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新型「レンジローバー」発表会リポート

「変化させるのではなく、進化させる」

ジャガー・ランドローバー・ジャパンのラッセル・M・アンダーソン社長
2013年3月2日発売

 ジャガー・ランドローバー・ジャパンは1月9日、新型「レンジローバー」の発表会を都内で開催した。なお新型レンジローバーの詳細は、関連記事も参照されたい。

 これまで日本ではレンジローバーシリーズとして「レンジローバー・ヴォーグ」「レンジローバー・スポーツ」「レンジローバー・イヴォーク」をラインアップしてきたが、新型レンジローバーはレンジローバー・ヴォーグの後継となる。これを機に、本国と同様に名称から「ヴォーグ」が外された。

SUVでは世界初のオールアルミモノコックボディー

 1970年の初代レンジローバーから数えて4代目となる新型レンジローバーは、顧客の要望をもとに「変化させるのではなく、進化させる」をモットーに、レンジローバーらしい外観と内装のクオリティを維持しつつ、各部をリファイン。とくにボディーシェルには、オールアルミモノコックが採用されている。

 ジャガー・ブランドで10年以上の経験を持つアルミだが、SUVに使用するのは世界初。これによりスチールボディーより39%、180kgの軽量化を実現し、ボディーシェルのみで比較すると、BMW 3シリーズより23kg、アウディ Q5よりも85kgも軽くなった。また、ボディーサイドのパネルは、アルミの1枚もののプレス成形としては自動車業界最大サイズと言う。

 ボディーが軽量化されたことで、シャシーや駆動系のコンポーネントも軽量化でき、さらに燃費とパフォーマンスが向上したと言う。

新型レンジローバーの最上級モデル「オートバイオグラフィー」。サイドベントはベント機能のない装飾になった
レザーはセミアニリン
格納式になったテレインレスポンス2のダイヤル。オートモードが加わった。ステアリングコラムにはシフトパドルを備える
リアシートエンターテインメントシステムはオプション。リアがセパレートの4シーター仕様「リア・エグゼクティブクラスシート」をオプションで選べる
リアゲートは上下分割式
「変化させるのではなく、進化させる」をモットーに、外観の変化は少ないが、さまざまな効率向上のための技術が採用されている
アルミモノコックボディーは軽量化だけでなく、リサイクルなど製品ライフサイクル全体での環境インパクトを下げる効果も

 同社は、オールアルミモノコックは軽量化だけでなく、製品のライフサイクル全体での環境インパクト低減にも効果的としている。製造段階では、エネルギー消費の大きな溶接などのプロセスが不要になり、エネルギーを節約できるほか、新型レンジローバーに使われるアルミニウムの50%がリサイクルされたものと言う。将来的にはこれを75%まで高める計画だ。アルミニウムだけでなく、車両全体の85%がリサイクル可能で、95%が再生可能と言う。

 軽量化だけでなく、8速AT、アイドリングストップ機構、電動パワーステアリングなど、さまざまな省燃費技術も投入されている。

 外観の変化はあまりないが、歴代レンジローバーの特徴の1つである前ドア前方のサイドベントは、ボンネットにその機能が移り、ベント機能のない装飾に変わっている。

オフロード性能も手抜かりなく

 同社マーケティング・広報部の作田昌子ディレクターは、新型レンジローバーについて「その比肩のないオフロード性能に加え、高級サルーンのごとく洗練を極め、ラグジュアリーなドライビング体験を提供できる、非常に稀有な存在として独自のポジションを確立しており、直接競合するモデルはない。目指したのは高級サルーンとも競合し、かつ比類のないオフロード性能も実現するクルマ」と言う。

 ランドローバー車には欠かせない要素と言えるオフロード性能は、最低地上高が13mm高くなったことなどから、アプローチアングル34.5度、デパーチャーアングル29.5度、ブレークオーバーアングル28.3度を実現。ホイールストロークは前輪で260mm、後輪で310mmを実現している。

 顕著に進化したのが渡河能力で、水深限界が200mm増えて900mmとなった。これは、エンジンのエアインテークシステムの改良などが貢献している。

5リッター自然吸気エンジンを積む「ヴォーグ」。ヴォーグは車名でなくグレード名となった

 さらに、ランドローバー車ならではの、アイポイントを高くとったドライビングポジション「コマンドポジション」は、ルーフが20mm低くなったにもかかわらず、シートバケットを改良したことで、他のラグジュアリーSUVよりも90mm高い位置にアイポイントを維持している。

 エアサスペンションは第5世代に進化。通常より50mm車高を下げて乗降を容易にする「アクセスモード」のほか、通常より高い「フルオフロードモード」「エクステンドモード」「エマージェンシーモード」に、通常より40mm高い「サブオフロードモード」が加わった。サブオフロードモードは80km/hまで利用できる。

 さらに、路面状態に応じてパワートレーンやシャシーを最適に制御する「テレインレスポンス」システムは「テレインレスポンス2」に進化。これまでオンロード、砂地、岩場などの状況をドライバーが手動で選択していたが、これらを自動的に切り替える「オート」機能が加えられた。

 テレインレスポンス2では、雪上から砂地まで、異なる路面の摩擦レベルに応じて電動パワーステアリングのフィードバックを変化させることもできるようになっている。

レンジローバーに欠かせないオフロード性能も向上。渡河水深は900mmになった
ルーフを下げたにもかかわらず高いアイポイントのコマンドポジションを維持。ブレーキにはブレンボ製の6ピストンキャリパーが採用されている

グループの業績は好調

 ジャガー・ランドローバー・ジャパンのラッセル・M・アンダーソン社長は、2012年度(4~11月)のグループ全体での販売台数が、厳しい市場環境にもかかわらず前年同期比6%の成長を遂げたこと、最終的には23%増が見込まれていること、英国のヘイルウッド工場では同工場50年の歴史で初めて3交代制の24時間操業が行われたこと、新しいエンジン工場の建設に3億5500万ポンドを投じていることなど、好調であることをアピール。

 「ランドローバーは唯一、真にグローバルなSUV専門ブランド。我々はエキスパートであり、我々はオーセンティックなチョイスだ。弊社のクルマはその万能性と、ひと目で分かるデザインで有名だ。それが全製品に共通する基本、コアだ」と述べた。

ジャガー・ランドローバーグループのグローバルの業績は好調

(編集部:田中真一郎)