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トヨタ、“変革への第一歩”に位置づける新型燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」発表会
走行時に排出するのは水だけ。「プリウスを越える新たなイノベーション」と加藤副社長
(2014/11/19 00:00)
トヨタ自動車は、セダンタイプの新型燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を12月15日に発売する。価格は723万6000円。発売当初は全国のトヨタ店、トヨペット店のうち、2013年度と2014年度に水素ステーションの整備を実施、予定している埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、愛知県、滋賀県、大阪府、兵庫県、山口県、福岡県の1都1府9県の販売店が取り扱いの中心となる。
ミライの詳細なスペックなどについては関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20141118_676295.html)を参照されたい。
東京・お台場の日本科学未来館で行われたミライの発表会では、冒頭でトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏がビデオ出演。自身が“モリゾー選手”としてドライビングを担当した「新城ラリー2014」の00カーとしての走行シーンを織り交ぜつつ、ついに市販のときを迎えた新世代のエコカーについてスピーチを行った。
車両の概要説明は、ミライの開発担当責任者を務めたトヨタ自動車 製品企画本部 主査の田中義和氏が担当。田中氏は、このミライについて「自動車の次の100年のために」というテーマで開発を実施したと語り、「小型・高性能のトヨタFCシステム」「FCVならではのパッケージングとモーター走行によるFun to Drive」「知恵をカタチにしたデザイン」「FCV特有の機能」の4つが新型車の大きな特徴であると解説した。
さらに田中氏は、トヨタFCシステムが20年に渡る開発の集大成であり、発電を行うFCスタックはセダンパッケージを可能とするコンパクトなサイズながら、家庭用に普及しているエネファームと比較して160倍以上のパワーを出せることをアピール。このために、1.3mmほどの厚さでセルを製造できる高い設計技術と“モノづくり力”が必要不可欠だったと語っている。
Fun to Driveでは、113kW(154PS)/335Nm(34.2kgm)を発生するモーターによって優れた加速性能を発揮し、とくにトルクの大きさと応答性のよさによって追い越し加速で真価を発揮するという。ボディー剛性にもこだわって開発を行い、FCスタックを持つ構造面のメリットに加え、FCスタックのフレームには熱可塑性炭素樹脂を使って高剛性と軽量化を両立。リアサスペンションの周囲にブレースを設定し、剛性を引き上げながらサスペンションがよく動くようにすることで、上級セダンにも負けない乗り心地を実現したとしている。このほか、重量配分でも低重心、前後バランスの最適化が図られ、2WD(FF)車ながら意のままのハンドリングも手に入れたことも紹介された。
FCV特有の機能については大容量の給電システムをアピール。ミライでは外部給電器との接続により、最大9kWの電力供給を実現し、災害時などの非常用電源としても利用できる。また、田中氏は「個人的にどうしても紹介したい機能」として、運転席のステアリング左脇に設置した「ウォーターリリース機能」について触れた。本来は地下駐車場や立体駐車場などを利用するときに、事前に発電時に発生した水を任意のタイミングで排出しておくための機能だが、田中氏はミライから水が出るところを知り合いなどに見せて、このクルマの独自性を話題にして楽しんでほしいと語っている。
また、発表会には6月に行われた新型FCVの開発状況説明会にも参加したトヨタ自動車 取締役副社長の加藤久光氏が登壇。「トヨタとモビリティの新しい時代の幕開けになる新型車の車名は“ミライ”以外に思いつかなかった」と語る加藤氏は、1992年からスタートしたトヨタにおけるFCV開発の歴史や、ミライに至る前段となった世界初の量産ハイブリッドカーであるプリウスの開発経緯、トヨタが考えるエネルギー対策などについて紹介。プリウスはトヨタが社会にもたらした大きなイノベーションであると自負し、さらにミライはプリウスを越える新たなイノベーションの幕開けになると表現。ミライが「モビリティとして地球環境問題やエネルギー問題の克服に繋がるイノベーション」「水素というエネルギーがもたらす水素社会へのイノベーション」という2つの大きなイノベーションを象徴する存在であると語り、「FCVや水素エネルギーが社会に広く受け入れられるようになれば、社会のあり方そのものを大きく変える、プリウスをはるかに超えるイノベーションになります」と、ミライに込められた大きな意義について紹介した。