長期レビュー

日産「ノート」

第2回:軽井沢にスタッドレスタイヤでお出かけ。そして、大雪の通行止めに

 日産のグローバルコンパクトカー「ノート」の長期レビューの第2回。前回は東北への取材の準備として、ミシュランのスタッドレスタイヤ「X-ICE XI2(エックスアイス エックスアイツー)」を装着したところで終えた。XI2に交換後、東京オートサロンの取材の足として東京・市ヶ谷~千葉・幕張の往復を何度かこなしていたため、ある程度のタイヤの慣らしは終わっている。そのため、100kmほど走って雪道走行が期待でき、日本有数の温泉が存在する群馬県の草津を訪ねてみることにした。

 取材日に選んだのは、1月の三連休の最終日となる1月14日。天気予報や天気図とにらめっこをした結果、北関東方面での降雪が各日に期待できるからだ。

 ちなみに筆者がよく使っている天気予報は「ウェザーニュース」(http://weathernews.jp/)、「Yahoo!天気・災害」(http://weather.yahoo.co.jp/weather/)、「日本気象協会 tenki.jp」(http://tenki.jp/)の3つ。ウェザーニュースは安全志向で悲観的な予報(ネガティブ予報)を、Yahoo!天気・災害は積極的な予報(ポジティブ予報)を、そしてtenki.jpはその中間の予報を出すことが多いように感じているからだ。さらに、Unisys Weather(http://weather.unisys.com/)で気象状況を確認しておけば、雪が降るかどうかはなんとなく分かる部分がある。

 出発の朝、窓を開けるとすでに雪。筆者は東京都武蔵野市に住んでいるのだが、関東では北西の地域から雪が降り始め、都下に位置する武蔵野市では結構な雪が朝から降っていた。

 まずは近所のセルフスタンドでノートを満タンにする。前回、約34.9km/Lの燃費を記録したノートだが、ソーシャルコメントに「給油方法が~」との意見があったので、同じスタンド、同じ給油機で給油してみることにした。セルフスタンドのため、自分で給油でき、給油方法も2回入れに統一。給油をして一度「カチャ」と音が鳴って給油が止まったら1分ほど待って、2度目の給油を開始。「カチャ」と鳴って給油が止まったら給油終了とするものだ。出かけている間にメンテナンスが入ったら同じ給油機に統一した意味がないが、祝日ということもあり、その可能性は低いと思っている。

近所のセルフスタンドで満タンに。給油方法は、1分待ちの2回入れ
出発時点での雪の状態。水分を多く含んでおり、積もっていないこともあって、スタッドレスタイヤであれば問題ない範囲

 満タンにしたら、いよいよ関越自動車道 大泉IC(インターチェンジ)を目指して北上。気象状況を知りたいため、FM東京(80.0MHz)を聞きながら走る。FM東京を聞いていると、千代田区半蔵門にあるスタジオでも雨から雪に変わったようで、「予想以上の降雪量になりそうだな」と、この段階で目的地変更を考え始めた。

 関越道は大泉ICですでに雪による80km/h規制(ユキのハチマル)が行われており、川越JCT(ジャンクション)からは50km/h規制(ユキのゴーマル)に変化。しかし、嵐山PA(パーキングエリア)以北は規制が外れるなどまったく天気が読めない状態。草津温泉は渋川伊香保ICが最寄りのICとなるのだが、そこからの一般道走行が長い。八ッ場ダム建設に伴い周辺の道路は整備されたものの、一般道で大雪となった場合大渋滞が発生する可能性がある。そこで、最寄りのICからの走行距離が短い軽井沢に目的地を変更した。

満タンにした後、大泉ICへと向かう。路面にはだんだん雪が降り積もってきた。夏タイヤではすでに危険な状態
大泉ICのスロープ。タイヤの跡もなく、どんどん雪が激しく降ってくる
本線流入路
本線は流入路より積雪が少ない。ただし、ほかのクルマが走っているため、危険度は高い
朝霞料金所。ここではブレーキを必ずかける必要があるので、事前に速度をきちんとコントロール
関越道を走行中。カーナビにはVICS経由の規制表示が
規制が外れたところで速度を上げる。適宜燃料カットを使い、燃費走行を心がけた。標準装着のタイヤに比べると、さすがに転がりが弱い感じを受ける
上信越道への分かれ道
松井田妙義IC。以西は通行止めのため、ここで強制的に一般道へ

碓氷バイパスでの峠越えは失敗、旧道で峠越え

横川駅前の定番「おぎのやドライブイン」の「峠の釜めし」
なめこ汁も一緒に注文。定番の組み合わせ
おぎのやドライブイン。多くのクルマで賑わっている
おきのやドライブイン駐車時のアラウンドビューモニター。駐車時にこれがあるとないとでは安心感が違う

 軽井沢に目的地を変更したものの、今度は上信越自動車道の松井田妙義IC以西が通行止めに。松井田妙義ICは軽井沢ICの1つ手前のICとなり、上信越道が使えないと国道18号を使い、横川駅近辺からはバイパスを使うのが一般的なルート。松井田妙義ICで一般道に下り、横川駅前の「おぎのやドライブイン」で朝食とした。

 「峠の釜めし」で空腹を解消したら、いよいよ碓氷バイパス(国道18号)で峠越えに挑む。といってもスタッドレスタイヤXI2を装着したノートは快調そのもの。前を走るクルマもスタッドレスタイヤを装着しているようで、快適なペースで進んでいく。しかしながら、雪の量は増え、上信越道の碓氷橋をくぐるあたりからペースが落ち始める。さらに4kmほど進むと、坂道を上れなくなったトラックなどが路肩に登場。そこから少し進んだところでピクリとも動かなくなった。

 このまま待つという方法もあるが、基本的に筆者は渋滞がきらいだ。「渋滞で待つくらいなら、遠回りしても快適に走る」というのがポリシーなので、Uターンし国道18号の旧道(地図上はどちらも国道18号)を走ることにした。

峠の釜めしを食べたら、碓氷バイパスを軽井沢へと向かう
雪も止み、路面の状態もよい
どんどん進むと、どんどん雪が積もってきた。反対車線は通行量も少ないため、雪に覆われている
雪、また雪
除雪車活躍中
さらに進むと、チェーンを装着するトラックが現れ始め、大渋滞が始まった

 旧国道に行くためには、横川駅近辺まで戻る必要がある。下り坂となるため慎重な運転を行い、再び上信越道の碓氷橋をくぐって旧道に入った。旧道に入り、再び碓氷橋をくぐってしばらく進むと、本格的な峠道が始まる。さすがに旧道から軽井沢に向かおうとするクルマはおらず、ときたま下ってくるクルマを何台か見かけるだけだ。自分自身この道で軽井沢に向かうのは約11年振りで、雪の旧道を走るのは記憶の遙か彼方となる。

旧道を行くことを決断。碓氷バイパスを引き返す。上信越道の碓氷橋が見える
こちらは、旧道側の碓氷橋。橋脚のデザインが異なっている

 ちなみに11年前に旧道を通った記事はGAME Watchに掲載されているので、よかったらご覧になっていただきたい。

●リアルアドオンシリーズ2 JR信越本線 碓氷峠
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011226/yokokaru.htm

 峠を上るにつれて感じたのは、ノートのトラクション性能のよさと、ハンドリングの正確さ。いくらスタッドレスタイヤを装着しているとはいえ、滑るときは滑るし、滑るのを計算に入れて修正舵をあてていく必要がある。FFでの上りにもかかわらず、きちんとした接地感があるので、そのような作業もしやすい。

スタッドレスタイヤX-ICE XI2。FFとの組み合わせでも、期待以上の走行性能を発揮

 また、スタッドレスタイヤXI2のグリップも、上れば上るほど気温が下がり雪がしまってくるためどんどん向上する。ふもとでは水を大量に含んだザクザクの雪のため、グリップする路面がどんどん崩れていってしまうが、標高が上がると雪が固まりやすく、路面が崩れる感じも減る。碓氷峠の頂上付近ではラクラク走れる状態になったし、それは軽井沢の街中に入っても同様だった。もっと急な坂の場合、前輪の空転も頻繁に起こるのだろうが、横川→軽井沢の坂道ではときたまスリップしつつも、不安なく走ることができた。

雪の碓井第三橋梁(通称:めがね橋)。これが見たくて通ったわけではないが、スタッドレスタイヤを履いていてよかったと思えた風景

 唯一危なかったのは、対向車線からクルマがはみ出してきたこと。上りの場合、速度コントロールは容易だが、下りは非常に難しい。それに失敗したものだと思われるが、下る際はコーナーの手前できっちりブレーキング(というよりエンジンブレーキなども併用した速度調整)は終わらせておきたい。

旧道を上っていく。この辺りの雪は崩れやすく、とても走りづらかった
道路が完全に雪で覆われる。この状態のほうが走りやすかった
対向車は数台見かけたが、上っていくクルマに会うことはなかった
さらに高度を上げると、サクサクの雪に
パトカーが現れた。パトカーの先に、動けなくなっているクルマがいた
旧道においても除雪作業は行われているようだ
碓氷峠に到着。ここを越えると、長野県になる
碓氷峠から少し走ると軽井沢駅近くに出る

軽井沢で楽しんでいたら、とても帰れる状況ではなくなった

軽井沢・プリンスショッピングプラザに到着。雪が大量に降っており、ノートもこんな状態に

 軽井沢に到着したらアウトレットモール「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」へ。普段は駐車するのも大変なプリンスショッピングプラザだが、さすがにこの日は余裕で駐車することができた。最初は屋根のない場所に駐車したが、雪が降り止む気配がないため、屋根付きの場所に移動した。

 屋根付きの駐車場はニューイーストの下に位置するのだが、難点は非常に暗いこと。考えることはみんな同じなのか、ここの駐車場だけは混んでいて、空いている個所を見つけるのに苦労した。この際に、役に立ったのがアラウンドビューモニター。ノートでは「メダリスト」に標準、「X DIG-S」にメーカーオプションのこの装備だが、暗い駐車場でもハッキリと映像が表示される。とくにこの駐車場では、車止めもなく、狭いものとなっているので非常に重宝した。

アラウンドビューモニターを使って駐車中
この駐車場は車止めがなく、アラウンドビューモニターが頼りになる
左の画面をサイドビューにしてみた

 プリンスショッピングプラザで、簡単なお買い物と食事をすませたらすっかり暗くなってしまった。道路状況をJARTIC(日本道路交通情報センター、http://www.jartic.or.jp/)で確認したら、松井田妙義IC以西の通行止めはともかく、関越道 本庄児玉IC~練馬ICまでもが通行止めに。北関東自動車道経由で東北自動車道に回ろうにも東北自動車道も館林IC以南が通行止めに。ついでに首都高速道路の状況を見てみたら、ほとんどの入口が利用できなくなっていた。一般道を走って帰ろうにも、高速道路が使えない以上、一般道の大渋滞は容易に予想できる。ましてや、三連休の最終日なのだ。

徐々に暗くなっていく空。プリンスショッピングプラザでライトアップが始まる
すっかり暗くなり、ライトアップが映える
関越道が通行止めに。これでは東京に帰るのに時間がかかりすぎてしまう
首都高は埼玉大宮線以北が通行止めで、入口封鎖が多数。いったい東京はどうなっているのか?

 そこで渋滞嫌いの自分が採る手段は、「どこかで時間をつぶして通行止めの解除を待つ」ということ。幸い軽井沢で雪は止む傾向にあり、首都圏もそれは変わらないように見えた。日帰り温泉「トンボの湯」へ行き、22時頃までゆっくり過ごす。さすがに通行止めも解除されただろうと思いきや、まったく変わらない。仕方がないので一般道で帰るために碓氷バイパスへ向かうと、まったく動いている気配がない。それではと旧道へ向かうと、こちらは降雪のために通行止めとなっていた。

仕方がないので、時間つぶしに日帰り温泉へと向かう
トンボの湯に到着。雪はほとんど止んでいた
サウナもあるので、サウナ好きには長時間過ごせるトンボの湯

 北の草津方面に抜けて渋皮伊香保ICを目指し、国道50号、17号経由で帰る手段もあるが、翌日は会社に行く必要がある。そのような状態で出社しても自分が仕事をできるとは思えず、軽井沢駅前のビジネスホテルで一休みすることにした。23時にチェックインして、ベットに入ったら23時過ぎに関越道・上信越道のみ通行止めが解除となった。すぐに向かう元気もなく、翌2時まで睡眠。2時過ぎに起床し、東京を目指した。

 上信越道の通行止めは解除されていたので、碓井軽井沢ICから高速へ。チェーン規制がかかっていたが、スタッドレスタイヤのために問題なく通過。そもそもスタッドレスタイヤでなければ、すでに走ることなど危なくてできない状態だ。チェーンを駆動輪に装着すれば雪道を走ることができると言われているが、自分自身の経験からは、夏タイヤにチェーンを装着しても止まる際の危険度は変わらない。とくにFF車での下り坂の場合、ブレーキをちょっと踏むだけで前輪を中心にすぐにスピンしてしまう。速度の制御が極めて難しくなるのだ。

 その点スタッドレスタイヤを履いていれば、FF車でもリアがすぐに出てしまうことはなく、ゆっくり下ればよい。但し凍結路面はグリップが極めて小さくなるため、危険性は大だ。路面を見極めつつ走るしかない。

 上信越道は軽く雪が積もっている状態で、すでに関越道は除雪が完了していた。関越道は雪が降ることが多く、除雪車も多数保有している。また、関越道を走るクルマの多くはスタッドレスタイヤを装着しており、路肩に止まっている車両を1台も見ることはなかった。雪による影響を受けるのも早いが、雪に対する対応力が高いのも関越道の特徴だろう。関越道の除雪作業に関しては、下記の記事を参考にしてほしい。

●冬の高速道路はこうして守られている(前編)
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090227_42941.html
●冬の高速道路はこうして守られている(後編)
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090302_42969.html

翌2時にビジネスホテルを出発。雪が激しく降り始めていた
ヘッドライトは、余熱のために雪が積もっていない
前日23時42分の状況。関越道の通行止めが解除されている

スタッドレスタイヤ&雪道&大渋滞で燃費は約16.6km/L

 関越道を順調に東京へ向かうが、練馬ICへの到着時間が、順調に減るどころか増えていく。所沢ICへの時間は減って行くにもかかわらずだ。所沢IC直前での、所沢ICへの到着時間は10分と表示されていたが、練馬ICへの到着時間は120分。普段は約10分の所沢IC~練馬IC間が110分もかかることになっている。

 これは外環道が通行止めとなっているため、すべてのクルマが練馬ICへ向かっているためだろう。昔なつかしい練馬の大渋滞が発生しているというわけだ。当然ながら、そのような渋滞にハマる根性はすでにないため、所沢ICで下りる。国道254号(川越街道)くらいは除雪されているだろうと考えたためだ。

 しかしながら、一般道は高速道路よりもひどい状態。いきなり斜めになる夏タイヤのクルマ、荷物満載でチェーンを装着し激しい振動を発しながら走るトラックなど、明らかに何かが起きそうな気配で満ちている。そのため、さっさと多摩方面へと向かい、片側1車線道路をのんびり走ることにした。時刻はすでに5時をまわり、朝の仕事のクルマが走り始めるころ。やっと、出発地点であるセルフスタンドにたどり着いた。

軽井沢駅近くの交差点の状況。フラットな積雪
碓氷軽井沢ICから東京へと向かう
上信越道本線への流入路。思ったよりも路面はよい状態
場所によっては、除雪が追いついていない状況
上里SA(サービスエリア)で状況を確認。練馬ICまで120分となっているが、練馬に近づいてもまったく数字が変わらなかった
所沢ICで下りて、川越街道を走り、都道へと抜ける。道は凍結し、夏タイヤの車両がいるなど、非常に危険な状態
動けなくなった車両を追い越そうとするトラック。このような風景があちこちで見られた

 往路と同じ給油機、同じ方法で給油した結果は20.69L。トリップメーターによる走行距離は342.9kmだったので、計算上の実燃費は16.57……≒約16.6km/Lとなった。また、今回はノートのマルチファンクションモニターでの燃費も計測。そちらの結果は、17.2km/Lだった。

 前回の34.9km/Lと比べると約半分となる結果だが、低燃費タイヤではなくスタッドレスタイヤを装着、行程の半分ほどが抵抗の大きい雪道を走行、さらに大渋滞に何度も遭遇ということを考えると、よい値と言える。ただし、雪道走行のためタイヤのスリップが多く、また、タイヤ外径が異なっているかもしれないため、走行距離値の信頼性は低い。20.69Lで軽井沢まで往復できた事実だけが、それなりに信用できる部分だろう。

走行距離342.9km。ディスプレイ上の燃費は17.2km/L
出発地でもあるセルフスタンドに到着。出発時と同様の方法で給油する
給油量20.69L。計算上の実燃費は約16.6km/L

 いずれにしろミシュランのスタッドレスタイヤ「X-ICE XI2」は、この過酷な雪道走行をサポートしてくれ、FFのノートでも一般には十分なほどの登坂性能を得ることができた。最新のX-ICE XI3でないのは残念だが、発売サイズがないのではどうしようもない。ノートはベストセラーモデルとなっているので、来シーズンには対応サイズも投入されるだろう。冬シーズンに出かける際は、スタッドレスタイヤの装着をぜひ検討していただきたい。家族の安全性を高めることはもちろん、他人に迷惑をかける可能性を減らすことができる。冬シーズンも残り少なくなってきたが、スタッドレスタイヤの特売も始まる季節となっており、好みの銘柄や必要なサイズがあれば購入を検討するのもありだろう。

編集部:谷川 潔

http://car.watch.impress.co.jp/