【インタビュー】新型ノートの販売の好調さについて聞く
「想定以上にエコスーパーチャージャーエンジン搭載車の人気が高い」


 日産自動車が9月3日に発売したグローバルコンパクトカー新型「ノート」。新型ノートは先代ノートと「ティーダ」の後継モデルとして登場し、日本国内に供給する車両については、福岡県にある日産自動車九州で生産を行う。そのため、発売に先立つ8月28日に開催された発表披露会は、その日産自動車九州で行われた。

 最大の特徴となるのは、新開発の直列3気筒 DOHC 1.2リッター直噴ミラーサイクルエンジンにスーパーチャージャーを搭載した「HR12DDR」エンジン(エコスーパーチャージャー)をラインアップすること。グレードによって異なるものの、エコスーパーチャージャーを搭載するS-DIG Sは、JC08モード燃費25.2km/Lと、軽自動車やハイブリッド車を除くガソリンエンジン車としてトップレベルの燃費性能を誇る(ちなみに現時点での軽自動車を除くガソリンエンジン車のトップは、三菱自動車「ミラージュ」の27.2km/L)。

日産自動車 マーケティング本部 マーケティングマネージャー 小口武志氏

 販売台数に関しても、エコカー補助金終了前の9月は1万8355台で、プリウス、アクアに続いて3位(乗用車車名別販売台数)。補助金終了後の10月は、アクア、プリウスに続いてやはり3位となった。今年前半の販売ベスト3は、ハイブリッド車もしくはハイブリッド車を含む、プリウス、アクア、フィットが占めてきたが、ノートは、燃費25.2km/Lのエコスーパーチャージャーという環境対応エンジンを武器にその一角に食い込むことに成功している。その好調さの要因について、日産自動車 マーケティング本部 マーケティングマネージャーの小口武志氏にうかがってみた。




──ノートの販売の好調さについて、どう見ているか?
小口氏:発表直後は非常に好調でしたが、エコカー補助金の終了により販売実績も9月の1万8355台から10月の1万7台と、やや落ち着いてきています。しかしながら、我々の想定以上にエコスーパーチャージャー搭載車の人気が高く、現在もエコスーパーチャージャーエンジンの生産が追いつかない状況となっており、お客さまに少しお待ちいただいている状況です。

エコスーパーチャージャーエンジンを搭載する新型ノート

 現在の受注状況では、若干エコスーパーチャージャー搭載車の比率が下がってきていますが、それでも我々の想定を遙かに上回る受注をいただいており、緊急増産をしている最中です。お客さまが購入検討をされる際、今までの日産のコンパクトカーでは、アクアやフィット ハイブリッドなどのハイブリッド車の競合車とはならなかったのですが、新型ノートはそれらの競合車として比較検討をしてもらえています。お客さまからは「日産からこのようなクルマが販売されるのを待っていた」との声をいただいています。

──ハイブリッド車は燃費がよいとのイメージがすでにあるが、スーパーチャージャーはターボと同様にパワーアイテムとのイメージが強かった。燃費によいとのイメージはあるのか?
小口氏:我々が思ったほど、スーパーチャージャーが出力を向上させるためのものとは思われておらず、素直に低燃費エンジンとしてお客さまに受け止めていただいています。新型ノートの価格は、エコスーパーチャージャーを搭載しないモデルのほうが安価なのですが、エコスーパーチャージャー搭載車をお選びになるお客さまが非常に多くいらっしまいます。

 理由をお聞きすると、燃費のよさがまず第一で、加えて専用のエコメーターなどのデザインも評価していただいているようです。我々の想像以上にお客さまの環境志向が強くなっているのを感じています。

新型ノートでは、メーターパネルに現在の燃料消費状態を視覚化する照明を採用。人気の装備とのこと

──ノートを購入しているユーザーの年齢層は?
小口氏:発売当初2週間で約2万2000台を受注とのリリースを発行いたしました。そこで、29歳以下:8%、30~39歳:11%、40~49歳:20%、50~59歳:24%、60歳以上:37%と発表しています。ただし、一般的にクルマを購入されるお客さまが若干高齢化している傾向があり、この数字にはその傾向が強く反映されています。また、30代のお客さまはお子さまがいることも多く、弊社のラインナップで言うと「ミニバンNo.1のセレナ」などを購入されているようで、車種ごとに世代の棲み分けが行われています。

 ミニバンはセレナで、コンパクトカーはノートでと、いろいろな世代をカバーして、最終的にはノートでコンパクトカーのNo.1を目指していきたいと思っています。

──環境志向のクルマとなると、日産には電気自動車(EV)の「リーフ」もある。このリーフとノートの棲み分けは?
小口氏:日産リーフとノートは、価格的にも大きな差があり、販売上競合することはありません。電気自動車である日産リーフは「エコカーの究極形」であり、普及に向けてインフラの整備にも力を入れています。

 一方で、日産は電気自動車を普及させることと並行して、エコスーパーチャージャー搭載のノートや、S-HYBRIDを搭載したセレナなど、エンジン進化型のエコカーを広く早く普及させていくことが、CO2排出量の削減に重要であると考えています。

 日産はこうしたエンジン進化型エコカーを「PUREDRIVE」と呼んでおりますが、お客さまも電気自動車とエンジン進化型エコカーの違いを理解されており、販売店では、ハイブリッド車を含む他社のコンパクトカーがノートと直接の競合車となっています。

──ハイブリッド車と比べた場合のノートの長所は
小口氏:エコカー減税で免税となる、クラスでトップクラスの低燃費と価格のバランスだと思います。単純にハイブリッド車と比べると燃費値は届きませんが、ガソリン車としてはトップクラスの燃費であるJC08モード燃費25.2km/Lを誇り、その結果エコカー減税の免税車となっています。

 一方で、同等の装備のハイブリッド車と比べると、ノートは大変お求めやすい価格になっています。またハイブリッド車と異なり、駆動用バッテリーやモーターを必要としないため、室内スペースを広く取ることができます。特に、ご試乗されたお客さまから驚きの声があがるほどの後席の広さは、新型ノートの大きな魅力の一つです。

 ハイブリッド車を購入すると決めておられるお客さまもいらっしゃいますが、多くのお客さまはコンパクトカーを購入するという意識の中で、ハイブリッド車とノートのようなガソリン車を比較されているようです。その上で、ノートを購入されるお客さまには、ガソリン車ならではの広さや、購入しやすい価格でありながら低燃費と走りが両立できていることを評価していただいていると考えています。

 ここ数年、エコカー=ハイブリッド車というイメージをお持ちのお客さまが多かったと思いますが、マツダ社のスカイアクティブテクノロジーや、ダイハツ社の「ミラ イース」、そして弊社のエコスーパーチャージャーの登場などもあり、「エコカーにはさまざまな技術の方向があるのだな」と少しずつお客さまのイメージが変化してきていると感じています。ただ、エコスーパーチャージャーについては、まだ世に出たばかりの技術なので、もっと多くのお客さまに、これから知っていただかなければならないと思っています。

 実際にお客さまに、ノートを試乗していただくと、エコスーパーチャージャー搭載車は、低速からトルクもあり、低燃費と走りを両立したクルマだと理解していただくことができます。特に高速道路で追い越しをする時の加速などはスーパーチャージャーが作動し、その力強い加速を感じていただけます。燃費がよいだけでなく、日産らしい“走り”と低燃費の両立を図っているのがエコスーパーチャージャーを搭載したノートなのです。

直噴ミラーサイクルの直列3気筒 DOHC 1.2リッター+スーパーチャージャーを組み合わせた「HR12DDR」エンジン

 エコスーパーチャージャーを搭載していないグレード車と、搭載したグレード車では、約20万円の車両価格差があり、搭載していないグレードは、エコカー減税も免税ではなく、75%減税となります。しかし、現在エコスーパーチャージャー搭載車を購入していただいているお客さまには、免税というメリットはあるものの価格差を超える価値を認めていただいているのだと思います。一方、エコスーパーチャージャーを搭載していないグレードも、街中での走行など日常使いではまったく問題はなく、こちらも好評をいただいております。

──どのような個所がユーザーから好評か?
小口氏:燃費や走行性能も高い評価をいただいていますが、エコスーパーチャージャー搭載車では、運転のエコ度合いによってメーターパネルの色が変わる「エコメーター」を搭載しており、これが非常に好評です。誰でもエコ運転が可能となる「ECOモード」の機能の搭載とあわせ、エコメーターのデザインには近未来感や先進感があるので、視覚的にもエコなクルマに乗っていることを感じていただけるのだと思います。

──新型ノートではメダリストのグレード名が復活しているが、その評判は?
小口氏:メダリストは「メダル受賞者」という意味をもち、特別感や上級感をイメージしたネーミングです。今回の新型ノートでは、ティーダも統合するということが大きな課題となっており、ティーダの持っていたコンパクトながら豪華という世界観の受け皿が必要でした。最上級グレードの“メダリスト”は、これまでのティーダのお客さまにもご満足いただけるよう、内外装ともにプレミアム感を高め、装備も充実させています。

上級グレード「メダリスト」。ボディーカラーは専用色のビートニックゴールド

2ボックスタイプならではのラゲッジルーム。リアシートは6:4分分割式で、さまざまな空間アレンジができる

 実際、新型ノートを購入されるお客さまには、排気量の大きなクルマから小さなクルマへとダウンサイジングされる方も多く、そういった方の多くはメダリストをご購入いただいています。セドリックやグロリアからダウンサイジングされるお客さまは、お子さまが自立されるなどして「小さなサイズのクルマがよい」と考えられていても、室内の広さや質感などにはこだわりをお持ちです。

 メダリストは、これまで3リッタークラスのクルマに乗られていた方にも選ばれるようなクルマに仕上げることができたと考えています。お客さまの中には、トランクの付いている、いわゆる「3ボックスセダン」を望む方もいらっしゃるのですが、そういったお客さまには「ラティオ」もしくは今後発売する「シルフィ」をご用意しています。ただ、そのようなお客さまにも、新型ノートをご覧いただき、試乗していただくと、ラゲッジルームを持つ2ボックスタイプも「これも便利だな」と思っていただけているようです。

──売れ筋のボディーカラーは何色か?
小口氏:白・黒・シルバーを選ばれるお客さまが多いですが、宣伝のメインカラーとなっているソニックブルー、メダリストのビートニックゴールドも好評で、こうした色を用意したかいがあったとうれしく思っています。

 特に街中でこうした色の新型ノートが走っているのを見かけると本当にうれしくなります。ビートニックゴールドはメダリストにしか設定がないため、まだ街中で見る機会が少ないのですが、ソニックブルーはよく見かけます。

──とくに人気になっている装備などは?
小口氏:エコスーパーチャージャー以外にも、先進的な装備であるアラウンドビューモニターをメダリストには標準装備し、それ以外のグレードにはオプションで設定しました。このアラウンドビューモニターの映像は、ルームミラーにも投影できるため、カーナビを購入されないお客さまでも、気軽に購入することができ、価格もお求めやすい設定としています。

クルマの周囲を上方から見たように表示するアラウンドビューモニター。バックミラー内にも表示可能

 これは、実際に使用されたお客さまからはとてもご好評をいただいております。コンパクトカーは、ミニバンほどバックビューモニターの装着率が高くないため、発売前に行った一般のお客さまを交えてのインタビュー調査時には「必要ない」との声もありましたが、実際に使用されるとその便利さと、お求めやすい価格に大変好評をいただいています。

 こうした新しい装備は、実際に使ってみないとなかなかその便利さが実感できないと思いますので、アラウンドビューモニターの便利さが、どんどん口コミで広がっていくとよいなと思っています。昔は地図帳を見ながらドライブに行きましたが、今は新車購入時にカーナビを装着しない方はほとんどいませんし、1度使うとカーナビは手放せなくなりますよね。いずれアラウンドビューモニターもそうなってほしいと思っています。

 それから、繰り返しになってしまいますが、一番の人気は、やはりエコスーパーチャージャーです。これまでコンパクトカーの分野では、ライバルとなるハイブリッド車に販売の現場で苦戦が続き、くやしい思いもしてきました。それがエコスーパーチャージャー搭載車であれば、ハイブリッドのコンパクトカーと十二分に勝負することができ、販売現場も活気づいています。

 新型ノートの環境性能の高さに加えて室内の広さやコンパクトカーとしての使い勝手のよさなど、ノートの魅力をより多くのお客さまにお伝えしていくよう、今後も尽力していきます。応援をよろしくお願いします!

(編集部:谷川 潔)
2012年 11月 27日