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2015年のFCV市販化を前にトヨタ、ホンダ、日産のFCVトップが現状を語る
(2013/3/4 14:06)
2月27日~3月1日、東京ビッグサイトで「FC EXPO 2013~第9回国際水素・燃料電池展~」(リード エグジビション ジャパン主催)が開催された。HySUT(水素供給・利用技術研究組合)を始め、数多くの関係各社が燃料電池車(FCV)関連の出展をし、現行のFCVが一堂に会した。
FCVとは電気自動車(EV)の1種で、水素と大気中にある酸素を反応させて発電し、そのエネルギーを駆動に使用するクルマ。反応後生成されるのは水のみで、走行中のCO2排出はゼロ。発電量は大きく、車両側からの給電も可能だ(ホンダFCXクラリティで一般家庭の6日分の電力が賄える)。
その心臓部となる発電システム「FCスタック」の開発は各社が力を入れており、その電極触媒として使用される白金を減らす(燃料電池のコストの25%がこの白金とも言われている)ことと、スタック自体をコンパクトにするべく日々開発が行われている。
2011年1月には自動車メーカーおよび水素供給事業者の共同声明が発表され、2015年には市販モデルを導入するとしている。現在、国内4大都市を中心にした水素ステーションの実証実験が進められているが、今春からは商業の水素ステーションが本格スタートとなる。
今回行われたFC EXPO 2013の会場には、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業のFCV開発陣のトップが来場したので、各社のFCV開発の現状と2015年の市場導入に向けたロードマップを聞いてみた。
着実かつ順調に開発が進んでいるトヨタ
前回の東京モーターショーでFCコンセプトの「FCV-R」(今回のFC EXPOにも展示)を登場させたトヨタは、昨年9月に最新の開発状況と2015年までの展開計画を公表。内製の水素タンクや、昇圧コンバーターを組み合わせたFCスタックが公開された。
水素タンクは、それまで使用していた航空機用のカーボンからFCVのタンクに見合う専用仕様のカーボンを使うことにより、コストを削減することに成功している。コンバーター一体型FCスタックについては、近年モーターの電圧が上昇トレンドとなっているが、燃料電池セルを重ねてそれに合わせるよりも昇圧器を組み込んだほうがよいとの判断からだ。その性能は、2011年に日産が発表したFCスタックの出力密度(2.5kW/L)を上回る3.0kW/Lを達成したことも発表している。
2015年にセダンタイプのFCVを投入し、2016年には日野自動車と共同で新型FCバスを市場導入するとしている上に、FCV普及期という位置付けがなされている2020年に登場させる次々型モデルの先行開発もすでに始まっており、着実かつ順調に開発が進んでいると言う。
大仲氏はすでに現段階で、2008年に登場した「FCV-adv」に比べ、システムコストは1/10を達成しており、2015年には1/20を達成するべく開発を続けていると言う。それでも、FC市販車はハイブリッド車よりも高い価格設定になってしまうとの見方も示しており、「(販売が)近いのであまりしゃべれません」と、生産規模などは不明。今年の東京モーターショーあたりで市販のベースとなるコンセプトカーが登場するかもしれない。
●URL
トヨタ
http://toyota.jp/
トヨタ自動車株式会社
http://www.toyota.co.jp/
燃料電池車とは
http://www.toyota.co.jp/jpn/tech/environment/fcv/
コンパクトなFCV車両も見据えるホンダ
各社がガソリン車のコンバートタイプのFCVを登場させていた2008年に、専用モデルであるFCXクラリティを登場させるほど、FCV開発に力を入れていたホンダだが、今回守谷氏の発言は、トヨタの大仲氏と比べると極めて慎重な構えだ。市販車投入まで2年ほどしかないという現時点で、投入するモデルについては公表されていない。
インフラの整備も十分とは言えない現時点で、生産規模まで考えたコストを見ると、傍から見ていても設計のしようがないというのは明らかである。非常に高価なFCスタックと水素タンクを量産の生産プロセスでコストを吸収させることも可能だが、その生産規模自体が見えない今の時点ではそれも難しいと語る。儲からない時期がいつまで続くのか、それこそが最大の懸案事項のようだ。
一方、技術競争については熱が入るのはホンダならではだろう。きびきび走るような味付けや、インパクトのある走り、といったホンダらしさを組み込むことは忘れていない。そしてまだ公表できないものの、小さなクルマにFCを入れたいという話も飛び出した。さまざまなユニットを組み込める大きなクルマに積むことはあまり意味がなく、ユニットは徹底したコンパクト化を図り、FCをどこまで小さいクルマに積めるのか挑戦していきたいというのだ。もちろん小型車にすることで価格を抑えることも可能で、大型車に展開していくことも容易になる、というメリットもある。
ホンダらしい乗り味が堪能できるコンパクトなFCVの登場に期待したい。
●URL
本田技研工業株式会社
http://www.honda.co.jp/
FCXクラリティ
http://www.honda.co.jp/FCX/
Honda企業メッセージ
http://www.honda.co.jp/message/fcx/
ダイムラー、フォードとの共同開発に乗り出した日産
リソースを大きく割いているバッテリーEVの拡大が大命題である日産にとっては、ホンダよりもさらにシビアのようだ。「儲からなければビジネスではない」ということで、1月末にルノー・日産アライアンスとダイムラー&フォードによるFC共同開発という新たな取り組みをスタートさせると発表した。FCを開発している各社が集まって、FC技術のいいとこ取りをしながら、量産規模を大きくしてコストを抑えていくという意向だ。
しかし、その共同開発のため、2015年の市販車投入は当然遅れることとなる。結果、市販FCVの登場は2017年となる模様だ。この2年の遅れがどのような影響を及ぼすのだろうか。FCVのユニット類の低価格化が進む、もしくはFCVの認知が進む、というメリットはあるが、2015年にFCVを欲しいと思っているユーザー層に対してトヨタとホンダの2社でほぼ売りつくしてしまい、「日産のマスが残っていない可能性もある」と森氏。
ちなみに2017年に登場するFCVがどのような大きさの車両なのかはまったく不明。少し遅れて登場するFCVが、他社のモデルと比べてどれだけの進化とプライスタグをつけて登場するのか、インパクトのあるモデルであれば新たな顧客をつかむことも可能だろう。
●URL
日産自動車株式会社
http://www.nissan.co.jp/
環境への取り組み(燃料電池車)
http://www.nissan-global.com/JP/ENVIRONMENT/CAR/FUEL_BATTERY/DEVELOPMENT/FCV/
どこまでもコストを抑えていく努力は必要と、各社は語る。ガソリンや軽油といったエネルギー環境にも左右されるが、さらに引き上げられる厳しい環境基準などもあり、FCV普及期と見る2020年にはビジネスとしても成立するFCVが走り出しているのだろう。そうした未来は目前まできている。