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2015年のFCV市販化を前に、日産、ホンダ、トヨタのFCV開発関係者に聞く
「FC EXPO 2014」が東京ビッグサイトで開催
(2014/3/6 12:00)
「FC EXPO 2014~第10回 国際水素・燃料電池展~」(リード エグジビション ジャパン主催)が東京ビッグサイトで開催された。FC EXPOは燃料電池関連に特化した展示会であり、HySUT(水素供給・利用技術研究組合)を筆頭にインフラ各社、水素ステーション等に係わる設備機器メーカーの展示で会場は熱気に満ちていた。
燃料電池は、水素と大気中にある酸素を反応させて電気を発電させるもので、家庭用燃料電池のエネファームが有名だが、この発電した電気を駆動エネルギーに使用する電気自動車がFCVである。水素を車体に設置したタンクに充てんし、化学反応による電力で走行する。走行中の CO2排出はゼロ。燃料電池の発電量は大きく、リアクションもよいことから基本的にはバッテリーを搭載しなくても走行は可能。ただ、発電はするものの、エネルギーを蓄えておくことができないため、減速時の回生エネルギーの回収および発進時のアシスト用に、ハイブリッド車に使われるような高出力タイプのバッテリーを搭載する。
その化学反応を行う発電システム「FCスタック」と、燃料となる水素の保管場所である「水素タンク」およびそのレイアウト等がFCVの肝となる。心臓部のFCスタックは出力密度3.0kW/L以上、5kg(180L)ほどの水素タンクを搭載して、1回の航続距離300マイル(約480㎞)以上と、各社市販化に向けて横並びの数字を出してきているが、いずれも「以上」というように、まだまだ熾烈な開発争いは継続中という感じだ。
今年も昨年に引き続き日産自動車、本田技研工業、トヨタ自動車の各社でFCV開発に関わる担当者へのインタビューを行った。
ルノー・日産アライアンス、ダイムラー&フォードとの共同開発は順調
ルノー・日産アライアンスと、ダイムラー&フォードによるFC共同開発という新たな取り組みをスタートしている日産。トヨタ、ホンダは2015年にFCVを市販化することを表明しているが、日産は「早ければ2017年の発売」と、2年ほどタイミングがずれることとなる。このことについて、同社の総合研究所EVシステム研究所 エキスパートリーダーである飯山明裕氏は「出遅れたというイメージにはなります。もちろんデメリットではありますが、一方ではメリットもあり、その時間分だけ技術も進化しますし、他社よりも最新の状態で色々と決めることができます」と語る。
共同開発では、現在FCスタックを決めるタイミングに差し掛かっているようだ。また、他の主要部品についても「タンクを一緒に開発することでコストを削減できるのではないかと検討をしていますし、モーターについても共通化したほうがいいのか、個別にしたほうがいいのか。そういったことを検討しています。それぞれの色々な思惑があったりコストの要求、最終的な商品の要求に応えられるようにするにはどうしたらいいかという難題がありますから、慎重に検討しています。生産拠点についても色々な案があります。FCスタックは1カ所で組み立て、それを各(メーカーの)車両組み立て工場へ持ち込むという形になると思いますが、まだ決定はしていません」(飯山氏)。
日産としては、その共同開発の決定をただ待っているわけではないという。2017年のFCVを担当するチームとは別に、その先を見据えた先行開発チームが並行して開発を続けている様子。2017年モデルの登場はもちろん、その先のモデルについても期待がかかる。
最終的なスペックで技術力を見てもらいたいとホンダ
昨年、東京モーターショーと同時期に開催された米国のLAオートショーで「FCEV CONCEPT」を出展したホンダ。「FCXクラリティ」以降、一切形を見せてこなかったホンダのFCVだが、2015年市販化への足掛かりが見えたともいえる。このFCEV CONCEPTの細かなスペックは披露されていないが、FCXクラリティ(ボディーサイズ4845×1845×1470mm/ホイールベース2800mm)より全長、全幅ともに50mmほどプラス、つまりひと回り大きなサイズのようだ。
あくまでデザインコンセプトと見る向きが多い中、本田技術研究所 四輪R&Dセンター 第5技術開発室 上席研究員 守谷隆史氏は「テイストとしてはあのコンセプト(FCEV CONCEPT)を踏襲した形で、あのイメージのクルマを出します。当然そのまま(発売する)というのはないでしょうが、FCXクラリティ以上にデザインとしては未来感のあるイメージを出さなければいけないんだろうと思っています。初期の納入先は官公庁や企業等が中心になりそうだということも考えると、それなりのセダンにしなければいけないと思っています。先進性や使い勝手のよいクルマというイメージですね。最終的なサイズは議論の余地がありますが、あれ(FCEV CONCEPT)をベースにしますから特別に大きく変わる話ではないと思います。日本だとちょっと大きいですね」と述べる。
車両レイアウトは、FCシステムをコンパクト化することで、FCスタック類を含めた駆動ユニット類をフロントフード内に置く。キャビン内からFCシステムを排除したことで、5人の乗車定員も確保したとしている。
スタックの出力密度は3kW/L以上、水素貯蔵量も5㎏以上を目指しているが、システム効率については現在公表をしていない。「そこから先が技術の見せどころ」と守谷氏は語っており、最後の技術的な詰めで最終的にどういったスペックになるのか。FCEV CONCEPTからどのような市販車が登場するかも含め期待が大きく膨らむ。
2015年の市販化に向けラストスパートをかけるトヨタ
2回にわたって東京モーターショーでFCVのコンセプトモデル(2011年のFCV-R、2013年のFCV CONCEPT)を出展してきたトヨタ。もちろん昨年登場したFCV CONCEPT(ボディーサイズ4870×1810×1535mm/ホイールベース2780mm)が市販化に近いモデルである。技術開発本部FC開発部 主査 三浦晋平氏は「冷却のためにラジエターの大きさは必要ですが、開口部はあのモデル(FCV CONCEPT)までは必要ないと思います。グリルはデザインの部分という意味合いが強いですが、基本的にはFCV CONCEPTがベースになっていると思っていただいてOKです」という。
キャビン下に昇圧機付のFCスタックを置き、異サイズの2本の水素タンクを備えるというコンセプトの基本構成はそのまま市販車にも引き継がれるようだが、細かい部分での最終決定にはまだ至っていないとする。現在はまだ開発の最中なので、改良すべき点があればそれを直している状態という。
現時点で開発はどのような状況にあるのか聞いたところ、「通常、量産車を作る前に相当数の試作車を作って、それをテストしてわるいところを直していくわけですが、現在はその作業を行っているところです。また作り方、材質、材料など全方位でコストを下げられるよう色々とやっているという感じです」との回答。
また、販売形態については「一般のお客様がトヨタの販売店で普通に買えるということです。ただ、インフラの問題がありますので、まずは4大都市圏が中心になると思います」と語っており、いよいよ市販化が目前に迫っていることが伺えるコメントがいただけた。
1年前のインタビューに比べ、今回は生産技術面での話がいくつか見られた。これは開発のフェーズが1つ進んでいることの表れだろう。FCVでは、今までに経験したことのないような高い品質管理が求められる。このあたりの検討もすでに大詰めなのかもしれない。
2015年に市販することを発表しているトヨタとホンダは、具体的な登場時期が2015年のどのあたりになるのか、そして価格についてもコメントは避けている。来年のFCエキスポではどこまで話が明瞭になるのか、期待したい。