でハンデウェイトが半分になり、最終戦のツインリンクもてぎ(11月14日~15日)ではウェイトは0になるため、これらの上位6台がほぼポイント差がない状況で争う展開になることが予想される。残り2戦でチャンピオンシップがどうなるのか、全くわからない状況になってきたと言っていいだろう。

GT500レース結果(暫定)
順位カーナンバー車両ドライバータイヤウェイトハンデ
1100RAYBRIG NSX CONCEPT-GT山本 尚貴/伊沢 拓也BS58
246S Road MOLA GT-R本山 哲/柳田 真孝MI60
324D'station ADVAN GT-R佐々木 大樹/ミハエル・クルムYH40
46ENEOS SUSTINA RC F大嶋 和也/国本 雄資BS38
519WedsSport ADVAN RC F脇阪 寿一/関口 雄飛YH36
61MOTUL AUTECH GT-R松田 次生/ロニー・クインタレッリMI78
715ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT小暮 卓史/オリバー・ターベイBS28
817KEIHIN NSX CONCEPT-GT塚越 広大/武藤 英紀BS44
937KeePer TOM'S RC Fアンドレア・カルダレッリ/平川 亮BS68
1038ZENT CERUMO RC F立川 祐路/石浦 宏明BS88
1112カルソニック IMPUL GT-R安田 裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラBS100(102)
128ARTA NSX CONCEPT-GT松浦 孝亮/野尻 智紀BS20
1336PETRONAS TOM'S RC F伊藤 大輔/ジェームス・ロシターBS86
R39DENSO KOBELCO SARD RC F平手 晃平/ヘイキ・コバライネンBS36
R64Epson NSX CONCEPT-GT中嶋 大祐/ベルトラン・バゲットDL6

GT300はマザーシャシーの25号車 VivaC 86 MCが初優勝

GT300のスタート

 GT300のレースも、GT500同様、スタートでは目立った混乱はなく、静かなスタートになった。スタートで飛び出したのは、ポールポジションからスタートした55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一/小林崇志組)。徐々に2位からスタートした25号車 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)を引き離していき、一時は5秒以上の差をつけた。そうした中、2位以下は混戦で、25号車と31号車 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一組)が激しいデッドヒートを繰り広げる展開となった。

 そのままレースは55号車が独走していくのかと思われたが、6周目(GT500の周回、以下同)前後に55号車のペースは目に見えて低下し、25号車が55号車を抜きトップに立った。その後31号車も同様に、55号車を翌周にオーバーテイクし、結局レース終了まで、この2台による争いが展開されることになる。

 GT300に関してもレースが大きく動いたのは、25周目に導入されたセーフティカーだ。GT500と同じく31周目にピットオープンになったときには、一部の車両(22号車、48号車、111号車、87号車)を除く全車がピットイン。ところが、ピット出口では複数の車がピットアウトできないという混乱が発生した。この混乱で大きく割を食ったのは、3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野 一樹/高星 明誠組)以降の車両。いずれの車両もピット出口で待たされる形になり、大きくタイムロスすることになった。

31号車 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一組)

 その後、レースは25号車 VivaC 86 MCが支配し、2位となった31号車 TOYOTA PRIUS apr GTに常時十数秒の差をつけてそのまま独走して優勝した。25号車 VivaC 86 MCは、今年からGTアソシエイション(SUPER GTのプロモーター)が導入した、SUPER GT向けの標準シャシーで、改造範囲が広く設定されており、小規模のガレージでも自前の車を作成して参戦することが可能になっている。25号車 VivaC 86 MCは、ドライバーである土屋武士選手が運営するつちやエンジニアリングが走らせており、父親でもある土屋春雄氏が監督で車を作成する役割で参戦しているチーム。SUPER GTでもそうした土屋春雄氏の技術に対する姿勢が人気を集めており、優勝時のインタビューなどでファンからは祝福の声援が多く寄せられていたのが印象的だった。

10号車 GAINER TANAX GT-R

 圧倒的なポイントリードを持つポイントリーダーの10号車 GAINER TANAX GT-Rに乗るアンドレ・クートは、100kgの最大ウェイトハンデを搭載しているにもかかわらず、今回のレースでもしぶとく6位に入り、74点でポイントリーダーの座を維持した。2位はレースによってはチームメイトとなる千代勝正で、同じ車両にのるクートのポイントを上回ることができないので彼には権利はなく、直接のライバルは今回のレースで2位になったことで、ランキング3位に浮上した31号車 TOYOTA PRIUS apr GTの二人(嵯峨宏紀/中山雄一)が49点、さらには41点となっている3号車 B-MAX NDDP GT-Rの二人(星野一樹/高星明誠)と今回のレースで3位に入った11号車 GAINER TANAX SLSの二人(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)となる。

 次回のオートポリスで2位以下に20点以上の差をつけることができれば、クートのチャンピオンが決定する。すでに25点差をつけていることを考えれば、次回のオートポリスでチャンピオンが決定することも十分ありそうな状況だ。

GT300レース結果(暫定)
順位カーナンバー車両ドライバータイヤウェイトハンデ
125VivaC 86 MC土屋 武士/松井 孝允YH30
231TOYOTA PRIUS apr GT嵯峨 宏紀/中山 雄一BS68
311GAINER TANAX SLS平中 克幸/ビヨン・ビルドハイムDL60
488マネパ ランボルギーニ GT3織戸 学/平峰 一貴YH28
561SUBARU BRZ R&D SPORT井口 卓人/山内 英輝DL48
610GAINER TANAX GT-Rアンドレ・クート/富田 竜一郎DL100(138)
765LEON SLS黒澤 治樹/蒲生 尚弥YH62
83B-MAX NDDP GT-R星野 一樹/高星 明誠YH76
951JMS LMcorsa Z4新田 守男/脇阪 薫一YH24
1022グリーンテック SLS AMG GT3和田 久/城内 政樹YH2
1177ケーズフロンティア Direction 458横溝 直輝/峰尾 恭輔YH6
1255ARTA CR-Z GT高木 真一/小林 崇志BS72
1321Audi R8 LMS ultraリチャード・ライアン/藤井 誠暢YH38
14111Rn-SPORTS GAINER SLS植田 正幸/鶴田 和弥YH0
1518UPGARAGE BANDOH 86中山 友貴/佐々木 孝太YH0
160グッドスマイル 初音ミク SLS谷口 信輝/片岡 龍也YH32
1733Excellence Porsche坂本 祐也/山下 健太YH6
1887クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3青木 孝行/佐藤 公哉YH0
197Studie BMW Z4ヨルグ・ミューラー/荒 聖治YH68
2050SKT EXE SLS加納 政樹/安岡 秀徒YH0
2148DIJON Racing GT-R高森 博士/田中 勝輝YH0
2260SYNTIUM LMcorsa RC F GT3飯田 章/吉本 大樹YH2
239PACIFIC マクラーレン with μ's白坂 卓也/阪口 良平YH0
2430NetMove GT-R小泉 洋史/岩崎 祐貴YH0
R2シンティアム・アップル・ロータス高橋 一穂/加藤 寛規YH10
R360RUNUP Group&DOES GT-R吉田 広樹/成澤 正人YH0

【お詫びと訂正】記事初出時、GT500のドライバーランキングで点差に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)