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STI、2013年のニュル24時間参戦車両を富士スピードウェイで公開

空力や重量バランスを改善。予選は9分6秒以下、決勝は三連覇を目指す

2013年1月30日公開

当日は参戦車両の公開とともに、富士スピードウェイで走行チェックを実施した

 STI(スバルテクニカインターナショナル)は1月30日、富士スピードウェイにおいて今年のニュルブルクリンク24時間レースに参戦するWRX STI(4ドア)を公開。この公開に伴い、今年からチーム総監督となる辰己英治氏、助監督から監督になった小澤正弘氏、ドライバーの吉田寿博選手、佐々木孝太選手が参戦への意気込みを語った。

 そもそも同社がニュルブルクリンク24時間レースに出場する理由は、スバル(富士重工業)の「シンメトリカルAWDシステム」を世界にアピールすることを第一に、レースに参加することで車両の走行性能および信頼面の向上のほか、チームとしての技術力、人材力を向上させることにある。それを実証するかのように、同社はニュルブルクリンク24時間レースのSP3Tクラス(2リッター以下のターボ車)で2011年、2012年とクラス優勝を果たした。今年は同クラスでの3連覇とともに総合20位以内、145ラップ走破(同クラスでの歴代最高周回数は144ラップ)を目標に掲げている。

ボディーサイズは4580×1855×1400(全長×全幅×全高)、ホイールベース2625mm。昨年の参戦車両から25mm短く、20mm広く、25mm高くなった。エクステリアでは空力性能の向上を図ったほか、低重心化やバネ下重量の低減などが行われている

 参戦車両は昨年に続きWRX STI(GVB)をベースとし、WRブルーのボディーカラーを採用。最高出力250kW(340PS)/5500rpm、最大トルク461Nm(47.0kgm)/3000rpmを発生する水平対向4気筒 2.0ツインスクロールターボエンジン(EJ20)のスペックも昨年同様となるが、2013年仕様では昨年の車両製作のノウハウをベースに「強靭でしなやか」「軽量」「低重心」「美しさ」を目標に掲げ、シャシーを新規で作り上げた。

 ニュルブルクリンク24時間レースは、北コース(20.8km)とグランプリコース(5.1km)を組み合わせたコースで行われるわけだが、今回発表された2013年モデルは特に高速コーナーでのタイム短縮を図るため、フロントのリフトを抑えるためのアンダースポイラーの大型化やボンネットダクトの形状変更、リアタイヤハウスまわりのオーバーフェンダー造形の変更、リアディフューザーの追加により空力を向上。

 また、燃料タンクの搭載位置をより低く、後方に配置して低重心化と前後重量配分の最適化(39:61)を図り、旋回性能を高める方向にセッティング。さらに、BBS製マグネシウム鍛造ホイール(18インチ)の採用によるバネ下重量の低減のほか、今回発表されたトランスミッションはHパターンの6速MTだったが、4月に行われるニュルブルクリンク耐久選手権第3戦への出場のため、3月に渡独した後にシーケンシャルギアボックスに変更する。

下まわりを覗くとマフラーの中間タイコ部などがフラットな形状になっていた。また、マフラーのメインパイプ部にも空力向上を目的とした細工が施されていた
ホイールはBBS製18インチマグネシウム鍛造ホイールを採用。ブレーキはAP製でフロント6ピストン、リア4ピストン。ダンパーシステムはビルシュタイン
水平対向4気筒 2.0ツインスクロールターボエンジンは最高出力250kW(340PS)/5500rpm、最大トルク461Nm(47.0kgm)/3000rpmを発生
インテリアでは燃料タンクの搭載位置をより低く、後方に配置して低重心化と前後重量配分の最適化を図った。また、リアビューモニターが追加されている

 会見に臨んだ辰己総監督は、「去年まで監督を務め、2連覇に担ぎ上げていただいたが、(2013年モデルに車両が)進化したことで監督も進化させようとということで、小澤が監督になる。私は気持ちも見た目も若くないので徐々に世代交代していき、層を厚くしていきたい。小澤はSTIに来て5年ほどWRCに携わってきたので、世界と戦うということがどういうことかよく分かっている。私なんかと違って肝も座っているし、私の後継者として相応しいかなと思っている」とし、自身が総監督に、小澤氏が監督に昇格した理由を述べた。

 また、先進運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」を例に挙げ、「あれを考えた人は本当にすごいと思う。最近のスバル車はこうしたパッシブな部分が目立っているが、我々としては動的な気持ちよさなど、そういう性能もすごいんだよということをアピールしたい。お客さんが『ぶつからないクルマ』だけでクルマを買うのは少しさみしい」と述べるとともに、「我々はクルマを進化させ続けなければならない。自動車アセスメント(JNCAP)などは星がいくつと出てしまうが、『気持ちいいね』『安心だね』というのは数値化できないし、そういうところをレースで証明していきたい」と、ニュルブルクリンク24時間レースに参戦する背景を紹介した。

 一方、今年から監督となる小澤氏は、「車両については、今年は主に低重心化やバネ下の軽量化、ダンパーやオイルスペックの見直しなど、『ここがすごく大きく変更したよね』というところがないように見えるが、走らせてみると非常に速い」と、2013年モデルの仕上がりに自信を覗かせるとともに、「三連覇への重圧が大きいが、ファンの方を喜ばせるために自分が何ができるか考えたときに結局はミスなくいい選択をして、順調にゴールをさせること。精一杯頑張ってゴールさせたいと思う」と、レースへの抱負を述べた。

辰己英治総監督
小澤正弘新監督
吉田寿博選手
佐々木孝太選手
走行後、監督と選手で綿密な打ち合わせをしていた

 当日は参戦車両の公開とともに、富士スピードウェイで走行チェックを実施。走行後、新しくなったWRX STIについて吉田選手は「低重心化を感じる。まるで路面に杭を打ったよう。これは私のような中年でも運転していて疲れにくく、24時間走らなければならないニュルブルクリンク24時間レースでは(その効果が)効いてくるだろう」、佐々木選手は「低重心化とともにバネ下重量が軽くなったので、マシン全体が軽く感じ、そのせいかエンジンレスポンスがよくなったように感じる」と、各人マシンへの手応えを感じているようだった。

 なお、予選での目標ベストタイムを吉田選手、佐々木選手に聞いたところ、「昨年9分16秒台だったので、今年は9分6秒以下を目標にしたい」(吉田選手)、「予選トップを狙う」(佐々木選手)と、頼もしい答えが帰ってきた。

 今年のニュルブルクリンク24時間レースは5月17日に練習走行と予選(1回目)、18日に予選(2回目)、20日~21日に決勝が行われる。

(編集部:小林 隆)