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トヨタ、“Fun&Clean Vehicle”セダン型燃料電池車(FCV)のエクステリアを初公開

FCVの市販車を2014年度中に発売、価格は「普及してこそ環境への貢献」と700万円程度を目指す

トヨタ自動車 取締役副社長の加藤光久氏と初公開されたセダン型燃料電池車(FCV)
2014年6月25日開催

 トヨタ自動車は6月25日、東京都江東区のお台場にあるメガウェブ内トヨタシティーショーケースで、開発中である燃料電池車(FCV)の進捗状況説明会を行った。この説明会にはトヨタ自動車 取締役副社長の加藤光久氏が出席するとともに、小木曽聡常務役員、佐藤康彦常務役員が質疑応答などの対応にあたった。

トヨタ自動車 取締役副社長の加藤光久氏
トヨタ自動車 常務役員の小木曽聡氏
トヨタ自動車 常務役員の佐藤康彦氏

 トヨタは現在、燃費向上とエミッション低減を目指す「省エネルギー」と、電気や水素をはじめとした代替燃料を利用する「燃料多様化への対応」を基本方針として環境技術開発を進めている。中でも、燃料多様化への対応においては水素に注目し、水素を将来有望なエネルギーに位置づけているという。

 その水素を使った自動車がFCVである。このFCVについて、トヨタは20年に渡って開発を進めていて、FCVのキモになるFCスタックや高圧タンク等のFCシステムを自社開発。今回の説明会で披露されたセダンタイプのFCVはその技術の結晶である。

ベールに包まれていたセダンタイプのFCVが姿を現す。発売前だがこれが最新のスタイルとなる。インテリアに関しては発表されなかった
スタイリングは新しい時代のクルマをイメージさせる形状で、市販間近なだけにこのまま街中を走っていても違和感を感じさせないデザイン
とくにフロント部は特徴的で、航空機のエアインテークのような形状のバンパーを採用。リアビューではマフラーがないことに気づく
ヘッドライトもこれまでにない形状。今回は実際にライトを点灯してくれたので、ライトオンのイメージも見ることができた
航空機やレーシングカーを想起させるバンパーデザイン。フェンダーからミラーへと続くボディー形状もかなり凝った造形。ミラーの塗り分けもカッコよい
サイドに「FUEL CELL」と書かれるエンブレムが備わる。ドアノブは大型で、鍵穴があるのも市販間近をイメージさせる。テールまわりもかなり凝ったデザイン
7本スポークデザインのホイールを装備

 FCVについてはご存じの方も多いと思うが、まだ市販されていないクルマの技術だけに簡単に説明させていただく。

 FCVは燃料電池自動車のことで、燃料として使用するのは「水素」と「酸素」。この2つを化学反応させて電気を作る燃料電池を搭載し、その燃料電池で作られた電気でモーターを駆動させる仕組みだ。燃料電池は、その呼び名から一般的な蓄電池を連想してしまうが、燃料電池は内部に電気を蓄えるものではなく「電気を作り出す」装置なのである。燃料の水素は車載の高圧水素タンクへ充填される。酸素は大気中の空気から取り入れる。

 モーター起動時は、水素を燃料電池のマイナス極へ供給する。ここで水素は内部の触媒と反応し活性化され、電子だけが分離する。分離した電子はマイナス極とプラス極を結ぶ回路へ流れるが、この回路を流れるときに電気を作り出す。これが燃料電池における発電の仕組みだ。

 このような行程で電気を作り出す燃料電池だが、車載の燃料電池はそれなりの容量が必要になる。そこで複数の燃料電池セルを積層して電池容量を高めたものが使われていて、これを燃料電池スタック(FCスタック)と呼んでいる。

 FCVは、電気でモーターをまわす点ではEVやハイブリッド(HV)車のモーター走行時と同じだが、FCVは水素さえ充填されていれば、すぐに走行に必要な電気を作り出すことが可能だ。それゆえに、EVやプラグインハイブリッド(PHV)車のように走行のための蓄電池は基本的に必要としないが、トヨタFCVではモーター起動時や加速時などの効率を考え、減速時に回収された電気を蓄えるニッケル水素の補助バッテリーも搭載するハイブリッド方式を取っている。

 このように、次世代の動力として魅力的な燃料電池技術を搭載したクルマが今回発表されたFCVとなる。そして現在はFCVに加え、小型電気自動車(EV)の開発も進められているが、これら小型EV、HV、PHV、FCVという異なる燃料を使用するラインアップを揃えていくことは、さまざまなクルマ、地域ごとの特色、燃料事情など、クルマに対する新たな多様化に対応するための取り組みということだった。

 そして、今回のトヨタFCVの技術開発は、トヨタが謳う人と地球が共生できるクルマ社会を目指す「サスティナブル・モビリティ」という名の環境保護活動を実現するためのチャレンジでもあるのだ。

「トヨタFCHV-adv」は6月26日~30日の期間、お台場のメガウェブに特別展示される

 さて、説明会の模様だが、まずは大きなニュースから発表された。以前のリリースではFCVの市販車の発売は2015年となっていたが、新たに2014年度中に国内販売を開始することが発表された。日本国内発売に続き、2015年の夏ごろからアメリカ、ヨーロッパでも発売する予定だ。

 日本国内での販売はトヨタ店とトヨペット店が取り扱い、当面は水素ステーションの整備が予定されている地域とその周辺の販売店が中心となる。価格は700万円(消費税別)程度を予定しているとのこと。トヨタの環境技術開発陣には「普及してこそ環境への貢献」という目標があるので、まさにここを強く意識したプライスであった。アメリカ、欧州での価格は未定。

 そして車名についてだが、そもそもFCVは燃料電池車を指す言葉だが、トヨタのFCVは楽しく、ワクワク、ドキドキさせてくれる“Funなクルマ”であり、それでいて環境に優しい性能を持つ“Clean”で美しい地球と共存するということから、「Fun&Clean Vehicle」の略称であることも発表された。

 発売を目前に控えた、トヨタFCVの現在の特徴だが、重要パートであるFCスタックの出力密度が、これまで限定発売されていたトヨタFCHV-advと比べると2倍以上の3.0kW/Lを達成。これは世界でもトップレベルであるという。そして水素タンクもトヨタFCHV-advと比べて約20%の貯蔵量向上の5.7wt%を達成した。その結果、車載するタンクの本数を減らすことが実現でき、従来4本だったところが2本になっている。これは車載スペースに有利になるだけなく、画期的な販売価格を実現できた低コスト化にも貢献している。

トヨタFCV(写真上)とトヨタFCHV-adv(写真下)の床下比較。水素タンクの改良等の成果か、床下への張り出しが小さくなっている
FCVを含めたこれからのクルマ社会についての考察。そしてそれに対するエコカー技術の一覧
トヨタFCVの開発についての最新情報。FCスタックの容量アップと小型化、そして水素タンクの容量アップと材質、製造方法の見直しによってコストも抑えられたという報告。これまではFCスタックのプラス極へ送る空気を湿らせるため加湿器を用いていたが、これを使用しない方式に変更。さらに昇圧コンバーターを新採用したことにより、FCセルの枚数を削減し、モーターも小型になった
トヨタのFCV市販車は2014年度中に発売。価格は700万円(消費税別)程度という魅力的なもの。加藤副社長は笑顔でトヨタFCVを可能性と魅力を語ってくれた
経済産業省の資源エネルギー庁から出席した省エネルギー・新エネルギー部 燃料電池推進室 室長の戸邉千広氏

 さて、今回の説明会には、経済産業省の資源エネルギー庁から省エネルギー・新エネルギー部 燃料電池推進室 室長の戸邉千広氏も登壇して、国としての水素ステーション普及についての説明があった。

 水素は国として将来性のあるエネルギーと見ていること。水素社会の実現に向けた働きかけについての内容だった。その説明によると過程は3つに分けられ、現在は初期のフェーズ1であり、2020年の東京オリンピックで水素の可能性を世界に発信することを当面の目標にしていた。

 そのため、今後登場してくるFCV車へ対応するために水素ステーションの整備についても整備費用の一部を補助、水素ステーション向けの圧縮機等の技術開発、高圧ガス保安法の規制も状況にあった見直しを行っていくということだった。つまり水素を使う燃料電池車へのインフラの対応は着実に進められるということである。

水素社会の実現に向けた国としての働きかけも本格化する。水素ステーションの作るための補助金や技術開発も支援していくという。国が大きく動き、燃料電池車の未来は明るいものだという印象を持った
セダン型FCVのイメージビデオ

【お詫びと訂正】記事初出時、ホイールのスポーク本数について誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。

(深田昌之)