長期レビュー
日産「ノート」
第1回:まずは燃費性能をチェック。伊豆~秋葉原で約34.9km/L
(2012/12/27 19:16)
日産自動車のグローバルコンパクトカー新型「ノート」。9月の発売以来、乗用車販売台数ランキングで、ハイブリッドカーのトヨタ「プリウス」「アクア」に次ぐ3位を維持し続けているなど、ガソリンエンジン搭載車としては好調なセールスを維持している。その原動力となっているのが、直列3気筒1.2リッターのエコスーパーチャージャーエンジン「HR12DDR」搭載車の存在。このHR12DDRを搭載した「S DIG-S」はJC08モード燃費25.2km/Lとなり、軽自動車やハイブリッド車を除くガソリンエンジン車としてトップレベルの燃費性能を誇っている(ちなみに現時点での軽自動車を除くガソリンエンジン車のトップは、三菱自動車「ミラージュ」の27.2km/L)。
そのノートを、やや長期間お借りすることができたので、長期レビューとしてお届けする。Car Watchの取材の足として使うことで、なんらかの参考になれば幸いだ。ノートの詳細については、写真で見る「ノート」や岡本幸一郎氏のリポートなど関連記事を参照していだきたい。
●インプレッション 日産「ノート」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20121203_575893.html
●写真で見る日産「ノート」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/20120921_560671.html
●【インタビュー】新型ノートの販売の好調さについて聞く
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121127_575049.html
日産から借りたノートのグレードは「X DIG-S」。HR12DDRエンジンを搭載するのはS DIG-Sと変わりないがJC08モード燃費は24.0km/Lとなる。S DIG-Sとの大きな違いは装備やタイヤサイズにある。S DIG-Sが現代のコンパクトカーに求められる最低限の装備となっているのに対し、X DIG-Sは電動格納式ドアミラーやプッシュエンジンスターターなど各種便利装備を持つ。タイヤサイズは、S DIG-Sが185/65 R15に対し、X DIG-Sを含むそのほかのグレードは185/70 R14となっており、S DIG-Sが燃費値をよくするために工夫した点がうかがえる。
日産の発表によると、初期受注時ではX DIG-Sが48%、S DIG-Sが1%の販売比率となっており、わずかな燃費値の違いよりも、搭載装備と価格のバランスの取れたX DIG-Sに人気が集まっているようだ。ちなみに豪華装備のMEDALISTは24%となっている。いずれも税制面での恩恵に違いはなく、エコスーパーチャージャーエンジン搭載車はエコカー減税で免税(100%減税)となっている。
燃費チェック走行で伊豆~秋葉原間約34.9km/Lを記録
早速取材の足として活用するために、12月に静岡県伊豆市にある日本サイクルスポーツセンターで行われたタイヤメーカーの試乗会に行ってみた。前日別の用事があったため、荷物としては1泊分の着替えと、リポーターである高橋敏也氏、それにヘルメット2個などだ。この試乗会の模様については、来年お届けするとして、大人2人で出かけるのには十分なスペースをノートは持つことに改めて気がつく。リアシートも広く、荷物をあれこれ置いても余裕があり、ドアも90度開くため使い勝手がよい。多くの人に受け入られる必要があるクルマだけあって、さまざまな要望が採り入れられていることを感じる部分だ。
往路においては撮影などの都合もあるためとくに燃費計測はせず、走行特性を掴むための運転を心がけてみた。ノートのエコスーパーチャージャーエンジン搭載車は、エコドライブインジケーター、エコペダルガイドを含む日産エコメーターを装備している。これはCVTのセレクトレバー下部付近にある「ECOモードスイッチ」と連動して動作するもので、ECOモードスイッチを押すことでECOモードに移行。このECOモードは「エンジンとCVTの作動を自動制御して、急加速を抑えることで燃費の向上をサポートする」というもので、端的に書くとアクセルを踏んでもあまり加速しなくなるが、最後まで踏み込むとしっかり加速するモードだ。これによりアクセルの不要な踏みすぎなどを抑え燃費をよくすることができる。
さらにこの際、メーターパネル内に設けられたエコドライブインジケーターとエコペダルガイドが点灯。エコドライブインジケーターは色の変化によってエコドライブをサポートし、エコペダルガイドはアクセルペダルの踏み込み量を視覚化することでエコドライブインジケーターとあわせてエコドライブをサポートする。実際に燃費計測を行ったのは、日本サイクルスポーツセンターからの復路からとなり、目的地は高橋敏也氏の事務所がある秋葉原。サイクルスポーツセンターの西側に位置するガソリンスタンドで満タンに給油して走り始めた。
ルートは、満タンにしたガソリンスタンドを東に向かい、サイクルスポーツセンター入口を通り過ぎ伊豆スカイラインへ。伊豆スカイラインからTOYO TIRES ターンパイクへ行き、その後小田原厚木道路→東名高速 厚木IC(インターチェンジ)~東京IC→首都高速道路 3号線へと向かう。首都高 3号線で激しい渋滞に巻き込まれたので、そのまま都心環状(C1)には向かわず中央環状(C2)で初台南へ。初台南で首都高を下りたら、後は一般道で秋葉原までというルートだ。燃費計測をするための走行とはいえ、特別にペースを落とすなどの走行はしていない。エコペダルガイドのグリーンのラインに収まるようにアクセルを踏みながら、後は交通の流れに従ってという具合だ。そして、旧交通博物館前のセルフスタンドで給油した数値が3.92L。ここまでの走行距離が136.7kmだったので計算上の実燃費は34.87……≒34.9km/Lと35km/Lに迫る数値を記録した。
これだけの好燃費を記録した理由としては、燃料カットを積極的に利用したことと、エコペダルガイドの存在、そしてアイドリングストップの存在が挙げられる。現在の一般的なAT車の場合、ある程度速度が出ていて、なおかつドライブモードにセレクトレバーが入っている場合、アクセルペダルをOFFにすると燃料カットが行われる。つまり燃料がゼロで走行距離を稼いでいることになり、燃費は無限大になる。ノートの場合、瞬間燃費計は30.0km/Lまでしか表示されず、実際に燃料カットが行われたか否か分からないのだが、走行中に完全にアクセルOFFするとエンジンブレーキがかかる手応えがあり、まあ結果から見ても燃料カットが行われているのだろう。
また、エコペダルガイドにより、自分のアクセル踏み込み量がフィードバックされているので、これを頼りにアクセル操作が行える。このエコペダルガイドは、全アクセルペダル踏み込み量を30セグメントで表示するのだが、その内20セグメントが燃料消費が少ないとされるグリーンラインに存在する。アクセルの踏み込み量を0~100とした場合、この30セグメントがリニア(直線的)に動くのではなく、どうもグリーンラインの20セグメントがリニアに動いて0~30のアクセル開度を表示し、残りの部分は10セグメントでノンリニアに動いて100までのアクセル開度を表示している感じだ。
すべてがリニアに表示されるほうが分かりやすくてよいのだが、少なくとも燃料をあまり消費しないとされるグリーンラインの20セグメントはリニアに動いているので頼りにはなる。単に燃料カットが行われるとエンジンブレーキ状態になって車速が落ちるため、最初の数セグメントを使いつつ、瞬間燃費計が30.0km/L以上になって、車速が落ちにくい個所(エンジンブレーキの弱い個所)を探りながら運転を行った。
とくにこれが役に立ったのが、ターンパイクを下っていくときだ。ターンパイクはアップダウンの続く個所があるが、大観山方面から入れば、最初のアップダウンをうまく車速を落とさず乗り切れば、後はおおむね下っていくだけだ。個所個所での燃費計測は行っていないが、ここで稼いだ距離は相当のものだと思っている。
アイドリングストップに関しては、首都高の渋滞時、一般道の渋滞時など、ムダに止まっている時間に燃料消費をすることがなく、燃費面での恩恵が大きかったと思われる。タイヤはブリヂストンの「エコピア」を装着しており、この効果もあるのだろう。
タイヤをスタッドレスタイヤに交換して冬支度
Car Watchでは、冬になると雪国方面の取材を行うこともあり、タイヤをスタッドレスタイヤに交換。本当はミシュランが今シーズン投入した「X-ICE XI3」にしたかったところだが、タイヤサイズがラインアップされていなかったため併売されている「X-ICE XI2」を選択してみた。
タイヤ交換をしたのは、「オートバックス海浜幕張店」。タイヤ交換の様子を写真で紹介しておくが、作業も丁寧なもので、およそ30分ほどで終了した。今回は、標準装着のホイールを使う形でタイヤのみを交換し、外した標準装着タイヤは持ち帰り。ノートはリアシートを倒せば広いラゲッジルームが広がるため、タイヤを4本積んでも余裕があった。
1月には東北方面の取材も考えているため、その模様をこのノートでお届けできたらと思う。いずれにしろ、少し気を使って運転するだけで、(たとえターンパイクの下り区間があるとはいえ)思ったよりよい燃費を記録してしまった新型ノートには、正直驚かされた。しばらくは取材の足として、燃料費の節約に役立ってくれるものと思う。